id:noharraがほめる劉暁波は怪しい人間らしい(追記・訂正あり)

 と以下のサイトを見て思った。
WEBLOG「百々峰だより」:劉暁波*1ジュリアン・アサンジ (下)
http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3381117

劉氏はワシントンに拠点をおく組織「米国民主主義基金」(National Endowment for Democracy, NED)からお金をもらっているのです。
 (中略)
このNEDなる組織はCIAの隠れ蓑であり、世界各地でクーデタを起こす道具として使われてきたことは、少しでも米国外交史を知っているひとには衆知の事実。しかしこのことを知っている日本人は意外と少ないように思われますので、下記にて益岡賢氏の訳「トロイの木馬」を載せておきます。

トロイの木馬:米国民主主義基金(NED)
http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/places/c19.html

 NEDについては次のような批判もある。
「あーあ、おしゃべりな御主人様のおかげでバレちゃった(2011.02.28追記)」
http://sgwse.dou-jin.com/Entry/229/

 マジで劉がNEDから金をもらってたなら話にならない。「事実ならば」だが、今からでも遅くないのでノーベル平和賞委員会は劉への受賞を取り消しましょう。ねえ、そうは思いませんか、id:noharra先生(今後も野原先生には絡みまくる予定)。

宇野木氏は劉氏の文芸思想に関する論文を二本ほど書いたことがあったため、受賞決定後に「京都新聞」から取材があり、「感想は?」と聞かれて「複雑な思いです」(注:中国の人権侵害に注目が集まることはいいことだが、受賞者がアメリカ万歳の「NEDの犬」じゃ素直に喜べない、ということだろう)と答えるよりなかったと述べ、その理由を次のように述べています(長くなるので要約して紹介します。詳しくは下記を参照ください)。
http://www42.tok2.com/home/ieas/china-nobelprize=img0311.pdf

1)佐藤栄作氏やダライ・ラマ氏の受賞を見れば分かるように、ノーベル平和賞は政治的利用されてきた側面がある。今回も大国化した中国に対する牽制の意味合いが存在していたことは否めないだろう。
2)劉氏の文芸思想は発表された当初から「全面欧化論」すなわち米国型民主主義を唯一絶対のモデルとする傾向が顕著だった。
3)米国がアフガン侵攻に踏み切ったとき、それに支持を表明する「ブッシュ大統領への公開書簡」をインターネットで発表し、賛同者をつのったりしていた。
4)その延長線上で、大量破壊兵器を口実にした米国のイラク侵攻に対しても、当初、肯定的な評価をしていた。
5)したがって中国社会主義実践の優良な伝統を生かして、中国の政治文化に即して民主化を進めようとする知識人の間では、彼の思想や民主化プログラムは、現実的・内発的ではないとして評価が低いのも事実だ。


 上記で宇野木氏は政治的受賞としてダライ・ラマ氏に言及しているので、私はまた驚いてしまいました。米国との安保条約密約が暴露された今となっては、佐藤栄作氏への受賞が政治的だったことは明々白々だと思いますが、「ダライ・ラマ氏までがそうだったのか」と思ったからです。
 ところが、米国民主主義基金NEDを調べているうちに、下記の記事を発見して、どうもダライ・ラマ氏もNEDと深い関わりがあるのではないかと思うようになりました。というのは、ダライ・ラマ氏にNEDから「民主主義功労勲章」が贈られていることを発見したからです。
http://www.tibethouse.jp/news_release/2010/100219_accolade.html

 アフガン戦争支持とかアホか。やはり劉は「ノーベル平和賞」にはふさわしくない人間のようだ。
 それとも「佐藤栄作ももらった糞みたいな賞」だから劉にふさわしいと言うべきか。
 こういう報道はあまりしないで劉万歳なんだから日本のマスゴミは腐ってると言うべきか。
 ちなみに宇野木氏は「季刊中国」2011年春季号(http://www.jcfa-net.gr.jp/kikan/index.html#20110301)に「劉暁波「幸いなことに自由で裕福で強大なアメリカが存在する」:ノーベル平和賞受賞者・劉暁波によるアメリカ海外派兵全面支持論文について」という劉批判論文を書いている。
 劉はどうやら中国は批判できても「心の祖国・アメリカ」を批判することは出来ないらしい。スターリンの悪業(フィンランド攻撃とか)を無理矢理、納得させようとした、当時の左翼みたいだな(それともNEDから金もらってるから批判できないの?)。
 なお、宇野木氏もこのサイト主も中国に人権問題があることや、中国政府による劉の投獄が不当であることはもちろん否定していないことを断っておく。

イスラエル、出席認めず=核開発暴露の元技師、人権団体授賞式
時事通信 【ベルリン時事】12月11日(土)16時47分配信
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201012/2010121100232
イスラエルの核開発に関する機密情報を暴露して国家反逆罪に問われ、18年間にわたって服役した元原子力研究所技師モルデハイ・バヌヌ氏(56)に対し、国際人権団体が賞の贈呈を決めたところ、イスラエルが同氏の出国を認めなかった。AFP通信によると、バヌヌ氏はベルリンで12日に予定されていた授賞式への出席が不可能になり、式は取りやめになった。非政府組織(NGO)の国際人権連盟は、バヌヌ氏が軍縮促進に貢献したとして、カール・フォン・オシエツキー賞を贈ることを決めた。賞の名称は、ナチス政権下の1935年にノーベル平和賞を受賞しながら(今年の受賞者である中国の民主活動家、劉暁波氏と同様)拘束されていて本人も親族も授賞式に出席できなかったドイツの平和活動家に由来している。>


 モルデハイ・バヌヌ氏は「核開発どころか核拡散にも手を染めたシモン・ペレス、そのような人間が貰うような賞であれば、こちらから願い下げだ」と言ったわけですが、今度の賞=「カール・フォン・オシエツキー賞」は拒否しなかったようです。

「核開発どころか核拡散にも手を染めたシモン・ペレス、そのような人間が貰うような賞(注:ノーベル平和賞のこと)であれば、こちらから願い下げだ」
バヌヌ△。梵天丸もかくありたい(オヤジギャグ)。
そして中国と同じことをやってもイスラエルを叩かないマスゴミ乙。

【2011年3/27、4/3追記】
1)「矛盾を討論によって解決する」
http://d.hatena.ne.jp/noharra/20110327

小田実も受けたフルブライト奨学金と似たようなものなのか、そうじゃないのか私にはわからないが、NEDから金をもらったとして、それでCIAのスパイ扱いをして、暁波の思想性を否定できるとする論理は納得できない。

 NEDが相当問題のあるらしいものであることは俺が紹介したエントリ「劉暁波ジュリアン・アサンジ (下) 」(http://pub.ne.jp/tacktaka/?entry_id=3381117)の紹介する
トロイの木馬:米国民主主義基金(NED)
http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/places/c19.html、や
俺が紹介した
「あーあ、おしゃべりな御主人様のおかげでバレちゃった(2011.02.28追記)」
http://sgwse.dou-jin.com/Entry/229/
でわかりそうなものだが。
 フルブライト奨学金とはとても同一視できないだろうし、そもそも中国政府と対決する者がアメリ政府関係機関、それもCIA的な機関と言われる機関から金をもらうのは「道義的」にも「戦術的(中国が確実にdisるだろうから)」にも問題だと思うが。もし、もらっても無問題と劉が思ってるとしたらそれはおかしいだろう。生活が苦しいので泣く泣くもらったとか、特別な事情があれば話は別だが。
(それと俺もエントリ主もさすがに「劉はCIAのスパイ」とまでは言ってない)
 それと、俺もエントリ主も宇野木洋教授の文章を紹介してるのだがそれは無視か?
 宇野木氏は劉には数々の問題点がありとても手放しで評価できないとしているのだが(ブッシュが始めたアフガン戦争の容認とか)。

劉霞さん(注:劉暁波の妻)をそうした状況においやっている中国当局への怒りを、丸川、鈴木とid:bogus-simotukareはもっていないようだ。それがおかしいと私には思える。

何を根拠に「持ってない」と勝手に決めつけるんだか。


なお、俺としてはid:noharraが紹介する中国の人権活動家の思想をいちいち検討する興味も能力もない(そういう能力などないと自覚してるが、そもそも人権活動家はこの世界にごまんといる。その中からわざわざ「中国人」をセレクトして検討する興味はないし、人権活動家だからと言って「勇気がある」「正義感がある」とは言えても「思想が立派」とは限らない)。
俺としては「朝鮮学校無償化賛成」といっただけで、「不当な」(「不当な」は俺の認識だが)非難を俺にした彼が「大嫌い」なので、彼が鼻たかだかで持ち上げてる劉に問題点があるようだと嫌みを言いたかっただけだ(id:noharraは何が何でも俺を中国の「人権侵害」擁護派に仕立てたいらしいが)。まあ、宇野木氏や俺が紹介したエントリ主の指摘が事実なら、劉を手放しで持ち上げるのは問題がありすぎると思うが。

2)id:noharraや子安氏が問題にする(彼らが何を問題にしてるのかはhttp://d.hatena.ne.jp/noharra/20110403、を参照)岩波本解説に問題があるとは思わないが、まああるとしても、外部から俺はあれは違うと思うと批判する、かつ岩波以外の「まともな解説」の劉暁波本(徳間書店藤原書店が出してるらしい*2)が売れるように運動する、のが関の山じゃないの。
 当事者(劉本人とか岩波に出版許可した人間とか)ならともかく部外者が謝罪しろとかああだこうだ、言うのおかしくないか?(本気であの解説が当事者に失礼だと思うなら、まず当事者に働きかけた方がいいと思うがそれはやったのか?)
 まあ、こう書くと野原の俺に対するネガキャン(「中国の人権侵害」擁護者扱い)が酷くなるのだろうが(苦笑)
 ああ、それと解説執筆者はともかく「金光翔問題」以降の岩波に良心を期待する(今回の件が非良心的だと俺は思わないが)ってブラックジョークだろ。子安とも解説執筆者とももめたくない岩波はお茶を濁すだけだろう。

3)

hashingi河信基(ha-shingi)
@gryphona2 どこに目を付けるかです。(中略)米国に渡った中国の作家・余傑が「米国は自由の国」と述べていますが、あれが中国の民主活動家の限界。米国にも自由でない人々がたくさんいることがまるで見えていないのです。

劉にも共通する限界だろう。本心なのか、アメリカの支持を得ようとする策なのかは知らないが、運動に説得力がなくなると思うね。


【2018年5/7追記・その1】

劉暁波(ウィキペ参照)
・1996年に発表した論文「冷戦からの教訓」の中で、「アメリカを盟主とする自由主義陣営は、人権を踏み躙るほぼ全ての政権と闘ってきた*3アメリカが関わった大きな戦争は、おしなべて倫理的に擁護できる」と結論付けるなど、親米的な姿勢が顕著である。パレスチナ問題でもアメリカの政策を支持しており、諸悪の根源は「挑発的な」パレスチナ人にあるとしている*4
・また、2004年に発表した論文「アングロアメリカ自由同盟に勝利を」でも、当時のブッシュ政権によるイラク戦争を支持。同論文の中で劉は、冷戦以後アメリカが主導した戦争を「如何にして現代文明に適する形で戦争を行うべきかを示した好例」として褒め称え、「イラクには自由で民主的かつ平和な社会が出現するであろう」とした。

 まあ、このウィキペ記述が虚偽*5でない限り、「その後、この見解を撤回したり、修正したりしたとしても」やはり劉という男の社会認識や思想には重大な欠陥があり手放しでは評価できないと思いますね。「虚偽でない限り」という前提付きですが。この点、「自称パレスチナ支持者」「自称イラク戦争批判派」にして「劉暁波支持者」のid:noharraこと八木孝三先生のご意見を聞きたいものです。
 しかし「米国にこびる」劉に限らず「日本ウヨにこびる」ダライ・ラマラビア・カーディルもそうですが、なんでこう軒並み「中国批判が変な方向へ向かっていくのか」。


【2018年5/7追記・その2】
■日経『劉暁波伝 余傑著、劉燕子編 中国 体制外知識人の生き方』《評》東京大学教授・川島真*6
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO29356140T10C18A4MY5000/

 天安門事件後に日本が対中宥和(ゆうわ)政策をとったことを功利主義的外交だと批判

 いやいや外交って「日中外交」に限らず全てそういうもんですから。つうか結局「対中国制裁を解除して貿易を行った」つう意味では欧米だって日本と大して変わりませんが。

 歴史の面では、満洲国の統治を、バランス感覚を以(もっ)て評価しようとした。

 どういう評価なんですかね?。満州国美化なら「道義的是非」という意味で問題ですが、それ以前に「劉は歴史をねじ曲げ日本ウヨにこびてる(中国政府)」として「無駄に中国政府の反発を買う」という意味でも馬鹿げてるでしょう。

 日中関係を「友好/非友好」の二分論で単純化して見てはならない、そして中国政府との関係だけで評価してはならない、という強いメッセージである。

 そもそもそこまで単純な見方をしてる人間なんか日本のどこにいるんでしょうか?。そりゃまあ、日本ウヨなんかは明らかに「非友好」「反中国分子」で、それ以外は「広い意味での日中友好支持者*7」ですが、「日本ウヨのような反中国分子以外は皆、中国認識が同じ」なんてことはないわけです。

*1:著書『現代中国知識人批判』(徳間書店)、『天安門事件から「08憲章」へ 』(藤原書店)、『最後の審判を生き延びて』(岩波書店

*2:このエントリを書いた後に花伝社という本屋も劉の本を出版した

*3:もちろん米国は朴チョンヒ政権やピノチェト政権は容認、擁護してますからデマもいいところです。

*4:その理屈だと「劉が刑務所にぶち込まれた」のも「諸悪の根源は挑発的な反共分子・劉にある」のでしょうねえ(皮肉のつもり)。

*5:もちろん虚偽であるなら、このまま放置しておくのは「劉への名誉毀損」になって明らかにまずすぎるので「劉暁波本の翻訳者」など、この問題について責任を持って修正できるだけの能力がある誰かが修正すべきでしょう(俺にはそんな能力はないのでもちろんなにもしません)。なお、「虚偽かどうか」は残念ながらウィキペディアを見る限りでは解りません。

*6:著書『中国近代外交の形成』(2004年、名古屋大学出版会)、『近代国家への模索 1894-1925〈シリーズ 中国近現代史 2〉』(2010年、岩波新書)、『21世紀の「中華」:習近平中国と東アジア』(2016年、中央公論新社)、『中国のフロンティア』(2017年、岩波新書)など

*7:俺ももちろんその一人です。つうかほとんどの人間は「広い意味での日中友好支持者」でしょうが。