新刊紹介:「前衛」3月号

「前衛」3月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。
http://www.jcp.or.jp/web_book/cat167/
 以下は私が読んで面白いと思った部分のみ紹介します。(詳しくは3月号を読んでください)

■特集「東日本大震災1年、復興をめぐる課題と対決点」
【本格的な復旧・復興に何が求められているのか(高橋千鶴子)】
農林水産業の再生にどう道筋をつけるか(有坂哲夫)】
【岩手宮古市 水産業で生きる(田中尚)】
【子どもとともに地域と学校の「復興」を考える(田中孝彦*1)】
(内容要約)
東日本大震災復興の課題と解決策について「総論」(高橋氏)、「農林水産業」(有坂氏、田中氏)、「教育」(田中氏)と言った形で論じている。詳しくはお読みいただけると幸い。



■特集「福島原発事故1年、問われる原子力行政」
【事故の反省と教訓にたった原子力行政を:政府の「原子力規制庁」案について(佐々木勝吉)】
福島原発事故とシビアアクシデントの歴史(舘野淳*2)】
【切迫する日本の地震原発の危険(立石雅昭)】
放射能汚染から健康と生活を守る(野口邦和*3)】
(内容要約)
 原子力行政について、それぞれ「原子力規制庁への評価」(佐々木氏)、「シビアアクシデント(重大事故)の歴史を振り変える」(舘野氏)、「地震津波の恐怖という問題」(立石氏)、「除染、食品規制の問題」(野口氏)について論じている。
 規制庁については「大筋では支持できる」とした上で、「実際に規制庁がスタートしないと何とも言えない」というのが佐々木論文の内容だろうと理解した(民主党野田政権は必ずしも脱原発に積極的とは言えないので)。
 舘野論文の内容は「過去のシビアアクシデントを十分検討しなかったことが福島事故を生んだ」というものだろう。
 野口論文の扱った問題については以下のエントリが参考になると思う。

紙屋研究所
「安斎育郎『増補改訂版 家族で語る食卓の放射能汚染』」
http://d.hatena.ne.jp/kamiyakenkyujo/20110821/1313885806


■「「国のかたち」を変える民主党政権の安保政策の危険性(下)」(山根隆志)
(内容要約)
赤旗の記事で代替する。

赤旗
主張『南スーダン派兵、憲法をなんと思っているのか』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2012-01-16/2012011602_03_1.html
主張『米軍への空中給油、アジアの緊張高めていいのか』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-12-07/2011120701_05_1.html


■「大増税押しつける「身を切る改革」の欺瞞:選挙制度改革・議員定数削減問題をめぐる情勢の現局面」(白髭寿一)
(内容要約)
赤旗の記事で代替する。

赤旗
主張『衆院比例定数削減、増税強行に形(なり)ふり構わぬ暴論』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2012-01-19/2012011901_05_1.html
政党助成金11党が請求、なくせば議員457人分の経費相当』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2012-01-18/2012011802_02_1.html



■「消費税増税社会保障の一体改悪」反対のたたかい」(堤文俊)
(内容要約)
赤旗の記事で代替する。

赤旗
主張『「一体改悪」議論、「将来世代のため」は欺瞞(ぎまん)だ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2012-01-22/2012012201_05_1.html
主張『社会保障・税一体改革、「大きなウソ」の暴走許さない』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-12-03/2011120301_05_1.html


■「労働市場関係から見た若者の現在」(後藤道夫)
(内容要約)
「非正規雇用(不安定雇用)の増加」「低賃金労働者の増加」「長時間労働の増加」といった若者の厳しい労働状況を指摘。
こうした問題を解決するための政治の変革と、それを実現するための労働組合、社会運動の奮起が求められるとしている。


■「欧州経済統合の矛盾と金融・財政危機」(高田太久吉*4
(内容要約)
ギリシャやイタリアで発生した経済危機についての分析が書かれているが、とうてい俺には理解できないので、そういう分析だという指摘にとどめる。


■論点
【TPP こんな交渉に参加しようというのか(北川俊文)】
(内容要約)
赤旗の記事紹介で代替する。


赤旗
『TPP交渉に「守秘合意」、発効後4年間、内容公開せず』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-12-22/2011122201_02_1.html
『TPPで安い薬 ピンチ、「知財保護」でもうけ独占狙う米、「国境なき医師団」が警告』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-12-09/2011120901_01_1.html


【オウム裁判”終結” 検証すべき二つの視点(柿田睦夫*5)】
(内容要約)
赤旗記事の紹介で代替する。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-11-22/2011112215_01_1.html
赤旗「オウム裁判終結、事件終結 言えない、警察・行政にも責任」
 オウム真理教の大規模な施設があった山梨県の旧上九一色村でたたかってきた日本共産党元村議・竹内精一さん(83)の話
 裁判が終わって個々の事件の現象はある程度分かりました。しかし、事件の本質的な部分、つまりオウム真理教という集団が、なぜ、どういう考えでサリンを作って悪質な殺人事件を起こしたか、若者たちがなぜ組織されていったかは分からずじまいです。事件が終結したとは到底、言えません*6
 1989年に上九一色村にオウムが進出して、彼らが撤退するまで7年間、私たちは彼らを監視してきました。廃液の垂れ流し、掘削による騒音、私たちの監視に対する脅迫…。それにも負けずオウムの危険性を告発してきたのに、警察と行政の対応は実に鈍いもので、松本サリン事件(94年)、地下鉄サリン事件(95年)が起こってしまった。警察と行政がわれわれの告発をきちんと受け止めれば、これらは防げたのではないでしょうか。警察と行政の責任も厳しく問われなければなりません*7

 そして小生は柿田氏や竹内氏が指摘しない視点として「麻原から1億円もらったダライラマの責任」をあげたいのであります。日本人はあの外道(ダライラマ)に甘すぎだろ。ダライ大好きっ子の一人らしいid:noharra先生に嫌みとしてIDコールしとくか。

参考

http://j.people.com.cn/94709/6562097.html
人民日報「真相:ナチスオウム真理教とダライとの関係」
 オウム真理教の起こした一連の凶悪事件は世界に衝撃を与えた。
(中略)
 地下鉄サリン事件の発生後、平和を愛する世界中の人々が怒りの矛先を麻原彰晃オウム真理教に向けていた頃、ダライは共同通信を通じて、「オウム真理教は仏教の教義を広める宗教であり、麻原彰晃は自らの友人である」との意見を発表し、大きな反響を呼んだ。ダライはなぜこのような意見を発表したのか。それは、麻原彰晃という邪教の指導者が実のところダライの「生徒」だったからだ。ダライのこのような汚れた過去に対し、良心を失ったメディアは見て見ぬふりをし、二人の関係をなかったもののようにしている。
(中略)
 1987年、麻原はインドを訪れ、ダライと会っている。この時、ダライは麻原に対し、「親愛なる友人よ、日本の仏教はすでに退廃してしまった。このまま行けば、仏教は日本で消えてしまうだろう。あなたは故郷で本当の仏教を伝えなければならない。仏の境地を知るあなたは最良の人選だ。あなたが日本で布教することを私はとても嬉しい。そうすることは私の仕事を助けることでもある」との内容の発言を行った。この会見時、ダライは麻原に祝福を与え、「師弟関係」を結んだといわれる。
 ダライは自らの「生徒」の働きにとても満足していた。1995年の事件が発生するまでの8年間、二人は5回にわたって顔を合わせ、手紙のやりとりをしばしば行っていた。1989年、麻原は10万ドル(1億円)をダライに寄付し、ダライは証書と推薦状をもってこれに返答した。ダライは東京の関連部門にあてた推薦状の中で、「麻原彰晃は能力のある宗教的指導者であり、オウム真理教大乗仏教を広め公共の善を促す宗教だ」とし、「オウム真理教への免税を許可するべきだ」とまで書いている。オウム真理教はこの証明書と推薦状によって、日本政府が正式に承認する宗教団体となった。その後、大量の資金を蓄積してサリンの研究と生産を行ったのは周知の通りだ。
 麻原は日本で合法的な地位を得た後、ダライに感謝状を送り、「私たちの希望はチベットができるだけ早くチベット人の手に帰ることです。私たちはそのためにできるだけの援助をしていきます」と述べている。麻原はダライの指示を受け、チベット地域に2回にわたってもぐりこみ、「布教活動」を行っている。麻原はダライが自らの指導者であることを正式に認めている。オウム真理教の教義や教則なども多くがダライを由来とするものだ。
 ドイツの週刊誌「フォーカス」は、「ダライの支援がなければ、麻原彰晃が自らの宗教帝国を作ることは不可能だった。ただの治療師であり詐欺師でしかなかった麻原が数年の短期間であっという間に大教団の教祖となるのも、ダライの支援がなければこれほど簡単ではなかったはずだ」と指摘している。ダライが麻原をこれほど重用したのは、麻原からの金銭支援をあてにしていたためだけではなく、麻原を通じて日本の仏教を改革したいと考えていたためだ。ダライが麻原と結託したのは、「チベット独立」を支援する弟子たちを日本に増やしたかったからにほかならない。ダライのこの勝手な計算は邪教の崩壊という結果に終わった。自己の信徒の生命を損なう邪教が目立つ中で、ダライの高弟である麻原彰晃が作り出したオウム真理教は、教団外の罪のない人々をテロ攻撃する教団として、人々に大きな衝撃を与えた。


■暮らしの焦点
パナソニックは雇用を守る責任がある:液晶ディスプレイ茂原工場の休止・売却問題(小倉忠平)】
(内容要約)
 日本共産党千葉県議・丸山慎一氏のブログ記事の紹介で代替する。

パナソニック東芝工場閉鎖、失業者出すなと千葉労働局に要請」
http://maru.on.coocan.jp/kiji/kiji2011/20111228roudoukyoku.html
「雇用守れ 買収側に要請、パナソニック工場休止で共産党産業革新機構に雇用確保を要請」
http://maru.on.coocan.jp/kiji/kiji2011/20111219kikou.html
パナソニック千葉茂原工場「休止」、身勝手・横暴 地域も破壊、労働者の雇用を守れ、丸山慎一県議に聞く」
http://maru.on.coocan.jp/kiji/kiji2011/20111130kiku.html
千葉茂原工場休止で要請、パナソニック社は雇用守れ、東京支社に日本共産党が要請」
http://maru.on.coocan.jp/kiji/kiji2011/20111117pana.html
パナソニック液晶ディスプレイの休止で、日本共産党が知事に申し入れ」
http://maru.on.coocan.jp/kiji/kiji2011/20111110kenni.html
パナソニック液晶と日立ディスプレイズへ、雇用確保の申し入れ」
http://maru.on.coocan.jp/kiji/kiji2011/20111109pana.html


■文化の話題
【美術:芸術家としての強固な思想:ベン・シャーン展(武居利史)】
(内容要約)
神奈川県立近代美術館葉山の「ベン・シャーン」展(公式サイト:http://benshahn2011-12exh.info/)の紹介。
神奈川では終了したが、今後、名古屋、岡山、福島で同様の展覧を行うとのことなので、近くの方なら見に行くことができる。

参考

http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2012/0115/index.html
日曜美術館『静かなるプロテスト 〜反骨の画家 ベン・シャーン〜』
 福島原発事故による放射能の甚大な被害。原子力が抱える人類規模の問題を、50年前、静かに告発した画家がいた。20世紀アメリカを代表する画家ベン・シャーン(1898〜1969)。
彼の晩年の代表作が、1954年の第五福竜丸被爆の事件をテーマにした「ラッキー・ドラゴン」シリーズ(1960)である。日本では、2006年に「ここが家だ〜ベン・シャーン第五福竜丸〜」というタイトルの絵本として出版され、大きな注目を集めた。焼津港を出港した船が漁をする様子、被爆の瞬間、死の灰、そして久保山愛吉さんの死など、事件の経過が克明に描かれた絵本。シャーンはその後も連作を描き続け、アメリカでも原子力の開発に警鐘を鳴らした。
リトアニアの貧しいユダヤ人の息子として生まれ、幼い頃両親とともにアメリカに移住したシャーンは、ニューヨークで石版工として働き、大学で学んだ後、画家の道を志す。出世作となったのは、二人の社会主義者の移民が強盗殺人のえん罪で処刑された「サッコとヴァンゼッティ事件」(1931)のシリーズだった。裁判の経過を淡々とドキュメント風に描いた作品は大反響を呼ぶ。
以後シャーンは常に社会の不正から目をそらすことなく、貧しい人々、弱い立場の人々の哀しみや痛みを深いまなざしで描き続けた。見る者の心にそっと手を差しのべるような絵。
福島の原発事故、格差社会に怒るアメリカの若者たちのデモ、時代はまさに国境を越え、シャーンが見据えた苦難に満ちている。
番組では20年ぶりに日本で大回顧展(絵画イラストなど200点、写真300点)が開かれるのを機に、ベン・シャーン芸術の今日的意味を読み解く。

【映画:脱原発の2つのドキュメンタリー『バベルの塔』と『第4の革命』(伴毅)】
(内容要約)
原発問題をテーマとしたドキュメンタリー映画バベルの塔』と『第4の革命』(公式サイト:http://www.4revo.org/)の紹介。


【写真:老舗フィルム会社が消える(関次男)】
(内容要約)
 コダックの破産法申請がネタ。日本のフィルムメーカー(富士フイルムコニカミノルタ)同様、経営多角化で何とか立ち直って、コダックフィルムを提供し続けてほしい、フィルムにはデジタルとは違う魅力があるという話。

参考

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120119/biz12011921240034-n1.htm
産経新聞「米コダックデジタル化に乗り遅れ 多角化突き進む富士フイルムと明暗」
 (注:富士フイルムは)04年には「第2の創業」を宣言。液晶パネル用光学フィルム(TACフィルム)に始まり、化粧品、医薬品と次々に新規事業に参入。「化学メーカー」として業容を拡大した格好だ。
 一方、コニカミノルタHDは06年にカメラ、写真フィルムなどの事業を分離した。こちらもTACフィルム事業に注力し、次世代照明として期待される有機EL事業も育成してきた。


■メディア時評
【新聞:消費税増税あおる全国紙の異常(金光奎)】
(内容要約)
消費税増税をあおる新聞各社への批判。すでに金光氏はこのコラムで「全国紙の消費税増税論批判」を何度もしているが。

参考
赤旗
「大手紙社説 この異常、消費増税先にありき、国民無視し 政権後押し」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2012-01-15/2012011501_01_1.html
「いまメディアで 消費税増税あおる大手紙、「赤旗」報道に「勇気出た」、翼賛批判・問題点ズバリ指摘」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2012-01-27/2012012704_03_0.html


【テレビ:なぜ視聴率競争が過熱するのか(沢木啓三)】
(内容要約)
テレビの視聴率競争が「政治ニュースよりも芸能ニュースやスポーツニュースの方が大きく取り上げられる」などの問題点を生んでいる事への批判。


■スポーツ最前線
プロ野球球団は企業の所有物か(佐藤恭輔)】
(内容要約)
巨人・清武騒動をもとに日本のプロ野球球団は企業の広告塔扱いされていると言う批判。

*1:著書『子ども理解:臨床教育学の試み』(2009年、岩波書店)、『子ども理解と自己理解』(2012年、かもがわ出版

*2:著書『廃炉時代が始まった』(1999年、朝日新聞社:2012年、リーダーズノート新書として復刻)、『これでいいのか福島原発事故報道』(共著、2011年、あけび書房)

*3:著書『放射能からママと子どもを守る本』(2011年、法研)、『放射能汚染から家族を守る 食べ方の安全マニュアル』(2011年、青春新書プレイブックス)、『これでいいのか福島原発事故報道』(共著、2011年、あけび書房)

*4:著書『金融恐慌を読み解く』(2009年、新日本出版社

*5:赤旗記者。宗教ジャーナリスト。著書『統一協会―集団結婚の裏側』(1992年、かもがわブックレット)、 『現代こころ模様―エホバの証人ヤマギシ会に見る』(1995年、新日本新書)、 『霊・因縁・たたり―これでもあなたは信じるか』(1995年、かもがわ出版) 、 『自己啓発セミナー―「こころの商品化」の最前線』(1999年、新日本新書)

*6:竹内談話の前半のここまで(オウム犯罪はなぜ起こったのか)が柿田氏の言う第一の視点

*7:竹内談話の後半(オウム犯罪はなぜ阻止できなかったのか、早い段階で摘発できなかったのか)が柿田氏の言う第二の視点