新刊紹介:「経済」3月号(追記・訂正あり)

「経済」3月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。

http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/

 以下は私が読んで面白いと思った部分のみ紹介します。(詳しくは3月号を読んでください)


■世界と日本
【中国初の汚職・腐敗白書(平井潤一)】
(内容要約)
 中国は昨年、始めて、中華人民共和国建国後初の「汚職・腐敗白書」を刊行した。これは中国において汚職、腐敗が深刻な問題にあることを伺わせる。今後の汚職・腐敗対策が注目される。

最近の高級幹部汚職の例(ウィキペ参考)
・陳希同(北京市共産党委員会書記)
 党籍剥奪、懲役16年。北京市長・市共産党委員会書記だった1991年から1994年にかけて企業から55万5千元相当の高額品を受け取ったとされている。
・陳良宇(上海市共産党委員会書記)
 懲役18年、財産没収30万元。
・成克傑(全国人民代表大会常務委員会副委員長:日本の国会副議長に当たる)
 広西チワン族自治区共産党委員会副書記、同自治区政府主席だった1992年から1998年の間職務上の権限を利用して、4000万元の賄賂を受け取ったとされた。2000年9月14日死刑執行。

 中国では政敵失脚のための国策捜査が横行してる疑いがあるらしい(陳希同は反江沢民、陳良宇は反胡錦濤だったらしい)が、やっぱり汚職撲滅には刑罰はこのくらい厳しくないとダメだよな。日本は「汚職への刑罰の重さは中国を見習えよ」と思う(さすがに国策捜査や死刑は支持しないけどね)。

【新防衛大綱の危険性(白髭寿一)】
(内容要約)
・新防衛大綱が従来の「基盤的防衛力構想」にかわって「動的防衛力」を打ち出したことは、専守防衛から集団的自衛権容認の方向に舵を切ったとみられる。また武器輸出三原則の見直しを打ち出していることも警戒が必要である。

■特集「財政危機と現代資本主義」
アメリカ資本主義と財政危機(河音琢郎)】
(内容要約)
アメリカ財政はイラク戦争とアフガン戦争の戦費負担で深刻な事態に陥っている。早期の撤退が望まれるが、中間選挙での共和党勝利でそれが実現できるかは悲観的である。
 また、財政危機の原因の一つは行き過ぎた減税政策にあると思われるが、共和党が支配する議会の元では増税が実現できるかも悲観的である。

【ユーロ危機と加盟国の財政赤字:スペイン・ポルトガルアイルランドを中心に(代田純)】
・スペイン・ポルトガルアイルランドの財政危機は深刻であり、これを解決しなければユーロ危機が再燃する危険性は高いと思われる。

【深化する財政危機と11年度予算案(上)(梅原英治)】
(内容要約)
菅政権の財政政策は基本的に小泉政権構造改革路線と変わらない。その象徴が、「法人税減税」「消費税増税」方針である。

【財政危機と国債バブル(山田経彦)】
(内容要約)
財政危機の一因は公共工事目的の国債の大量発行である。

■特集「『平成の開国』論TPPを糾す」
【TPPとは何か・その内容と背景(松本知裕)】
(内容要約)
・TPPというと農業ばかりが注目されるが、TPPは基本的には全分野(工業、サービス業)の自由化をめざしている事に注意する必要がある。外国人労働者の移入や、工場の外国移転(産業空洞化)が進行する恐れがあると言うことである。
 TPP万歳、農業は努力しろと言ってる奴も、「有能な外国人が日本に来ること万歳」「俺は失業しても我慢するよ、無能な俺が悪いから」と言う奴がどれほどいるのやら。
 TPPの理念だと「マスコミを外資が買収することも基本的にOK」なのだがそれでもマスコミさんはいいのか?。
 TPPの理念だと「外国人が土地買収することも基本的にOK」なのにTPPに賛成しながら「中国の土地の買い占めが問題」と言ってる産経は意味不明だ。

参考)
「明らかになるTPPの問題点」
http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/blog/?p=554

NAFTAと農業・カナダとメキシコ(松原豊彦)】
(内容要約)
NAFTAに対し、カナダは農業保護措置を執ったが、メキシコは完全自由化の立場を取り国内農業に大ダメージを与えた。菅政権のめざす道はどう見てもメキシコの道としか思われない。 

■「アメリカの個人所得と新自由主義(下)」(平野健)
アメリカにおいては、階層の二極分化が進んでいる。そして富裕層が強い政治力を持ち新自由主義経済政策を支持しているのに対して、貧困層は有力な対抗運動を組織できていない(例:中間選挙での共和党勝利)。有力な対抗運動をどう組織するかが今後の課題である。

■「世界的金融危機は続いている」(井村喜代子)
(内容要約)
・世界的金融危機を招いた原因(投機的金融活動の存在)は克服されていない。金融業界の強い反対があるため困難な道だが、投機的金融活動に一定の規制が必要であろう。

■「JALの経営状況から見る整理解雇の不当性」(醍醐聡)
(内容要約)
JAL日本航空)の希望退職目標は1500名であり、希望退職者はその人数に達したにも拘わらず、なぜか、JALは整理解雇を実施している。しかもいわゆる整理解雇4要件(1)経営危機など整理解雇の必要性、2)(賃金カット、配転などの)解雇回避義務が尽くされたこと、3)解雇対象者の選定に恣意性がなく合理的であること、4)解雇について事前の説明など労働者の同意を得る努力が尽くされていること)に違反する疑いが濃厚である。
 4要件の第1要件について言えば、近年、JALの経営状況は公表資料を見る限り、改善されており解雇の必要性があるか疑問である(なお、JALの公表資料を見る限り、人件費の額や営業費用にしめる比率はANA全日本空輸)など同業他社と同程度であり、JALの経営を人件費が圧迫したという主張には何ら根拠がないと思われる)。
 こうした問題にJALが明確に答えない限り、整理解雇は不当解雇と疑わざるを得ない。

【追記】
 JALの人件費は同業他社に比べて決して高くないことについては以下のブログも醍醐教授の主張を元に指摘している。全くマスゴミはどうしようもないな。どう見ても菅政権と財界、JAL経営幹部に媚びてるとしか思えないよ。
夜明け前の独り言「JALの人件費は高いのか?」
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2011/01/post-940f.html
これでいいのか?「結論ありきで創作される報道」
http://korede.iinoka.net/archives/2011/02/post_76.html


■「『子ども・子育て新システム』で保育所はどうなる」(加藤久忠)
(内容要約)
民主党の「『子ども・子育て新システム』は、市場原理万能的な色合いが濃く「保育の沙汰も金次第」になる危険性が高いように思われる。今後の警戒が必要である。