新刊紹介:「前衛」5月号

 「前衛」5月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。
http://www.jcp.or.jp/publish/teiki-zassi/zenei/zenei.html

 以下は私が読んで面白いと思った部分のみ紹介します。(詳しくは5月号を読んでください)

■特集「普天間問題が問う基地撤去と安保改定50年」
【「「海兵隊は抑止力」という欺瞞をつく」(榎本好孝)】
【「この目でみた米海兵隊――「抑止力」ではなく「侵略力」だ(大久保康裕)】
【「県民は基地撤去へいかにたたかってきたか(古堅実吉)】
【「即時無条件全面返還を掲げた復帰協*1」(宮里政秋)】
(内容要約)
・「海兵隊は抑止力」と言う鳩山首相は言うがその場合の「抑止力」とは外国の侵略から日本を守るという意味ではない。アメリカにとって望ましい世界秩序を創る「抑止力」なのである。
 したがって、ベトナム戦争イラク戦争、アフガン戦争に沖縄米軍が出撃することもアメリカとしては問題なしとなる。しかし、それは「侵略力」とも言うべきもので何故そんなもののために沖縄県民が犠牲にならなければならないのか。


■特集「正規雇用への道ひらく派遣法改正を」
【「民主党政権の「改正案」では“使い捨て雇用”はなくせない」(日野徹子)】
【「違法行為つづく実態は抜本改正を求めている」(寺間誠治)】
(内容要約)
民主党政権の改正案には数々の問題点があり支持できないと言う批判。
具体的には
「製造業派遣の禁止」について、「常用型派遣」を例外としたこと(製造業派遣の2/3が常用型と言われておりとても「例外」とは言えない)
「登録型派遣の禁止」についていわゆる「専門26業務」を例外としたこと(専門26業務で働く派遣労働者は約100万人と言われ、制定当初はともかく、現在では26業務が専門的業務と言えるかどうかはかなり怪しい)
正社員との均等待遇が「努力義務」にすぎないこと、などである。


【土谷理美さんに聞く「〈神奈川・日産〉派遣でデザイナーを六年、いきなり解雇」】
【「〈山口・マツダ〉「サポート社員」の名で脱法行為」(田坂一朗)】
(内容要約)
・土谷氏は日産と、田坂氏はマツダと、裁判で争っている派遣労働者。この論文では何をどういう理由で争っているのか等が説明されている。


■「大きく変貌するIMF国際通貨基金)」(毛利良一)
(内容要約)
リーマンショック後に中東欧諸国がIMFに緊急融資を求めたため、IMFの役割が注目されている。
・筆者に寄れば、IMF
「アジア金融危機の時に、タイやインドネシア新自由主義的なやり方を押しつけ、かえって状況を悪化させた(少なくとも批判派は、そう批判する)」
IMFのやり方を断ったマレーシア(マハティール政権)が危機をうまく克服した」
スティグリッツなど少なくない経済学者がIMFのやり方を批判した」
ということで最近では、「あそこの融資受けると、後が怖そう(まるで「帝国金融」や「萬田はん」みたいな扱いだな)だからよほどのことがない限りやめとこうぜ」といってどこの国も融資を受けたがらない「開店休業」に近い状態だったのだという。
リーマンショックで背に腹は代えられないということで、中東欧諸国は緊急融資を求めIMFが再び注目されてるわけである。ただし筆者は、アジア経済危機でさんざん批判されたので、少なくともあそこまで強引な手法は中東欧諸国相手に、もはやとらないだろうと見ている(またアジア金融危機の際、IMFは「クローニー資本主義」を理由に改革策を押しつけたが、中東欧には東南アジアのような「クローニー資本主義」はないことも筆者がそう見る理由の一つである)。
・なお、筆者はIMFには改革が必要だとしており、いくつか問題点を指摘している(わかりやすい例ではアメリカが拒否権を持っており、アメリカが反対すると何も進まなくなる点。拒否権は将来的には廃止すべきとしている)。
・筆者の詳しい考えを知るには、近刊予定の「アメリカ金融覇権・終わりの始まり」(新日本出版社)を読めばいいのだろう。また筆者は最近の入手しやすい参考文献として、大田英明「IMF」(2009年、中公新書)をあげている。


■「インターネットを社会変革の力に」(田村一志)
(内容要約)
日本共産党のインターネットの取り組みは他党と比べてもまだまだ遅れている。双方向性などの利点を持つインターネット広報の取り組みをもっと進める必要がある。党中央も積極的に応援していくつもりである。


■「「政治主導」は国民の要求にこたえることができるか――イギリス・モデルはモデル足りうるのか」(小松浩)
(内容要約)
民主党新政権はイギリスを理想のモデルとし、「官僚答弁禁止」*2「比例定数削減」(小選挙区中心の選挙)を唱えている。しかし、イギリスと日本は政治文化が違うのであり、単純にイギリスがやってるから日本もと言う考えは適切ではない(大体、イギリス政治は世界の中心でもなければ多数派でもない)。
 しかも、イギリスにおいても現状については批判が存在する。例えば「小選挙区中心の選挙」については「自由民主党*3など、第三勢力(労働党、保守党以外にもイギリスに政党はある。「自民党」の他には地域政党の「アルスター統一党」(アイルランド)、「ウェールズ党」、「スコットランド民族党」、極右政党の「独立党」*4などがあるようだ)の支持者から労働党、保守党に有利で反民主的と批判が出ている。
・なお、マニフェスト選挙でイギリスはすごいと言われるが筆者に寄ればこれも眉唾物。マニフェストを読まない選挙民もなかにはいるし、そういった選挙民は何で選ぶかと言ったら「労働者だから労働党(農協だから自民党、連合だから民主党みたいなもの)」「ウェールズ出身だからウェールズ党」「A先生にはお世話になったから選挙で恩返し(地元への利益誘導)」「何かやってくれそうだから(小泉郵政選挙のようなイメージ選挙)」だそうだから日本と大して変わらない。
・大体、本音は「官僚答弁の禁止→法制局長官の答弁をやめさせ解釈改憲やりたい放題」「小選挙区中心の選挙→ミニ政党(公明、社民、共産、国民新など)に邪魔されず独裁的政治をやりたい放題」でしょ。
・政治主導を口実にやってる「議員立法を認めない」も「政調の廃止」も自分たちの政治的権力を強大化すること、ただそれだけが目的でしょ、鳩山さん、小沢さん。さすが元田中派はやることがえげつないな(嘲)


■「官僚制をどう改革すべきか――民主党の「脱官僚」を考える」(進藤兵)
(内容要約)
民主党が目指す政治主導はおそらく「政治家が官僚に邪魔されずに好き勝手やりたい」と言う意味の政治主導に過ぎない。その意味では小泉政治とよく似ている(小泉も官僚の上に立つ司令塔的存在として「経済財政諮問会議」を活用した)。
・決して「官僚制度の民主化」や「政財官癒着の廃止」を意味してはいない。下手をすれば「民主党実力者(小沢一郎とか)に忠誠を誓えば官僚は出世できる」ということにもなりかねない
・もちろん従来の官僚のあり方がよいわけではなく、その意味で官僚制度改革に期待する人々の気持ちは分かるし、何らかの改革が必要なことも確かなのだが(志位和夫先生を支持すればいいんじゃないかな?)
・なお、筆者は如何なる立場に立つにせよ官僚制度改革で重要なのは「情報公開制度の充実」だろうとしている。
・面白い文章があったので、最後に一部引用。

 なぜこの問題(リコール問題)で日本の国会は(アメリカのように)トヨタの社長への公聴会を開催しないのでしょうか?

 しょうがないよ、自民も民主もマスコミもトヨタ様には逆らえないんだ(嘲)。トヨタを批判できる全国紙は赤旗だけ!(ジャンプ風に)


■「再生可能エネルギー重視政策への転換は可能」(和田武)
(内容要約)
地球温暖化防止のために、「CO2を排出しない」という理由で危険な原発を新設するという鳩山政権の方針は間違っている。むしろ従来軽視されていた再生可能エネルギー太陽光発電地熱発電風力発電、潮力発電など)に今こそ力を注ぐべきである。


■「青年と語る・地球温暖化抑止にどう取り組むか」(笠井亮
(内容要約)
文章を引用してコメント。

 日本では地球温暖化は本当にあるのか(中略)、というような「地球温暖化懐疑」論(中略)の本がたくさん出版されています。
 (中略)
 そんな本が書店で平積みにされているような国は(私注.いわゆる先進国では)日本ぐらいだと思います。
 そう言う議論について(中略)関心のある方は、たとえば「地球温暖化懐疑論批判」という出版物が(中略)出されていて、インターネットで全文ダウンロードできる(http://www.ir3s.u-tokyo.ac.jp/sosho)ようになっています。*5

 そうだろうねえ。日本だけだろうねえ。本当に恥ずかしいですな。

 これまで日本の対策が遅れてきたのはなぜか。温暖化対策を進めようとすると、目先の利益を追求する(中略)日本経団連が、高い削減目標を掲げたら儲けが減ってしまうから絶対やるなと足を引っ張り、それにいいなりで、財界の”自主努力”任せになってきました。
 (中略)
 こうした自公政治から本当に抜け出せるかどうかが、いま正面から問われています。

 「よーし、パパ原発たくさん創っちゃうぞ」(鳩山首相)という政府方針を決めたらしいから、「抜け出す気」ないでしょ、たぶん。

 今回のCOP15でも、(中略)日本鉄鋼連盟石油連盟など主要産業9団体が12月16日に緊急声明を発表し、(中略)「日本は机をひっくり返して帰ってくるべきだ」とまで騒ぎ立てました。

 「机をひっくり返して帰る」ってどこの松岡洋右だよ。

 最後に、地球温暖化対策を通じて、社会のあり方を変える取り組みになっているかどうか、ここが大きな問題ではないでしょうか。
 (前略)私たちが欧州調査に行って、改めて発見したことは、ベルリンでもネオンサインというのがあまりないのです。
 (中略)
 深夜のネオンはほとんどないですし、コンビニがありません。深夜に営業している店がない。

 うーん、その発想はなかった。すいません。確かにそう言うことも大事なことでしょうよね。
 なお笠井氏(共産党参議院議員)には「政治は温暖化に何をすべきか」(新日本出版社)と言う著書がある。


■シリーズ「「韓国併合」百年と日本の進路」
【「日露戦争とはどういう戦争だったのか(下)」(山田朗)】
・4月号「日露戦争とはどういう戦争だったのか(上)」の続き。
・日本は日露戦争で勝利したがその過程では後の失敗にもつながる出来事も起こっていた。
・その1。白兵主義の強調。日本が旅順攻略で肉弾突撃を実行したのはそうせざるを得なかったからなのだが、それが成功したため、「白兵主義」がやたら強調され、太平洋戦争での万歳突撃のような無謀極まりない戦術をもたらすこととなる。
 「戦意があれば何でも出来る」(←もちろん、元ネタはアントニオ猪木です)みたいな精神論が生まれてしまうわけである。
・その2。軍神(日露戦争では広瀬武夫橘周太*6)や軍神的なもの(例えば、日清戦争の例だが「木口小平は死んでもラッパを話しませんでした」)の誕生(こういうのは産経が大好きである)。これが日中戦争の爆弾三勇士や、太平洋戦争の九軍神につながっていく。
 戦陣訓を批判する人間が多いし、批判は当然だと思うが、軍神の問題から分かるように、戦陣訓以前から日本の軍隊は人の命を軽視する傾向があったと思う(金がないので人海戦術をせざるを得ないという面もあるのではあるが)。
 なお、靖国神社乃木神社東郷神社も軍神と考え方は同じだろう。神扱いされてしまうと批判(「人殺しはよくない」という平和主義の立場であれ、「戦争は国益にならない」「戦争には反対しないが戦術が無謀。あれじゃ犬死に」という功利主義の立場であれ)は難しくなる。それが軍部の狙いなのだろう。

参考【産経がたたえる戦争の英雄(日露戦争がメイン)】:
 戦争で死ぬと(特攻のようなどう見ても無謀な戦術による犬死にじゃない?、と言うときでも)英雄扱いするのが産経クオリティ(嘲)。しかし「元気の出る歴史人物講座」(ここで紹介した以外にも産経クオリティあふれる内容が多いよ)なのにやたら非業の死を遂げる人(多くが軍人)が多いな(苦笑)。お前たちもいざとなったら国のために死になさいと言いたいんですね、分かります(もちろんそう言う考えは支持しないが)。

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/090705/acd0907050346000-n1.htm
【土・日曜日に書く】大阪編集長・安本寿久 62年ぶり復活、広瀬武夫
 歴女の中でも飛び切りの「通」が愛知県知多市の介護職員、浦野路子さん(38)である。彼女の憧れは広瀬武夫。105年前、日露戦争で戦死した海軍中佐である。
 今や知る人ぞ知る存在の広瀬が武名を上げたのは、旅順港閉塞作戦*7だ。ロシアの旅順艦隊を閉じ込めるため、無数の要塞砲が守る港口に闇にまぎれて近づき、古い汽船を自沈させるという決死の作戦だった。広瀬隊は、行方不明になった杉野孫七兵曹長の捜索に手間取り、ボートでの脱出が遅れた。集中砲火を浴びてオールが砕け、即死者も出て恐怖感が広がるボートで、広瀬は立ち上がり、豪胆に言い放った。「俺の顔を見ながら漕げ。怖いことなど何もない」。次の瞬間、飛来した砲弾が広瀬の体を海中に奪い去った。
 「小学生の時、その様子を本で読み、ぎりぎりの状況でそんなことが言える人ってすごいと思った」と浦野さんは言う。「図書館で中佐関係の本を読みあさり、写真を見て好きになった。中学生の時に結婚したい人アンケートがあって『広瀬武夫』と書き、先生に『これ、だれ』と聞かれたこともあります」

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/090415/acd0904150829004-n1.htm
【元気のでる歴史人物講座】(15)栗林忠道 卓越した統率力と人間性
 アメリカ人にとっての至高の聖地アーリントン国立墓地には25メートルもの彫像「硫黄島記念碑」が立っている。日米戦で米軍の損害が日本軍を上回った唯一の戦闘が硫黄島の戦いであり、それはアメリカ人の遺伝子に刻み込まれた永久に忘れがたい激戦であった。
 米国民はこの戦いの名を口にしたとき「強い感動と愛国心ゆえの興奮に満たされる」という。いかなる国にもそのような歴史があり、それを子々孫々に語り継ぐのである。
 アメリカ人は米軍に甚大な損害を与えた硫黄島指揮官、栗林忠道大将を、「アメリカを最も苦しめ、それゆえアメリカから最も尊敬された男」と評した。自国のために命を捧げて戦った強敵を彼らは畏敬しているのである。
 栗林は米軍が3、4日で占領するつもりでいた硫黄島を36日間守り抜いた。雲泥の差の過小な戦力であったが米軍をして「勝利なき死闘」と嘆ぜしめた戦いをした。それを可能にしたのが、「予は常に諸子の先頭に在り」との精神で部下と苦楽をともにした栗林の卓越した統率力と人間性だった。

 「日本国民は諸君の勲功をたたえ、諸君の霊に涙して黙祷を捧げる日がいつか来るであろう。安んで諸君は国に殉ずべし」

 栗林の最後の訓示である。栗林大将はじめ2万余将兵の死戦死闘がアメリカに深い打撃を与え、日本を亡国から救ったのである。
日本政策研究センター主任研究員 岡田幹彦)

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/090715/acd0907150811002-n1.htm
【元気のでる歴史人物講座】(28)横川省三
■一死を以てロシア軍に打撃
 日露戦争のとき陸軍は特別任務班を編成し、シベリア鉄道を爆破してロシア軍の輸送を妨害する作戦を立てた。軍人のほか民間人が加わったが、そのうちの一人が横川省三で1班の班長であった。
 明治37年4月10日、横川班は満州チチハル付近で鉄橋を爆破せんとしたが、横川と班員、沖禎介はロシア軍に捕まり軍法会議にかけられた。
 2人は虚実を交えて、自分らは民間人であること、百数十組(実は数組)の特別任務班が活動中であること、もとより国のために一死を覚悟していることを淡々と語った。2人に対して銃殺刑の判決が下された。
 4月21日処刑の日、横川と沖は家族に遺書を書き所持金をすべてロシア赤十字社に寄付した。命ごいをせずに終始、堂々とした態度を貫き所持金まで寄付した行為に対して、ロシア軍人、外国観戦武官、新聞記者らはみな驚嘆した。刑場には一般ロシア人を含めて多くの人々が2人を一目見ようと集まった。人々は2人に同情と尊敬の念を禁じ得なかった。
 2人の最後はすぐにロシア軍兵士の間に伝わり、日本人への畏怖の念を植え付けた。また100組以上もあると思わせた特別任務班に対し、新たに2〜3個師団を沿線に配備せざるを得なかった。その分だけ主戦場の戦力がそがれた。民間人である横川と沖は一死を以てロシア軍に打撃を与え対露戦の勝利に貢献したのである。(日本政策研究センター主任研究員 岡田幹彦)

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/090812/acd0908120739001-n1.htm
【元気のでる歴史人物講座】(32)大西瀧治郎 神風特攻隊が遺したもの
 日本はわれわれが思っている以上に世界の国々、人々から深く親愛され尊敬されている。
 世界が日本を尊敬する理由の一つに神風特攻隊がある。敗れはしたものの世界の覇権を握る米英に対して敢然と立ち上がり、神風特攻まで行い、死戦死闘した日本民族の勇気と気概に、世界の人々は今も心の奥底で畏怖と尊敬の念を抱き続けているのである。
 この神風特攻隊を組織し指揮したのが大西瀧治郎海軍中将である。大西は特攻を敢行した理由をこう述べている。

 「この神風特別攻撃隊が出て、しかも万一負けたとしても日本は亡国にならない。これが出ないで負ければ真の亡国になる」
 「ここで青年が起たなければ日本は滅びますよ。しかし青年たちが国難に殉じていかに戦ったかという歴史を記憶する限り、日本と日本人は滅びないのですよ」

 比類なく尊く立派な歴史と伝統を有する日本を滅亡させないために、大西は心を鬼にし涙をふるって神風特攻作戦を推進し、最後に責任を取り割腹自殺した。
 特攻は玉砕戦とともに米軍を震撼させた。その結果、アメリカは講和条件を緩和、日本は辛うじて亡国から免れた。
 大西の言葉を銘記したい。日本はいざとなれば神風となって祖国を守り戦い抜く民族−世界の人々をかく思わせてきたことが、日本の存立にとり計り知れぬ力となっているのである。(日本政策研究センター主任研究員 岡田幹彦)

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/090916/acd0909160742002-n1.htm
【元気のでる歴史人物講座】(37)中川州男
パラオ国旗と敵将からの詩
 太平洋にあるパラオ共和国親日国として知られている。国旗は日の丸と同じ構図で、黄色の丸の回りが青色で月章旗と呼ばれる。日本を深く尊敬し、手本として見習う意味がこめられている。
 昭和19年9〜11月、この国のペリリュー島で日米の激戦が行われ、中川州男陸軍大佐(死後中将)の率いる日本軍1万は米軍4万8000と70余日間戦い、玉砕(全滅)した。米軍は2〜3日で終了するはずの戦いに難戦、第1海兵師団は壊滅、敗退するほどの辛酸をなめた。
 中川大佐以下、将兵の奮戦が米軍に与えた物理的、心理的打撃は大きかった。日本軍は戦力がいかに劣っていても最後まで死力を尽くして戦う世界稀有の恐るべき軍隊であることを米軍に強く銘記させたのがこの戦いである。この後、硫黄島、沖縄で同様の戦いが続く。
 アメリカ太平洋艦隊司令長官のニミッツは、中川大佐ら日本軍将兵の勇戦と玉砕を讃えて次の詩を作っている。

 この島を訪れるもろもろの国の旅人たちよ/故郷に帰ったら伝えてくれよ/日本軍人は全員玉砕して果てた/この壮絶極まる勇気と祖国を想う心根を

 愛する祖国を命を捧げて守らんとする心に敵将も強く心を打たれるのである。愛国心は万国共通である。中川大佐はじめ玉砕した将兵の願いは、ひとえに祖国日本の滅亡を防ぐことであった。(日本政策研究センター 主任研究員 岡田幹彦)

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/090930/acd0909300735003-n1.htm
【元気のでる歴史人物講座】(39)佐久間勉
■沈む艇内で部下思う遺書
 明治43年4月、山口県新湊沖で訓練中の第6号潜水艇が事故で海底に沈み、艇長、佐久間勉大尉以下14名が殉職した。
 艇が引き揚げられ扉を開けると、佐久間艇長は司令塔に坐し、部下は取り乱した形跡は少しもなく、それぞれの持ち場を離れず絶命していた。死に至るまで忠実に任務を遂行した様子がありありとうかがえ、この最期をみた関係者は言葉なく熱い涙を流した。
 全員窒息して亡くなるが、佐久間は苦しい息の中で遺書をつづり、事故の原因、経過を述べ、艇を沈め、部下を死なせたことを深く詫びるとともに、最後に明治天皇に対して「謹んで陛下に白す。我部下の遺族をして窮するもの無からしめ給わらんことを。我が念頭に懸かるものこれあるのみ」と記した。
 この事件が伝えられ遺書が新聞に発表されるや日本中の人々が涙を流し、世界各国から驚嘆の声が上がった。佐久間が最も敬愛した中学時代の恩師、成田鋼太郎はこう述べた。

 「これを読みて私は感極まりて泣けり。今泣くものはその死を悲しめるにあらざるなり。その最後の立派なりしに泣けるなり。その死状の真に我が古武士的なるに泣けるなり」

 明治天皇は佐久間らの死を深く哀悼され、呉で行われた葬儀に勅使を遣わされ、遺族に特別の弔慰金を与えられて佐久間の遺言にお応えになった。また多くの人々が遺族に対して義捐金を贈った。(日本政策研究センター主任研究員 岡田幹彦)

http://sankei.jp.msn.com/culture/academic/091125/acd0911250732004-n1.htm
【元気のでる歴史人物講座】(47)橘周太 「軍神」の壮絶な最期
 日露戦争において「軍神」と称えられたのは、広瀬武夫海軍中佐と橘周太陸軍中佐の2人である。
 楠木氏*8の末裔の誇りをもつ橘は年少時より君国に尽くすことを願い、軍人となった。乃木希典を軍人の手本と仰ぎ、誠の心を以て部下と苦楽をともにする名小隊長、名中隊長として慕われた。
 橘がその名を轟かせたのが遼陽会戦である。第3師団歩兵第34連隊第1大隊長に任ぜられたとき、部下は快哉を叫び士気はいやがうえにも上がった。
 遼陽会戦最大の激戦の一つが首山堡の戦いだった。明治37年8月31日、歩兵第34連隊はロシア軍の最重要陣地、首山堡を攻撃した。先頭に立つ橘大隊は早朝より敵陣に突入、ついに首山堡東南方陣地を占領した。大隊の一大殊勲であった。
 しかし、ロシア軍は大軍を投入して逆襲した。少数かつ孤立無援の大隊は悪戦苦闘した。橘は全身血まみれになって部下を督励したが、ついに高地を奪還された。大隊のほとんどが死傷し、34連隊は大打撃を受けた。
 だが橘大隊の死闘に象徴される第2軍の奮闘がロシア軍をくぎ付けにした。それが第1軍の渡河迂回作戦を成功させ、この会戦の勝利を導いた。橘は身に7弾を受け壮絶な最期を遂げた。平時、戦時において軍人の鑑というべき橘の死に対して全国民が哀悼し、熱い涙を流したのである。(日本政策研究センター主任研究員 岡田幹彦)

 遼陽会戦は確かに日本が勝っている(ロシア軍が撤退している)のだが、山田論文やウィキペディア「遼陽会戦」を読む限り、産経が言うほど自慢できるかは疑問(当時の日本軍が政治的な理由から「大勝利」と国内外に宣伝するのはわかるが後の人間が「大勝利」というのは問題がありすぎる)。ロシアも日本も死傷者の数は大して変わらないし、日本軍は返り討ちに遭うのを恐れ、撤退するロシア軍を追撃することが出来なかったのだから(後の奉天会戦でも同様の理由から日本は撤退するロシア軍を追撃できなかった)。


■論点
【「“カイゼン”されなかったトヨタ車の安全」(岡清彦)】
(内容要約)
 うまく要約できないので文章を一部紹介。

 世界で延べ1000万台を超すリコール(無償回収、修理)車を出したトヨタ自動車アメリカでは訴訟が相次ぐなどリコール問題はおさまりそうにありません。
 (中略)
 トヨタが大量リコール問題を起こしたのは今回で2回目です。05年には193万台、06年には130万台と言うリコールを起こしました。

 今回のリコールは起こるべくして起こったと言うことだろう。トヨタも国も再発防止に全力を挙げてもらいたい。


【「北教組ヤミ献金事件・特定政党支持強要の異常」(名越正治
(内容要約)
・ヤミ献金事件について北教組は自ら真相を究明し、反省の意を示すべきだ。
・今回の事件を機に、北教組は組合員への民主党支持の押しつけをやめてはどうか?。労組は政治団体ではない。なぜ組合員が民主党以外を支持してはいけないのか?(なお、共産は以前から総評の社会党支持、同盟の民社党支持も同様の理由から批判している)
・ていうか前も山教組(山梨県職員組合)の似たような話が取りざたされてたのに懲りないって言うかなんて言うか。真正保守(産経とか)の日教組叩きみたいに思われると嫌だし、この問題に詳しいわけでもないのでこれ以上は書かないが。


■暮らしの焦点
【「川辺川ダムによらない治水「計画」策定を」(板井優)】
(内容要約)
・川辺川ダム(熊本県)を無駄なダムだから創らないとした新政権の態度は評価できる(共産だって新政権の評価すべき所はきちんと評価するんですよ!)。
・しかし、ダムに寄らない治水をどう行うかを早急に具体化しなければ、ダム建設派の巻き返しが危惧される。一日も早い代替策の提示が期待される。


■文化の話題
【演劇:「よみがえる「女の一生」」(菅井幸雄)】
(内容要約)
俳優座の「女の一生」の紹介。ちなみに主演女優は「平淑恵」から若手の「荘田由紀」に交代になったとのこと(もちろん最初に演じた人はもはや伝説的存在と言っていい杉村春子)。


【音楽:「音楽情況 西と東」(佐々木光)】
(内容要約)
・日本の音楽界も、西洋の音楽界も資金難で苦しい状況にある(特に日本人は文化に理解がないからなあ)。
・理事長がエスタブリッシュメント(偉いさんの集まり。特権階級)の江戸英子氏*9で比較的恵まれた状況にあると見られていたアリオン音楽財団(http://www.arion-edo.org/home/)主催の「東京の夏」音楽祭もついに昨年を以て終了した。
・こうした状況は何とかならないだろうかというぼやき。


【映画:「日米のアカデミー賞受賞作」(児玉由紀恵)】
(内容要約)
・取り上げられている作品は日本が「沈まぬ太陽」、アメリカが「ハートロッカー」。ページ数の制約もあって「ザ・コーヴ」など、その他の作品は取り上げられていない。「ザ・コーヴ」を「前衛」コラムがどう思うか少しは知りたかったのだが。
・まあ、「沈まぬ太陽」、「ハートロッカー」、どちらも「前衛」好みの社会派ではある。筆者は「ハートロッカー」より、一部のアメリカ保守が「反米」とか言って噛み付いてる「アバター」が受賞しまくって「アメリカのバカウヨ」に恥をさらしてほしかったらしいが。受賞はしているものの「アバター」は賞の数では「ハートロッカー」に負けている。筆者は「反米」と噛み付かれないなんて「ハートロッカー」は「アバター」に比べ毒が足りないと思ってるようだ。その見方の是非はともかく、確かにアメリカであれ日本であれバカウヨ涙目ってのは飯がうまいな!。しかし「反米」だったら「興行収入」があんなに良い訳ないと思うんだけど(見てないから分からんが)。

参考「「アバターは反米・反軍映画」保守派いら立ち【読売新聞】」

http://www.asyura2.com/09/china02/msg/361.html
 映画の舞台は22世紀の星パンドラ。希少鉱物を狙う人間たちは、美しい自然と共生する先住民ナヴィと戦う。元米海兵隊員ら軍服の人間は、圧倒的な軍事力で自然破壊をいとわない悪役として登場、「先制攻撃が必要だ」「衝撃と畏怖を与える」などと、ブッシュ前政権の戦略そのままのセリフを口にする。保守派の論客ジョン・ポドホレッツ氏は自身のサイトで「観客は米兵の敗北に声援を送るようになる。強烈な反米的内容だ」と非難。現役海兵隊員のブライアン・サラス大佐は隊員向け新聞に「軍の未熟さや凶暴さが異常に強調され、誤解を与える。ひどい仕打ちだ」と記した。


■スポーツ最前線
【「“スポーツ後進国”打開する予算か」(鳥井健次)】
(内容要約)
 文章を引用してコメント。

・やる気のないスポーツ施設整備
 (前略)
 総合型スポーツクラブの育成支援も3.4億円から2.1億円に削減されました。
 (中略)
 民主党政権のもとでの(スポーツ予算の)事業仕分けの手法をみると、予算の削減を大前提に押しつけ、不足分は「サッカーくじ」の収益金でやれというものです。
 これでは、スポーツ振興の安定した推進は望めません。
 日本共産党は(中略)国のスポーツ予算の抜本的な増額が必要だと考えています。

 ひどい、ひどいわ!。もう絶対、民主党なんか支持してやらないんだから!(→前から支持してないだろ)
 まあ、スポーツ関係者が民主党を恨んでることだけは間違いなさそうだ。


■メディア時評
【新聞:「核密約報告書への報道姿勢」(金光奎)】
(内容要約)
・「核密約問題」について「非核三原則見直し」を主張するタカ派の「読売」「日経」「産経」は論外である。
・「核密約」での民主党の態度は一定程度評価できる。また、「非核三原則」堅持を主張する「朝日」「毎日」も一定程度評価できる。しかし、「朝日」「毎日」は「非核三原則」法制化に岡田外相が乗り気でないことをどう考えているのか?。
 明らかに岡田外相は「将来の核持ち込みの余地」を残そうとしているではないか!
 民主応援団も大概にしてほしい。この点、法制化を強く求める地方紙(琉球新報西日本新聞中国新聞北海道新聞)を見習うべき。

【追記】
 西山太吉氏が起こした密約訴訟で国が敗訴したが、岡田外相は控訴も検討するという。
 「普天間問題(県内移設もあり得るとの態度)」といい「イラク特措法(合憲との政府答弁書)」といい「竹島問題」(韓国を挑発するなよ)といい自民と似たような外交で失望させられるね。


【テレビ:「市民の失望を買う放送法「改正」」(沢木啓三)】
(内容要約)
 文章を一部引用してコメント。

 一局複数波を容認すること(注.今回の制度改正で認められるらしい)は、放送における言論・表現の多様性を確保するための「マスメディア集中排除原則」(中略)に真っ向から抵触するものだ。

 だいたい、今回の法改正に際しては、改正案策定の過程が市民にまったく公開されなかった。60年ぶりという大改正を行うのだったら、法改正の要綱案の段階でパブリックコメントを求めることぐらいは最低限必要だったのではないだろうか。全体に、市民・視聴者の利益とは関係なく、行政と放送事業者の都合でまとめられた改正案、と言う印象だ。

 改正の内容も方法も大変、問題が多いと言うことのようですね。

*1:沖縄県祖国復帰協議会の略称

*2:そもそも自自連立政権時代の国会改革により、官僚答弁は原則禁止されているのだが?。

*3:名前がよくないが日本の自民党と違ってずっとハト派である。

*4:保守党離党組が結成。EU脱退などを唱える。イギリス版「たちあがれ日本」?

*5:ただPDFだから見るのが大変なんだよね。分量も結構あるし。

*6:ウィキペディアに寄れば大分県に広瀬神社が、長崎県橘神社があるらしい。

*7:山田朗教授に寄れば軍事的には失敗した作戦らしいがそう言うことは無視するのが産経

*8:もちろん後醍醐天皇の忠臣として右翼にたたえられる楠木正成のこと。

*9:ピアニスト。江戸秀雄・元三井不動産会長(故人)の長女で、指揮者・小澤征爾の元妻