■【水内茂幸の外交コンフィデンシャル】日中に楽観は禁物 首脳会談実現は「習政権の基盤次第」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140824/plc14082418000011-n1.htm
タイトルの「習政権の基盤次第」とは「習政権の基盤がぐらついてる方が日本との外交で成果を上げようと、日本と首脳会談してくれるんじゃないか」「いや逆だよ、ぐらついてたら対日強硬派*1の批判でむしろ会談できない」とかそういう話の訳です。
しかし相手の政権基盤を云々する前に「安倍以外のまともな政治家が首相になる」にせよ、「安倍が今の反中国路線を撤回する」にせよ「安倍の方が変わるべき」でしょうに。
関係者によると、習氏*2は福田氏*3との会談で、安倍*4首相が集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定に踏み切ったことについて「行使できるようにして何がしたいのか」と批判。
どう見ても「政権基盤」など習氏の態度に関係なさそうですがそれはともかく。そりゃ習氏もそういうでしょう。安倍は「本気かどうかはともかく」集団的自衛権正当化にさんざん尖閣問題を持ち出してますから。また安倍はさすがにそういう発言はしてなかったかと思いますが、産経や安倍に近いと言われる連中(例:島田洋一)は「集団的自衛権は中国封じ込めが目的の一つだ」「中国を封じ込めるためにインドや東南アジアと連携しよう」などと平然と公言しています。
であるから「反中国外交の一環が集団的自衛権か?。そうでないなら何がしたいんだ?」と中国の不快感、不信感をかって当然です。福田氏も習氏への対応に苦労したでしょう。しかも安倍やそのお仲間連中は靖国参拝などでその中国の不快感、不信感を解消するどころか、助長してるのだから話になりません。
中国に太いパイプを持つ自民党幹部は、都内の小さな居酒屋で、ビールをあおりながらため息をついた。
(中略)
「日本にとって、急いで日中関係を改善しなければならない案件っていうのは正直少ないんだよね。」
絶句ですね。そういう馬鹿な事を言ってていいのか。かつこれでは「日本にとって、急いで日韓関係を改善しなければならない案件っていうのは正直少ないんだよね(政府、自民党)」の疑いすらあります。
■【日曜経済講座】オウンゴールのアベノミクス 膨張中国に対峙する原点に戻れ(田村秀男*5)
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140824/fnc14082409340002-n1.htm
内容がどこまで正しいかは経済素人、経済音痴なので分かりませんが「アジア経済での中国の存在感が増してる、このままじゃ日本が負ける、日本はなんとかしなきゃ」とかそんな感じの文章です。要するにある程度常識があれば、「中国なんていずれ潰れる」とか馬鹿な事は産経記者でも言わないと言う事です(とはいえ、タイトルにも書いてあるように「アベノミクスの原点は中国との経済戦争の勝利」とか「そんな事安倍言ってたっけ?。景気回復しか言ってないでしょ?」という変な部分も記事にはありますが)。
中国は不動産バブルの崩壊や共産党内の権力闘争*6激化で自滅するとか、南シナ海などでの露骨な覇権主義*7で中国はアジア、さらに世界的に孤立しつつあるという見方もあるが、希望的観測に過ぎやしないか。
(中略)
国家の経済力の国際評価基準であるドル建てで日中のGDP(名目)を比較してみればよい。
(中略)
世界銀行統計によると、2013年の日本は4.9兆ドル、前年比で17%減、対する中国は9.2兆ドル、同12%増と、日本との差をさらに広げている。今年は前半のGDP速報値から推計すると、日本が前年比0.2%減、中国9%増である。
(中略)
中国の対外貿易総額はアジア向けを中心に膨らみ続け、13年は日本の2.7倍にも達した。
グラフを見よう。13年、中国の対外貿易での人民元による決済額は日本のそれの円による決済額を初めて上回った。人民元は7080億ドルで前年比57%増、円は16%減である。今年は人民元決済に加速がかかり、年前半の実績値から推計すると、円建て決済の倍近くに膨れあがる勢いだ。
(中略)
東アジア圏で円は人民元によって駆逐されつつある。
【2014年8/26追記】
気になったので書き手の田村秀男氏についてググって見ました。
ウィキペディア「田村秀男」
1970年、早稲田大学第一政経学部を卒業し、日本経済新聞に入社。 岡山支局、東京本社産業部、経済部、ワシントン特派員、香港支局長、本社編集委員を歴任。2006年10月に日経を退職、12月に産経新聞社に転じた。
ということで日経出身なんだそうです。何で「経済的に恵まれた」「政治的バイアスも産経よりはたぶん少ない」「世間的評価も産経より高い」日経の人間(それも日経社内で編集委員にまで出世した人間)がわざわざ「いつ倒産するか分からない」「露骨に極右偏向してる」「世間的評価が日経より低い」産経に行くのかわけがわかりませんが。福島香織*8のように逃げ出してる人間がいるのが産経なのに随分変わった人です。
せめて産経以外のメディア(例:朝日、読売、毎日など)に行けばいいのに。あるいは福島香織みたいにフリーになるとか。
なお、田村氏は『人民元が基軸通貨になる日』(2010年、PHP研究所)を出してますので「中国経済は中国崩壊論者が言うほどやわなもんじゃない」というのは彼の持論なんでしょう。
【2014年8/27追記】
■産経新聞『上海閥*9一掃が告げる北京の対外強硬路線「今や米国に十分対抗できる」』(田村秀男)
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140827/chn14082711340003-n1.htm
日経上がりだし田村氏はそれなりにまともなんだろうと思ったのはどうやら勘違いのようです。
田村氏は「阿比留やペマ・ギャルボのような中国崩壊論」でないかわりに「常軌を逸した中国脅威論」のようです。
江沢民氏*10の子息が江派の軍長老に打ち明けた情報によると、習近平氏を2012年、党と軍のナンバーワンの座に据えた江沢民氏は「中国の実力はいまだに米国にはるか及ばない」とし、「韜光養晦・有所作為」原則*11を胡錦濤*12前総書記に続いて習氏も踏襲するよう求めた。習氏はこれに対し、「今やわれわれの力で米国に十分対抗できるし、そうすべきだ」と譲らず、2人の関係は断絶した。
習氏は今年から本格的に対米柔軟派の上海閥締め出しに動き、軍上層部を強硬派で固める人事を着々と進めている。上海閥*13の不正行為の摘発はその目的達成の手段でもある。
(中略)
「政冷経熱」とか、「自由貿易協定(FTA)で中国市場を取り込む」、という日本人特有の修辞学はもはや浮世離れした幻想でしかない。対中ビジネスは習路線を見据えたリアリズムに徹すべきだ。
いや実に産経記者らしい反中国論ですね。素人ながら、浮世離れしてるのは田村氏の「常軌を逸した中国脅威論」ではないかと思います。
■【から(韓)くに便り】日韓関係、新たな50年を “みそぎ”終えた朴大統領 黒田勝弘*14
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140824/kor14082403030001-n1.htm
ブクマもつけましたが言ってる意味がさっぱりわかりません。最初から韓国は「人権問題、人道問題としての慰安婦問題」でしょうよ(産経の拉致問題の扱いの方がよほど「反北朝鮮の道具」だと思う)。
だから国際社会(国連、欧米など)やローマ法王も韓国を支持してる。最初から「反日の道具だ!」と決めつけて悪口雑言なのは産経でしょうよ。
大体「河野談話撤回(産経の持論)」と「人道問題としての慰安婦問題」とどう両立するのか。両立しないでしょうよ。
それと「反日の道具」って、「チベット問題を欧米は反中国の道具にしてる(中国)」「チェチェン問題を(以下略)(ロシア)」などという態度と黒田がうり二つなことには苦笑させられますね。
*1:産経は江沢民元国家主席・党総書記をそう見なしてるようですが
*2:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て国家主席、党総書記、国家中央軍事委員会主席、党中央軍事委員会主席
*4:小泉内閣官房副長官、官房長官、自民党幹事長(小泉総裁時代)を経て首相
*5:最近の著書に『アベノミクスを殺す消費増税』(2013年、飛鳥新社)、『消費増税の黒いシナリオ』(2014年、幻冬舎ルネッサンス新書)。著書名で分かるように田村氏は「景気に悪影響を与える」として消費税増税には反対です。彼の昔いた日経も、今いる産経も社論は「消費税増税賛成」ですけど。
*6:周永康・元党中央政法委員会書記・元党中央政治局常務委員が汚職容疑で摘発されたことを産経は「汚職は事実だろう」と見なした上で「権力闘争の側面がある(つまり周氏を反執行部と産経は評価してるのだろう)」と評価している。
*8:著書『中国「反日デモ」の深層』(2012年、扶桑社新書)、『現代中国悪女列伝』(2014年、文春新書)など
*9:上海市長・党委員会書記だった江沢民・元国家主席をリーダーとするグループのこと
*10:電子工業大臣、上海市長・党委員会書記などを経て国家主席、党総書記、党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席
*11:ここではこの原則とやらは「米国とはなるべく対決は避ける」という路線と理解すればいいでしょう。
*12:貴州省党委員会書記、チベット自治区党委員会書記、国家副主席などを経て国家主席、党総書記、党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席
*13:田村氏の理解では「上海閥の摘発」にあたるのが「周永康・前党中央政法委員会書記(前党中央政治局常務委員)」や「徐才厚・元国家中央軍事委員会副主席(元党中央軍事委員会副主席)」ということらしい。
*14:著書『韓国人の歴史観』(1999年、文春新書)、『韓国・反日感情の正体』(2013年、角川oneテーマ21)など