【主張】慰安婦の碑 官民あげ曲解正す発信を
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130802/amr13080203070000-n1.htm
産経の言う曲解って「慰安婦問題で日本は反省しているのに無反省と誤解されている*1」じゃなくて、「慰安婦は合法なのに違法と誤解されている」という明らかなデマですからね。そんなことを言えば「産経のような嘘つきを撲滅するためにも記念碑が必要」と言い返されるのが落ちです。大体日本政府は河野談話踏襲の立場なんだからそんなことがいえるわけがない。で日本の反論は次の通りです。
在ロサンゼルス日本総領事館は、市長や市議に対し、昭和４０年の日韓基本条約に基づく請求権協定で賠償問題が解決済みであることなどを説明し、像設置の不当性を指摘した。
「など」に何が含まれるのか知りませんが「賠償問題は解決済み」は反論になっていません。記念碑設置は「賠償請求を前提としていないから」です（もちろん賠償請求支持派も記念碑支持者にはいるが全ての記念碑支持者が賠償請求支持派ではない）。
碑の目的はあくまでも「慰安婦の悲劇を後世に語り継ぐこと」「グレンデール市は橋下や石原のような河野談話否定者ではなく、河野談話支持者の立場に立つことを世界にアピールすること」です。「賠償請求を有利にすること」が目的ではない。で、そういう考えの基盤にあるのは「日本では河野談話否定論が蔓延しており、日本政府（安倍政権）はそれに対し、何もしていない所か内心では喜んでいる」という認識です。
であるのならすべき反論は「日本では河野談話否定論は蔓延していない」とか「蔓延しているが我々政府は撲滅に力を上げており成果を上げている」でしょうね。ただそういう事実はないから、そんな反論したら嘘になる（何せ「河野談話否定論の撲滅に努力しろ」と国連に勧告されたら「勧告に拘束力はない」と居直るのが安倍政権ですから）。嘘の反論をしても向こうが信じるわけがないし、そもそも「河野談話支持で否定論撲滅に全力を挙げている」のなら「それなら記念碑設置して何が悪いの？。記念碑の設置目的も『否定論撲滅』なんだけど？。本当に撲滅に努力してるの？」ということにしかなりません。
ソウルの慰安婦の碑が日本の尊厳を傷つけている
何をどう傷つけてるんでしょうか？。産経の方こそ「韓国の尊厳を傷つけている」でしょうに。
旧日本軍が少女らを慰安婦として拉致した事実はなく
「横田めぐみさんのような暴力的連行ではなく、自分から北朝鮮に行った」有本恵子さんを「だまされたから」「北朝鮮入国後、日本帰国の自由がないから」と言う理由で拉致と見なすのであればほとんどの慰安婦は拉致でしょう。どこに問題があるのか。
「２０万人以上」も法外な数字
何を根拠に法外というのか。大体それだったら「数字を直せばすむこと」です。
なおこれについては、誰かの妄想・はてな版「慰安婦推定数20万人は別におかしくありません」（http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20130412/1365787012）を紹介しておきます。
１）20万人説を取る論者として吉見義明氏がいるらしいこと
２）推定数はあくまでも推定数に過ぎず、確定値は今となって出せないらしいことがわかります。
第１次安倍晋三内閣は平成１９年、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲による強制連行を直接示す記述は見当たらなかった」との政府答弁書を閣議決定した。
文書資料がなくても、「慰安婦証言」などで強制連行が認められるとするのが河野談話であり、それを第1次安倍政権も否定できず河野談話を踏襲しました。なのでこの閣議決定には「河野談話に問題があるかのように見せる」汚い印象操作以上の意味はありません。
「政府が発見した（注：そうではなくて『政府が保有する』だった気がしますが）」と言う当たりもせこい態度です。要するに「海外も含めた慰安婦関係全資料」とした場合、「文書資料に強制連行を示す記述はない」ということができないことを安倍も自覚しているわけです。
これについては例えば以下を参照して下さい。
誰かの妄想・はてな版
『河野談話発表までに「強制連行を直接示す資料」は見つけられなかった、しかし、その後見つかった、という話』
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20130526/1369543851
赤旗『「慰安婦」強制連行示す文書、安倍内閣 存在認める、否定派の論拠総崩れ、赤嶺議員への答弁書』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-06-24/2013062402_02_1.html
現代史家の実証的な研究により、慰安婦の総数は１万数千人（中略）だったことも判明している。
要するに「1万数千人だから20万人じゃない」と言いたいんでしょうね。
でそんなに自信があるのならその「現代史家の実証的研究」とは何なのか、吉見義明「従軍慰安婦」（岩波新書）とか具体的な名前を出せばいいものを出さないんだからうさんくさいことこの上ありません。
そして何度も言いますが「数の問題は問題の全てではない」わけです。南京事件でも産経は数の問題にしたがりますが「正確な数を算出することは重要」ですが、そのことと「南京事件や慰安婦が違法かどうか」は全然関係ないですし、資料の限界から「推定値しか出せないこと」は何ら珍しくないわけです。
今年に入り、ニューヨーク、ニュージャージー、イリノイ州議会などで、慰安婦をめぐる対日非難決議が採択された。韓国系のロビー活動の結果とみられる。
ぶっちゃけ今の政権が野田政権だったら、あるいは谷垣政権だったらこんなことにはならないでしょう。決議採択の最大の理由は「首相が安倍だから」ですが、それを安倍や自民党、産経などが認めることはないでしょう。
曲解を正すため、日系人も含め官民あげ、あらゆる機会を捉えて史実に即した発信をしていくことが必要だ。
吉見義明、林博史、永井和と言った研究者の批判を産経は「韓国に媚びる反日」としか思ってないんだろうな。
*1:まあ、反省していないと思いますが
