新刊紹介:「前衛」7月号

「前衛」7月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。
http://www.jcp.or.jp/web_book/cat458/cat/
 以下は私が読んで面白いと思った部分のみ紹介します。(詳しくは7月号を読んでください)

■「スターリン秘史――巨悪の成立と展開:巨悪への画期。変質の理論面での特徴」(不破哲三*1
(内容要約)
・連載の6回目。対話形式で書いてみる。
俺「前号、前前号で不破さんは、この連載では大テロルといっていますが、いわゆるスターリンの大粛清を取り上げて批判していますが今回は?」
不破「まず大粛清の前段階としての農業集団化の強制を取り上げたいと思います。マルクスエンゲルスレーニンは農業の集団化を共産主義実現において必要な措置としながらもそれはあくまでも農民の同意を取り付けたうえで行うべきとしていました。しかしスターリンは農業集団化を暴力的に強行し、反対する農民にクラーク(富農)、反革命分子のレッテルを貼って投獄したり強制追放したりする無法な措置を行ったのです。農業集団化の無法ぶりについてはたとえば『ゴルバチョフ回想録(上)』(邦訳:新潮社)が参考になるでしょう。回想録の中でゴルバチョフは子供時代を回想して無茶苦茶な集団化によって飢饉が深刻化し、故郷プリヴォリノエ村で人口の三分の一が餓死したといわれたといっています。ただしこの時点ではスターリンの暴虐ぶりはまだ大テロル時代よりはましだったといえるでしょう。もちろん正当化することなどできませんがこの時点では『スターリンに刃向う危険のある人間なら実際にはスターリン批判をしていなくてもでっち上げで容赦なく抹殺した大テロル時代』と違い『農業集団化に反対する農民』限定で弾圧は行われ、かつこの時点ではスターリン絶対体制はまだ成立していなかったからです。」
俺「大テロル後のスターリンについて話してください」
不破「スターリンの無法ぶりとしてわかりやすいのは『ソ連共産党ボルシェビキ)小史』(1938年)の刊行です。スターリンは大テロルにより生き証人の多くを抹殺し、また生き残っている証人もスターリン批判など到底不可能な状態になってから過去の党史記述にすら反する、党史のねつ造を公然と実行したのです。ねつ造内容はたとえば以下の通りです。
1)二月革命後、いわゆる臨時政府は戦争継続方針を採用し、スターリンカーメネフが実権を握っていた当時の党執行部もそれを当初支持しました。この継戦方針が撤回されたのは4月にレーニンが帰国したのちです。にもかかわらず、スターリンは当初から自分は継戦方針に反対だったがカーメネフらによって継戦方針に賛成せざるを得なかったとしているのです。
2)いわゆる10月革命において、革命の中心は『ペトログラードソビエト』でスターリンは直接には関与しなかったにもかかわらず、スターリンは『ペトログラードソビエト』に外部から指示を与えたのが自分だとしています。こうした記述をスターリンがねつ造したのはペトログラードソビエト議長だったトロツキーの功績を否定するためでしょう。
 またスターリン生前時には、帝政ロシア時代の領土拡張主義を批判したマルクスの著作『18世紀外交史の内幕』は禁書扱いでした。スターリン帝政ロシアの領土拡張主義を批判するどころかそれを正当化する立場に立っていたためこのマルクス著作の存在は非常に都合が悪かったのです。」


■「第二次安倍政権と日本の政治・政党状況を考える(中):矛盾が噴出する安倍政権の歴史認識改憲論」(小松公生)
(内容要約)
対話調で書いてみる。
俺「前回は安倍政権の問題点を総ざらいしましたが今回は?」
小松氏「今回は安倍政権の問題点のうち、歴史認識問題と改憲問題を取り上げたいと思います。まず歴史認識問題です。麻生財務相・副総理が朴大統領就任式に出席するため韓国訪問していますが、実は韓国の中央日報がそのときの麻生氏の振る舞いについて『朴大統領の就任日に麻生副総理が詭弁、第一歩からこじれた韓日関係(1)』(http://japanese.joins.com/article/789/170789.html)、『朴大統領の就任日に麻生副総理が詭弁、第一歩からこじれた韓日関係(2)』(http://japanese.joins.com/article/790/170790.html?servcode=A00§code=A10)という面白い記事を書いているのでそれを見て下さい。」
俺「読みましたがこれが事実なら酷いですね。麻生氏は朴大統領相手に『国によって歴史観が違うのは当たり前だ』とまるきり居直ってるじゃないですか。朴大統領の表情が険しくなるのも当然ですよ。」
小松氏「しかしこうした安倍政権の高飛車な態度も米国が批判的見解を表明するようになるととたんにトーンダウンします。目下と見下している中国、韓国には高飛車なのに、目上とみなしている米国には腰砕けというのが安倍政権の特徴です。
 菅官房長官は『歴史認識問題で米国から批判され続けたら政権が持たない』と安倍氏に進言したと言われています。第一次安倍内閣で米国下院決議が成立したことを考えれば、米国が河野談話見直し論などに好意的なわけがないことは米国から改めて批判されるまでもなくわかりそうなものですが。」
「こうした状況下で発生したのが橋下暴言です。橋下暴言については国連拷問禁止委員会から『日本政府はこうした状況を是正するため教科書に慰安婦記述を書くなどの何らかの措置を執るべき』との勧告を受けています。つまり国際社会は橋下暴言を一過性の出来事とは全く見ていないわけです。本丸は安倍政権であると見ているわけです」
「次に改憲問題です。改憲問題は歴史認識問題とは違い『米国が安倍政権を支持している』と言う点にある種の危険性があるとは言えるでしょう。また96条先行改憲論は「改憲の中身」をあえて持ち出さないことによって改憲への警戒をなくそうとしていると言う危険性があります。とはいえ次のように護憲派にとっては明るい材料もあります。この明るい材料をどれだけ強めていけるかが今後のポイントでしょう。
1)世論調査に寄れば最近は96条先行改憲論への批判意見が増加傾向にあります。小林節慶應義塾大学教授のような九条改憲派ですら「邪道」「品格がない」などと批判していると言うことが知られてきた成果ではないかと思います。
2)こうした世論の変化を背景に民主党は96条先行改正反対を参院選の公約にする事を検討していると言われています。また赤旗に古賀元幹事長が登場し護憲論を表明したのも世論への古賀氏なりの対応でしょう。」


■「日本共産党の国民的役割を発揮し参院選・都議選勝利へ:安倍政権と正面から対決、国民とともに対案をもってたたかう」(市田忠義
(内容要約)
 安倍政権の問題点を指摘するとともに安倍政権に真の対抗軸を持っている政党は日本共産党だけであることを広くアピールし、来たる都議選、参院選で一議席でも、二議席でも躍進しようではないかというお話。
安倍政権の個別政策批判については本号掲載の石川論文(アベノミクス)、小沢論文(改憲)、小松論文(慰安婦など歴史認識)、小倉論文(TPP)を参照いただきたい。


■「財界奉仕のアベノミクス復古主義国家主義」(石川康宏)
(内容要約)
対話形式で書いてみる。
俺「アベノミクスの三本の矢についてどう考えるべきでしょうか」
石川氏「アベノミクスのいわゆる三本の矢は1)大規模な金融緩和、2)大規模な公共事業、3)規制緩和法人税減税、と理解することができるでしょう。一つずつ批判してみましょう。
 まず1)大規模な金融緩和ですが、金融緩和それ自体は民主党政権時から行われてきました。今回のポイントは『過去に例を見ない大規模』というところです。安倍政権は過去の金融緩和を中途半端だったから景気回復の効果がなかったとしているのです。しかしそのような主張には何の根拠もありません。それどころか、円安による灯油価格の上昇でイカ釣り漁船やトラック運転手が抗議デモをする事態になっています。2)、3)について言えば過去にも行われたが大した効果のなかった政策でとても期待はできません。その上、安倍内閣は一方で景気に悪影響を与える消費税増税や福祉切り捨てを計画したり、歴史認識問題で中国、韓国との関係を悪化させ両国への輸出のブレーキとなっているのだから全く頓珍漢です」
俺「安倍政権の復古主義アベノミクスの関係を道理化すればいいのでしょうか?」
石川氏「安倍政権の復古主義アベノミクスの観点からのみ見ることはできないと思いますが、アベノミクスと密接な関係にあるとは思います。アベノミクスは基本的に『景気がよくなれば賃金が上がるはず』といういわゆるトリクルダウンの立場に立っています。しかし仮に景気がよくなったとしてもそれが当然に賃金アップにつながるわけではない。戦後の自民党は国民統合イデオロギーとしては『一億総中流』を掲げてきたと思いますがアベノミクスでは『一億総中流』を何ら保障していない。その場合、頼るべきイデオロギー安倍氏復古主義的な政治グループ・清和会出身ということもあって復古主義しかないのでしょう。困った話だと思います。ただし戦前礼賛的復古主義は韓国、中国との対立を生むので両国に経済進出している財界は望んでいないということに注意が必要です。」


■「いま、憲法を学び、活かし、守ることの意義」(小沢隆*2
 対話形式で書いてみる。
俺「96条先行改憲論についてまず聞きたいのですが」
小沢氏「96条先行改憲論は日本の改憲手続きは諸外国と比べて厳格すぎるといいますがそんなことはありません。96条先行改憲論はこのような明らかなデマを公言するがゆえに、9条改憲派を公言する、つまり9条護憲派である私とは考えを異にする小林節慶応義塾大学教授などが『96条先行改憲論は品格に欠ける』などと厳しい批判を加えているわけです」
俺「自民党改憲案についてのご意見をお聞かせください」
小沢氏「自民党改憲案の特徴としては『いわゆる九条改憲』以外の部分も極めて復古主義的であり、九条改憲派でもある種の自由主義者である小林節教授などはドン引きしかねない内容だということです。九条改憲を重視するならばこうした復古主義的条項を公にすることは避けるべきでしょう。しかし、このようなことを平然と実行するまでに今の自民党は極右化しているわけです。なぜ自民党がここまで極右化したのかは政治学の研究領域だろうと思います。
 と同時にこうした復古主義的部分は従来の自民党支持者ですら賛成しないのではないかという思いが彼らに96条先行改憲を口にさせているのでしょう。そんなに9条以外の改憲案への反発が怖いのならば、本来、そんな案は出すべきではないのですが。」
俺「こうした状況についてどう立ち向かっていけばいいのでしょうか」
小沢氏「まずは現行憲法の意義や、自民党改憲案の危険性について学んでいただきたいと思います。手前味噌ですが私も過去に『ほんとうに憲法「改正」していいのか?』(2002年、学習の友社)、『憲法を学び、活かし、守る:強まる危機に立ち向かう』(2013年、学習の友ブックレット)という本を書いていますので役立てていただければ幸いです。」


■「橋下・維新はどこへ:大阪のたたかいのなかで浮き彫りになる混迷とゆきづまり」(中村正男
(内容要約)
対話形式で書いてみる。
俺「例の「慰安婦暴言」「米軍風俗使用奨励発言」をきっかけに橋下維新の支持率が低下傾向にあるようですね。それが必ずしも共産党など、野党陣営の支持率上昇に結びついていないことは残念ですが、維新の低迷自体は本当に喜ばしいですね。」
中村氏「そうですね。と同時にいろいろな思惑があって評価は難しいでしょうが、慰安婦問題以外でも、自民、公明などが維新から距離を置き、維新が対応に苦慮する状況が生まれています。今後、橋下維新のレイムダック化は避けられないと思います。」
俺「慰安婦暴言以外で維新の挫折とはは具体的にはどういうものでしょう。」
中村氏「思いつくままにいくつかあげてみましょう。
1)公明党が日和ったことにより可決できませんでしたが橋下氏への不信任決議案があります。
2)市営地下鉄・バス民営化問題や水道事業統合問題があります。この問題は赤旗大阪市議会 地下鉄バス 民営化条例案継続に』(http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-03-29/2013032901_04_1.html)、『大阪市議会 水道事業統合を否決』(http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-25/2013052507_06_1.html)でわかるように橋下氏の野望は少なくとも現時点では挫折を余儀なくされています。
3)大阪府幹部を経て維新のバックアップで当選した竹山修身堺市長大阪府構想への不参加を表明、橋下氏から距離を置きはじめています。今秋にある堺市長選挙での動向が注目されます。
4)吹田市では維新のバックアップで当選した市長に業者との癒着疑惑が発覚し、維新からの市長除名を余儀なくされています
5)『宝塚市長選「維新惨敗」』(http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-17/2013041705_01_1.html)のように大阪府外への進出を果たそうとしたものの挫折しています。」
「我が党としても今後も橋下維新を批判し、少しでもダメージを与えたいと思っています。橋下氏が『参院選で維新が敗北したら代表を辞める』と渋々ながら言った以上、参院選で我が党が議席を増やすとともに、維新を敗北させ橋下代表辞任をぜひ実現したいですね。なお、堺市長選について、橋下維新打倒のために、場合によっては大阪市長選で平松支持に動いたようなことも検討する必要があるかもしれません」


■「アメリカに日本を売りわたす成算なきTPP参加」(小倉正行*3
(内容要約)
要約にかえて赤旗の記事を紹介する。
赤旗
『日本を売り渡すTPP交渉参加の撤回を、共産党が見解を発表、志位委員長が会見』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-10/2013051001_01_1.html
『TPP交渉への参加は日本をアメリカに丸ごと売り渡すことになる、安倍内閣に交渉参加の撤回を強く求めます:2013年5月9日 日本共産党
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-05-10/2013051006_01_0.html


■座談会「マツダ派遣切り裁判:激励と勇気与える4年間のたたかい」(佐藤次徳、高根孝昭、仁比聡平)
(内容要約)
 要約にかえて赤旗の記事紹介。ただしマツダは控訴しており残念ながらまだ闘いは続く。

赤旗
マツダの違法 断罪、派遣13人を正社員と認定、山口地裁判決』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-03-14/2013031401_01_0.html
主張『マツダ「派遣切り」、正社員と認定した画期的判決』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-03-15/2013031501_05_1.html
マツダの雇用責任を認定、「派遣切り」山口地裁判決、たたかう各地の原告を励ます』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-03-19/2013031905_01_1.html


■「これからの公共事業予算」(中山徹*4
(内容要約)
対話形式で書いてみる。
俺「安倍政権の公共予算増額をどう見ますか」
中山氏「景気対策や選挙前のばらまきといったものでありこれが恒常的に続くとは見ていません。小渕、森内閣時に公共事業の大盤振る舞いをやりながら、小泉内閣でその揺り戻しで公共事業が削減されたような事態がいずれ来るだろうと思います。」
俺「今後の公共事業の方向性についてどうあるべきだと?」
中山氏「1)財政再建を考えれば野放図な公共事業大盤振る舞いは到底無理でしょう。かつ今は昔と違い公共事業にそれほど大きな景気浮揚効果はないと思います。基本的には削減の方向に行くしかないと思います。
2)そろそろ耐用年数の切れる建物が増えてくると思います。今後は新設だけでなく既存施設の改修(防災対策)にも大いに目配りする必要があるでしょう。
3)今後は福祉の需要、重要性が増してくると思います。そうしたことを考えると福祉分野の公共事業(保育園、病院、介護施設など)への予算配分が重要になってくると思います。
4)無駄な公共事業を避けるためにも公共事業決定過程の透明化や市民参加などを進める事が求められると思います」


■「赤旗」記者が行く『軍事同盟に飼い慣らされない視点』(面川誠)
(内容要約)
・筆者は現在、赤旗ベトナム支局で東南アジア報道を担当している。
筆者はベトナム駐在で「日本の報道は中国脅威論を煽り、東南アジアと中国を必要以上に対立的関係と描いていないか」「それには日米安保の存在が強く影響しているのではないか」と痛感したという。
 勿論筆者も中国と東南アジアとの間に様々な対立(例:フィリピンやベトナムとの間の領土問題)があることは否定しない。
 しかし「東南アジアと中国はお互い密接な関係であり、敵対関係になることはあり得ないし、当然そういったことを避ける方向で動いている」ということへの理解が日本マスコミには足りなすぎるのではないかと言うのが筆者の理解である。


■論点
ベネズエラ大統領選と今後の課題−現地からの報告(田中靖宏)】
(内容要約)
俺「今年4月のベネズエラ大統領選挙結果についてどう見るべきなのでしょうか?」
田中氏「僅差とは言え、与党が勝利したことは与党が長年の統治で、一定の支持を国民に広げてきたと言えるでしょう。野党は不正選挙呼ばわりし、米国も未だに政府承認していませんが南米各国は既に政府承認していますし、言いがかりにも程があると思います。米国が内政干渉する危険性がある点には注意が必要でしょう。」
俺「所詮オバマもその程度の男ですか。それはともかく、とは言え今回は過去に比べてかなりの接戦でした。やはりカリスマといわれたチャベス氏の急死が痛かったのでしょうか」
田中氏「もちろんそれもあるでしょうが、それだけではないでしょう。与党サイドも以下の点が問題ではなかったかとしています。
1)インフレと物不足
2)頻繁に起こる停電
3)治安の悪化
4)石油依存の経済体質(いわゆるモノカルチャー経済)
 もちろんこれらの中にはチャベス政権以前からのものもあります。3)、4)などはそうです。3)などは麻薬組織が蔓延している南米各国に共通する問題です。4)も発展途上国では珍しくない。とはいえ問題を放置していい訳もないわけです。」
俺「政権はこれらにどういった対策をしているのでしょうか」
田中氏「先ず第一に労組や経営者団体など各方面との対話を呼びかけています。ただし野党陣営については未だに不正選挙呼ばわりしていることから『不正選挙』という誹謗を辞めない限り対話の意思はないとしています。
第二に財務相に『2004年に財務相として高度経済成長を実現させた』と言われるメレンテス中央銀行総裁を起用し、経済立て直しへの意欲をアピールしています。今後のベネズエラ情勢に注目したいと思います。」


■暮らしの焦点
認可保育所を増やしてほしい!(堤由紀子)】
(内容要約)
 赤旗連載記事「保育所に入りたい!」の担当記者による論文。内容要約にかえて「保育所に入りたい!」(http://www.jcp.or.jp/akahata/web_daily/html/hoikusyo.html)を紹介しておく。


■文化の話題
【美術:須田国太郎の絵肌がもつ力強さ(朽木一)】
(内容要約)
 全国各地で行われた須田国太郎展の紹介。

参考
産経新聞『須田国太郎展 神秘的色彩に宿る強い生命感』
http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/121207/wlf12120716270023-n1.htm


【音楽:3・11と向きあう日本の作曲家たち」(小村公次)】
(内容要約)
 震災をきっかけにつくられた以下の曲の紹介。
1)合唱曲「つぶてソング」(作詞:和合亮一、作曲:新実徳英
参考
「つぶてソングの集い」(http://www.tsubutesong.jp/
2)合唱曲「Prayer/祈り『2011.3.11』のあとで」(作曲:岸野末利加)
3)合唱曲「どうしてあんなに」(作詞:まどみちお、作曲:吉川和夫)
4)合唱曲「東北の舟歌」(作曲:寺嶋陸也)


【演劇:テーマはずばりTPP:秋田雨雀土方与志記念 青年劇場『田畑家の行方』(水村武)】
(内容)
青年劇場『田畑家の行方』の紹介。

参考
青年劇場『田畑家の行方』(http://www.seinengekijo.co.jp/s/tabatake/tabatake.html
毎日新聞『水と緑の地球環境:忘れないで「3.11」 佐賀・唐津の農民作家、山下惣一さんの共著題材に「田畑家の行方」』(http://mainichi.jp/feature/news/20130422ddm010040008000c.html
上演大原雄の歌舞伎・人形浄瑠璃ナビ『劇評「田畑家の行方」』(http://you-ohara.seesaa.net/article/357295708.html
全国農民連「青年劇場『田畑家の行方』 演出 福山啓子さんに聞く」(http://www.nouminren.ne.jp/newspaper.php?fname=dat/201304/2013040812.htm


■メディア時評
【新聞:憲法記念日の大手紙(金光奎)】
(内容要約)
 全国紙の内、産経、読売、日経は露骨に改憲派で、朝日、毎日、地方紙はそうした改憲論に批判的といういつもの構図。


【テレビ:「憲法九六条改正」の報じ方(沢木啓三)】
(内容要約)
・5月2日のテレビ朝日系『モーニングバード』が「改憲派だが96条先行改憲論には賛成できない人々」として、一水会最高顧問・鈴木邦男氏、漫画家・小林よしのり氏、小林節慶應義塾大学教授などに96条先行改憲論批判を語らせていたのは好企画だったと思う。小林よしのり氏が「国民投票法は有効投票の過半数としており、最低投票率の設定もない。投票率が40%などと低ければ、国民の20%しか支持していなくても改憲できるがおかしいのではないか」と主張したのは「あの小林氏」には珍しく正論と言える。
・なお同じ日のNHKニュースが「世論調査結果」として「改憲必要あり42%、不要16%」と報じたことは改憲ムードを故意に助長しているのではないかと疑いたくなる。改憲必要ありという場合も「9条改憲賛成」と「環境権を設定して欲しい」というのとでは明らかに違う。
・またNHK世論調査では「9条改憲に賛成33%、反対30%、どちらともいえない32%」となっているが、これは朝日、読売、毎日の最近の世論調査結果とはかなり違う(新聞の結果では反対の方が5〜10%程度多く、かつ「どちらともいえない」はNHKほど多くない)。
 この差を「NHKの調査に欠陥があるから(あるいは逆に新聞側の調査に欠陥がある)」と見なすか、「調査方法の何らかの違いによる合理的差」とみなすかはともかく、こうした差がある以上、「視聴者がNHK世論調査結果を相対的に見る目を養うため」、「差があるという事実」について何らかの形で触れるべきだったのではないか(差が発生した、想定される原因について言及できればなおよい)。


■スポーツ最前線「プロ野球選手"長寿化"の理由」(和泉民郎)
(内容要約)
対話形式で書いてみる。
和泉氏「最近のプロ野球では30代後半〜40歳代の選手が増加してるんですよ。具体的には中日の谷繁捕手、山本投手、横浜の中村内野手ですね」
俺「どういうことなんでしょう」
和泉氏「以下は私の個人的見解であることを断りしておきます。先ず第一にFA制度の導入により移籍が当たり前になった事があげられると思います」
俺「どういうことでしょう」
和泉氏「従来は球団から引退を示唆されるとそのまま引退する選手が少なくありませんでした。しかし移籍が当たり前になれば引退を示唆されても、移籍で新天地を探すことが可能になるわけです。もちろん見つかるとは限りませんが。第二にトレーニングの合理化があると思います」
俺「どういうことでしょう」
和泉氏「日米で投手として活躍し、昨年まで日本ハム投手コーチを務めた吉井理人氏は『転機は1990年代だと思う』と言っています。この頃、立花龍司氏が近鉄*5やロッテでコンディショニングコーチとして近代的コーチ術を導入。仰木近鉄やバレンタインロッテの優勝に貢献したと言われます。その後こうしたコーチングは他球団でも一般的なものになっていきます。吉井氏は『コーチングの近代化によって怪我が減ったことが選手寿命の長寿化につながっていると思う』と言っています」

参考

立花龍司(ウィキペ参照)
 高校野球で全国優勝の経験を持つ強豪の浪商高校野球部に入部したが、在籍中に過重な練習による酷使から右肩を痛め、活躍はできなかった。その後は大阪商業大学経済学部に進学したが、肩の痛みが抜けず、大学3年の時に現役続行を断念した。
 年齢の早いうちに選手生命が絶たれた自らの苦い経験から、野球でも合理的なトレーニングの実践が重要だと理解し、大阪商業大学に在籍しながら天理大学体育学部でスポーツ医学の単位を取得した。
 1989年、近鉄バファローズのコンディショニングコーチとして契約。アメリカで広まっていた最新のトレーニング理論を導入した立花の指導は、走り込み・投げ込みを徹底させる従来の長時間練習とは大きく異なり、コーチからは反発も受けたが、負傷者減少などの効果が出たことから監督の仰木彬近鉄の選手の間で高く評価された。特に1990年に近鉄へ入団した野茂英雄からの信頼は厚く、野茂の近鉄退団後も指導を続けることになった。
 1993年、仰木退団後の新監督に就任した鈴木啓示は立花を嫌い、疎んじた。「草魂」という座右の銘を持ち、強い精神力で肉体の酷使に極限まで耐えるのがプロ野球選手のあるべき姿という信念を持つ鈴木は、適度な休息を含めた合理性を重視する立花のトレーニング方法を支持せず、選手経験のない立花が選手を惑わせていると捉えた。鈴木と対立し冷遇された立花は近鉄を退団し、1994年からは千葉ロッテマリーンズへ移った。
 しかし、野茂や吉井理人などの近鉄投手陣の多くはキャンプイン前の自主トレーニングで立花の指導を受け、鈴木への反発が明確になった。1994年のシーズン終了後に野茂が近鉄を退団してアメリカ・メジャーリーグロサンゼルス・ドジャースへ移籍、吉井もトレードによりヤクルトスワローズへ移籍した後、1995年シーズン途中に鈴木も成績不振の責任を取って辞任した。
 一方、立花はロッテで活躍し、特に1995年にはチームの2位躍進に貢献した。1997年にはメジャーリーグニューヨーク・メッツへ移籍。これはロッテ時代に監督だったバレンタインの推薦によるもので、日本人初のメジャーリーグコーチとなった。1998年にはロッテへコンディショニング・ディレクターとして復帰し、2000年までの3シーズン務めた。
 2006年に東北楽天ゴールデンイーグルスのコンディショニングディレクターとして6シーズンぶりにプロ野球界に復帰。同年秋に退団後はロッテへ再度復帰しヘッドコンディショニングコーチなどを歴任。2009年限りでロッテを退団した。

*1:著書『スターリン大国主義』(1982年、新日本新書)

*2:著書『ほんとうに憲法「改正」していいのか?』(2002年、学習の友社)、『憲法を学び、活かし、守る:強まる危機に立ち向かう』(2013年、学習の友ブックレット)

*3:著書『TPPは国を滅ぼす』(2011年、宝島社新書)

*4:著書『公共事業改革の基本方向』(2001年、新日本出版社

*5:合理主義者と言われる仰木が監督時代の立花は近鉄において高く評価されたが仰木後任の「草魂」鈴木啓二は立花を冷遇。彼がロッテに移る原因となったと言う