新刊紹介:「経済」9月号

「経済」9月号の詳細については以下のサイトをご覧ください。興味のある記事だけ紹介してみます。
http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
■巻頭言「原発再稼働への暴走」
(内容要約)
 安倍内閣川内原発再稼働方針への批判。

赤旗
主張『川内原発審査書案、これで再稼働などありえない』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-18/2014071801_05_1.html
『避難計画も火山対策もなおざり、規制委 川内原発「適合」、「再稼働」結論ありき』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-17/2014071701_01_1.html
川内原発再稼働の「審査書案」の提出について:日本共産党原発・エネルギー問題対策委員会責任者 笠井亮
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-17/2014071702_02_1.html
『きょうの潮流』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-17/2014071701_06_0.html


■随想「映画『戦場に架ける橋』その後」(森井淳吉)
(内容要約)
 1957年公開の映画『戦場に架ける橋』のその後を描いた映画と言えるのではないかとして、2014年4月に日本で公開されたオーストラリア映画『レイルウェイ・運命の旅路』(公式サイト:http://www.railway-tabi.jp/)を紹介しています。


■世界と日本
【動き出したインド新政権】(山崎幸雄)
(内容要約)
・インド新政権の誕生は「グジャラート州首相」として州の経済成長を達成したモディ新首相の「経済手腕」に国民が期待した結果と見られる。モディが深刻なインド経済の低迷をどう解決するかが注目される。
・モディ氏の懸念材料としては彼のヒンズー至上主義がある。彼がグジャラート州首相だった2002年、ヒンズー至上主義者のテロで千人を超えると言われるイスラム教徒が死亡したと言われるが、当時、州首相の彼が故意にヒンズー至上主義取り締まりを怠ったという疑惑が取りざたされてきた。
 そのため米国は彼がインド首相に就任するまで事実上、彼の米国入国を禁止してきた。今後彼がヒンズー至上主義にいかなる態度を取るかが注目される。
・また彼が領土タカ派であるため、中国やパキスタンとの対立を深めることも危惧されている。一方で首相に就任すればそれなりに現実化するのではないかとの見方もある(モディは州首相時代、州経済発展のため外資を導入しているが、その外資の中には中国系もある)。
・彼が領土タカ派であることから安倍政権など日本右派には「中国封じ込めの同志」とモディを見なす者もいるようだがその見方は間違いだろう。そもそも「連合国側に立って日本と闘った」ガンジー、ネールを建国の父とするインドにとって安倍らの「戦前美化歴史観」は到底受け入れることが出来ないからである。また「領土タカ派」であっても経済的利害から中国と親密な関係を築く方向に動く可能性は決して低くはない。

参考
赤旗
『インド・モディ新政権外交、周辺国重視は好感、日米との核、軍事協力に懸念』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-08-08/2014080806_01_1.html


【映画「もう一つの約束」:サムスン白血病問題の真実】(洪相鉉)
(内容要約)
サムスン電子労働災害サムスン白血病問題)を取り上げた映画「もう一つの約束」の紹介。
 「もう一つの約束」について「サムスンの圧力で上映する映画館が少ない」などの問題を乗り越え、
サムスン批判」を世間に広めたとして高く評価。

参考
日本経済新聞サムスン、元従業員の白血病問題で謝罪』
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1402E_U4A510C1FF1000/
産経新聞サムスン告発映画が韓国でヒットする“理由”』
http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/140226/wec14022607010000-n1.htm


【銀行の14年3月期決算:貸出低迷でも株高で最高益】(桜田氾)
(内容要約)
 副題の「貸出低迷でも株高で最高益」が筆者の言いたいことである。要するに「銀行は自らの社会的意義を自覚し貸し出し増加に取り組むべき」であるし、政府も「銀行の貸し出しを促す政策」あるいは「銀行にかわって貸し出しを行う政策」に取り組むべしといいたいのであろう。


特集「アベノミクスで広がる貧困・格差」
■「アベノミクスの下での国民生活の危機と再構築」(金澤誠一*1
(内容要約)
 生活保護基準の切り下げ、消費税増税などによって、アベノミクスの下で貧困・格差が広がっていることが指摘される。


■「『アベノミクス・バブル』の形成と崩壊」(関野秀明*2
(内容要約)
 アベノミクスを「金融バブルによる株価高」と見なした上で、こうしたバブルは「消費税増税」「社会福祉のカット」と言った需要切り捨て政策により早晩、限界に突き当たるだろうとしている。


■「社会保障の『解体』と国民的反撃の課題」(山口一秀)
(内容要約)
 生活保護の切り下げ、介護保険料の増額など、アベノミクスのもとで行われる「社会保障解体政策」を指摘した上でそれに対する対抗の必要性が主張されている。

参考
赤旗
主張『「医療介護法」成立、国民の権利奪う暴挙を許さず』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-06-19/2014061901_05_1.html
主張『改悪生活保護法、生存権を侵害する対応許さず』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-08/2014070801_05_1.html


■「子どもの貧困の今日的特徴」(浅井春夫*3
(内容要約)
 2013年6月、自公も賛成し、「子どもの貧困対策法」が成立した。自公政権も「子どもの貧困」を認めた上で、それに対応する法律の制定に賛同したことは運動の成果として評価出来る。
 しかし法律では「1年以内に貧困対策大綱を制定すること」となっているにもかかわらず、未だに大綱が制定されていないことは問題である。早急に大綱を制定させる必要がある。
 そして大綱において「貧困率の削減目標」など具体的目標とそれを実現するためのある程度具体的な政策方針を制定した上で、それについて政府が国会に報告し、さらなる大綱制定に生かすというシステム作りが必要であろう。


■「トリクル・ダウン理論とは何か」(屋嘉宗彦*4
(内容要約)
 トリクルダウン理論とは平たく言えば「富裕層が豊かになればその恩恵は自然と貧困層にも及ぶ」という考えであり、「法人税減税、高額所得者への所得税減税」の背景にある考えである。
 しかしそのようなトリクルダウン効果は実際には認められていない。そもそもこの考えでは政府の所得再分配政策が否定されるであろう。「累進課税」「社会保障給付」などの所得再分配政策をとらなければ「富裕者はより富裕になり、貧困者はより貧困になり格差が拡大する」のが現実に起こっていることである。 
 むしろ日本においては「再分配政策の弱さ」こそが問題である。


■「若者を戦場に送らないために」(内藤功)
(内容要約)
 赤旗の記事紹介で代替。

赤旗
『“戦場に行くのは若者”、集団的自衛権の危険訴え、山下書記局長』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-06-29/2014062902_02_1.html
『「戦場へ」若者は拒否、官邸前で「閣議決定するな」数万人』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-01/2014070101_01_1.html


■「半導体産業の事業再構築とルネサス:現場はどうなっているか」(花山修)
■「ルネサスの横暴、身勝手なリストラは許されない」(米田徳治)
(内容要約)
 ルネサスエレクトロニクス社による無法なリストラに対する批判。

参考
赤旗
ルネサス 広域配転、厚労省が調査を約束、小池議員、電機・情報労組と要請』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2014-03-21/2014032105_01_1.html
『リストラ是正指導を、ルネサス問題で小池議員』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-03-26/2014032602_03_1.html
ルネサスリストラに反撃、かながわ対策会議が発足』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-05-18/2014051801_03_1.html
『リストラから雇用守る、兵庫・伊丹 ルネサス連絡会を結成』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-05-26/2014052601_01_1.html
ルネサス 国主導リストラ、基本給減 広域異動迫る』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-06/2014090601_02_1.html


■「『戦後レジームからの脱却』農政の展開」(田代洋一)
■「新自由主義と闘う世界の家族農業と食料主権」(福島裕之)
(内容要約)
・安倍政権の農業政策に対する批判。特に福島論文ではビア・カンペシーナなど世界における家族農業の動向が紹介されている。

参考
赤旗
『亡国安倍農政「改革」 通常国会を振り返って (上):紙智子参院議員、党農林・漁民局長に聞く』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-04/2014070403_01_1.html
『亡国安倍農政「改革」 通常国会を振り返って (中):紙智子参院議員、党農林・漁民局長に聞く』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-05/2014070504_02_1.html
『亡国安倍農政「改革」 通常国会を振り返って (下):紙智子参院議員、党農林・漁民局長に聞く』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-06/2014070604_01_1.html


■「グローバル企業の社会的責任:国際社会の新しい展開」(筒井晴彦*5
(内容要約)
・「国連グローバルコンパクト」「OECD多国籍企業行動指針」「ISO26000」など様々な国際的な「企業に社会的責任を果たさせる取り組み」を紹介。日本においてもこうした取り組みの必要性を訴えている。参考文献としてラギー『正しいビジネス:世界が取り組む「多国籍企業と人権」の課題』(邦訳、2014年、岩波書店)が紹介されている。


■データで見る日本経済13「小規模企業・事業者の動向」
(内容要約)
 統計データ上、小規模企業・事業者が減少傾向にあることを指摘した上で、こうした小規模企業・事業者への支援の必要性を主張。6月の国会で成立した小規模企業振興基本法についてそうした支援の表れの一つとして評価している。


■「『空想から科学へ』英語版序文を読み解くために」(長久理嗣)
(内容要約)
・「『空想から科学へ』英語版序文は「本全体の1/3」をしめるほど長大であり、これほど長大な序文は英語版にしかついていない。何故このような長文序文がついたのかについて触れている文章はあまり見あたらないように思うのでここに簡単に説明しておく。
・『空想から科学へ』はイギリスでは「社会叢書シリーズの一冊」として刊行され、出版社は全ての本に「2シリング6ペンス」の値段をつけることにしたが、その場合『空想から科学へ』には大きな問題があった。もともとパンフレットとして出版した物だったので、他の本と比べて本が薄かったのである。
 これを解決する手段として出版社が「本を厚くするため、とにかく出来るだけ長い序文を書いてくれ」と頼まれたが故に、エンゲルスが長い序文を書かざるを得なかったのである。
 なお、このとき、エンゲルスは「英語版読者向け」ということで、序文に自らのイギリス理解を大量に書いている。これによってエンゲルスの「イギリス理解」について知ることが出来るわけである。

*1:著書『「現代の貧困」とナショナル・ミニマム』(編著、2009年、高菅出版)、『最低生計費調査とナショナルミニマム:健康で文化的な生活保障』(共著、2012年、本の泉社労働総研ブックレット)

*2:著書『現代の政治課題と「資本論」:自己責任論批判の経済学』(2013年、学習の友社)

*3:著書『子どもの貧困:子ども時代のしあわせ平等のために』(共著、2008年、明石書店)、『子どもの貧困白書』(共著、2009年、明石書店)、『脱「子どもの貧困」への処方箋』(2010年、新日本出版社)など

*4:著書『マルクス経済学と近代経済学(新版)』(2003年、青木書店)

*5:著書『働くルールの国際比較』(2010年、学習の友社)