私が今までに読んだ本の紹介:今西一「国民国家とマイノリティ」(2000年10月刊行、日本経済評論社)

・著者は小樽商科大学教授(歴史学)。

・目次は以下の通り。
第1章.西川長夫の国民国家
第2章.国民国家論論争
第3章.馬原鉄男の部落問題研究
第4章.「自由主義史観」批判
第5章.近代日本の国民国家と部落問題
第6章.「アイヌ」史の終焉
第7章.沖縄の「旧慣」温存論争
第8章.都市「下層社会」論と部落問題

・第1、2,4章が「国民国家」、他の章が「マイノリティ」となっている。(ただし著者の取り上げたマイノリティは章タイトルで分かるように、主として被差別部落民である)
第1〜4章しかきちんと読んでいないので、そこだけ説明(と言っても第1〜4章もよくわからないのだが)。

・第1章は、日本近現代史研究に大きな影響を与えたと言われる西川長夫(西川自体はフランス史家だが)の国民国家論(西川『国民国家論の射程』(柏書房)等)について著者の考えを述べた物。
第2章は大門正克らの国民国家論批判に反論した物。なお、著者と大門は後に『「私」にとっての国民国家論』(日本経済評論社、牧原憲夫編)を出版している。
第3章は著者の恩師の一人である馬原鉄男の部落問題研究を総括した物。
第4章は藤岡信勝の「自由主義史観」を批判したもの。著者は「自由主義史観」は歴史学の見地からはお話にならないとしながらも彼らの主張が未だに一定の支持を受けるのは歴史学者の力不足(アピール不足?)もあるのではとしている。(私個人は内省は結構だが自虐的すぎないか?、と思う)

・第4章の藤岡批判をいくつか紹介。

p87
藤岡は著書「汚辱の近現代史」(徳間書店)で廃藩置県を「武士の首切り」「にも関わらず武士の反発はなかった」かのように表現している。しかし、「武士の首切り」にあたるのはむしろ秩禄処分である。秩禄処分以降は士族反乱という「武士の反発」が一部でだが発生する。

p96
藤岡は著書「汚辱の近現代史」(徳間書店)で「明治維新を無血革命」であるかのように表現する。しかし戊辰戦争などがある以上「無血革命」とは言えない。死傷者数がフランス革命ロシア革命などに比べ少ないのは事実だ。しかし、それは内戦が短期間で終わったこと(薩長の軍事力が圧倒的だった)、外国の干渉がなかったことが大きい。