いつもどおりid:noharra氏に突っ込む(10/26分)(追記・訂正あり)

 IDコールせずに「陰口叩いてる」と野原本人や第三者に言われても不愉快なのでIDコールしておく。

id:noharra
リチャード・アーミテージ元米国務副長官とハーバード大ジョセフ・ナイ*1教授は野田佳彦政権が打ち出した2030年代に原発稼働ゼロを目指す方針について「受け入れがたい」と強調した。>何を偉そうに言ってるんだ?

部外者の癖に「朝鮮学校の教育」に因縁つけるゲスid:noharraへ一言。
「何を偉そうに言ってるんだ?」
なお、id:noharra君とやり合っていた高林氏のエントリをこの際紹介しようかと思う。

2010年4月26日 (月) 朝鮮高校を無償化対象とするのは当然のこと①
 鳩山政権の目玉公約のひとつである高校授業料実質無償化が3月31日に法案として成立、4月1日より施行されました。私立高校の場合には自己負担が残るという格差問題など今後改善すべき課題があるものの、中高等教育における無償教育の漸進的導入を義務づける「社会権規約」第13条第2項(b)(c)を留保してきた日本が、ようやく基本的国際人権法を遵守する方向性を示したことは、大いに意義があることです。
 ところが、朝鮮高級学校への無償化適用を先送りしたことにより、この成果は色あせました。中井国家公安委員長・拉致担当相が日本人拉致問題をめぐる朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)に対する制裁に矛盾するとして適用除外を求め、鳩山首相が「本国の教育課程との一致が確認できない」旨の発言をするなど迷走した挙句に、「第三者機関で審査し決定する」との結論に至ったものです。ちょうど日本の「人種差別撤廃条約」履行状況に関する政府報告書を審査している最中だった国連の人種差別撤廃委員会は、さっそく3月16日に日本政府に対し改善勧告を行うに至りました。
 朝鮮高校の無償化適用除外は、いかなる合理性もない、不当差別以外の何物でもありません。第一に、弁護士団体や人権団体などが発した数多くの声明が指摘するように、社会権規約(第13条)、人種差別撤廃条約(第5条)、児童権利条約(第13条)など、国際人権条約はいずれも教育の平等を「すべての者」(「国民」ではない)に適用することを締約国に義務付けています。さらに重要なことは、民族的少数者がその居住国で自らの文化を継承し言語を使用する権利が、自由権規約(第27条)や児童権利条約(第30条)において保障されていることです。つまり、これら諸条約の締約国は、国籍を問わない全住民の教育の平等、また民族的少数者の民族教育権を保障することを義務付けられているわけです。日本もこれらの条約をすべて批准しているのですから、当然かかる法的義務を負っているのであり、国連の各人権委員会から朝鮮学校の処遇について繰り返し是正勧告がなされているのは当たり前のことなのです。したがって、特定の民族教育を一律の教育助成政策から除外することは、国際法違反の差別行為に他なりません。
 第二に、拉致問題と絡める議論は筋違いもはなはだしいものです。朝鮮国家の犯罪と、日本で生まれ今を生きる在日朝鮮人の子供たちの教育は何の関係もありませんし、朝鮮学校には韓国籍日本国籍の生徒も多数在籍しているのですから(「朝鮮籍」ですら、「北朝鮮国籍」を意味するものではなく、外国人登録法上のカテゴリーにすぎないことは衆知のことです)。李英和関西大学教授らは、朝鮮学校の「韓国籍」生徒は便宜的に韓国国籍を取得した朝鮮総聯系商工人の子弟にすぎないと主張していますが、3月6日付東京新聞朝刊にその発言が掲載された高龍秀・甲南大学教授*2のように、民族性維持の観点から朝鮮学校に子どもを送る韓国籍者も少なくないこと*3、総聯組織とは関係なく、純粋に海外での仕事や留学等の事情から韓国籍を取得した*4人も多い(私の研究者仲間にもいます)ことはれっきとした事実なのです。(つづく)

2010年4月26日 (月) 朝鮮高校を無償化対象とするのは当然のこと②
 第三に、「教育内容を確認しがたい」という首相らの発言も事実に反します。朝鮮学校地方自治体から各種学校の認可を受けカリキュラムを提出しており、教育課程・内容を紹介する多数の書籍や映画もあります。学校側も積極的に授業を公開していますし(主宰者も各地の学校を何度も見学しました)、教科書も朝鮮語ができれば読むことができます(政府にもハングルを読めるスタッフくらい、たくさんいるでしょう)。朝鮮学校の教育課程が一部の民族科目(朝鮮語、朝鮮地理、朝鮮歴史など)を除いて日本のそれと大差ないことを確認する手段はいくらでもあり、「教育内容を確認しがたい」というのは、怠慢か、ためにする理屈であると言わざるを得ません。国立大学のほぼすべて、公・私立大学の過半数が朝鮮高校を高校相当の学校として受験資格を認めている事実も、考慮されなければなりません。
 確かに朝鮮学校朝鮮総聯系の事業であり朝鮮の「在外公民教育」という位置づけがされているので、一部科目(歴史、社会など)に朝鮮国家の見解が一定程度反映されている面はあるでしょうが(李英和氏らがことさらに指摘していること)、それは韓国籍の親からみても気にならない程度のものと証言されています(例えば、上記の高龍秀氏の発言)。朝鮮学校のカリキュラムは在日朝鮮人独自で編成されているのですから。
 2003年9月に文部科学省がインターナショナルスクールや外国人学校に高校卒業と同等の大学入学資格を認めた際にも、国際認証機関による認証を受けた学校と、本国の教育課程の一部として位置づけられた外国人学校を高校相当と認めるという基準がつくられ、朝鮮高校はいずれにも該当しないとして(日本が朝鮮を国家承認していないため)、各大学の個別審査の対象とされました。今回も同じ基準が適用されたわけですが、それならば、朝鮮学校は完全に朝鮮本国の教育課程に組み込まれ、本国並みの思想・個人崇拝教育が行われていると確認されたときに、初めて高校相当と認められるという理屈になり、「朝鮮と同様の思想教育をしているから除外する」という主張と辻褄が合わなくなります(そもそも日本の教科書検定もそうであるように、いかなる国であれ「国民教育」は国の政治的立場から完全に自由ではありません)。いずれにしても、朝鮮学校の「祖国」はれっきとした国連加盟国なのですから、欧米系のインターナショナルスクールや外国人学校中華学校、韓国学園、インドネシア人学校などを無償化対象として、朝鮮高校を除外する合理性はありません。日本の国家承認の有無が問題なら、なぜ台湾系の中華学校は、大学入学資格でも無償化でも適用対象になるのでしょうか。
 大阪朝鮮高級学校が大阪代表として全国高校ラグビー選手権大会に出場しベスト4まで勝ち上がったこと、その後の選抜大会でも準優勝したことは記憶に新しいところです。そんな学校を、政治的思惑だけで他の高校と差別待遇することが許されるのでしょうか。
 日本は、植民地支配によって朝鮮人から言語や名前を奪ってきた過去の歴史を直視し、国際法を遵守し、多文化共生社会をめざす世界の流れをきちんと受け止める、理性をわきまえた国であるべきです。この問題は日本人の国際法に対する遵法精神を問うものであり、対処を誤れば、拉致問題に対する国際的な世論にも悪影響を及ぼすことになるでしょう。

*1:カーター政権で国務次官補、クリントン政権で国防次官補

*2:著書『韓国の経済システム』(2000年、東洋経済新報社)、『韓国の企業・金融改革』(2009年、東洋経済新報社)。民団新聞の記事(http://www.mindan.org/comm/douhou_view.php?bbsid=573&page=5&subpage=7&sselect=&skey=)に登場するのだから高氏は明らかに北朝鮮シンパという方ではないだろう。

*3:朝鮮学校以外に民族教育の場がないという理解なのだろう

*4:おそらく朝鮮籍では日本でパスポートがとれないのだろう。でその場合、民族のルーツである韓国籍を選択するのが一番自然だろう