新刊紹介:「経済」12月号

 「経済」12月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。
http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
 以下は私が読んで面白いと思った部分のみ紹介します。(詳しくは12月号を読んでください)

■巻頭言「学費が動く」
(内容要約)
・タイトルの元ネタは、多分、土井たか子の「山が動いた」だと思う。
民主党マニフェストに書いた「高校授業料の無償化」が実現しそうだ。これ自体は喜ばしい。しかし民主党は公立高校生と私立高校生に同額の授業料(?)を支給する方針らしい。これでは私学に進む子は救われない。
 なぜなら一般に私学の方が授業料が高いからである(と言うか、それじゃ無償化じゃないんじゃないの?)。
 これは民主党の授業料給付の発想が新自由主義に親和的と言われるバウチャー制度にあるからではないのか?。批判せざるを得ない。

■随想「ガンを患って」(川口和子)
(内容要約)
・ガンを患って通院しているが、医療の不十分ぶりを身を以て体験している。高い医療費、いわゆる「3分診療」・・・。何とかならないものだろうか?

■世界と日本
【「米AFL・CIOが大会」(西村央)】
(内容要約)
・米国最大のナショナルセンターAFL・CIO(アメリカ労働総同盟産別会議)の大会が開催された。
・大会では医療保険制度改革ではオバマ大統領の方針(国民皆保険制度の実現)を支持することを確認した(と言うか反対する共和党、バカすぎない?)。
・また、雇用者の妨害を排除し労組の結成をより容易にする「被雇用者自由選択法案」の成立に全力を挙げることも確認した(知らないけど、これも共和党は反対してるんだろうね・・・)。
・また、女性、若手にアピールす事を目指し、書記長に39歳の女性、リズ・シュラー氏を選出した。

【「中国の農村年金制度」(平井潤一)】
(内容要約)
・都市に比べ農村の社会保障の整備は中国では遅れていた。その状況をただすため政府中央がついに農村年金制度改革に立ち上がった。

【「ドイツ連邦議会総選挙」(宮前忠夫)】
(内容要約)
・ドイツ連邦議会総選挙は以下の結果に終わった。
 社会民主党SPD)一人負け。この結果、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)との連立は解消され、SPDは野党に転落した。SPDの右傾化路線に失望した支持者が、緑の党や左翼党に投票したことが原因と見られる。緑の党や左翼党は大幅に議席を増やした。
 CDU・CSUは第一党の座をキープし与党の地位を守った。とはいえ、議席は微増であり、保守で大幅に議席を伸ばしたのは自由民主党(FDP)であった。SPDとの連立を左傾化と認識した支持者がFDPに投票したことが原因と思われる。
 この結果、CDU・CSUとFDPの連立政権が誕生した。FDPはSPDと違い当然右寄りなので早くも左派は警戒している。
 緑の党、左翼党、FDPが大幅に議席を伸ばしたことで二大政党制は終わったとの声も出始めている。

【「債務返済猶予の波紋」(桜田氾)】
(内容要約)
亀井静香金融担当大臣の「債務返済猶予制度」論(いわゆるモラトリアム)が波紋を広げている。財界や財界よりのマスコミ(例:日経)からは批判論が強いが、各論(具体策)はともかく総論(亀井大臣の問題意識)自体は支持すべきではないか。今まで通りで構わないという態度の方がよほど問題である(不況が深刻化する)。

■特集「子どもの貧困と格差」
【対談「現代の『子どもの貧困』を解剖する(浅井春夫・山科三郎)」】
(内容要約)
・最近「子どもの貧困」が注目されているのは、小泉構造改革で日本の貧困問題が深刻化したことが背景にある。
・「子どもの貧困」は新自由主義の立場でも本来、正当化できない問題の「はず」である。子どもは親を選べないのだから(自己責任で正当化できない)。
・「子どもの貧困」は自己肯定感(自己に対する誇り)を阻害し、子どもの発達に悪影響を及ぼす恐れがある。

【「データから読む子育て世帯の貧困・都留文科大学教授 後藤道夫さんに聞く」】
(内容要約)
・子育て世帯の収入は減少している。その理由として、1)失業者の増、2)低賃金非正規労働者の増、3)非正規の低賃金に引きずられて、正規でありながら低賃金の労働者の増があげられる。
・その結果、無保険で「病気になっても病院に行けない子ども」「高学費で進学をあきらめる子ども」が増えている。
・こうした問題を根本的に解決するためには、ヨーロッパを模範にした福祉国家を目指す必要がある。

【芝田英昭「病院に行けない子ども」】
(内容要約)
・無保険で「病気になっても病院に行けない子ども」を何とかすべきだ。保険料の減免、徴収猶予などあらゆる手段を用いるべき。

【白鳥勲「学びと希望を奪う貧困 中退激増、高校の現場から」】
(内容要約)
・高学費による中退や進学断念を何とかすべき。

【村山祐一「待機児解消と公的保育制度」】
(内容要約)
・待機児童を減少させるため、厚生労働省保育所の水準を維持するためとしてつくられた国の規制を廃止し、保育所の数を増やそうという方針を打ち出している。
 しかしそれは「保育の沙汰も金次第」になりはしないか。数が多ければ良いというものではあるまい。保育所の数が足りない根本原因は国が財政支出しないからではないのか?

■特集「温暖化防止へ動く世界」
【「気候変動問題とCOP15の課題・京都大学教授 植田和弘さんに聞く」】
(内容要約)
COP15(国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議)を前に植田氏にインタビュー。植田氏は「排出量は先進国の方が多いのであり、先進国が戦略的な努力目標を示し、イニシアチブを取ることが必要」とし、オバマグリーン・ニューディール、鳩山イニシアチブを基本的に評価。

【坂口明「温暖化対策をめぐる国際交渉と日本の選択」】
(内容要約)
自公政権の従来の方針を、ブッシュ政権や財界(日本経団連)の言いなりだったのではないかと批判。民主党新政権の態度を基本的に評価しながらも、原発に対する態度(CO2削減に有効?)には危惧を表明。

【山口歩「風力発電の普及と電力政策の転換」】
(内容要約)
・日本では風力発電に対する公的支援制度が貧弱だが、CO2の出ない発電法の一つとして支援すべく、もっと充実させるべき。

【松本光朗「CO2森林吸収算定ルールの国際交渉」】
(内容要約)
・森林が吸収するCO2の算定ルールが現在議論されている。算定法によっては、CO2の削減目標の達成に大きな影響があるからである。
・この制度は巧く設計し、活用すれば森林保護に役立つと考えられる。もちろん、森林の吸収するCO2に過大な期待は禁物だが。

■「世界の転換期と環境経済学の役割・大阪市立大名誉教授 宮本憲一さんに聞く」
(内容要約)
・日本における環境経済学の草分け的存在である宮本氏に「何故、環境経済学研究を始めたのか」「自らの研究の歩みをどう思うか」「現状の環境問題(温暖化など)についてどう思うか」などをインタビュー。

■戸木田嘉久「研究余話(5):荒木栄と山本詞」
(内容要約)
・荒木栄は三池炭鉱の労働者。「沖縄をかえせ」「がんばろう」「心はいつも夜明けだ」「我が母の歌」など数々の労働歌の作曲者として知られる。近年、ドキュメンタリー映画「三池・終わりない炭鉱の物語」(熊谷博子監督)、「魂のウタ・荒木栄の歌が聞こえる」(港健二郎監督)により再び注目を集めている(らしい)。
・山本詞は古川目尾炭鉱の労働者。三池闘争には、オルグとして関わっている。歌人としても知られ、目尾炭鉱跡には現在彼の歌碑が建っている。