新刊紹介:「経済」7月号

 「経済」7月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。
http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/

■世界と日本
【「影響力強めるBRICs」(田中靖宏)】
(内容要約)
・影響力強めるBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)の今後の動向に注意が必要。

(参考)
琉球新報「国際金融体制改革など意見交換・BRICs首脳会談」
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-160919-storytopic-4.html

【「NPT再検討会議行動」(布施恵輔)】
(内容要約)
・筆者は全労連国際局長。全労連が参加したNPT再検討会議での各種行動(米国平和団体との交流など)の報告。

【「中国の所得格差是正策」(平井潤一)】
(内容要約)
・中国政府は所得格差の存在を認めそれの是正(最低賃金の引き上げなど)に取り組もうとしている。

■特集「大企業の支配と日本経済」

【「2000年代、日本の大企業体制の変容」(鈴木健)】
(内容要約)
・いわゆる六大企業集団体制(三井、三菱、住友、富士、三和、第一勧銀)は都市銀行の再編による3大銀行体制(三井住友、三菱UFJ(三菱+三和)、みずほ(富士+第一勧銀))によって大きく変化した。
・近年の企業再編はメインバンク主導ではなく業界の事情で進展するケースが今やほとんどであり、メインバンクと企業の関係はなくなったわけではないが、昔ほど強固な物ではない。

【「日本経済の変容と長期停滞」(工藤昌宏)】
(内容要約)
・日本の不況の原因として極端な外需依存がある。外需は日本政府でコントロールできる物ではない。また全ての企業が外需でやっていけるわけでもない(典型的には地方の中小企業)。内需をどう促進していくか重要。この点、輸出大企業の儲けのみを考えた消費税増税社会保障切り捨てなどは内需を冷やすという点から論外である。

【シンポジウム「大企業の労働者支配と国民経済」(大木一訓、黒田兼一、山本博昭、柴田外志明)】
(内容要約)
・大木氏、黒田氏は研究者。山本氏、柴田氏は労働組合関係者。
・日本の成果主義は、成果判定基準がオリンピックのフィギュアスケート以上にあいまい、かつ非公開(一応、フィギュアではそれなりの基準が公開されている)で、恣意性が入ってくる恐れがある点が特徴である。これは改める必要がある。
・日本の労働者は異常な長時間労働でありこれを改める必要がある。
非正規労働者が使い捨てされる現状(派遣切り)は改める必要がある。まず労働者派遣法の抜本改正が望まれる。

【「製造業下請工場で何が起きているか」(藤田信好)】
(内容要約)
・この不況下、元請けによる下請けへの無茶苦茶なコストカット強要や支払い遅延等を防ぐための措置が必要。下請法と独禁法の改正(罰則の強化など)が望まれる。

【テーマ解説「グローバル化と企業再編」】

国際会計基準(小栗崇資)
※企業法制の規制緩和(木田力)
(内容要約)
国際会計基準や、日本における企業法制の規制緩和持ち株会社の容認、三角合併を可能とする法改正など)の背景には、企業のグルーバル化対応があると言う話。但しそれを筆者がどう評価しているのかが今ひとつ分からなかった

EU指令の労働者保護(筒井晴彦)
ILOの労働者保護(筒井晴彦)
(内容要約)
・労働者保護についてのEU指令(集団整理解雇指令、企業譲渡指令、賃金確保指令、欧州労使協議会指令、国内労使協議指令)、ILO条約(111号条約、158号条約、166号条約など。なお、以上3つの条約は全て日本は未批准)の紹介。

■特集「不況下、下請の実態、解決へ動く」

【「建設労働者の請負代金・賃金不払い解決の取組み」(溜口芳明)】
(内容要約)
・筆者は東京土建一般労組関係者。「建設労働者の請負代金・賃金不払い解決の取組み」、特に建設業法41条2項、3項の趣旨に基づく立替え払いの取組みを紹介。
 建設業法41条2項、3項は孫請が下請から請負代金をもらえず困っているときに国土交通大臣または知事は元請に立替払いするよう勧告することが出来るとしている。

(参考)
「東京土建一般労組」http://www.tokyo-doken.or.jp/index.php

【「出版フリーランスの未払い、こうして解決」(北健一)】
(内容要約)
・筆者は出版ネッツ委員長。フリーライター出版ネッツの関わった賃金未払い問題を紹介。出版ネッツはフリーのライター、カメラマン、イラストレーターなどが加盟する個人加盟労組である。(こうした個人加盟労組はまだまだ始まったばかりで今後の発展が期待される。また法も十分対応していないようなので一定の法整備も必要だろう。)

(参考)
出版ネッツhttp://www.jca.apc.org/NETS

【「「下請けかけこみ寺」の現場から・東京都中小企業振興公社に聞く」(北健一)】
(内容要約)
東京都中小企業振興公社ADR裁判外紛争解決手続き。平たく言うと調停みたいな物)の紹介。なお、ADRには強制力はないのでお互いの言い分が大きく食い違っている場合だと解決できず裁判に移行するケースもあることに注意が必要(もちろん解決するケースもあるが)。いずれにせよ、こうした制度の存在は筆者が指摘するように多くの人に知られるべきだろう。

■「民主党政権下の2010年度地方財政計画」(森裕之)
(内容要約)
民主党の2010年度地方財政計画では地方交付税が一定程度確保されたが、それが今後も続くかどうかは不明である。事業仕分けなどで、地方交付税の圧縮を唱える論が政府内に存在するからである。
地方交付税圧縮論については地方切り捨てと批判せざるを得ない。
・地方を支えるために、地方への税源移譲を積極的に進めるべきであろう。(もちろん国税が減少しないように注意する必要があるが。つまり税源移譲はトータルの税制改革と一体で行うのが望ましいと言うこと)

■「企業年金問題を考える」(企業年金問題研究会)
(内容要約)
・この不況下、企業年金の減額を巡り、減額を正当と主張する企業側と不当と主張する受給者側の裁判が多発している(りそな銀行、NTT、TBSなど)。
企業年金は賃金の後払いであり、受給者の同意なき減額は安易に認められるべきではない。
・なお、日本において企業年金の受給者保護は海外に比べ遅れている。制度の整備が早急に求められる。

(参考)
企業年金減額とめよう・受給権を守る連絡会が裁判報告集会」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-10-30/2005103014_02_2.html


■「トヨタのリコール問題と車づくり」(丸山恵也)
(内容要約)
トヨタのリコール問題の原因は、行き過ぎたコストカットにあるのではないか。トヨタの真摯な原因究明が望まれる。
・現在の政府のリコール体制は貧弱である(国がユーザーの苦情などを元に、自主的に車の欠陥の有無をチェックし、メーカーにリコールを勧告・命令することなど想定されていないし、事実上出来ない。リコールするかしないかはメーカー任せ状態である。)。リコール体制を強化する必要がある。

■「質問・疑問に答えます:ギリシャ危機でユーロはどうなる?」(相沢幸悦)
(内容要約)
ギリシャに対してどのような支援が行われるかが決まらないと何とも言えないと言うのが結論。
・財政危機への支援を各国国民に納得させるためには、財政再建が必要だろうが単純な緊縮財政では「国民イジメ」であり、「ギリシャ経済」が大不況に陥る危険性もある。難しい舵取りが迫られる。