政治考『立ちすくむ補完政党、「再編 国民は受け入れない」、新たな局面 共産党に切り開くカギ』

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-08-28/2013082803_01_0.html
日本共産党以外の野党は混迷を深めています。

議席を減らした野党(民主、社民、生活)が混迷するのはある意味当然ですが、増やした野党(維新、みんな)も「共産以外は」混迷していると言うのが興味深い。「共産は万々歳」とまではいいませんが「江田憲司幹事長更迭、柿沢未途離党(みんな)」だの「政界再編しないといけないと橋下が大騒ぎ(維新)」だのといった醜態はさらしてないわけです。
 要するに「衆院選での勝利」に比べたら議席を増やしたとは言え参院選結果は「明らかに下降線だから」、「党利党略で集まった野合集団に過ぎないから」混迷するわけです(維新の場合は堺市長選がやばいというのもありますが)。まあ、まともな政党なら共産に限らず、「とにもかくにも議席増で勝利すればその勝利をどう生かすかを考える」ものであって、国会がまだ始まってもいないのに「内紛を起こす」など意味不明ですが、「まともでないから」そうなるのでしょう。

野党の再編結集に腐心する民主党議員の一人は、「野党を再編し『結集する』というのは、散らばっている人間をまとめることなのだから、結局、政策はぼけてくる。かといって、維新やみんななどとの連携による『保守新党』では自民党補完ということにしかならず意味はない」と指摘。「このままでは自民党優位を覆せない」と焦りを見せつつ、「しかし何も決まらず動かないのは、結局民意の後押しがないからだ。存亡の危機だ」と唇をかみ締めます。

 再編結集したいが「数あわせの野合」と非難されてはたまらないだの、「数あわせで無理に集まっても内紛が起きるだけ(そもそも今のみんなや維新の内紛はそれが原因でしょう)」だのと言った理由で何もできないという話です。そもそも「自民党に数で対抗する」という党利党略ではどうにもならないでしょう。

日本大学の岩崎正洋*1教授(政治学)は政党状況について指摘します。
 「民主党も、もともとは新進党が崩壊する中で『第三極』的なポジションで出てきました。それでも一応、二極のうちの一極に行けたが、政策的に失敗して失速し、もはや自民党のオルターナティブ(代替)になりえません。維新、みんななど『第三極』も、この先の政治にどれほど影響を与えるのか見えにくい」
 そのうえで「日本の政党政治が、再び自民党一党優位で安定するのかというとそうではない。自民党は得票率ですでに40%を切り、最近では20%台のときもあります。この十数年間はずっと連立政権*2で、従前の一党優位とは実質的に中身の違う状況です。今後の野党の戦略しだいではいくらでも変化が起こりうる。その意味で野党再編が鍵なのですが、民主、みんな、維新の組み換えでは難しいでしょう」と述べます。
 岩崎氏はこうした状況のもとでの日本共産党の役割について述べます。
 「共産党は、『反権力』だけでなく、より現実主義的な視点も加味して、政策的オルターナティブを示し、野党協力の明確なビジョンを出すべきでしょう。また、国会での取り組みで一定の役割を果たしていけば、日本の政党政治が次の段階に行くのではないか」

 共産党からすれば「充分我が党は現実的だ、岩崎氏の言う現実とは何か。消費税増税論だの安保容認だの言うのであればそれには乗れない」とか「いたずらに反権力のための反権力をしているわけではない、賛同できないから批判せざるを得ないだけだ」とか「野党協力の明確なビジョンとは何か?。我が党は野党協力を拒んではいないが右翼政党の維新やみんなとは協力など成り立たないではないか」とかいろいろ岩崎氏に言いたいことはあるでしょう。
 岩崎氏がどういうスタンスか今ひとつわかりません。政界再編による二大政党制の再建でも望んでるのか?。いずれにせよ、彼はどう見ても「狭い意味での」共産支持者には見えません。
 ただ共産支持者ではないが「共産に一定の期待をし、評価もしている」。
 「極右色の強い安倍政権や維新、みんなは評価していない」「民主党のていたらくに呆れている」
 と言う意味では岩崎氏を「広い意味での共産支持者」と共産党側も理解している、ということでしょう。でこういう「狭い意味での共産支持者でない人も共産を評価してる」と言う趣旨の記事で、党員学者の渡辺治一橋大学名誉教授*3とか持ってきてもしょうがないわけです(渡辺氏は立派な見識の持ち主だとは思いますが)。だから岩崎氏を持ってくる。
 個人的には「山口二郎*4北海道大学教授などに比べると知られた存在ではない岩崎氏」を何故赤旗がコメント者としてセレクトしたのかが気になります(まあ、山口氏に限れば「狭い意味での支持者」でないのはもちろん、「広い意味での支持者」とすら呼べるか疑問の彼を赤旗がコメント者として選ぶことはしないでしょうが)。

*1:著書『政党システムの理論』(1999年、東海大学出版会)、『議会制民主主義の行方』(2002年、一藝社)、『政治発展と民主化の比較政治学』(2006年、東海大学出版会)、『eデモクラシーと電子投票』(2009年、日本経済評論社

*2:細川、羽田(非自民)、村山、橋本(自社さ)、小渕以降麻生までと今の安倍(自公)、鳩山(民主、社民、国民新)、菅、野田(民主、国民新)と政党の組み合わせは変化しても細川以降は連立が恒例です。

*3:最近の著書として『渡辺治政治学入門』(2012年、新日本出版社)、『安倍政権と日本政治の新段階:新自由主義・軍事大国化・改憲にどう対抗するか』(2013年、旬報社

*4:著書『政治改革』(1993年、岩波新書)、『日本政治の課題:新・政治改革論』(1997年、岩波新書)、『イギリスの政治・日本の政治』(1998年、ちくま新書)、『日本政治再生の条件』(2001年、岩波新書)、『戦後政治の崩壊:デモクラシーはどこへゆくか』(2004年、岩波新書)、『ブレア時代のイギリス』(2005年、岩波新書)、『若者のための政治マニュアル』(2008年、講談社現代新書)、『政権交代論』(2009年、岩波新書)、『政治のしくみがわかる本』(2009年、岩波ジュニア新書)、『ポピュリズムへの反撃:現代民主主義復活の条件』(2010年、角川oneテーマ21)、『政権交代とは何だったのか』(2012年、岩波新書)、『いまを生きるための政治学』(2013年、岩波現代全書)