新刊紹介:「経済」7月号(追記・訂正あり)

「経済」7月号の詳細については以下のサイトをご覧ください。興味のある記事だけ紹介してみます。
http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/

■巻頭言「日本政界の妄言」
(内容要約)
 橋下大阪市長慰安婦妄言は許されるものではないが、彼が妄言を吐いた背景には安倍首相ら自民党タカ派河野談話見直し論があったことは、
1)橋下市長が安倍氏らを「裏切った」「二枚舌」などと非難していることや
2)安倍氏らがまともに橋下批判できないこと
で明白であろう。橋下問題は彼個人の問題ではないのであり、彼一人批判しても問題は解決しない。
 また過去の侵略戦争の反省がまともにできない安倍氏改憲の資格がないことは明白である。


参考
誰かの妄想・はてな
『逃げる稲田、追う平山』(http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20130607/1370613274
『現状を考えると、橋下氏よりむしろ安倍氏に会ったほうがいいと思う』(http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20130524/1369415639
『橋下発言は日本社会が歴史修正主義を甘やかしてきた結果に過ぎない』
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20130514/1368538435
従軍慰安婦の認識における安倍自民党と橋下氏の違い』(http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20130516/1368717843

赤旗
『橋下「慰安婦」暴言の根っこに首相の認識、昨年「勇気ある発言」と絶賛 安倍氏
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-22/2013052202_01_1.html
『菅官房長官河野談話継承明言せず、赤嶺氏 「歴史ゆがめるな」、衆院内閣委』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-23/2013052302_01_1.html
『首相が橋下・高市発言を誘発、「侵略の定義ない」発言撤回せず』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-15/2013051502_03_1.html
 まあ、勿論他にも「安倍一派の慰安婦認識批判」(橋下と大して変わらない)は探せばあります。


■世界と日本
バングラディシュで工場倒壊(宮前忠夫)】
(内容要約)
内容要約にかえて以下の赤旗記事を紹介する。

赤旗バングラのビル倒壊 死者500人超、首相「多国籍企業にも責任」』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-06/2013050604_03_1.html


特集「南アジアと日本:インドを中心に(下)」
■「試練に立つインド現代民主主義」(内藤雅雄)
(内容要約)
 独立後インド民主主義の簡単な紹介。
1)インドは長い間、国民会議派が多数議席を支配する国民会議派システムとでもいうべき体制であった。
2)しかし1990年以降、そうした国民会議派の強固な支配体制は崩れ、連立政権が常態の時代に入る。
3)インドの政治において重要なファクターは「ヒンズー至上主義政党」インド人民党(1998〜2004年まで党首パジパイが首相を務めた)やジャナタ・ダルである。
 これらのヒンズー政党は必ずしも「反イスラム・反パキスタン」ではないが、「イスラムはインドから出て行け」などという過激分子がいることも事実である。こうしたヒンズー政党が過激分子を押さえ込むことができるかどうかは今後のインド政治に大きな影響を与えるだろう。過激分子が過激な主張で伸張し「国内の宗教対立やパキスタンとの関係」が悪化する最悪の事態だけは避けて欲しいものだ。


■「新自由主義経済とインド農業・農民の危機」(小嶋常喜)
(内容要約)
・Democracy Now!「30分に1人が自殺:借金と新自由主義改革に苦しむインドの農民たち」(http://democracynow.jp/video/20110511-3)が指摘するインドでの農民自殺者の増加を先ず指摘。
 その上で、新自由主義の問題は大きいがそれを強調することは「新自由主義蔓延」以前からあるインド農業の問題点を見えにくくなる危険性がある、新自由主義がもたらす悲劇は重大だが新自由主義は以前からの問題を助長したに過ぎないと論じる。
国民会議派政権の設置した政府調査委員会に寄ればインド農業には5つの問題点がある。
1)農業の近代化、機械化の遅れ
 トラクターの普及率や、肥料の使用量などからインド農業が未だに充分近代化されていないことが読み取れる。
2)灌漑設備普及の遅れ
 インドは雨季と乾季がはっきり分かれる気候なので人工灌漑設備なしでは農業は困難である。当然、灌漑設備の不足は「水不足で作物がうまく育たない→借金地獄→自殺」という最悪の結果を容易に生み出す。
3)公的金融の遅れ
 インドで多くの農民は高利の民間金融を利用しており低利の政府金融は利用されていない。これが「高利金融で返せない→借金地獄→自殺」の悲劇を生み出している
4)農業マーケティングの問題
 従来、農民の元売りへの販売には政府が一枚かむ体制が作られていた(農民保護のため、政府がいったん農民から適正価格で購入してから元売りに政府が販売する)。しかしインド農業政策の新自由主義化によって農民が直接販売することが原則となった(政府は関与しない)。
 しかしインドにおいては未だに文盲率が高いなど、農民の知的能力は決して高くない。アフターケア無しで単に農民を自由主義経済に放り込んでも「多国籍企業側に食い物にされる」危険性が強まるだけである。
5)農地改革の遅れ
 インドにおいては未だに農地改革が進展しておらずそのことが小作農にリスキーな経営を強制していると言える。
・1953年にインドでは「借金苦に困った農民が立て直しを図るが失敗し土地を奪われてそこに工場が建つ」という社会派映画「2エーカーの土地」が制作されたが現実のインド農業も「農民の生活苦」と言う意味では60年前のこの映画と残念ながら大きな違いはないと言える。


特集「TPPの交渉参加撤回を」
■「亡国のTPPを批判する」(醍醐聡)
(内容要約)
内容要約にかえて醍醐氏のブログその他をいくつか紹介しておく。

醍醐聡のブログ
『反TPPで870余名の大学教員が結集』
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2013/04/tpp870-91a5.html
『「聖域あり」が確認できたという喧伝のまやかし〜TPP交渉参加論の5つのまやかし(第1回)〜』
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/tpp51-ad7a.html
IWJ Independent Web Journal『「『国益』とは誰のための利益なのか」 TPP参加交渉からの即時脱退を求める大学教員の会・醍醐聰東大名誉教授インタビュー』
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/78448


■「TPPと日米同盟」(萩原伸次郎*1
(内容要約)
内容要約に変えて以下の記事を紹介しておく。

十勝毎日新聞『【TPP識者の視点】(2)横浜国大名誉教授 萩原伸次郎氏』
http://www.tokachi.co.jp/feature/201305/20130514-0015586.php
とだ九条の会blog『TPPは「第3の構造改革」−−衆院予算委・参考人質疑で萩原伸次郎教授陳述』
http://toda9jo.no-blog.jp/network/2011/02/post_eeae.html


■「日本の農業と食の安全を破壊するTPP」(暉峻衆三)
(内容要約)
内容要約にかえて以下の赤旗記事を紹介しておく。

赤旗
『農業所得 3483億円減、TPP試算 地域への影響明らかに、富山、米だけで4分の1喪失』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-23/2013052304_01_1.html
『TPP 食の安全守れぬ、穀田議員 添加物決議損なう』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-14/2013041404_03_1.html


■「地域医療の命運かかるTPP問題――韓国医療調査をふまえて」(武藤喜久雄)
(内容要約)
内容要約にかえて以下の記事を紹介しておく。

農民協同組合新聞『【TPP―医療(1)】財界の狙いは医療ビジネス拡大――アメリカ資本の参入で皆保険制度、解体の危険 日本文化厚生農業協同組合連合会代表理事理事長 武藤喜久雄』
http://www.jacom.or.jp/tokusyu/2011/tokusyu110607-13726.php
赤旗『国を滅ぼすTPP、韓米FTAに見る主権制約』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-03-04/2013030405_01_1.html


特集「アベノミクスは日本をどこに導くか」
■「バブルに賭けた安倍政権とアベノミクス」(二宮厚美)
■「『異次元金融緩和』政策のリスク:国債ビジネスの恩恵と『一億総債務者』化」(山田博文*2
(内容要約)
・二宮論文が全般的な批判であり、山田論文は金融政策に限定した批判である。
アベノミクスの問題点は「国民の所得を増やす政策がないこと」「むしろ消費税増税社会保障切り捨てなどの所得を減らす政策ばかりであること」である。現在の不況の要因の一つは「所得減少による内需縮小」であるのでそこに手をつけない、それどころか「消費税増税など内需縮小方向へ政策を行う」アベノミクスは最初から失敗を約束されている欠陥経済政策と言える。
アベノミクスのいわゆる「三本の矢」とは「1)成長戦略」「2)大規模公共事業」「3)大規模金融緩和」である。アベノミクスにおいては1)を成功させるためのカンフル剤として2)、3)が扱われていること(つまりアベノミクス支持の立場でも最も重要なのは本来1)であること)、しかしアベノミクスにおいて「ある種の新規性があるのは3)のみ」なのでアベノミクス礼賛派においても批判派においてももっぱら3)ばかりが論じられる傾向があることに注意が必要である。
・「1)成長戦略」は基本的には小泉政権の「構造改革論の焼き直し」と見るべきだろう。構造改革論が景気を回復しなかったことで1)の無力さは明白だろう。かつ問題なのは安倍政権が1)の中に「本心か詭弁かはともかく」ホワイトカラーエグザンプションや解雇自由化といった労働者保護政策切り捨て論を取り入れていることである。
・2)について。大規模公共事業が景気回復に一定の効果があるのは事実だがあくまでもその効果は限定的であるということは、大規模公共事業が実施されたが結局「小泉構造改革論」にとって代わられた小渕、森内閣時代の経済政策で明らかだろう。
・3)について。人為的に「円安、株価高」のバブルを作り出せば景気にも好影響という政策だが、
A)最近の株価、円相場乱高下により所詮バブルはバブルであることが明白になったと言えるだろう。実質経済の繁栄で株価高、円安が起こっているわけではないのでちょっとしたことで乱高下してしまうのである。
B)また現時点ではサラリーマンの所得上昇、企業の投資増加といった目立った成果は上がっていない。それどころ輸入品物価の上昇で、サラリーマン等の生活は厳しい局面に直面しているのである。


参考
赤旗
アベノミクス もうけるのは誰』
http://www.jcp.or.jp/akahata/web_daily/html/201305-abenomix.html
アベノミクスに危険な罠、好況見せかけ 消費税増税へ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-03-28/2013032801_01_1.html

【追記】
アベノミクスについてはわかりやすい批判エントリとして
紙屋研究所アベノミクス本を読む5 『日本の景気は賃金が決める』」
http://d.hatena.ne.jp/kamiyakenkyujo/20130617/1371406317
を紹介しておきます。「1〜4」については面倒なのでリンクは張りませんが、サイト内検索すれば見つかるでしょう。


NPOライフリンク「就職意識調査」
(内容要約)
ライフリンクの調査結果について紹介がされている。調査結果で衝撃的なのは「正直者が報われる社会だと思うか」と言う問いに「そうは思わない」と言う回答が65.1%、「日本社会について弱者を支援する社会だと思うか」と言う問いに「そうは思わない」と言う回答が65.0%というところだろう。
 もちろんライフリンク側もこの調査結果については検討の余地があるとはしている。就職に失敗した学生の回答率が高くなるといった偏りももしかしたらあるのかもしれない。
 しかし、「就職に失敗した学生が日本社会について『弱者に冷たい社会』と不信感を強めている」事は否定できない事実であるだろう。


参考
ライフリンク「就職活動に関わる意識調査」http://www.lifelink.or.jp/hp/0330_shukatsu_2013_.html
毎日新聞『就活:「不満」大学生7割 自殺対策NPOが聞き取り調査』
http://mainichi.jp/select/news/20130330k0000e040193000c.html


■「共通番号制 そのシステムの根本問題」(山下唯志)
(内容要約)
内容要約にかえて赤旗の批判記事を紹介する。

赤旗
『共通番号制 利点示せず、赤嶺議員への政府答弁書
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-16/2013041602_03_1.html
『共通番号制導入に巨費見込むが、ずさんさんざんIT予算、パスポート1枚1600万円?!、ネット申請 利用者少なく廃止も』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-25/2013042503_01_1.html
マイナンバー法案可決、共産党反対 プライバシー侵す、衆院委』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-27/2013042701_04_1.html
『内閣委、情報流出防げない、赤嶺氏 共通番号制は危険』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-28/2013042804_01_1.html
マイナンバー法案 欠陥続々、国民に必要性示せず 犯罪に無策、経済界「狙いは社会保障削減」』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-05/2013050501_02_1.html
マイナンバー法案可決、共産党反対 プライバシーを侵害、衆院
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-10/2013051002_01_1.html
『共通番号法案の廃案訴える、市民団体が国会内で会見』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-10/2013051014_02_1.html
『共通番号制は廃止に、プライバシー侵す ネット犯罪も、市民団体が危険性指摘』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-25/2013052515_01_1.html
『IT受注 国から55億円、消費税増税“立役者” 財務事務次官天下り企業、ビジネス拡大に人脈』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-06-13/2013061301_02_1.html

*1:著書『TPP』(2011年、かもがわブックレット)、『日本の構造「改革」とTPP』(2011年、新日本出版社)、『TPPと労働者、労働組合』(2012年、労働総研ブックレット)

*2:著書『これならわかる金融経済(2版)』(2005年、大月書店)