新刊紹介:「経済」2月号

 「経済」2月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。
http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/

 以下は私が読んで面白いと思った部分のみ紹介します。(詳しくは1月号を読んでください)

■巻頭言「7人制ラグビー
(内容要約)
7人制ラグビーが2016年オリンピック(リオデジャネイロ)で採用され良かった、良かった。ファンとして嬉しい。(←「野球が落選して良かったのか!」と星野仙一が怒りそうな発言)。
・日本は昨年12月の東アジア競技会(香港)で男子優勝、女子準優勝の好成績をあげており、今後が期待される。
・なお、2019年には15人制ラグビーのワールドカップが日本で開催されるのでそちらの応援もよろしく。(←全然、経済と関係ねーじゃないか)

■随想「『歴史の記憶』を生かしたい」(増本一彦)
(内容要約)
・筆者は「治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟中央本部副会長」。スペインでフランコ独裁時代に迫害を受けた人たちの名誉回復のための法「歴史の記憶法」が出来たことを紹介、日本でも同じようなことが出来ないかとの思いを語っている。

参考:スペインの「歴史の記憶法」とは?
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-01-30/ftp20080130faq12_01_0.html

■世界と日本
【シベリアの石油輸出開始(堀江則雄)】
(内容要約)
・シベリアの石油がパイプラインを通じてアジア太平洋地域に輸出されることとなった。「日本、ロシア、中国、南北朝鮮」による経済交流に弾みが付き、北東アジア情勢に好影響を及ぼすことが期待される。

【中国の経済危機対策(平井潤一)】
(内容要約)
・中国が世界経済危機に対応した4兆元投資計画を発表してから1年が経過。現在までのところ、政府投資による一定の景気回復が見られる。

■特集「2010年の日本経済をどう見るか」
[Ⅰ]世界の経済・金融危機はどうなったか
【世界経済危機はどうなったか―米国経済を中心に(萩原伸次郎)】
(内容要約)
・世界経済危機の直接の原因は金融バブルの崩壊であり、何らかの規制が必要である。
・長期的には世界経済におけるアメリカの比重は低下し、BRICS諸国など新興工業国の地位が上昇すると思われる。

【国際金融危機への対策・合意はどこまで進んだか(鳥畑与一)】
(内容要約)
・世界経済危機の直接の原因は金融バブルの崩壊であり、何らかの規制が必要である。

[Ⅱ]日本の経済危機はどうなったか
【日本経済の危機は回復したか(徳重昌志)】
(内容要約)
・日本経済の危機は克服されたとは言い難い。
・危機を克服するには内需拡大が必要であり、そのためには雇用や生活の安定が必要である。

【日本企業は経済危機にどう対応したか(小栗崇資)】
(内容要約)
・日本企業の多くは派遣切りなどのコストカットで対応しようとしているがそれは内需を冷やし、状況をさらに悪化させるであろう。そのような行為は止めるべきである。

【08経済危機と派遣切り(中島良一)】
(内容要約)
・派遣切りに対する対抗運動の兆しが出て来たことは明るいニュース。派遣法の抜本改正が必要。

[Ⅲ]雇用・営業・くらしの危機 打開への提言
民主党政権の経済・財政政策は(編集部)】
(内容要約)
事業仕分けや扶養控除廃止論でも分かるように、民主党には新自由主義グループが明らかにいる。民主党に対する監視が必要である。今のところ、民主党の経済・財政政策は評価しがたい(母子加算の復活など評価できるところもあるが)。

内需主導型経済への転換をめざす(藤田実)】
(内容要約)
・日本経済は外需(特にアメリカ)頼みであり内需主導型経済に転換することが景気回復のためにも必要。
・そのためにすべきこととして以下のことがあげられる。
 再分配機能の強化(累進課税の強化、社会保障の充実など)
 雇用の安定、労働条件の改善(最低賃金の引き上げなど)
 環境産業など、新規産業の創出(例:オバマグリーンニューディール

【「対米依存・輸出依存型再生産の転換」は(友寄英隆)】
(内容要約)
・日本経済の対米依存・輸出依存型再生産を改める必要がある。そのためにも「内需の拡大」「東アジア共同体構想の推進」が必要。

【国民的な運動の新たな発展を・「ルールある経済社会」の実現(牧野富夫)】
(内容要約)
・「ルールある経済社会」を実現するために以下のことを行う必要がある。
1)労働者派遣法の改正
具体的には
「直接雇用が原則、派遣労働は例外とする」
「登録型派遣は原則禁止とし、日雇い派遣は全面禁止とする」等
2)労働条件の改善
具体的には
サービス残業撲滅」「残業割増率の大幅アップ」等
 そのほか、「最低賃金ナショナルミニマム設定」「労働条件の均等待遇原則の法制化」等

■「日本の貧困と『最低生計費』」(金澤誠一)
(内容要約)
・今の日本では明らかに貧困層が増大している。
・その理由としては、「社会保障制度の不備」「低賃金・不安定雇用の増大」があげられる。

■特集『「国のあり方」を考える』
【<討論>巨額の政府債務をどうみるか】(岩波一寛、安藤実、垣内亮)
(内容要約)
・政府債務を考える場合、国には寿命がないということに注意が必要。個人の借金と同一視して早く返さないといけないとむやみに煽るのは不適切である(もちろん、政府債務の現状を楽観視していいわけではないが)。
財政赤字の主原因は「無駄な公共工事」「軍事費聖域化」と「所得税法人税の減税」である。これを改革できるかが鍵。

【<討論>大型道路計画を切りかえる】(橋本良仁、豊田詠史、高瀬康正)
(内容要約)
民主党政権になって「国幹会議」(国土開発幹線自動車道建設会議)が廃止されたことは評価できる。
・しかし民主党にも道路族議員がいて油断は出来ない。
・無駄な道路を建設しない法的枠組みを作ることが必要。
道路建設については、鉄道など、公共交通の枠組みはどうあるべきかの観点から考える必要がある。

【新政権で道路はどうなるか・圏央道計画を検証する】(橋本良仁)
【国の道路行政が生活基盤を脅かす・東京外かく環状道路計画の中止を求める】(豊田詠史)
(内容要約)
圏央道首都圏中央連絡自動車道)、外環道(東京外かく環状道路)に対する批判(税金の無駄遣い*1、環境破壊等)。なお、圏央道についてはいわゆる「高尾山天狗裁判」が審理中。

■「21世紀型金融恐慌と米国金融独占体(上)」(山脇友宏)
(内容要約)
・金融恐慌により、従来のウォール街モデルは崩壊し、金融再編が始まった。
・金融再編の現状は以下の通り。アメリカ金融大手10社(ウェルズ・ファーゴワコビア*2シティグループJPモルガン・チェースバンク・オブ・アメリカ*3メリルリンチ*4ベアー・スターンズ*5リーマン・ブラザーズゴールドマン・サックスモルガン・スタンレー*6)が金融6社(ウェルズ・ファーゴシティグループJPモルガン・チェースバンク・オブ・アメリカゴールドマン・サックスモルガン・スタンレー)に再編された。このうち大手3社がシティグループJPモルガン・チェースバンク・オブ・アメリカである。
・なお、オバマ政権の財政・金融政策担当者はウォール街と親密な関係の人間が多く金融制度改革がきちんと行われるか非常に疑問である。
例)
ガイトナー財務長官:
クリントン政権で財務次官。ブッシュ政権ニューヨーク連邦準備銀行総裁。

*1:なお、冬柴鉄三国土交通相(当時)は「B/C(費用便益費)が1を下回る場合は原則中止する」と国会答弁している。

*2:ウェルズ・ファーゴに買収された。

*3:バンカメ、バンカメリカなどと略称される。

*4:バンク・オブ・アメリカに買収された。

*5:JPモルガン・チェースに買収された。

*6:ウィキペディアによればもともと、JPモルガン・チェースモルガン・スタンレーは同じ会社だった(だからどちらにも創業者の名前「モルガン」が付く。正確にはJPモルガン・チェースの前身JPモルガンが、であるが)。銀行業務と証券業務の分離を定めたグラス・スティーガル法(今は廃止されたようだが)により、銀行部門のJPモルガンと証券部門のモルガン・スタンレーに分かれたのである。