伊藤亜人『北朝鮮民衆の日常を調査:脱北者40人から聞き取り』

という記事が今日の日経に載っていました。
 伊藤氏はウィキペ曰く

伊藤亜人
 1943年東京生まれ。東京大学教養学部を卒業後、1970年東京大学大学院社会学研究科修士課程修了。同年7月、同大学院博士課程を中退し東京大学教養学部助手。その後東京大学東洋文化研究所助手、教養学部教授、大学院総合文化研究科教授。2006年から琉球大学大学院教授。この間、ハーバード大学客員研究員、ソウル大学校招聘教授などを歴任。
■研究
 漂泊漁民への民俗学的な関心から、東京大学では文化人類学を専攻。泉靖一*1や李杜鉉(ソウル大学校教授・東京大学客員教授=当時)らから教えを受け、韓国研究を開始する。1972年以来30年以上に亘って、全羅南道珍島を中心に安東や済州島などで人類学的なフィールドワークを行い、農村の相互扶助組織、親族、宗教儀礼、セマウル運動*2などに関する論文を多数発表。
 戦前の日本の文化人類学では、植民地政策に伴って韓国社会の研究が盛んであったが、その後は政治状況から停止状態にあった*3。伊藤は戦後の日本人として初めて韓国で本格的なフィールドワークを行い、日本の韓国研究をリードするとともに、韓国文化が現在ほど日本で知られていない時代から、平易な言葉で日本へ紹介し続けてきた。2002年には韓国政府から長年の功績をみとめられ、大韓民国文化勲章を受章。一方では1990年代以降、よさこい祭り高知市)やYOSAKOIソーラン祭り(札幌市)を事例に、市民参加型の地域開発を研究。YOSAKOIソーランの立ち上げや運営には自ら関わりながら、実践志向型の開発人類学を切り開いてきた。
■著書
『韓国』(1996年、河出書房新社
『韓国珍島の民俗紀行』(1999年、青丘文化社)
『韓国夢幻:文化人類学者が見た七〇年代の情景』(2006年、新宿書房
文化人類学で読む日本の民俗社会』(2007年、有斐閣選書)

ということで元々は韓国民俗学研究が専門ですが最近は北朝鮮研究も始めてるようです(脱北者インタビューだけでなく現地調査もしたいそうですが、ああいう国ですからなかなかできないわけです)。
 まあ、記事を読む限り「巣くう会一味」のような異常な極右性は伊藤氏には認められませんね。まともな学者のようです。
 日朝間の諸問題を解決するためにも北朝鮮認識を深めることが大切、北朝鮮認識を深めるためには地道な研究が大切、自らもそれに貢献したいという伊藤氏の主張は全く持って正論でしょう。

*1:戦前は京城帝国大学助教授(京城は今のソウル)。戦後は東京大学東洋文化研究所教授。韓国関係の著書に『済州島』(1966年、東京大学出版会

*2:朴正煕が「北朝鮮の千里馬運動」に対抗して始めた農村振興政策

*3:日韓基本条約が調印され正式に国交が樹立されるのは1965年です