今日のMSN産経ニュース(3/3分)(追記・訂正あり)

■【土・日曜日に書く】論説委員・石川水穂 際限なき対中支出、歯止めを
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120303/plc12030303340002-n1.htm
 もちろん俺だって「中国への支出」で必要のあるなしをきちんと判断すべきだと思います(つうか中国に限らず何でもそうですが)。
 しかし、この人が因縁つけてるのは日本が戦時中、中国に捨ててった毒ガス兵器の処理費用ですからね。「処理が義務づけられてるのにアホか」と思います。その性質上、別に義務ではない「中国へのODA」なんかと違って日本に処理しないなんて選択肢があるわけないでしょうに。「毒ガス兵器処理に金がかかる分、中国には申し訳ないが、中国へのODAを減らせないだろうか」とかいうならまだしも。
反中国で極右の産経らしいというか何というか。大体「廃棄された毒ガス」には限りがあるんですから、その処理費用に話を限定すれば「際限はある」んですけどね、当然。

この遺棄化学兵器の問題には、宮沢喜一*1内閣の官房長官村山富市内閣の外相を務めた河野洋平氏が深くかかわっている。
(中略)
日本は宮沢内閣の5年1月、この条約に署名し、村山内閣*2の7年9月に批准した。さらに、小渕恵三*3内閣の11年7月に締結された遺棄化学兵器処理に関する日中覚書は、日本が処理費用をすべて負担し、将来の事故も日本が補償するという内容だった。

 ネトウヨじゃあるまいし、昨日は「河野談話」、今日は「毒ガス処理」って毎回、毎回、河野氏に因縁つけるのも大概にしたらどうなんですか?。もちろん官房長官、外相がこういう問題に無関係のわけないですから、宮沢内閣での条約署名、村山内閣での批准にそれぞれ官房長官、外相としての河野氏は関与してるでしょうね。
 で、宮沢内閣官房長官・村山内閣外相として河野氏の名前を出しても、宮沢内閣の外相・渡辺美智雄*4と、村山改造内閣官房長官野坂浩賢*5の名前を出さないのは何故ですか?
 そして小渕内閣には河野さんは入閣してないから「遺棄化学兵器処理に関する日中覚書」なんか全く関係ないじゃないですか?
 何故小渕内閣官房長官野中広務*6、外相・高村正彦*7の名を出さないんですか?。いや、わかりますけどね、すべて河野が悪いという話にするのに不都合だから出さないってことは。
 そして条約の批准ってのは国会承認がいると思うんですがそれも無視ですか?

1974、82、95年に中国・黒竜江省で起きた遺棄化学兵器による3件の事故をめぐる訴訟で、1審・東京地裁は国に1億9千万円の支払いを命じた。国側は、うち1件の事故原因となったイペリット入りのドラム缶が旧日本軍のものより一回り大きく、旧日本軍製にはないアルファベット文字の表記があることを突き止め、平成16年4月の控訴審第1回口頭弁論で、「旧日本軍の兵器とする証拠は十分ではない」とする控訴趣意書を提出した。
 ほかにも同種の訴訟が継続しているが、この訴訟は中国人原告の敗訴が確定している。

まーた、産経らしいうさんくさい文章ですね。こういうインチキテクニックは社内教育で教わるのか、自然と身につくのか教えてほしいですね(毒)
「中国人原告の敗訴が確定した」として、それは平成16年4月の控訴審第1回口頭弁論での「旧日本軍の兵器とする証拠は十分ではない」とする控訴趣意書が認められたからなんですか?
本来、俺が判決文を確かめるべきなんですが、この記事の文章で確かめろというのは至難の業だと思うので、この文章への疑問提示だけ書くことにしましょう(できれば産経の方で、読者が確かめられるように最終判決の日時とか出典でも表記しろよと思いますが)
 なぜか、「控訴趣意書が出された」と書いても、はっきりと「控訴趣意書が認められた」と書かず「国が勝った」としか書かないと言うことは、おそらくそうじゃなくて、別の理由による敗訴なんでしょうね。それにそもそも「民事賠償責任」の問題と、日中間での「国際法上の毒ガス処理の問題」ってのはまた別問題なんでしょうし(「民事賠償責任がない=毒ガス処理しなくていい」とはおそらくならないでしょう)。
 嘘ではないがあいまいな文章で誤読を狙う「消防署の方から来ました、消火器の購入を(消防署の方角から来たという意味であって消防署関係者なんて一言も言ってないぜ、公的機関による販売と誤解したのは向こうが悪い)」作戦は産経の得意技ですから。こちとら「オオカミ少年・産経」を信じるほどお人好しじゃありませんので。
 そして「同種の訴訟」では現在、国は勝訴してるんですか、敗訴してるんですか、どうなんですか?
 あいまいにごまかしてるということは「日本が廃棄したんじゃない!」という産経の言い分は認められてないんでしょう。

18年2月の衆院内閣委員会で、当時の内閣府遺棄化学兵器処理担当室長は「正式に中国やソ連化学兵器が引き渡されたという文書が発見されれば、基本的な枠組みが変わってくる」と答弁した。
 しかし、政府は今も、「引き渡したことを明確に証明する書類は依然、見つかっていない」と言い続けている。

 言い続けるも何も「産経の手元」には「引き渡したことを明確に証明する書類」でもあるんですか?。

*1:池田内閣、福田内閣経済企画庁長官、佐藤内閣で通産相、三木内閣で外相、鈴木内閣で官房長官、中曽根内閣、竹下内閣で蔵相。首相退任後も小渕内閣森内閣で蔵相。

*2:正確には村山改造内閣

*3:竹下内閣官房長官、橋本内閣外相を歴任

*4:鈴木内閣で蔵相、中曽根内閣で通産相政調会長

*5:村山内閣で建設相

*6:村山内閣で自治相・国家公安委員長

*7:森内閣で法相、小渕、福田内閣で外相、安倍内閣で防衛相