古典主義とモダニズム?(追記・訂正あり)

 ひょんな事で見つけた文章が面白いと思ったので紹介。なので深く突っ込まれても答えられないのでそのつもりで。

鈴木督久氏のサイト http://suzuki-tokuhisa.com/

 かつて「調査における古典主義とモダニズム」ということを書いたことがある。このころのモダニズムにはまだ調査者としてはなにがしかの良心はあった。今日の多くの電話調査・インターネット調査を本文に書いたように「使うべかざるところに使う」調査改革者は,調査の良心を捨て,いわば邪教の教理を信じ込むものであり異端的である。このような異端的な調査は各方面に亘って強力に浸透しつつある。私は「調査における古典主義を中心に据え,モダニズムを加味し,各種調査法を所を得しめて用いる」という保守主義守旧派を誇りとし,その旗印をかかげ,並みいる「調査改革者」*1の群を薙ぎ倒しにかかる積りでいる。
林知己夫(2002)「いま調査者が心掛けること」.「新情報」VOL.86.

 やはり(注:日本における統計調査の)創始者たるもの,これでなくちゃあいけない。すべての「調査改革者」たちよ,進むなら,まずこの俺を倒してから進め,と言っているのである。すべての「調査改革者」たちは,正面から林知己夫*2に挑め。そして倒されるものは,ことごとく薙ぎ倒されよ。「(注:老人が死ねば)いずれ俺達の時代がやってくる。それまではおとなしく待っていよう」なんてケチな根性は捨て給え。
「なにを言っているんだ。問題はもうとっくに(注:俺たちの勝利で)終了しているぜ」という声が聞こえる。そうであろうか,乗り越えるということは無化するということである。相対化すると言ってもいい。相手にもせず(されず)に脇道をまわって遠くのほうから呟いているんじゃあ,からだを張って薙ぎ倒さんとする存在を永久に超えることができない。超えるべき山は高いほど良い。

・よく分からないが、「統計数理研究所所長」というのは統計業界の大御所らしい。id:minazuki6氏も「愛国を考えるブログ:今日は赤池誠章先生の誕生日です」(http://sinnnoaikokuhosyu.seesaa.net/article/156735014.html)に「愛国者を名乗るなら我が国が誇る統計学者・赤池弘次先生*3を誇りましょう。」というブクマをつけている。
・面白半分の斜め読みしかしてないし、文系なので全然分からないが、鈴木氏自身は林氏が批判する「電話調査・インターネット調査」を多用するマスコミの調査マンなので、林氏の批判(電話調査・インターネット調査を全否定しているわけではないが、訪問聞き取り調査、郵送調査に比べ日本では研究・実施の歴史が浅いため望ましくないと考えてるようだ)は一面的すぎる(古すぎる?)と考えているようだ(鈴木氏の林氏への感情は一部はid:wackunnpapa氏などの「図書館問題研究会」批判(愛憎半ばする?)とやらと似たような感じなのだろうか?。あちらの方も面白半分で全然きちんと読んでないが)。
 しかし、大御所でありながら、弟子に任せるのではなく、自ら「並みいる「調査改革者」の群を薙ぎ倒しにかかる積もり」と言ってるところには鈴木氏は深く感動したと言うことであろうか。

【追記】
1)鈴木氏のサイトを読んでると学者連中(林氏を含むかどうかは不明)には古いこと言ってる奴がいて云々という趣旨の文章があって面白い。
例えば、鈴木氏によると電話調査については「回答率が訪問聞き取り調査、郵送調査に比べて低い」「電話はすぐに切ることが出来るから」という人がいるらしい。
しかし、鈴木氏は「回答率が低いのは調査期間が通常2日程度と短いから。訪問聞き取り調査、郵送調査のように二週間とかかければ回答率は変わらないのではないか(普通はそんなに時間をかけない)」「訪問聞き取りでも居留守を使うことが出来るし、郵送もゴミ箱にポイ捨てすることが出来る。電話調査の回答率が低いとしてもすぐに電話を切れるから、という説明はいかがなものか」と批判している。
2)id:minazuki6氏のコメについてはうーんと言ったところ。さすがに、鈴木氏も明らかに回答者に偏りがあるニコ動アンケートのようなものは認めていないようだし。林氏に賛同できる点もあるが、賛同できない点もある、いずれにせよ大御所なのにまだまだ俺はやるぞと言ってる点がスゴイというのが鈴木氏の言いたいことですかね。
3)このエントリについたid:wackunnpapa氏のブクマを紹介。

wackunnpapa: 言及多謝m(_ _)m 当方の相手も“保守主義守旧派を誇りとし,その旗印をかかげ”ている連中ですが,真っ向勝負には程遠いのが何とも。

 「真っ向勝負にはほど遠い」というのがよく分からない。林知己夫的大御所が「かかってきやがれ」と公然と言ってくれるとありがたいが、そうでないと言うことなのだろうか?
 それとも正面から挑もうとしているが微力のため、なかなかうまくいかないという謙遜ないし、ぼやきの言葉?

*1:括弧がついてるのは「古いと言われようが俺を納得させるまで改革者とは認めねえ」とかそういうことなのだろう。

*2:統計数理研究所第7代所長。「林の数量化理論」で知られる統計調査業界の大御所。故人(以上、ウィキペディア

*3:統計数理研究所第8代所長。「赤池情報量基準」で知られる。故人(以上、ウィキペディア