「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」を笑おう・パート63−2【グリュックスマン】(追記・訂正あり)

パート62の続きその2。長くて読みづらいのでせめて「グリュクスマン」ネタだけで単独にしてくれとのコメ欄の要望に従い分けてみた。
■今、アルジェリアのニュースを待ちながらグリュックスマンを読んでいる(三浦の個人ブログ)
http://miura.trycomp.net/?p=1541
 なんだかんだ言ってますが、三浦の言いたいことは実に簡単で「イスラムテロ撲滅のためには何でも許される、だから俺はアルジェリアの強硬策を支持する、死者が出ても仕方ない」でしょう。グリュックスマンがどういう人間か、三浦が紹介する本『第11の戒律』がどういう本か俺は知りません。三浦のような「イスラムテロ撲滅のためには何でも許される」というネオコン的な野蛮な主張かもしれないし、そうではなくまともな本かもしれない。
 いずれにせよ、そんな人物、本を三浦が持ち出すのは自分のげすな主張に一理あるかのように「難しい話を持ち出し」相手を煙に巻こうとする詐欺テクニックに過ぎません。
 「アルジェリアの強攻策支持」って「人質の命をお前は何だと思ってるんだ?」って話です。人質の命を考えるなら「交渉路線」を取るべきでしょう。事件発生からたった数日で軍事攻撃、しかも関係国に事前通知無しとは正気じゃない。百歩譲って「それがやむを得なかった」と思ったとしても「人質には同胞たる日本人もいる*1」し、普通、そういうことを書くことにある種の躊躇があるでしょうが、三浦にはそうしたものは何もないのだから恐れ入ります。
 そして中国での反体制派のテロだと「中国にも非があるのでは?」と言う男がアルジェリアだと「テロリストだけが悪い」かのように言うから呆れます。俺はもちろんテロを容認しません。また、アルジェリア政府をどう評価すべきかも素人なので知りません。しかし「アルジェリア政府には問題はない、全てテロリストが悪い」というだけの自信が三浦にあるならともかく、そうでないなら「テロリスト非難だけする」のはほめられた態度じゃないでしょう。「テロリストだけ非難する」のは事実上アルジェリア政府全面擁護と同じだからです。
 ま、三浦も正直「アルジェリア政権には問題はない、全てテロリストが悪い」という自信はないでしょう。実際言ってません。おそらく三浦は「アルジェリア政府については無知」でしょう。

伏線は、仏軍が11日に隣国マリへ軍事介入*2したことを受け、アルジェリア政府が13日、仏軍の領空通過を認めたことにある。オランド仏大統領は昨年12月にアルジェリアを訪問し、マリ情勢について事前に協議しており、領空通過容認はその結果とみられる。だが、アルジェリア紙「リベルテ」が「政府が神聖不可侵の領土主権の侵害を許すとは誰も予想できなかった」と批判するなど、旧宗主国フランスに対する反感が混じった複雑な国民感情を刺激した。

 三浦の紹介する新聞記事です。これが事実なら「独裁的なアルジェリア政権が国民感情を無視してフランス軍の領空通過を認めた」可能性があるわけです。だからテロしていいとは言いませんが、領空通過について国民の同意を得たのかと言う問題に三浦が触れないのは酷すぎます。

優れた宗教学者小滝透

 小滝の名前でググっても宗教学者とは紹介されません。ウィキペ「小滝透」は小滝をノンフィクション作家としています。小滝は大学教員ではないから学者と呼べるか疑問です。また、著書も宗教関係の本が一番多い*3ようですが
『ヒトはなぜまっすぐ歩けるのか:「めまい」とバランスを科学する』 (1996年、第三書館)
『消えたヤシの実一万個―沖縄緑化に賭けた男たち』(2006年、養徳社)
『中国が日本を植民地にする日』 (2008年、飛鳥新社
『「反日嫌韓」の謎88』(2009年、飛鳥新社
という題名から見て宗教と関係ない本もあるのだから「宗教専門の作家」とも言えないでしょう。三浦が小滝を「宗教学者」と呼ぶ理由は何でしょうか(もちろん「優れた」と呼べるかどうかも問題ですが)。
 ちなみに小滝の本のうち、どう見ても極右の戯言としか思えない題名の本についてググってみました。

http://www.asukashinsha.co.jp/book/b12760.html
飛鳥新社サイトによる「中国が日本を植民地にする日」の紹介文
 少数民族に対して中国政府が行っている、汚い手口の数々! これは決して他人事ではない。日本が中国に占領された時、中国領ニッポン自治区になる。それがどんなに悲惨なことか、今、中国が少数民族にやっている実情を知ればリアルに見えてくる!

 呆れて物も言えないですね。「中国領ニッポン自治区」なんかあるわけがないでしょう。そう言う意味では「これは決して他人事ではない」どころか、日本にとっては「全く他人事」です。小滝や出版社が本気なのか、嘘を嘘と知りながら垂れ流してるのか知りませんが愚かにも程があります。ペマといい、小滝といい「中国領ニッポン自治区」を公言するとは、どうして日本のウヨ連中はここまでバカなんでしょうか。
 出版社、著者ともにこんなお馬鹿では同じ著者、出版社の『「反日嫌韓」の謎88』もどんな本か予想がつきます。産経新聞のように日本は悪くないとばかりに韓国を誹謗中傷してることが想像できます(ググっても今ひとつ内容がわからなかったのですが)。
 ま、飛鳥新社ってのは他にも
井上和彦尖閣武力衝突:日中もし戦わば』
ペマ・ギャルボ『最終目標は天皇の処刑:中国「日本解放工作」の恐るべき全貌』
平松茂雄作・丹州一心絵『マンガ日本核武装入門』
一止羊大『反日組織・日教組の行状』
鈴木明『新「南京大虐殺」のまぼろし
立木冬麗『鳩山占星術内閣の研究』*4
とかトンデモな本、特に極右的な内容の本が多いようですが。ここの経営者には誇りとか責任感ってないんですかね。実は飛鳥新社は以前、雁屋哲*5『日本人の誇り』*6という「雁屋氏が東南アジアでの旧日本軍の残虐行為を被害者から聞き書きした本」を出したことがあるのですが*7
 過去の雁屋本出版を「左翼の悪業(?)に荷担しすみませんでした」とわびるならともかくねえ。「雁屋本出版」という過去をなかったことにして今や右翼本の出版とは飛鳥新社も全くいい度胸です。

ナセル政権も、イスラム的価値観を主張するムスリム同胞団のような組織に、近代化や社会主義の立場から弾圧を加えるようになったんです(勿論、ムスリム同胞団のほうも多少のちょっかいをナセル政権にかけてきてはいたのですが)。

 1952年にエジプト革命が起こり、ナギブが大統領(首相兼任)、ナセルが副首相に就任します。しかし結局ナギブとナセルは対立、1954年、ナセルはナギブがムスリム同胞団と手を組んでナセル暗殺を企んだ*8としてナギブを打倒、自らが大統領になり、ムスリム同胞団弾圧へ動きます(ウィキペ「ナギブ」「ナセル」)。ま、三浦が紹介する小滝の主張はそういうことでしょう。

これはどこか共産主義の思想や組織の作り方などを密輸入した考えでもありまして、実際ムスリム同胞団組織は極めて共産党の組織作りと似ております。

 思想や組織運営の何がどう似てるのかさっぱりわかりませんが。反共右翼で、かつアンチイスラム原理主義であろう小滝がイスラム原理主義ネガキャンしたいだけではないのかと疑いたくなります。なお、現在のエジプト大統領・ムルシ氏はムスリム同胞団出身ですのでムスリム同胞団(特にエジプトの同胞団)を「テロしかない過激組織」であるかのように描くのは相当問題でしょう。テロしかなかったら大統領選挙に出馬しないし、当選することもないわけです。

ただこういう時に「アラブ民衆の中には彼らを支持する人もいる」とか「暴力では何も解決しない」とか「社会の矛盾や格差の解決が第一」とか、ひいては「アメリカや西欧の様々な植民地時代や現在の覇権主義新帝国主義の問題が根源にある」とか、そういう議論は三分の理はあってもそれこそ「何も解決できない論理」でしかない、ということだけは言っておきたいと思う。

やれやれですね。
全部正当な主張です。そしてそういう論者は「だからテロしていい」「テロリストは100パー正しい」と言ってる訳じゃない。大体中国のチベットで暴動が起こると「中国の政策にも問題がある、暴動を支持してる人もいる」と言う男が、「暴動の場所がアルジェリア」だと「現地政府にも問題がある、現地政府を黙認するアメリカや西欧の政策にも問題がある」と言う人間に向かって「何も解決できない論理」と言うのだから恐れ入ります。
 大体「アメリカや西欧の政策にも問題がある」と言う論者は「それらの問題がある政策を改めれば状況は少しは良くなる、それをしないで強硬策だけでは解決は無理」と思ってそういってるわけです。
 また「社会の矛盾や格差の解決が第一」と言ってる論者も「社会の矛盾や格差を解決すれば状況は少しは良くなる、それをしないで強硬策だけでは解決は無理」と思ってそういってるわけです。
 それなのに何が「何も解決できない論理」なのか。大体その理屈だと「力で潰せ!」という野蛮な主張にしかならないでしょうが。
 何度も言いますが三浦の主張は「イスラムテロは力で潰せ!。悪いのはテロリスト」と言うだけの愚劣な主張に過ぎません。
 自称・人権派がいうべきことじゃないし、中国政府当局のチベットや新疆ウイグルでの「反中国暴動は力で潰せ!。悪いのはテロリスト」という態度を「中国側には何の非もないのか?」と批判してきたのが三浦でしょうに。「反中国暴動とイスラムテロ」「中国政府とアルジェリア政府」でこれほど言うことが違うのを三浦はまともに説明できるんでしょうか。で、こんなバカ・三浦が役員の「守る会」に入って恥じないバカがid:noharraです。

原理主義は必ずしも貧しさから起きるのではないし、第3世界だから起きるのではない。仏教テロリズムというべきオウム真理教*9の事件はこの国で起こったことを私たちはもう忘れてしまったのかと思う。

 ばかばかしい。下手なたとえですがたとえるなら「たばこや飲酒からがんは必ずしも起きるのではない」といってたばこや飲酒の悪影響を否定するような暴論でしょう。全てのガンがたばこや飲酒が原因ではないですが、肺がんはたばこで、肝臓がんは飲酒で発生することがあるわけです。したがって「オウム真理教と言う原理主義」が「先進国日本」で起こったからと言って「イスラム原理主義」という原理主義は「貧しさ」や「いわゆる第三世界が先進国から差別されてること」が原因で起こってるという主張の否定には全くなりません。詭弁でしょうがレベルが低すぎます。
(一応断っておけば、「たばこや飲酒」が「貧しさや第三世界の政治状況」の、「がん」が「原理主義」のたとえです。)
 いずれにせよこの三浦の主張は「第三世界は今のままでいい」「貧乏でも仕方ない」と居直ってると思われても仕方のない文章でしょう。いや実際に居直ってるんでしょうが。

【追記】
1)オウムがどうこう言いながらオウムから1億円もらってお世辞言った守銭奴ダライラマについて三浦が何も言わないのが本当に酷い。
俺はあの一件でダライのことを「チベット人の中国批判運動のための宣伝広告塔」としか思ってない。今思うにチベット問題でノーベル賞を授与する場合でも最低限ダライ以外の人間・団体(例:チベット亡命政府)に与えるべきだった。
 あの一件から俺はダライを宗教家として偉大だなんて全く思ってない。
参考
人民日報『真相:ナチスオウム真理教とダライとの関係』
http://j.people.com.cn/94709/6562097.html

2)仏教テロと言った場合、俺が真っ先に思いつくのは「血盟団事件井上準之助前蔵相、三井財閥総帥・団琢磨を暗殺)」だな。オウムじゃない。「統一協会キリスト教と呼べるか疑問」なようにオウムは仏教と呼べるか疑問だが、血盟団の首領・井上日召日蓮僧だからな。
 前も書いた気がするが、「満州事変」石原莞爾とか「八紘一宇」田中智学とか明らかな右翼が「自称・日蓮信者」にいるので俺は日蓮系仏教について余りいいイメージを持ってないがどうなんだろうね。
 ま、三浦が「自称宗教人」の右翼テロを取り上げないのはよくわかる。

*1:人質に外国人しかいなければ日本人が強攻策を支持していいと言うことではないですが、日本人がいれば普通の人間はよりいっそう強硬策を支持する気は薄れるでしょう

*2:マリの反体制派と闘うマリ現政権をフランスとアルジェリアは支援してるらしい。一方、今回テロを起こしたアルジェリアのグループは「単に勝手連的に連帯表明してる」のか、「密接なつながりがある」のか知りませんが、マリ反体制派を支持してるようです。

*3:なお、このうち『天理教Q&A』は版元が天理教道友社天理教の出版部門)だから小滝が天理教に頼まれて書いた広報宣伝本以外の何物でもないだろう。

*4:鳩山氏が組閣を占星術で決めたと言いたいのか、占星術的に組閣はすばらしい、あるいは酷いと言いたいのか知りませんが、鳩山氏が占星術で組閣を決めたなんて事実はないでしょう。また組閣を分析するのに占星術なんか普通持ち出さないでしょう。この本がどういう内容であれ酷い内容しか想像できません

*5:もちろん彼の代表作は「美味しんぼ」であり、彼の本業は漫画原作者ですが

*6:今は絶版のようですが

*7:もちろんタイトルの意味はこうした過去を厳しく反省しないで真の誇りは得られない、南京事件否定などの歴史の歪曲は許されないという意味です。そうした雁屋氏の見解は時折、「美味しんぼ」等でも表明されますが

*8:本当か、それともナセルのでっち上げなのかまではウィキペではわかりません

*9:そもそもオウムが原理主義と言えるのか、三浦の「原理主義」定義って何なのかと言う問題がありますが。まさか三浦は「犯罪を起こせば原理主義」なんて思ってないでしょうね?