新刊紹介:「経済」2月号

「経済」2月号の詳細については以下のサイトをご覧ください。興味のある記事だけ紹介してみます。
http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/

■巻頭言「アスリートファースト」
(内容要約)
 「幸か不幸か」、五輪招致が「成功」して「イスタンブールマドリッドに対して申し訳ないことに」「既に東京、札幌、長野と三回もやってるのに」2020年に東京で五輪という「世界大運動会」を「またやる羽目になった」が「アスリートファースト(選手が主人公)の精神」でやりましょうね、という話。
 「箱物でウハウハ」とか「国威発揚」とかそういうゲスい話はやめようというお話。
参考
赤旗
主張『東京五輪2020、アスリートの願いにこたえて』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-09-10/2013091001_05_1.html


■世界と日本
【中国の周辺外交の新方針(平井潤一)】
 前半では中国の周辺外交(習近平*1国家主席李克強*2首相の東南アジア訪問など)に一定の評価を行っている。

参考
人民日報
『<企画>加速する中国の周辺外交』
http://j.people.com.cn/94474/8440815.html
『中国は周辺外交のアップグレード版を築く好機にある』
http://j.people.com.cn/94474/8436809.html

 一方、後半では「そうした周辺外交に反するように思われる防空識別圏ADIZ)設定への批判」が行われている。

参考
赤旗の批判】
防空識別圏市田氏、中国に厳しく抗議』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-11-26/2013112601_04_1.html
『BS番組、中国設定の防空識別圏許すわけにいかない、志位委員長が発言』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-11-30/2013113001_03_1.html
【人民日報の主張】
『<企画>東中国海防空識別圏を全面解説』
http://j.people.com.cn/94474/8469698.html
防空識別圏問題での中国批判に疑義を呈するid:scopedog氏のエントリ】
誰かの妄想・はてな
『中国ADIZに対する日米の姿勢の違い』
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20131205/1386251195
NHKも国営放送っぽくなってきましたねぇ・・・。』
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20131130/1385833416
『“中国の防空識別圏だけが異常”って本当?』
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20131128/1385658620

まあ、公平のために赤旗防空識別圏批判記事」以外の記事も紹介してみました。現時点での小生の意見は保留ですが少なくとも、「韓日米その他の政府に批判される」という「中国の立ち回りの仕方」はまずかったんじゃないかという気はします。


アメリカ地方政治の胎動(田中靖宏)】
(内容要約)
 ニューヨーク市長選、ボストン市長選での、民主党候補の勝利は米国での「茶会ブーム」の終焉を告げているように思われる。

参考
日経新聞『NY市長、NGOで活動経験のリベラル派』
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2800B_W4A100C1FF2000/
毎日新聞『米国:デブラシオ新NY市長が就任 20年ぶり民主党市政』
http://mainichi.jp/select/news/20140103k0000m030106000c.html
 新市長が選挙戦において「格差縮小」を公約としたこと、新市長(白人)の妻が黒人であることが「民族融和イメージ」を生み出し選挙戦で有利に働いたらしいことがわかります。


特集「2014年の日本経済をどう見るか」
■「日本経済の実態と展望:停滞構造とアベノミクスの歪み」(工藤昌宏*3
■「企業は増収増益、賃金・雇用に回らず」(谷江武士*4
■「アベノミクスと財界戦略」(金子豊弘)
(内容要約)
・内容的には3つの論文ともかなりかぶると思われるので一緒に扱う。
アベノミクスで注意すべき事は「企業の収益増加を目指す政策」ではあっても「一般庶民の懐を増やすことを目指していない」と言う点であろう。だからこそ「消費税増税」「社会保障カット」「雇用の不安定化」という「一般庶民の生活を苦しくする政策(景気にも悪影響)」がアベノミクスと同時に実行される。その点について、安倍政権は何らの疑問を感じていないと思われる。
・これでは景気回復が仮に実現したとしても「外需依存の景気回復」「(給与上昇や雇用安定の)実感なき景気回復」にしかならないであろう。そうした景気回復ならば「小泉政権時代のいわゆるいざなみ景気(小規模な回復に過ぎない上、賃金上昇などの実感を伴わなかったため、リーマンショック後は急速に忘れ去られた)」と大して変わらない代物で終わるのではないか。内需拡大による景気回復という意味でも「消費税増税中止」「社会保障充実」「雇用の安定化」といった安倍政権とは逆方向の政策が望まれる。

参考
赤旗アベノミクスそれホント?』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-07-01/2013070105_01_1.html


■「安倍政権の「雇用破壊新戦略」批判:「限定正社員」問題を中心として」(牧野富夫*5
(内容要約)
 安倍政権の「雇用の不安定化政策」についていわゆる「限定正社員論」を中心に批判。

参考
赤旗
主張『限定正社員、「多様な正社員」の落とし穴』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-02/2013040201_05_1.html
『「限定正社員」って何だ?!、解雇しやすく低賃金、政府・規制改革会議の答申』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-06-06/2013060603_01_1.html


■座談会「安倍政権・暴走と矛盾」(藤田健石川康*6山田敬男*7、俵義文*8
(内容要約)
・安倍政権について経済学者の石川氏は新自由主義経済政策という観点から、山田氏は「日米同盟強化」と言う観点から、俵氏は「靖国」「歴史教科書」といった「戦前礼賛型復古主義」の観点から分析、批判。
 座談会では「安倍の日米同盟強化論」は当然、米国の支持、圧力による物だが、その一方で「靖国」「歴史教科書」で安倍が異常な極右主義をとっていることは米国のそうした戦略に「下手に安倍を支持すると戦前賛美が行き着くところまで行き反米主義を生み出しかねない」「日韓、日中関係が極度に悪化すれば米国の極東戦略に支障が生じる」などと「悩みと困難」をもたらしているとする。


■「日本企業のグローバル化と国民経済の危機」(藤田実)
(内容要約)
 「日本企業のグローバル化(海外への生産拠点の移動)」はいわゆる産業空洞化(国内雇用の収縮)を産んでいる。産業空洞化問題をどう解決していくかは緊急の課題であろうが安倍政権にそうした問題意識が見られないのは批判せざるを得ない。


■「日本資本主義の現段階をどうみるか」(友寄英隆*9
(内容要約)
・日本資本主義はいわゆるバブル景気崩壊後、深刻な長期不況に突入した。
・深刻な長期不況を産んだのは「長期不況克服策」として政権(多くは自民政権)が打った手が「新自由主義的路線」だからであった。新自由主義政策により「コストカットとそれによる企業収益増加」を図ったことは「給与減少と雇用の不安定化」「それによる内需の減少」を招きかえって不況を深刻化させた。社民主義的政策の採用が求められる。
・現在、安倍政権の登場により「新自由主義」だけでなく「外交孤立」という別の景気回復阻害要因が発生している。景気回復という意味でも「中国、韓国などとの関係を悪化させる安倍極右外交(靖国参拝河野談話撤回論など)」は論外である。

*1:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席などを経て現在、国家主席、党総書記、国家中央軍事委員会主席、党中央軍事委員会主席

*2:河南省党委員会書記、遼寧省党委員会書記、第一副首相などを経て現在、首相

*3:著書『日本海運業の展開と企業集団』(1991年、文真堂)

*4:著書『ユーゴ会計制度の研究』(2000年、大月書店)、『キャッシュ・フロー会計論』(2009年、創成社

*5:著書『構造改革は国民をどこへ導くか』(2003年、新日本出版社)『“小さな政府”論とはなにか』(2007年、公人の友社)

*6:著書『現代を探究する経済学:「構造改革」、ジェンダー』(2004年、新日本出版社)、『いまこそ、憲法どおりの日本をつくろう!:政治を変えるのは、あなたです。』(2007年、日本機関誌出版センター)、『覇権なき世界を求めて:アジア、憲法、「慰安婦」』(2008年、新日本出版社)、『人間の復興か、資本の論理か:3・11後の日本』(2011年、自治体研究社)、『マルクスのかじり方』(2011年、新日本出版社)『橋下「維新の会」がやりたいこと:何のための国政進出?』(2012年、新日本出版社

*7:著書『戦後疑獄史』(1982年、新日本新書)、『新版・戦後日本史』(2009年、学習の友社)

*8:著書『ドキュメント「慰安婦」問題と教科書攻撃』(1997年、高文研)、『徹底検証あぶない教科書:「戦争ができる国」をめざす「つくる会」の実態』(2001年、学習の友社)、『あぶない教科書NO!:もう21世紀に戦争を起こさせないために』(2005年、花伝社)、『「つくる会」分裂と歴史偽造の深層:正念場の歴史教科書問題』(2008年、花伝社)

*9:著書『「新自由主義」とは何か』(2006年、新日本出版社)、『変革の時代、その経済的基礎:日本資本主義の現段階をどうみるか』(2010年、光陽出版社)、『「国際競争力」とは何か:賃金・雇用、法人税、TPPを考える』(2011年、かもがわ出版)、『大震災後の日本経済、何をなすべきか』(2011年、学習の友社)、『「アベノミクス」の陥穽』(2013年、かもがわ出版