今日も「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(11/7分)(追記・訂正あり)

【その1】
西岡力ブログ「追加制裁の必要性と現実性」
http://tnishioka.iza.ne.jp/blog/entry/2500895/

北朝鮮は3年前の平成20年8月、従来の「拉致問題は解決済み」という立場を改め、「拉致被害者に関する調査やり直し」を約束した。ところが、福田首相の辞任を理由に同年9月にその約束を反故にした。

西岡はデタラメなことを言うなと。北朝鮮が約束を反故にしたのは「福田氏が辞任したから」ではなく「福田氏の辞任によって福田氏が約束した『チャーター便規制解除』が日本(後継の麻生政権)によって反故にされたから」だ。
俺が以前「今日も「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(10/17分)(追記・訂正あり)」
http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20111017/5064208021
で指摘したことだが、この北朝鮮の「調査する」という約束は
『「日朝間の人的往来の規制を解除し、航空チャーター便の規制解除」するという福田内閣の約束』とバーターなのである。したがって後継の麻生内閣が「チャーター便規制解除」をしなければ北朝鮮が「約束が違うじゃねえか、じゃあ、あの約束はチャラな」となるのはしごく当たり前の話。
西岡は「北朝鮮は約束を守れ、しかし俺たち日本は守らない」なんてふざけた話が世間に通用すると思ってるのだろうか?
そしてこの話から分かることは「小泉訪朝」もそうだが、拉致問題など北朝鮮問題で一定の成果を上げてきたのは西岡らの強硬論ではなくハト派外交だという厳然たる事実である。
「チャーター便規制解除の約束を福田内閣がしたこと」を平然と無視し、「これは我々が主張する経済制裁の成果」と強弁する西岡らには呆れる。
なおこのチャーター便規制解除とバーターで調査という話をまとめる交渉で福田氏の側近の一人として動いたのが、今回訪朝を計画した衛藤氏だそうだ。

総連幹部が訪朝できないことは、北朝鮮にとって実際的にダメージがある。制裁対象の徐議長や許責任副議長の代わりに南副議長が訪朝し、金正恩後継問題を含む政治指導を受けているが、それができなくなる。
來年2月から4月に北朝鮮が計画している「強勢大国」*1記念行事(金日成生誕100周年、金正日70歳)に総連中央幹部が全員参加できなくなる。

 もちろんダメージがないわけはないが、その程度のことが北朝鮮にとって日本との交渉を考えるほどの大ダメージといえるのだろうか?

参考:北朝鮮は20年8月の約束の際、見返りとして人的交流制限解除をチャーター便解除とともに要求した。

で、その要求を福田政権がのんだから、北朝鮮は約束したんだろ?

制裁消極論への反論
1.裁判で負ける可能性

裁判で負けない、なぜなら「これこれこういう理屈で合法だから」と言うかと思ったら

裁量範囲の逸脱を総連が主張する場合、彼らに立証責任。

だの

そもそも1950年代、60年代までは総連系在日朝鮮人には原則として再入国許可を与えていなかった。総連が社会党などを使って北朝鮮との自由往来を求める政治運動を起こし、70年代前半、韓国が北朝鮮と対話を開始したことを受けて再入国許可を出すようになった。

だの書くのには呆れてしまった。
前者の「違法性の立証責任が原告側にある」というのは何ら「裁判で負けない理由」にはならない(一般論で言って、行政行為の違法性の立証は楽ではないが、不可能ではないので。現に原告が違法性を立証して勝訴した行政訴訟も当然、過去にある)。
後者の「過去に再入国許可を出さなかったことがあるが裁判にならなかった」というのは単に総連側が裁判戦術より政治闘争を採用しただけの話で、当時、その措置が合法だったことなど意味しない。

2.6者協議などの妨げになる。
北朝鮮が米国や韓国への接触を行ない、6者協議再開に言及するのは来年の祝賀行事のため少しでもコメなどがほしいからで、彼らの方に接触の必要がある。日本が拉致を理由に制裁を追加してもそれを放棄するとは思えない。

西岡の上げる理由が正しいかどうかはともかく、俺も6カ国協議をぽしゃらせることはさすがにしないのではないかと思う。それをすると日本だけではなく6カ国協議に乗り気らしい他の4カ国(アメリカ、韓国、中国、ロシア)も敵に回す恐れがあり、いい策とは言えまい。
まあ、西岡らは「6カ国協議は無意味」と言った過去があるので、本心では「6カ国協議がぽしゃった方がいい」と思ってるのだろうが。

3.(行われているかもしれない)水面下の日朝接触の妨げになる
水面下交渉で3年前の調査やり直し約束に戻れば、追加分の制裁解除を行なうと北朝鮮に伝えれば、むしろ交渉促進材料になりうる。

いや、誰が考えても日朝交渉の妨げにしかならないと思うが。北朝鮮に「福田が約束したチャーター便規制解除をやれば今すぐにも調査やり直しに応じる」と反論されるのが関の山だ。
そして追加制裁などしたところで「中国へのレアアース販売」「ガスパイプライン計画」などであの国は何とか苦境を乗り切ることが出来るだろう。むしろ追い詰められているのは「拉致被害者家族が高齢化し、いつ死んでもおかしくない日本」の方だ。
まあ、西岡らにとっては「北朝鮮打倒」が本心で、「拉致被害者救出」など本心じゃないし、今の家族会は「家族が拉致被害者に会えずに死ぬのは全て北朝鮮が悪い」と西岡らがいえば「そうだ、そうだ」という集団だから、拉致被害者家族が拉致被害者に会えないまま何人死のうと知ったことではないのだろうが。

*1:原文のまま。「強盛大国」が正しい。北朝鮮ウオッチャーを自称する男が誤記するなんて恥ずかしいとは思わないか?