今日のMSN産経ニュース(7/27分)(追記・訂正あり)

■【九州「正論」懇話会】いわれなき誹謗中傷、慰安婦問題に断固反論し日本の名誉守る 稲田朋美行革担当相講演詳報
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140727/stt14072723240006-n3.htm

慰安婦側が主張した「20万人の慰安婦を数珠つなぎにして強制連行し、揚げ句の果てに自殺に追い込んだり、犬に食わせたりした」という内容の証人尋問が事実認定されたのです。

「え、そんな事実認定あるの、デマじゃね?」「20万人の慰安婦を数珠つなぎだの、犬に食わせただの、聞いたことないぞ」「いや認定以前にそもそもそんな慰安婦側の主張自体がないんじゃね?」と思いましたがやはりデマだったようです。

■朝鮮新報『日本の弁護士、市民ら 稲田議員に公開質問状/「慰安婦」問題 わい曲した主張を追及 』
http://chosonsinbo.com/jp/2014/08/21rn/
によれば稲田に激怒した、慰安婦及び慰安婦支援者側が
1)産経記事の内容は事実か、本当に稲田議員はこうした発言をしたのか
2)事実ならばその認定とは具体的にどこの裁判所か、何という判事か、いつの認定か説明して欲しい
と稲田に公開質問状を送ったところ

質問に対する回答期日である8月15日まで、本人からの回答はなかった

というのだから、事実上デマと認めたも同然でしょう。これが弁護士で安倍内閣閣僚だというのだから心底呆れます。稲田の方こそ「いわれなき誹謗中傷」でしょう。


■【歴史戦 第4部 利用される国連(中)】「慰安婦=性奴隷」生みの親は日本人弁護士*1 実態とかけ離れた慰安婦像独り歩き
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140727/plc14072713000007-n1.htm
小生がこの記事につけたブクマ。

http://b.hatena.ne.jp/entry/sankei.jp.msn.com/politics/news/140727/plc14072713000007-n1.htm
産経の「朝日ガー」「河野洋平ガー」「マイク・ホンダガー」等と言う個人攻撃に新たに「戸塚弁護士」と言う方が加わったらしい。だからな、いい加減そういう個人攻撃でごまかせる問題じゃないと気づけよ。

 攻撃される朝日や河野洋平*2官房長官マイク・ホンダ議員、戸塚悦朗*3弁護士などにとっては迷惑なことですが、「攻撃されてこそ本物」と言えるかも知れません。
 産経にとって「憎らしい」とか「脅威である」とか攻撃する理由がなければ攻撃されないわけですから。戸塚氏の場合、国際法の専門家として、国連人権委員会で活躍したのが産経を激怒させたようです。


天皇制批判、政治犯利用、自虐史観の基 GHQ幹部のノーマン マルクス主義色の「民主化
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140727/amr14072711080004-n1.htm
 タイトルだけでうんざりですね。
・別にGHQの政策は「マルクス主義色」ではないでしょう。当初のGHQは、共産党政治犯(例:徳田球一*4)を釈放してる*5ので容共政策とは言えるかも知れないですけどね。
・「ノーマン=自虐史観の基」に至っては絶句ですね。戦前から「皇国史観に批判的な研究」は存在したのに何を言ってるのかと。

・いくつか気付いた点に突っ込んでみます。

 志賀*6と徳田らを尋問し、占領軍に反対する人名と背景を聞き出した。

 「それの何が問題なんだ」って話ですよねえ。占領軍統治をするに当たって「誰が占領軍に敵対的か」を把握するのは当然でしょう。でその場合「占領軍に反対しそうな極右的な面子は誰だと思うか、理由付で教えてくれ」と徳田や志賀ら共産党幹部に聞くことが何か問題なのか。少なくとも「ノーマンはソ連のスパイ」云々という話とは全く関係ない。
 もちろん「徳田や志賀らの判断が占領軍にとっても正しい」とは当然限りません。価値観や事実認識の違いは当然あるでしょう。
 したがってGHQ側も「徳田らの主張」を鵜呑みにはしてないでしょう。他にも情報収集していたに違いないわけです。

 ノーマンは、「戦犯容疑者」の調査を担当。GHQから委託されて近衛文麿*7木戸幸一*8A級戦犯に指名し、起訴するために意見書をまとめた。

 産経は近衛と木戸をA級戦犯とみなしたノーマンが気にくわないようですが、近衛と木戸ほど「戦犯認定されて不思議じゃない政権中枢の人間」もいないでしょうに。
 まず近衛。
1)彼は盧溝橋事件(1937年)当時の首相で、この事件を拡大して日中全面戦争にしようとする陸軍の考えを受け入れてしまいます
2)首相として1940年には日独伊三国同盟締結と北部仏印進駐を実行。1941年には南部仏印進駐を実行。これらの行為により日米関係は悪化し、日本は対米国戦争の方向へと進んでいきます。
 次に木戸。木戸は1940〜1945年に内大臣を務めており、当然この時期の政策決定(例:1941年の対米戦争開始など)には深く関わっています。
 これで「近衛や木戸が戦犯指定されるのはおかしい」と考えるのは産経くらいでしょう。これが「民間右翼の大川周明*9」とかなら「大川ってそれほどの大物か、指定はおかしくないか」というのも、まだわかりますが。


■「ノーマン*10共産主義者」英断定 GHQ幹部 MI5、35年の留学時
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140727/amr14072711000003-n1.htm
 ブクマもつけましたけどアホかとしか言いようがないですね。
 別に「共産党シンパ=ソ連のスパイ」でもない。ノーマンは赤狩りで酷い目にあわされ、前途を悲観した彼は自殺するわけですから、彼を「アカの手先」と否定的に見る政府関係者もいたでしょうね。 「だから、何?」の一言で終わる話です。
 またGHQにカナダ外務省からノーマンが出向していたのは事実ですが、当然ながら彼が「GHQを一人で仕切っていたわけでもない」。
 GHQの政策を「共産主義的」と決めつけること自体間違いですが、「GHQの政策」をノーマンのせいにするのはもっと無茶苦茶でしょう。
 なお、ウィキペ「エドガートン・ハーバート・ノーマン」によれば

カナダ外務省はノーマンの「功績」を称えて、2001年5月29日に東京都港区赤坂にある在日カナダ大使館の図書館を、「E・H・ノーマン図書館」と命名した。

ということでカナダ政府は「ノーマン・ソ連スパイ説」なんかもちろん採用していません。

 作家の工藤美代子氏は「世界有数の情報機関、MI5がケンブリッジ時代のノーマンを共産主義者と判断してカナダ政府に情報提供していた意義は大きい。冷戦時代に『赤狩り』といわれて不当な弾圧として非難されたマッカーシー上院議員の主張は、一般論としては正しかったことが裏付けられる*11」と語っている。

 工藤と言えば『関東大震災朝鮮人虐殺」の真実』(2009年、産経新聞出版*12と言う「関東大震災朝鮮人虐殺否定論本」、つまりはデマ本の筆者で「元つくる会副会長」「映画『南京の真実』賛同者」という極右ですが意外なことに『悲劇の外交官:ハーバート・ノーマンの生涯』(1991年、岩波書店→後に『スパイと言われた外交官*13ハーバート・ノーマンの生涯』と改題し、2007年、ちくま文庫)というノーマン評伝の筆者です*14。「岩波から出たノーマン評伝」と聞くとまともそうですが、工藤の本じゃなあ。それとも「1991年時点ではノーマンに同情的で評伝もまともだった工藤」が『関東大震災朝鮮人虐殺」の真実』(2009年、産経新聞出版)というデマ本を書くまでに後に急激に右傾化し、産経文化人入りしたって事なんですかね。

【追記】
この拙エントリについたid:jimusiosakaさんのブクマ。

http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20140727/2310987654
>「1991年時点ではノーマンに同情的で評伝もまともだった工藤」が〜後に急激に右傾化し、産経文化人入りしたって事なんですかね。←まさにその通りだと思います。ノーマンの評伝は、「世界」に連載されていました。

 どうもご教示ありがとうございます。しかし「鈴木善幸*15元首相(社会党右派から自民党穏健保守)」のような「微妙な変化*16」ならまだしもこういう「異常な変化」はどう理解したらいいのかさっぱりわかりません。


■【深・裏・斜読み】食卓からウナギが消える? 絶滅危惧種に指定、資源枯渇に現実味 ピンチの生産を回復させるには
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140727/biz14072707000004-n1.htm
 ウナギ問題では日本メディアは「規制が必要」「日本人が食べ過ぎ」「当面完全養殖は無理」などといった耳の痛いことを報じず「中国の消費が増えたから」などとんちんかんな報道ばかりします。
マスコミ報道の酷い例として
Apes! Not Monkeys!  本館
『ひどすぎるうなぎ報道の中でも最低クラスの「ミヤネ屋」7月18日放映分』
http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20120720
『倫理観の欠片もないうなぎ報道』
http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20120722
『養殖業者陰謀説/ゲンダイネットのうなぎ記事』
http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20120723
『本日の憤死タイム!』
http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20120724
『新聞記者って、生物多様性のことをまじめに考えると死ぬ宿命でも背負っているの?』
http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20130215
『最後かもしれないチャンスを食い尽くす美しい国
http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20140303
『7月22日、ABC「キャスト」のウナギコーナー』
http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20140723
を紹介しておきます。
 まあ一方で
Apes! Not Monkeys!  本館
『「ウナギを我々日本人が守るのは義務」』
http://d.hatena.ne.jp/apesnotmonkeys/20120821
が紹介するまともな報道(NHKサイエンスゼロ』)もありますが。
 マスコミ報道は酷い物が多いため「ああ、産経も同じなんだろうな、いつも酷い愛国記事書いてるからな」と思いきや

・今年は国内産シラスウナギの水揚げが16・0トンと約3倍で、取引価格も昨年の248万円(1キロ当たり)から約92万円と下落*17したが、「長期的に見れば減少傾向」(水産庁栽培養殖課)と危機であることに変わりない。
ニホンウナギ減少の背景はどこにあるのか。北里大学海洋生命科学部の吉永龍起(たつき)講師(42)は、(1)乱獲(2)河川開発(3)海洋環境の変化−の3つを挙げる。吉永講師は「乱獲だけではなく、生態系を無視した開発で、ウナギがすめない河川が増えたことも大きい」とみる。
 水産庁栽培養殖課は対策として、「乱獲を防ぎ、資源保護するしかない」としているが、これまで、保護について国内規制や国際ルール作りをしてこなかったという怠慢が危機を生んだとも言える。
 「ウナギの生態は未解明な部分が多く、数値を挙げて規制することが難しい」と漏らす同課の担当者。国内は都道府県や業界団体の自主規制に任せる消極姿勢だった。
・22年に水産総合研究センターが世界で初めて成功させた卵の人工孵化(ふか)からの完全養殖技術も開発段階で、すぐには解決策にならない。
・世界中で新たなウナギ産地を次々開拓し、食卓からウナギを消さなかった日本人の意識にも問題がありそうだ。ニホンウナギ以上に絶滅危惧種とされ、取引が規制されているヨーロッパウナギに代わり、インドネシアなど東南アジア産が国内市場で出回り始めている。吉永講師は、「東南アジアの海域のウナギはニホンウナギ以上に限られた資源の可能性がある」と危惧する。
 その上で「『ニホンウナギがないならヨーロッパ、次は東南アジア』となりふり構わず輸入を続ければ、日本人が世界中のウナギを食べ尽くしかねない。食欲を優先してウナギを絶滅させるか、ある程度我慢して資源回復に本腰を入れるのか。レッドデータ入りは日本が世界から突きつけられた『レッドカード』でもある」と警鐘を鳴らす。

と非常にまともです。まあ、これでもウナギ問題で批判的な方々にとっては「まだ甘い」のでしょうが「テレビワイドショー(Apeman氏が批判するミヤネ屋やABCキャストなど)のウナギ報道」や「産経の慰安婦報道」に見られる「現状が危機であることを認めない無責任な態度」「日本は悪くないという醜い居直り」がないだけ評価出来ます。

【追記】
■『日本政府、ウナギ乱獲防止へ新制度 国際的に連携、安定供給目指す』
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140728/biz14072820440014-n1.htm
 さすがにやっと日本政府も重い腰を上げたようです。
 そして産経の社説も実にまともです。
■【主張】土用のウナギ 資源と食の文化の永続を

http://sankei.jp.msn.com/life/news/140729/trd14072903150002-n1.htm
 つまるところは、捕りすぎなのだ。資源が激減してしまったウナギのことである。
 今シーズンは、養殖用のシラスウナギ(稚魚)の漁獲高が少し回復したために、かば焼きなどの価格が落ち着いた、と歓迎されている。
 だが、激減傾向の中での小回復なので、本来はシラスウナギの多獲を控えるべきだったはずだ。
 国際自然保護連合(IUCN)によってニホンウナギは6月に絶滅危惧種に指定されたばかりであるにもかかわらず、今夏の消費に抑制傾向はみられない。
(中略)
 資源回復を目指すなら、まずは秋の下りウナギの捕獲をやめなければならない。この措置を厳しく講じているのは、鹿児島などの九州3県と高知県に限られ、愛知と静岡県が緩やかな対策をとっているだけだ。
 次には河川シラスウナギの漁獲制限と漁獲量の把握が不可欠だ。高値が付くことや夜漁のため、暴力団などによる密漁も行われ、正確な参入資源量が分かっていないのが実態だ。
 もっと言えば、日本列島におけるウナギの自然分布さえ判然としていない。
(中略)
 ニホンウナギの再生には、基礎調査からの着手が急務である。環境省が大学への委託研究で利根川など7河川での総合調査に乗り出したことを評価したい。
 農林水産省も新たに成立した内水面漁業振興法に基づいて養鰻(ようまん)業の実態把握に動き出す。中国からのヨーロッパウナギの輸入*18で(注:ヨーロッパウナギの絶滅の危機を助長しているなどと、)国際社会から後ろ指をさされるようなことをなくすためにも必要だ。
 ウナギの減少は約40年前から目立ち始めた。気候変動に伴う海流の変化などの影響もあるだろうが、即応性のある対策は過食の抑制だ。人工の種苗生産が期待されるが、実用化には時を要する。

*1:産経の主張なので「生みの親かどうか」ははなはだ疑問ですがそうした認識を広めた功績があることは事実なのでしょう。

*2:中曽根内閣科学技術庁長官、宮沢内閣官房長官、村山、小渕、森内閣外相、衆院議長を歴任。

*3:著書『日本が知らない戦争責任:日本軍「慰安婦」問題の真の解決へ向けて』(1999年、現代人文社)、『国連人権理事会:その創造と展開』(2009年、日本評論社)など

*4:戦後、日本共産党書記長

*5:レッドパージなどの反共政策はその後の話です。

*6:日本共産党中央委員。後に日本共産党執行部と対立し、「日本のこえ」を結成、委員長に就任した。

*7:貴族院議長を経て首相

*8:近衛内閣文相、厚生相、平沼内閣内務相を経て内大臣

*9:精神病を理由に免訴

*10:駐日カナダ代表部主席、駐ニュージーランド高等弁務官、駐エジプト大使兼レバノン公使などを歴任。赤狩りに将来を悲観し1957年に自殺。著書『日本における近代国家の成立』(岩波文庫)、『忘れられた思想家:安藤昌益のこと』(岩波新書)など。

*11:どこが正しいんですかね。何度も言いますが仮にノーマンが共産党シンパだとしても、「共産党シンパ=ソ連スパイ」じゃないんですが。

*12:後にこの工藤本は加藤康男関東大震災朝鮮人虐殺」はなかった!』(2014年、ワック文庫)となっている。加藤は工藤の夫(ウヨなのに何故夫婦別姓なのかは不明)で、もともとほとんど加藤の執筆だが2009年当時は加藤が無名だったため協力者の妻・工藤の名で出版したらしい。なお、加藤には他にも、張作霖暗殺関東軍犯行説を否定するデマ本『謎解き「張作霖爆殺事件」』(2011年、PHP新書)という著書がある。

*13:わざわざ改題してる当たり本の内容が、ノーマンに否定的な方向に変わってるんでしょうか?

*14:ウィキペ「工藤美代子」参照

*15:社会党を離党した平野力三(片山内閣農林相)を党首とする社会革新党に参加したが党勢が伸び悩んだため吉田茂民主自由党に移籍(なお、鈴木以外のメンバーはほとんどが社会党右派として社会党に復党)。池田内閣郵政相、官房長官、佐藤内閣厚生相、福田内閣農水相自民党総務会長(大平総裁時代)などを経て首相。

*16:右派とは言え社会党出身者の鈴木を首相にする度量の広さがあったのが昔の自民党です。今とは雲泥の差です。

*17:これをネタに大本営発表を繰り広げるテレビワイドショーに比べれば「長期的に見れば減少傾向」と指摘するだけでもこの産経記事はまともです。

*18:中国も国際的批判を恐れて近々規制するようですが