【メモ書き】外国人参政権・学説の分布について

・元ネタは「日々拙考:外国人参政権・学説の分布について」(http://d.hatena.ne.jp/nns342/20100411/p1)。
 入手が比較的に容易そうな単行本、文庫、新書及びそれらに収録された論文のみ紹介(雑誌論文、特に大学紀要や学会誌なんか一般人にはまず入手不可能だから)。
 なお、分類は元ネタをそのままパクっているだけなので念のため(私が確認したわけではない)。「日々拙考」の中の人も誤読の可能性があるので出来れば自ら確認してほしいとしている。
・禁止説論者のうち宮沢、橋本、小嶋の3氏は1970〜80年代になくなっているので最近の学説状況を押さえていない点に注意が必要。
・ぱっと見、部分的許容説の文献が一番多いらしいことが分かる。
・しかしブコメにも書いたが、「日々拙考」の中の人の努力には頭が下がる。全部の本を読んだわけではなく、一部孫引きだとしてもなかなか出来ることでないと思う(中の人が学者や弁護士という法律のプロだとしても)。


【禁止説の文献】
・大石眞「憲法講義II」(有斐閣、2007年)
・小嶋和司「憲法概説」(信山社、2004)(注:小嶋氏は1987年になくなっているとのことなので復刻版だろう。出版年度は新しくても最近の情報は多分反映されていない。反映されていたとしても弟子の加筆だろうから小嶋氏の意見ではない)
小林節憲法と政治」(潮出版社、1999年)
・小針司「憲法講義(全)〔全訂第3版〕」(信山社、2003年)
・阪本昌成「憲法理論I〔補訂第3版〕」(成文堂、2000年)、「憲法2・基本権クラシック〔第2版〕」(有信堂高文社、2002年)
・高乗正臣「人権保障の基本原則」(成文堂、2007年)
・橋本公亘「日本国憲法〔改訂版〕」(有斐閣、1988年)
宮沢俊義憲法II〔新版〕」(有斐閣、1971年)
百地章憲法の常識 常識の憲法」(文春新書、2005年)


・これだけ禁止説論者がいるんなら、産経も百地先生以外のもう少しまともな人にコメントを求めればいいのに。まさか「百地さんが一番マトモ」とか言い出さないでしょうね、産経(笑い)。
・ということは「はてなキーワード」の百地先生がほぼ唯一の「禁止説」ってのは間違いって事ですね。まあ、産経が百地先生ばかりに話を聞くからそういう誤解が出るんだろうが。

【追記】
・後で気づいたが、私の持ってる、俵義文「徹底検証・あぶない教科書:「戦争が出来る国」をめざす「つくる会」の実態」(学習の友社)には、「自由主義史観研究会会員」として高乗先生のお名前が載ってるので、この本の記述を信用すれば、高乗先生も百地先生みたいな「愛国者」なんでしょう。他の先生方の政治思想はよく分からん。


【部分的許容説の文献】
芦部信喜憲法学II」(有斐閣、1994年)、「憲法〔第4版〕」(岩波書店、2007年)90頁
・市川正人「外国人の人権と国家主権」生田勝義=大河純夫編『法の構造変化と人間の権利』(法律文化社、1996年)、「ケースメソッド憲法〔第3版〕」(日本評論社、2009年)
伊藤正己憲法〔第3版〕」(弘文堂、1995年)
・上村貞美「外国人の地方選挙権」樋口陽一ほか編『日独憲法学の創造力(下):栗城寿夫先生古稀記念』(信山社、2003年)
・岡崎勝彦「定住外国人と地方被選挙権保障の法理」徐龍達編『21世紀韓朝鮮人の共生ビジョン』(日本評論社、2003年)
・越路正巳「アメリカ合衆国における外国人の選挙権論」越路編『21世紀の主権、人権および民族自決権』(未來社、1998年)、「現代憲法体系〔改訂第3版〕」(学陽書房、2001年)
・小林武「人権保障の憲法論」(晃洋書房、2002年)、小林武=三並敏克編「いま日本国憲法は」(法律文化社、2000年)〔小林執筆部分〕
佐藤功日本国憲法概説」(学陽書房、1996年)
佐藤幸治憲法〔第3版〕」(青林書院、1995年)
・初宿正典「憲法(2)基本権〔第2版〕」(成文堂、2001年)
・杉原泰雄「地方自治憲法論〔補訂版〕」(勁草書房、2008年)
高橋和之立憲主義日本国憲法」(有斐閣、2005年)
・円谷勝男「現代人権論考」(高文堂出版社、2002年)
・戸波江二「憲法」(ぎょうせい、1994年)、大須賀明編「憲法」(青林書院、1996年)〔戸波執筆部分〕
長尾一紘「外国人の人権―選挙権を中心として」芦部信喜編『憲法の基本問題』(有斐閣、1988年)、「外国人の地方議会選挙権」徐龍達編『定住外国人地方参政権』(日本評論社、1992年)、「日本国憲法〔第3版〕」(世界思想社、1997年)、「外国人の参政権」(世界思想社、2000年)(注:もちろん長尾氏は禁止説に最近改説した)
・中村睦男「憲法30講〔新版〕」(青林書院、1999年)、野中俊彦ほか「憲法I〔第4版〕」(有斐閣、2006年)〔中村執筆部分〕
・長谷部恭男「『外国人の人権』に関する覚書」小早川光郎=宇賀克也編『行政法の発展と変革(上):塩野宏先生古稀記念』(有斐閣、2001年)、「憲法の理性」(東京大学出版会、2006年)、「憲法〔第4版〕」(新世社、2008年)
樋口陽一*1憲法〔第3版〕」(創文社、2007年)
・向井久了「やさしい憲法〔第3版〕」(法学書院、2005年)
・山内敏弘「人権・主権・平和:生命権からの憲法省察」(日本評論社、2003年)、樋口陽一ほか「憲法判例を読みなおす〔改訂版〕」(日本評論社、1999年)〔山内執筆部分〕
・米沢広一「国際社会と人権」樋口陽一編『講座・憲法学2:主権と国際社会』(日本評論社、1994年)


【全面的許容説の文献】
・青柳幸一「人権・社会・国家」(尚学社、2002年)
・内野正幸「憲法解釈の論理と体系」(日本評論社、1991年)、「憲法解釈の論点(4版)」(日本評論社、2005年)(注.「日々拙考」の中の人は部分的許容説かもしれないとしている)
・奥平康弘「憲法III」(有斐閣、1993年)
・甲斐素直「憲法ゼミナール」(信山社、2003年)
・藤井俊夫「憲法と国際社会〔第2版〕」(成文堂、2005年)、「憲法と人権I」(成文堂、2008年)
・吉田善明「日本国憲法論〔新版〕」(三省堂、1995年)(注.「日々拙考」の中の人は最近の立場(吉田善明「日本国憲法論〔第3版〕」(三省堂、2007年))は不明としている)
・渡辺久丸「現代憲法問題の分析」(信山社、2005年)


 ちなみに「日々拙考」の中の人によると、内野氏の勤務校は中央大学。甲斐氏の勤務校は日本大学。それぞれ、長尾先生、百地先生の勤務校ですね。「日々拙考」の中の人の分類が正しいとして、どういう人間関係なのかしら。まあ、そこは「大人のおつきあい」なんでしょうが(笑い)。


【要請説の文献】
浦部法穂日本国憲法と外国人の参政権」徐龍達編『定住外国人地方参政権』(日本評論社、1992年)、「『外国人の参政権』再論」憲法理論研究会編『人権理論の新展開』(敬文堂、1994年)、「憲法学教室〔全訂〕」(日本評論社、2000年)、「憲法の本」(共栄書房、2005年)
・江橋崇「外国人の参政権樋口陽一高橋和之編『現代立憲主義の展開:芦部信喜先生古稀祝賀』(有斐閣、1993年)、「国家・国民主権と国際社会」樋口陽一編『講座・憲法学2―主権と国際社会―』(日本評論社、1994年)
・萩野芳夫「基本的人権の研究」(法律文化社、1980年)、「外国人の定住と政治的権利」徐龍達編『定住外国人地方参政権』(日本評論社、1992年)、「憲法講義・人権」(法律文化社、1994年)
・上脇博之「政党助成法の憲法問題」(日本評論社、1999年)
・後藤光男「外国人の参政権大須賀明編「社会国家の憲法理論」(敬文堂、1995年)、「共生社会の参政権」(成文堂、1999年)、「外国人の地方参政権高橋和之ほか編『憲法判例百選1〔第5版〕』(有斐閣、2007年)、「外国人の人権」大石眞=石川健治編『憲法の争点』(有斐閣、2008年)
近藤敦「『外国人』の参政権」(明石書店、1996年)、「外国人参政権と国籍〔新版〕」(明石書店、2001年)、「参政権と政治活動の自由」近藤編『外国人の法的地位と人権擁護』(明石書店、2002年)、「ヨーロッパ諸国の地方レベルにおける外国人の被選挙権」徐龍達編『21世紀韓朝鮮人の共生ビジョン』(日本評論社、2003年)、「外国人の地方参政権」芹田健太郎ほか編『国際人権規範の形成と展開』(信山社、2006年)
・渋谷秀樹「憲法への招待」(岩波新書、2001年)、「憲法」(有斐閣、2007年)
辻村みよ子「国家主権の制限と『人権の展開』―外国人参政権問題によせて―」越路正巳編『21世紀の主権、人権および民族自決権』(未來社、1998年)、「憲法〔第3版〕」(日本評論社、2008年)


【ちなみに「日々拙考」から引用】

なお、長谷部先生がとても良いことを指摘しておられたので、引用しておきます。

 ただ、学説や判例を説明するとき、特に批判的に論評するときには、まずは批判されている方の元のテクストにあたることをお勧めするね。中には、誤解されたままの批判が行き渡ってしまって、元の学説がどんなものだったか訳が分からなくなってることもないではないから。


 それをやらないのが一部のネトウヨさんな訳です。誤解ならまだいいですけど産経とかは捏造としか思えない曲解をよくやります。


【甲斐先生のサイトをのぞいてみた】
「甲斐素直の家」から、
論文「定住外国人参政権ーあるいは国籍法の改正について」(http://www5a.biglobe.ne.jp/~kaisunao/ronbun/gaijinsansei/gaijin-sansei_2.htm


・斜め読みしただけなので内容がよく分からないが、「判例は全面的許容説の立場(国政と地方政治を区別していない)と考える」云々と書いてあって、びっくり。斬新な説だなあ。判例支持者にせよ、批判者にせよ、「判例は部分的許容説」というのが多数説なんですが。
・それはともかく、ホームページにこういう風に論文とか紹介してあると学生さんとかが勉強になって大変よいことだと思う。

*1:比較的入手しやすい新書形式の著書が多く、一般啓蒙にかなり力を入れている学者と言えるだろう。著書『比較のなかの日本国憲法』(1979年、岩波新書)、『自由と国家』(1989年、岩波新書)、『憲法と国家』(1999年、岩波新書