【産経抄】12月12日

 今日の産経抄は突っ込みどころだらけ。政治ネタで自分の嫌いな相手を叩くときにはそうなる傾向がありますね。
「お前が言うな」と「事実誤認」と「論理展開の飛躍」の合わせ技。

劉暁波氏へのノーベル平和賞授賞に対し、中国外務省の報道官は「政治的茶番劇」と非難したそうである。「茶番劇」とは、すぐ底が割れるようなバカバカしい行為を指す日本語だ。中国にもそっくり同意義の言葉があるらしい。

・日本にしか「茶番劇」に当たる言葉がないとでも思ってるんですか?

劉氏へのノーベル賞には、中国の民主化こそ平和への道だという国際社会の願いが込められている。そんな真摯(しんし)な願いに背を向け、授賞式を妨害しようとし「茶番劇だ」と切って捨てる。まるで世界中が中国に従うべきだ、と言わんばかりの傲慢さである。

書き換えてみよう。
「米国や欧州の従軍慰安婦決議には、従軍慰安婦問題解決こそ平和への道だという国際社会の願いが込められている。そんな真摯(しんし)な願いに背を向け、決議を妨害しようとし「茶番劇だ」と切って捨てる。まるで世界中が産経に従うべきだ、と言わんばかりの傲慢さである。」
 まあ、産経も中国も似たもの同士だと言うこと。
 それと細かいことで揚げ足取りになりますが妨害しようとしたのは授賞式それ自体ではなく、「授賞式に多数の参加者が出席する事」ですよね。

ノーベル賞に対抗して、にわかに設けたらしい「孔子平和賞」である。第1回の授賞式を行うというので、北京市内の会場を訪れた各国の報道陣は、お粗末さに苦笑するしかなかったようだ。
 ▼第一、授賞式だというのに受賞者がいない。
(中略)
「初の受賞者」に選ばれた台湾の連戦・元副総統が断ったためだという。もともと連戦氏に正式の連絡がいっていなかったという失態も明らかになったという。
 ▼ノーベル賞への嫌がらせにすぎなかったことが明らかになったが

・「手続きが杜撰=ノーベル賞への嫌がらせにすぎなかったことが明らかになった」とは言えないでしょう。その疑いは濃いと思いますが。
・なお、「正式の連絡をしてなかった(非公式にはやっていたのか?)」は論外ですが、「賞主催者への批判」だの「それとは逆に自分はこの賞にふさわしくないという謙遜の気持ち」だのによる受賞拒否自体はたまにあることです。連戦氏としては「ノーベル賞への意趣返しではないか」と言う噂のある賞を受ける気にはとてもならなかったと言うことでしょう。受けても自分にも国民党にも台湾にもプラスはないという判断。もらった上で中国批判をぶちかますという手もないではないですが、そこまでするほどの賞でもないと。
・茶番劇というなら社会に全く評価されてない「アパの賞」「産経の正論大賞」なんかもそうでしょうね。
・ちなみに豆知識ですが実はノーベル平和賞にも受賞拒否と言うか受賞辞退した人がいます。1973年の受賞者はパリ協定(アメリカがベトナムから撤退)の功績でアメリカのキッシンジャー国務長官ベトナムのレ・ドクト外相でしたが、ドクトは「アメリカが撤退しただけで戦争が終わったわけではない(戦争終結は1975年)」「戦争を仕掛けた側であるキッシンジャーが受賞することに納得がいかない」と言う理由で受賞を辞退します。
 まあ何というか中国のやり口も好きではないけどノーベル平和賞も好きになれないなあ。過去には佐藤栄作にあげてますしね。
・産経さんだって、自分のお嫌いな、北朝鮮外交を評価してのカーター氏だの金大中氏だののノーベル平和賞受賞は過小評価したいようですし、中国ほど酷くないが本質的にはやはり中国と産経は似たもの同士だと思いますね。

日本も良き隣国として忠告すべきなのだ。

 菅総理は「釈放すべき」と忠告したでしょうが。日本は欧米と違って中国は隣国なんですからあまりどぎついことは言えませんよ。