「梶ピエールの備忘録:サヨウナラ、産経新聞」に突っ込む(追記・訂正あり)

「梶ピエールの備忘録:サヨウナラ、産経新聞
http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/20100426/p1

 これに、私は次のようなブコメとメタブをつけた。

 マジでトンデモが嫌いなら遅くとも「つくる会」「自由主義史観研究会」を支援した時点で見切るべき。id:hit-and-run氏のような感想(「何を今更」)しかid:kaikajiには感じない。


つくる会」「自由主義史観研究会」が結成されたのが1995年から1996年にかけて。今から約15年前である。それ以前から産経は変だったと思うが、これらの歴史修正主義運動に露骨に肩入れしたことで余計変になったと思う。

《いわゆる進歩系の知識人が「産経新聞」と聞いただけで毛嫌いする姿勢をみせるのには、むしろずっと違和感を感じてきた。》/統一協会との癒着だけでも普通の人間は嫌悪感を感じる物だが?。私とは感覚が違いすぎ」


 統一協会合同結婚式の新聞広告を載せ批判を浴びたり、安倍氏の祝電問題をスルーしたりするのが産経。


 まあ、これで終わらせても良いのだが。さらに少しだけ突っ込む。「産経を読むのをやめた、レイシズムが酷いから」というid:kaikajiの主張には何というか「もやもやしたもの」を感じて、それをはき出したいので。
「産経が最近酷くなったから読むのをやめる」は「最近の週刊少年ジャンプ北斗の拳みたいなマッチョなマンガが少ないから読むのをやめる」なみの変さだと思う(要するに「かなり前からそうだろ、何を今更」)。
 本当にレイシズムが嫌ならもっと早い段階で読むのをやめないとおかしいと思う。最近特に酷くなったとしても基本的に産経は昔からレイシズム丸出しの新聞だ。例えば嫌韓丸出しの「対馬が危ない」を見て買うのをやめようとは思わなかったのだろうか。あれだけでも私には充分耐えられないが。それに黙然日記(http://d.hatena.ne.jp/pr3/)などを見れば分かることだが、産経のひどさはレイシズムだけではない。例えば、黙然日記氏が取り上げた「宇治山田高校」の件など、捏造の疑いすらある。
 もちろん捏造であろうが取材不足だろうが、事実無根なら、この記事は明らかに高野連と朝日に対する誹謗中傷だ。そして産経はまともな謝罪など、していなかったはずだ。


黙然日記「また産経の捏造報道が発覚。」(http://d.hatena.ne.jp/pr3/20070831/1188528795


 そのため、id:hit-and-run氏は次のような皮肉たっぷりのブコメをつけてる(底辺私大というのは神戸学院大に失礼すぎる気がするが)。

 hit-and-run:産経は主張、産経抄、正論でも前から酷い記事はあったけど、センセイがそれをレイシズムとして問題視しなかっただけでは?。底辺私立(注:神戸学院大)から有名国立(注:神戸大)に異動したらおちおち産経を誉めてもいられないってことでしょ


 では、早速突っ込む。

 ある時期まで、中国政府に嫌われることも厭わない産経の報道スタンスは、他紙との差異化という点で確かに意味があった

 産経の場合、反共なので「中国政府に嫌われることも厭わない」というより「中国政府に嫌われても構わない」「むしろ誇り」なのだろう。何しろ「南京事件否定論」「盧溝橋事件中国陰謀論」というデマすら唱えたことがあるのだから(皮肉)。もちろんそう言うことをするから「進歩系の知識人」に嫌われるわけである。
 従って「中国政府に嫌われることも厭わない」、そのこと自体は必ずしも評価できるか疑問。
 それに悪名高い「文革期の朝日新聞」(確か日本の新聞社でただ一社だけ国外追放処分を受けなかった。朝日も当時の件についてはそれなりの反省をしていたと思う)はともかく、日本のマスコミって、そんなに中国寄りだろうか?

特に台湾および少数民族関係の記事が目立って多かったので中国ヲチの上では重宝していた人も多いはずだ。

 そりゃ、中国ウォッチャーにとってはありがたいですね。

だから、いわゆる進歩系の知識人が「産経新聞」と聞いただけで毛嫌いする姿勢をみせるのには、むしろずっと違和感を感じてきた。

 いや、全ての読者が中国ウォッチャーの訳じゃないですから。
 それと「毛嫌いするのは分かる」が「評価できる点もある」から「もっと評価してほしい」なら分かるんですが。
 普通の人間は左翼じゃなくても「ロッキード事件など、自民党の不祥事を屁理屈で擁護(但し野党の不祥事は叩く)」「南京事件従軍慰安婦を屁理屈で否定」「統一協会と癒着」「共産主義者差別(産経って確かレッドパージを擁護してた気がします)ないしその一歩手前の極端な反共」「共産主義の悪(スターリン独裁など)は批判するが、右の悪(韓国の軍事独裁とか)は黙認」というのは不愉快だと思うんですが。また産経の場合、悪名高い「産経残酷物語」がありますよね。
 「産経残酷物語」をいわゆる「進歩系の知識人」が容認できると思ってるんですか?
 あと、学者の一人として、吉見義明氏ら歴史学者に対する産経の侮辱行為が容認できるんですか?
 真ん中より右のメディアと言えば読売や日経もあるのに何故産経だけが極端に嫌われるのか本当に分からないんですか?(最近はナベツネのせいか、読売も「産経か!」と言いたくなる変な記事が載るようになったが)

 ここ1,2年は正直なところ広げて目を通すのが苦痛になっていた。品のない誹謗中傷、根拠のないデマを検証しないで垂れ流すような記事が目に余るようになってきたからである。

 id:hit-and-run氏等が指摘していますが、ここ1,2年じゃなくて昔からそうですよ、産経は。例えば紹介した黙然日記(2004年8月31日からスタート。なお、当初は産経批判は今ほどしていなかった)を見るだけでも、最近特に酷くなったのかも知れないが、基本的に産経のひどさは、「ここ1,2年」で酷くなったのではなく昔からと言うことが分かると思うが。

例「黙然日記:産経新聞がID説擁護」(http://d.hatena.ne.jp/pr3/20050928/1127900479

 日刊ゲンダイの右翼版といった色彩が強くなっていったように思う。

 繰り返しになりますが、自民下野などで劣化に拍車がかかったかも知れませんが基本的に昔から産経はああいう新聞です。
 それと、私の知る限り、日刊ゲンダイは「統一協会のような反社会的勢力との付きあい」はないし、「ID論を紙面に載せる」ほどのトンデモではありません。日刊ゲンダイに大変失礼です。

 西尾の言論活動について、近年では田母神俊雄を賞賛するなど、「語るに落ちた」という印象を持ってきたが

 少なくとも、歴史学者でもないのに「今の歴史教科書はダメだ、偏向している」「自分が新しい歴史教科書を創る」と言いだした時点で「語るに落ちる」でしょう(それ以前の西尾がどうだったのかは知りません)。まともな人間はド素人の癖に、歴史学者という専門家を侮辱したり、歴史学という専門外の分野に手を出したりはしません。しつこいですが専門家として、西尾みたいなマネ(「今の経済学者はダメだ、偏向している」「自分が新しい経済学を創る」)をあなたの専門分野(中国経済?)でド素人にやられたら腹が立ちませんか?
 西尾だって自分の専門分野(ニーチェ?)でド素人に同じ事をされたら腹が立つでしょうに。
 「田母神俊雄を賞賛」する前から、あの人は充分変な人です。


 とりあえず終わり。

【4/29追記】
1)id:kaikaji氏はコメント欄で

 あの書評のように明らかに誰が見てもアウト、という文章がチェックなしに通ってしまうということは社内全体に緊張感がまったく欠けた状態にある、ということはいえると思います。

としているが、「ID論」や「合同結婚式の新聞広告」は彼的には「アウトではない」のだろうか?。それとも知らなかった?
(追記の追記:ご本人のコメントに寄れば、主として中国関係のみ読み他は斜め読みだったらしいので気づかなかったようだ。うーん)

2)本野氏なる人が「産経以外にも酷い記事はある」「産経でも評価できる記事はある」とコメントしている。確かに産経というだけで全ての記事を否定するのはよくない。しかし産経の場合、酷さのレベルがもはや度を超えていると思う。産経の個々の記事は評価に値するとしてももはやあの新聞は総合評価では世界日報など極右系のトンデモ新聞と変わらないと思う(id:kaikaji氏を含め、コメンターは皆、本野氏の意見には批判的)

3)id:kaikaji氏が新エントリを上げていることに気づいたので紹介。
「新聞倫理綱領に違反する産経西尾書評」(http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/20100429/p1

4)一応お断りしておくが産経の記事を全て否定しているわけではない。
たとえば以下の記事など産経らしくない良記事だと思う。

「【法廷から】ひどすぎるAV撮影」
http://megalodon.jp/2007-1007-2316-43/sankei.jp.msn.com/affairs/crime/071006/crm0710061125010-n1.htm

とは言え「AV撮影でも事情によっては強姦が成立する」「起訴した検察よくやった!」と言うこの記事の内容と、「従軍慰安婦は金もらってるから公娼」という産経の日頃の主張とどう両立するのか理解不能だが。まあ、産経にも良識派がいて、時々産経らしからぬ記事がチェックを漏れて載ると言うことなのだろう。

【5/22追記】
id:kaikaji氏の新エントリを紹介。
産経新聞への抗議文」(http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/20100520/p1