新刊紹介:「経済」4月号

「経済」4月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。
http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/

 以下は私が読んで面白いと思った部分のみ紹介します。(詳しくは4月号を読んでください)

■世界と日本
オバマの一般教書演説(西村央)】
(内容要約)
オバマの一般教書演説の大部分は経済問題にあてられた。この中でオバマ法人税減税とTPP推進を打ち出しており、今後の動向によっては「ネオリベ政策ではないか」と左派の批判を浴びることも予想される。

新日鉄と住金合併(大場陽次)】
(内容要約)
新日鉄と住金が合併の方向で動いている。これが実現すればアルセロール・ミッタルに次ぐ世界第二位の製鉄会社が誕生する。
 今後の動向としては
1)公取がこれを認めるか(世界第二位の巨大製鉄企業のため独禁法に触れる恐れがある)
2)神戸製鋼の動向(神戸製鋼新日鉄、住金と株の持ち合いなどをしてきたが、今後どうなるか。神戸製鋼も合併の予定なのか)
3)新日鉄と住金が経営統合をどう進めるのか(「大規模リストラを予定する」「一方の企業ばかりが譲歩させられる」など進め方によっては労組や取引先などから反対の声が上がることもあり得る)

■特集「安全・安心の社会基盤整備へ」
【「人口減少」と都市計画の方向転換(中山徹)】
(内容要約)
・今の日本に求められる都市開発は大規模開発ではなくむしろコンパクトシティに象徴される地域密着型の小規模開発である。

私の提言◎時代の転換と社会基盤整備
【交通権:地域公共交通の役割(土居靖範)】
(内容要約)
・日本ではバスや電車といった公共交通の廃止が近年急速に進み、交通弱者が発生している。公共交通を推進することは環境にも優しい。現状の交通政策は見直されるべきである。

【情報通信:ユニバーサル・サービスの意味(井上照幸)】
(内容要約)
・情報通信サービスにおいては、(電話や郵便のように)誰もが使えるユニバーサルサービスがめざされるべきである。しかし、現在総務省はそうした立場には立っておらず、そうした方向への転換がなされるべきである。

ライフラインがあぶない(第7回エネルギー・シンポより、2010/11/13 大阪)
【道路・橋りょう(蚊口哲也)】
【下水道(有田洋明)】
【電力設備(松崎保美)】
【気象観測(藤田真樹)】
(内容要約)
 「道路・橋りょう」「下水道」「電力設備」は老朽化が進んでいるが財政難で必ずしも改修は進んでいないという話。
 「気象観測」は財政難を理由に気象庁所管の観測所の廃止や無人化がすすめられているがそれでいいのかという話である。

■「地域循環型経済と新しい自治像を――TPP、「地域主権改革」批判」(岡田知弘)
(内容要約)
・TPPは海外輸出企業にとっては喜ばしいかも知れないが、一般国民にとって望ましいかは疑問である。なお、日本における農業分野は国際的には既に世界一開かれた市場であり、鎖国呼ばわりはあたらない。
・外需に頼るのではなく、地域の中小企業を応援する「地域循環型経済」を構築する必要がある。
民主党の「地域主権改革」は安倍内閣時代の「地方分権改革」と同工異曲と理解すべきである。特に問題なのが、地方切り捨てに繋がりかねない道州制の主張である。

■「民主党政権の「構造改革」復帰と地方政治」」(渡辺治
(内容要約)
・鳩山政権は、「公約を守らなければ次の選挙が危ない」と言う理解から自民党政治からの一定の離脱(普天間県外移設など)を試みた。しかしそれは挫折し、菅首相はそこから「アメリカと財界には勝てない」と言う認識を持った。
参院選挙に敗北したにも拘わらず、菅が政権を維持しているのは「アメリカと財界が彼を応援している」からであり、かつ反菅派(最大野党自民にせよ小沢一派にせよ)が「菅とは違う形の、国民の支持を得ながら、米国と財界の支持を得る」(マヌーバーにしかならないと思うが)道を今だ見いだせないからである。
民主党はそもそも構造改革政党であったが、小泉改革が批判されるようになると、(社民党国民新党の協力を得ると言う目的もあって)構造改革批判を行うようになる。それが「国民の生活が第一」である。しかし鳩山政権の挫折から改めて「構造改革政党」の方向に大きく舵を切った。民主党に対抗し、「福祉国家構想」を提示していくことが急務である。

■「深化する財政危機と11年度予算案 (下)――財政危機の要因・背景と解決の基本方向」(梅原英治)
(内容要約)
・財政危機の要因としては「所得税法人税の減収」「公共事業費の増加」があげられる。
 日本における累進課税の弱化は「所得再分配胃機能の低下」「税収の減少による財政危機の深刻化」をもたらした。
・財政危機は解決しなければならないがそれは基本的には神野直彦金子勝が主張する「債務管理型国家」であるべきだろう。「借金はすぐには返せない」と言う認識に立った上で「再分配機能の強化」「必要なサービスは削らない」ことが大切である。

■「築地市場移転問題と卸売市場の再編」(三国英実)
(内容要約)
豊洲は有害物質に汚染されており築地市場移転場所として適切でない。
農水省の「第9次卸売市場整備基本方針」は、「選択と集中(大きいことはいいことだ?)」を特徴としており、中小卸売業者の経営に配慮しているとは言い難い代物である。

■「政府の大都市成長戦略とUR都市機構「改革」」(坂庭国晴)
(内容要約)
・政府の大都市成長戦略に従い、UR(都市再生機構)は賃貸住宅部門に薄く、都市再生部門に厚い事業展開をしている。しかも都市再生は地域住民の声に十分配慮したとは言い難い大企業重視の計画である。UR事業の現状は見直されるべきである。