私が今までに読んだ本の紹介:南雲和夫「どう見る韓国・北朝鮮問題」(2007年10月刊行、本の泉社:追記・訂正あり)

・本書の目次は以下の通り。
第一章.新たなる誤解、拡大再生産の書:西岡力「日韓誤解の深淵」(亜紀書房)を斬る
第二章.佐藤勝巳現代コリア研究所所長の歴史認識を斬る
第三章.新井佐和子氏、豊田有恒氏、櫻井よしこ氏らを斬る
第四章.拉致問題への日本政府の対応の問題点
第五章.北朝鮮経済制裁」は許されるのか
第六章.「ひのもと政策」(日本型「太陽政策」)を提唱する
第七章.日本の朝鮮問題研究者は何をしていたのか

・第一〜三章は西岡力氏ら*1嫌韓論(従軍慰安婦否定論や韓国併合正当化など)への批判。
 西岡氏らの従軍慰安婦正当化論を拉致問題に当てはめるとブーメランになるという指摘は全くその通り。暴力がなければ問題ないなら、だまして連れて行った有本恵子さんの拉致は問題ではなくなる(もちろん慰安婦には暴力的に連行したケースもあるのでどっちにしろ、西岡氏らは嘘つきなのだが)。
 また従軍慰安婦問題で昭和天皇に責任は一切ないと言うなら金日成金正日親子を拉致問題で非難する事も無理だろう(真相解明の責任は北朝鮮にあり、北朝鮮が証拠を出さない以上仕方ないのだが、北朝鮮側の軍の末端が勝手にやったという主張を否定する根拠は現時点では残念ながらないと思う。なお、慰安婦問題にせよ、拉致にせよ加害者側(政府側)が立証責任だろ、と私は思う)。

・第四〜六章は救う会などが唱える強硬論への批判。著者の主張に賛同するかどうかはともかく、「太陽政策」的な路線も念頭に置いてしかるべきだろう(「拉致問題や核・ミサイル問題が解決することよりも北朝鮮の政権転覆の方が大事」とか「そのためには日本と北朝鮮の間に戦争が起こって多数の人が死んでも構わない」とかいうのなら話は別だが。そう言いたいんなら、はっきりそう言ってくださいよ、救う会の皆さん。支持しないけど。)。
 強硬論を支持しないと叩きに走る救う会は異常だと思う。蓮池透氏が距離を置くのも当然だと思う。なお、経済制裁を実現するためには最低限周辺諸国(中国、韓国、ロシア)の協力が必要なのに挑発的な言動をする人が救う会にいるのは何故だろう?。解決する気があるのか疑いたくなる。

・第七章は救う会などの反北朝鮮嫌韓言説を日本の朝鮮問題研究者は充分批判してきたのかという批判である。

【追記:12/4】
南雲氏に近い認識の本をいくつか持っているのでそれもこの機会に紹介。(近い認識と言うと南雲氏は怒られるかもしれないが。まあ、「救う会」などの強硬論に対し、穏健な立場から疑義を唱える本程度の意味です。)

・日朝国交促進国民協会「日朝関係と六者協議」(彩流社
朴一朝鮮半島を見る眼」(藤原書店
・高島伸欣「拉致問題で歪む日本の民主主義」(スペース伽耶
蓮池透「拉致」(かもがわ出版

【追記:4/27】
私に近い西岡批判をしている法華狼氏のエントリを紹介。
「法華狼の日記:拉致被害者を支援する団体に、拉致問題を否認する西岡力新会長が就任」
 http://d.hatena.ne.jp/hokke-ookami/20100426/1272317045

*1:西岡氏には「よく分かる慰安婦問題」(草思社)と言う慰安婦違法性否定本があるようだ、やれやれ。