今日のMSN産経ニュース(10/17分)(追記・訂正あり)

■【正論】筑波大学大学院教授・古田博司 日本軍と戦わない屈折が反日
http://sankei.jp.msn.com/world/news/121017/kor12101703180000-n1.htm
 この記事に俺は

近代史上、韓国は日本軍と戦ったことがない。/正規軍じゃないが義兵闘争無視かよ。他も突っ込み所しかねえな。

と言うブクマをつけました。あといくつか、無能な俺でも簡単に突っ込める場所を突っ込んでみましょう。
・古田は韓国民が安重根などを英雄視する事をテロリストなんぞ卑劣だなんだと言いますが、日本の歴史上だって暗殺者が英雄視されたことはあるわけです。
 たとえば維新の志士にとって、井伊直弼暗殺者たち(桜田門外の変を実行した水戸浪士たち)は英雄視されていたと思いますが、それを古田はどう説明するんでしょうか?。卑怯者と批判しますか?
・古田は「南京事件は(中国などの主張する)被害者数が年々右肩上がりに増えている」等と言いますがこれは弁解の余地のない明らかなデマです。そんな事実はどこにもない*1。今時南京事件否定論者ですらある程度狡猾な人間は絶対に言わないレベルのデマです。「被害者数主張が右肩上がりに増えているという証拠を出せ」と言われたら、絶対に出せませんから。
・長征のことを「国民党から退却しただけじゃん」とバカにしてるのには吹き出してしまいました。「撤退」を「転進」、「全滅」を「玉砕」と呼んでごまかしてた国の国民が言える台詞じゃないでしょう。


■【from Editor】南京取り立て裁判の怪
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121023/trl12102308050000-n1.htm
 産経の記事は毎度毎度とんちんかんですが今回はエース級ですね。
「ああ、はいはい、また南京事件否定論ね」と思ったらそうではなくてびっくり仰天。いや南京事件否定論の話ですが今回のトンデモ主張はそこじゃありません。
 何でも展転社という歴史捏造主義本の版元が中国で南京事件被害者の中国人女性に民事訴訟を起こされたそうです。で中国から訴状も届いた。にもかかわらずほったらかしにしたというのだから呆れます。争って負けた訳じゃ全然ない。
 まあ、そんな事をすれば、「原告勝訴」の判決が出るのは当然です。どこの国だってそうです。訴えられたのに応対しなければ普通そうなる。

中国で一方的に下された判決

って書いてますが訴状が届いたのに無視して、一方的も糞もないでしょう。「訴訟に応じる義務はない」ってのはその通りですが、応じなければ負けるんですよ、産経さん。
 で、原告が勝ったけれども外国の判決というのは中国に限らずそのままでは日本に対し法的効力を持たないし、展転社は中国に資産がないので、中国の裁判所判決を元に日本の裁判所に差し押さえ裁判をかけてきたという話です(外国裁判判決一般、あるいは中国の裁判判決の日本での効力を法的にどう解釈すべきかは俺は法律の素人なのでわかりません。id:scopedog氏は「法的に認められるか疑問」としてるようですが俺は素人なのでその解釈が正しいかどうかもわかりません)。どこに違法ないし不当なところがあるんでしょうか?
 中国人女性が日本の裁判所に裁判起こす義務はないし、中国の裁判所に起こす方が当然でしょう。自分の住む中国の裁判所に訴えた方が当然便利ですから(もちろんその判決がそのままでは日本で効力を持たないので改めて日本で裁判を起こさざるを得ずその場合、id:scopedog氏の言うように中国での判決の効力が認められないかもしれないと言う問題はありますのでデメリットもありますがそんな事は当人が判断することで第三者がどうこう言うことじゃない)。展転社が「中国での裁判は困る」といって「日本でやって欲しい」と何か法的措置を執ったのならともかく、この記事を読む限り「ただただほったらかし」のようです。お話にならない。

言論で反論したり、事実関係で争うことをせず、「精神的苦痛を受けた」として著者と展転社という日本の出版社をなんと南京の人民法院に訴えたのである。

と産経はまるで悪いことをしたような書きぶりですが、裁判やろうと、言論で争おう(で,その場合、反論の場は誰が提供するんですか?。産経?)と人の勝手でしょう。
 展転社に非がなければ訴えられても無問題のはずです。そもそも裁判では事実関係が当然争われると思いますが「事実関係で争うことをせず」と意味不明なことを言うのはどういう脳味噌をしてるんでしょうか?
大体、この理屈だと「ウヨが言論戦ではなく裁判に訴えた大江『沖縄ノート』訴訟や『百人斬り訴訟』はどうなるのか?。アレも不当なのか?」と普通誰でも思うでしょう。
 で、俺はこの記事を途中まで読んで「ああ、なるほど、展転社ってのは金持ってるからどうせ負けても構わないと思ってたのか」と思いました。
 しかしそうではないらしい。「中国で敗訴判決が出てもそれで終わりさ、痛くもかゆくもない」と何の根拠もなく思ってたらしい(id:scopedog氏もその解釈です)。実際には東京地裁に差し押さえ裁判が起こされるわけですが、こんなのは法律知識がなくたって誰だって予想できると思いますが。つうか「金払わないで済むなら負けても構わない」って神経も相当酷いですが。
 というのもこんな泣き言を産経は書いてるからです。

こういっては何だが、展転社は社員数人の弱小出版社である

だから何ですか?。そんな事は裁判の訴状が届いたのにほったらかしにしたアホ行為を免罪しません。

有識者が立ち上がって「南京裁判 展転社を支援する会」が発足した。会長は評論家の阿羅健一氏である。同会は裁判費用をふくむカンパを募っている。

阿羅ってのは南京事件否定論者の古株です。しかし南京事件否定論の是非以前にこんなお粗末な裁判を支援する人がどれだけいるんでしょうか。
それにしても産経が「ある日本人著者」として誰が何という本で訴えられたのか、書かないのは何故なんでしょうか?
ちなみに「南京裁判 展転社を支援する会」でググってみたところ、展転社サイト(http://www.tendensha.co.jp/saiban/241017.html)によれば訴えたのは夏淑琴氏で訴えられたのは松村俊夫のようです。しかしこの会の決起集会呼びかけ人にあの「文春マルコポーロホロコースト否定論記事で廃刊にし、WILLに土井たか子は在日というデマ記事を載せた花田」がいるのには吹き出してしまった。懲りない奴だ。他の面子も「チャンネル桜・水島」「百人斬り・稲田」「つくる会・藤岡」と言ういつもの面子。
なお、産経は

南京事件の被害者と名乗る他の女性も、同じ展転社の書物や著者を訴えているが、それは東京でのことだ。

と書いてますが、「他の女性」ってのは李秀英氏です。李氏の場合、松村だけでなく東中野も訴えてますが。


【追記】
この裁判の件については、誰かの妄想・はてな版『夏淑琴氏への中傷行為に関する裁判に乗じた愛国詐欺募金の受付始まる』(http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20121024/1351082875)の方が俺よりずっと詳細にこの問題に突っ込んでいるので紹介しておきましょう。

*1:もちろん仮に増えていたとしてもそれだけではデマだとは言えません。新証拠の発見によって増えることは可能性としてならあり得るから、証拠を吟味しないと何とも言えません。また増えてることが問題だとしてもそれは増加後の数字がおかしいと言うだけであってなかったことには即なりません