社説&【産経抄】7月12日(追記・訂正あり)

 産経は社説でも民主敗北、自民勝利に大喜び、うかれたその結果、いろいろとトンデモないことを社説に書いています(まずは社説に突っ込みます)。

 首相の政治責任は明白だ。本来なら菅内閣は総辞職するか、衆院解散・総選挙を行って政権継続の是非を問わねばならない。3年前の(注:当時の安倍首相が敗北した)参院選民主党はそう主張していた。

・そうですね。にも関わらず安倍氏はすぐには首相辞任せず、産経さんもそれを必死にかばったわけです。要するに「どっちもどっち」です。安倍さんが辞任しなかったときに辞任せよと言わなかった以上、菅氏は辞任せよと言う産経の主張は、ただのご都合主義です。
 一方、安倍氏に辞任を求めた癖に、自分は続投という菅氏もご都合主義です。よほどのことがない限り、党内の菅おろしで辞めざるをえなくなると思いますが。
・なお、比例では民主が勝っていることに注意が必要です。要するに、勝ったとは言え自民が復活したとはとても言えない状況です。

 (注:今回躍進したみんなの党以外の)そのほかの新党勢力の不振は、これと対照的だ。有権者の心をつかめなかったというしかない。

 そのほかの新党勢力(たちあがれ、改革、創新)、特にたちあがれを応援していたのは産経さんではなかったのでしょうか?
 いくら最大の友達・自民が勝ったとは言え、随分酷い見捨てよう(苦笑)。これでは平沼さんや石原都知事の面目も丸つぶれです。別に彼らが好きなわけではないので私的には潰れて構いませんが。「勝ち馬に乗る下劣な奴ら」「選挙前は持ち上げてた癖に信義にもとる」と産経の評判が右翼世界で悪くなりませんか?。別に産経は好きじゃないんで悪くなって構いませんが。

 3年前の参院選で、衆参両院の「ねじれ」が生じたことを想起したい。「ねじれ国会」に苦しんだ福田康夫政権の下でも、薬害C型肝炎被害者を救済する特別措置法が議員立法として全会一致で成立し、その後の国と原告団の基本合意につながった例がある。

 よく言いたいことが分からないのですが、ねじれは良いことだと言いたいんですか?。当時、産経さんはそんなことは言ってなかった気がするのですが?

(注:今回の選挙結果を)消費税増税を遠ざける結果にしてはなるまい。

 今回の選挙結果は誰が考えても消費税増税ノーの結果なのにこういうこと言い出すんだから本当に困りものです。

 次に産経抄

 「夢は時間を裏切らない。時間も夢を決して裏切らない」

 この書き出しから民主党叩きという無茶苦茶さが産経抄です。

 大正10(1921)年7月、『東洋経済新報』の「小評論」欄に、「憲政擁護運動の夢」と題する一文が載った。大正の初めのような憲政擁護運動の盛り上がりの再現を夢見る野党政治家たちを、いさめたものだ。あのころ国民は、政党に大きな信頼を置いていた。今日では政党は、「政権を私する為めの朋党」で、「国利民福を念とする団結でないこと」が歴然としている、と。

 いきなりこんなことを書いても意味が分かりません。説明抜きで大正時代の政治がわかる人間が今どれだけいるでしょうか?。大体、抄子の引用だと「政党は、政権を私する為めの朋党」(自民党に対する批判みたいですね)で、野党と与党の区別などしていないように思うのですが?。(引用が下手くそなのかも知れませんが、抄子が野党批判だと誤読してる可能性もあります)。
 大体「政権を私できる」のは与党じゃないんですか?。どうやって、野党が政権を私するんですか?。
 「憲政擁護運動の夢」は与党批判、あるいは与党もダメだが野党もダメという今の日本でも良くある政党不信の表明じゃないんですか?
・もしかしたら、抄子が言いたいのはこういう事かも知れません。
「野党・憲政会や立憲国民党から男子普通選挙制度導入を求める選挙法改正案が提出されると、原はこれに反対して衆議院を解散し、小選挙区制を採用した有利な条件の下で総選挙を行い、単独過半数の大勝利を収めた。」(ウィキペディア原敬」)
 これに対し、野党は原を反民主的と批判したが、「憲政擁護運動の夢」は野党にとって有利だから選挙法改正を出したんだろ、党利党略だ、お前が言うなと突っ込んだと言うことでしょうか?。でもそれだったら「憲政擁護運動の夢」の方がおかしくないですか?。
 原の行為だって党利党略ですし。うーん、抄子の引用と説明が下手すぎて訳が分からん(いずれにせよウィキペディアの記述だと原は金持ちを支持基盤とする政党、野党はそうではなかったということでしょうか?)。
・なお、男子普通選挙制は加藤高明内閣で実現します(但し、後に権力弾圧法として猛威をふるう悪法・治安維持法の成立とセット)。

 原敬首相が暗殺されたのは、それから3カ月半後だ。

・じゃ、「憲政擁護運動の夢」で批判されていたのは野党政治家たちじゃなくて原なんですか?。産経抄はいつもながら訳の分からない文章だな。
・ちなみに、原を暗殺したのは右翼青年・中岡艮一。中岡が原を暗殺した理由は次のようなもののようです。
「原が男子普通選挙に反対したこと」「満鉄疑獄事件など数々の疑惑事件に政友会が関与していたこと」「尼港事件は原の外交に問題があるから起きた」
 なお、原を暗殺した中岡には無期懲役判決が下ったにも関わらず、恩赦で出獄しており、中岡のバックには黒幕がいると陰謀説を唱える人間(例:猪瀬直樹)もいるようです(ウィキペディア原敬」)。確かに原ほどの大物なら政財官界に自らの利益のため「原を殺したい」と思う人間がいてもおかしくないでしょうが、どうなんでしょうか?

満鉄疑獄事件(ウィキペディア「満鉄」参照)
 原敬・政友会内閣が成立すると、原は満鉄副社長に中西清一を抜擢した。
 中西は塔連炭坑を異常に高い値段で買収した。塔連炭坑は政友会の幹部・森恪が経営していた。炭坑を満鉄に売却した代金は政友会の選挙資金に充てられたと言われる。野党・憲政会はこの問題を帝国議会で追及し、中西を背任罪で告訴した。中西は逮捕・起訴され、一審で有罪となったが、控訴審で無罪となる。

 しかし「原敬」「疑獄」でググっても全然ヒットしないんだよなあ。本当使えないな、日本版ウィキペディア
 いずれにせよこれでもわかるように一部のウヨさんが言う「昔の日本の政治家はクリーン」というのは全くのデマです。

【追記】

首相就任前の民衆の「平民宰相」原への期待は大きいものだったが、就任後の積極政策とされるもののうちのほとんどが政商、財閥向けのものであった。(ウィキペディア原敬」)

 大正版「みんなの党」?