今日のMSN産経ニュース(12/27分)(追記あり)

■【主張】首相靖国参拝 国民との約束果たした 平和の維持に必要な行為だ
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131227/plc13122703100003-n1.htm

首相が国民を代表し国のために戦死した人の霊に哀悼の意をささげることは、国家の指導者としての責務である。

哀悼の意をささげることには誰も反対していません。「A級戦犯を英雄として祀る」神社で「哀悼の意を捧げること」が可能なのか、靖国で出来ることは「戦争礼賛」ではないのか、哀悼ならむしろ「千鳥ヶ淵が適切だ」と言ってるのですが産経の耳にはそんな言葉は聞こえません。

安倍首相は過去に靖国参拝した吉田茂*1大平正芳*2中曽根康弘*3小泉純一郎*4ら各首相の名前を挙げ

ばかばかしいですね。
中曽根は国内外の批判に応じて参拝を一回で取り止めていますが、安倍は今のところ取り止める気はない*5のでしょうから、ここで名前を挙げるのは不適切です。
 吉田や大平が参拝したとして、小生は「たとえ外国の抗議がなくても、政教分離の観点から問題だ」と思いますが、それはともかく
1)吉田や大平の時代は首相参拝の問題性が「憲法学者はともかく」世間にまだ充分認識されてなかった(海外からの初めての抗議は中曽根参拝の時でしょう)
2)吉田も大平も安倍ほどの極右ではない(特に大平は日中国交正常化を成し遂げた田中内閣外相として中国では高く評価されている)
3)当然彼らの参拝は「安倍ほどの極右的性格を持たない(別に極右へのこびでやったわけでもないでしょう)」
ことを考えれば「吉田さんや大平さんは俺ほど批判されてない、国内外の批判は言いがかりだ」なんてのはただの居直りです。
 小泉について言えば彼のせいで冷え込んだ日中、日韓関係を立て直すため第一次安倍内閣で安倍が首相就任直後に訪中、訪韓したことをもう忘れたんでしょうか。安倍がこんな事をやれば、「ポスト安倍」が「第一次安倍内閣当時の安倍」なみに苦労することになるでしょう。


【追記】
小生も不勉強なので知らなかったんですが、中曽根以前にも「三木武夫*6首相、福田赳夫*7首相」が靖国参拝して批判されたことがあったんですね。

参考
靖国神社参拝が「問題」化した経緯と、アメリカのアーリントン墓地との違い。付:靖国参拝での各国反応』
http://matome.naver.jp/odai/2138833257598681801

・ちなみにこのエントリに寄れば首相靖国参拝靖国他右翼サイドが求めるようになるのは、いわゆる「靖国国営化法案」が1974年に完全に挫折してからのことだそうです。
 挫折の理由の一つはもちろん「野党(社会党公明党共産党など)の反対」ですが私見では一番大きい挫折理由は「宗教団体の反対」でしょうね。「神社本庁生長の家」といった右翼宗教はともかく「仏教」「キリスト教」「各種新興宗教(PL、天理教創価学会など)」は猛烈に反対しましたし、これらの宗教団体は自民党に対して「神社本庁などの右翼宗教に負けない」一定の政治力を有してるわけです。もちろんこれらの宗教団体信者には自民党支持者もいるわけです。
・「靖国国営化が出来ないのならその代わりに首相参拝を」という話であって、だからこそ右翼は「千鳥ヶ淵訪問」や「靖国にかわる代替施設」に納得しないわけです。そして「1974年の国営化挫折」の時の首相が三木首相の訳です。

*1:外務次官、駐英大使、東久邇、幣原内閣外相などを経て首相

*2:池田内閣官房長官、佐藤内閣通産相、田中内閣外相、自民党幹事長(福田総裁時代)、三木内閣蔵相などを経て首相

*3:岸内閣科学技術庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行政管理庁長官などを経て首相

*4:宮沢内閣郵政相、橋本内閣厚生相などを経て首相

*5:周辺各国の批判で一回で辞める可能性はゼロではありませんが

*6:片山内閣逓信相、鳩山内閣運輸相、自民党幹事長(石橋総裁、池田総裁時代)、政務調査会長(岸総裁、池田総裁時代)、岸内閣科学技術庁長官(経済企画庁長官兼任)、池田内閣経済企画庁長官、佐藤内閣通産相、外相、田中内閣環境庁長官などを経て首相

*7:自民党幹事長(岸総裁、佐藤総裁時代)、岸内閣農林相、自民党政務調査会長(池田総裁時代)、佐藤内閣蔵相、外相、田中内閣行政管理庁長官、蔵相、三木内閣経済企画庁長官などを経て首相