Mukkeさんらしいエントリ『6年越しぐらいでコソヴォ独立の因果応報が巡り巡ってる件について』感想(追記・訂正あり)

読んだ感想は「フリーチベットを叫ぶMukkeさんらしい」。いや「不勉強なので」エントリ内容の是非はひとまず置いて、そう思いました。
 なお、日本のメディア*1や政党*2はクリミア問題でロシア批判するところが多いですが一方でこうしたMukke氏や後で紹介する浅井氏のような指摘も一理あるかなと思い正直、俺は考えがまとまっていません。個人的には「ロシアのやり口は無茶苦茶だと思う」が「ウクライナにクリミアが残ることが幸せか疑問」だし、「別にプーチンが強硬策をとらなくてもクリミア多数派はウクライナ中央政府への不信感からロシア編入運動を繰り広げたろう」から、まあ結論的には「クリミア編入は仕方ないのかな」と思います。「100%の正義と言える存在が見あたらない(現実社会では珍しいことではないですが)」ので何とも評価や対応が難しいところです。
ちなみに、ロシアにも一理あるんやないかというMukke氏のような指摘自体は他にも俺が気付いた限りでは浅井基文氏*3(元・外務省中国課長、外交評論家)のエントリ
『クリミア問題とロシア』(http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2014/584.html)、
ウクライナ情勢(中国政府の立場と見解) 』(http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2014/585.html)、
ウクライナ政治の経緯と問題点(中国共産党対外連絡部発行誌所掲文章)』(http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2014/586.html)があります。浅井氏もMukke氏同様、プーチン演説の「コソボ」云々に触れています。もちろん「一理あるのではないか」であって浅井氏もMukkeさんもプーチン全面擁護ではありません。
ちなみに「フリーチベット派」ってもしかしてMukke氏のような「ロシアにも一理あるんやないか」という人が多いのかしらん。それとも「チベットを支持する欧米(特にアメリカ)は敵に回せない」「チェチェンの独立宣言潰してるロシアがよう言うわ、ダブスタ、ご都合主義やん(これはMukke氏も指摘しています)」「ロシアは中国と仲がいいから(中国はロシア擁護はしていませんが、欧米のような制裁主張もしていません)」と言う理屈でむしろロシア批判なのかしら、どうかしら。

http://d.hatena.ne.jp/Mukke/20140320/1395264765
以下で紹介されているプーチンの演説からわたしにとっては大事なところを抜き出す。
(中略)

プーチン演説47)独立宣言と住民投票を発表した際、クリミア自治共和国議会は国連憲章を根拠とした。民族自決の原則だ。思い出してほしい。当のウクライナソ連から脱退するときに同様の宣言をした。ウクライナ民族自決を使ったのに、クリミアの人たちはそれを拒否される。なぜなのか?

プーチン演説48)このほかにも、クリミア指導部は有名なコソボの先例を参考にした。それは西側が自ら作ったものだ。全くクリミアと同じケースであり、セルビアからコソボが分離することを認めたものだ。これも一方的な独立宣言だったが、そのときは中央政府の許可は何ら必要とされなかった。

でMukkeさんは「プーチン演説にも一理あるんやないか」とおっしゃる。
まあ、演説47、48の「クリミア」を「チベット」に書き換えれば

独立宣言と住民投票を発表した際、チベット国連憲章を根拠とした。民族自決の原則だ。思い出してほしい。ウクライナソ連から脱退するときに同様の宣言をした。ウクライナ民族自決を使ったのに、チベットの人たちはそれを拒否される。なぜなのか?

チベットは有名なコソボの先例を参考にした。全くチベットと同じケースであり、セルビアからコソボが分離することを認めたものだ。これも一方的な独立宣言だったが、そのときは中央政府の許可は何ら必要とされなかった。

となりますからね。要するに「フリーチベット(可能なら中国から独立したいんでしょう)」を叫ぶMukkeさんにとって「クリミアのウクライナからの独立」と「それを過去の事例(例:コソボセルビアからの独立)と変わらない、何ら問題ないと主張するプーチン」は簡単には斬って捨てられないんでしょう(独立後のロシア編入や「住民投票時に既にロシアがクリミアに軍事展開していたこと」の是非はともかく)。むしろ「斬って捨てられる欧米」が不思議でありMukkeさんからすれば「要するにコソボのような都合のいい独立宣言だけ認め、都合の悪いクリミアの独立宣言は認めないつう話か、ロシアを全面支持なんかしないが欧米は酷い。その理屈やとチベットが独立宣言したらどうなるんや、中国に配慮して無視するんか」と「欧米に対する憤慨」というか不快感が隠せないんでしょう。
 ま、「Mukke氏の主張」がいいとか悪いとかではなくて以上は単なる事実の指摘ですが。まあ、一言だけ言っておけば「チベットの独立宣言」は「クリミアやコソボの独立宣言」と違って「ありえない」でしょうね。まあ、やっても欧米すら支持しないんじゃないか。だからこそ「独立は考えていない、自治権を実質化して欲しい、今のは形骸化している(ダライラマ)」と言う主張の訳です。
 これまた単に事実の指摘に過ぎず「だからチベット独立運動するな」って話ではないですが。


【2014年3/21追記】
1)Mukkeさんから『コソヴォ独立の応報・応答編』(http://d.hatena.ne.jp/Mukke/20140321/1395391599)というトラバが送られてきたので小生について触れられた部分にだけ応答してみましょう。大して触れられてないんですけどね。

 ここまで綺麗に的外れだといっそ清々しい。

そうですか、それはどうもどうも。
もちろん「チベット問題」とは別の話ですけど「ある国の一部が独立運動してる」という「チベットとよく似た話」なので、「無意識的でアレ意識的でアレ」、チベットについての考えと「矛盾しないようにしよう」とか、いろいろと考えてるんじゃないかなと思ったのですが「チベットと関係ない、以上」だそうです。
2)産経新聞『NPT体制脱退を ウクライナ議員が法案』
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140321/erp14032112230011-n1.htm

 やれやれですね。ロシアに対抗するために核保有したいとでも言うんでしょうか。まあ、全ての議員がここまでアホではないでしょうし、さすがに否決される*4でしょうが、何というか「今のウクライナって大丈夫なんか?」「こんなんじゃクリミアのロシア人がウクライナにいたくなくなるのも当然と違うか」「プーチンに塩をおくってどうするんだ」と思いますね。

*1:朝日社説『クリミア危機、編入は最悪の選択だ』(http://www.asahi.com/articles/DA3S11036787.html?ref=editorial_backnumber)、毎日社説『露クリミア編入、国際秩序踏みにじった』(http://mainichi.jp/opinion/news/20140320k0000m070146000c.html)、日経社説『クリミアの編入を国際社会は認めない』(http://www.nikkei.com/article/DGXDZO68571930Q4A320C1EA1000/)、産経社説『クリミア併合、国際社会挙げて阻止せよ』(http://sankei.jp.msn.com/world/news/140319/erp14031903200005-n1.htm)など

*2:右派、左派、与野党問わず。共産党赤旗に批判声明『ロシアはクリミア併合を撤回せよ、世界の平和秩序を覆す覇権主義は許されない』(http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-03-20/2014032001_01_1.html)を発表しています

*3:著書『日本外交:反省と転換』(1989年、岩波新書)、『外交官:ネゴシエーターの条件』(1991年、講談社現代新書)、『新しい世界秩序と国連:日本は何をなすべきか』(1991年、岩波セミナーブックス)、『「国際貢献」と日本:私たちに何ができるか』(1992年、岩波ジュニア新書)、『「国連中心主義」と日本国憲法』(1993年、岩波ブックレット)、『中国をどう見るか:21世紀の日中関係と米中関係を考える』(2000年、高文研)、『集団的自衛権日本国憲法』(2002年、集英社新書)、『戦争する国しない国:戦後保守政治と平和憲法の危機』(2004年、青木書店)、『13歳からの平和教室』(2010年、かもがわ出版)、『ヒロシマと広島』(2011年、かもがわ出版)、『すっきり!わかる 集団的自衛権Q&A』(2014年、大月書店)など

*4:問題は何票とるかでしょう。かなり票を取れば警戒せざるを得ません。