『なぜアベノミクスによって輸出が増えないのか:中国に競り負ける日本』(川島博之)

 まあ、「中国素人」「経済素人」には何とも評価しかねる文章*1ですが「あり得ない話ではない」とは思います。少なくともこうした話に一定に信憑性を感じる程度には中国の存在感は大きくなってると言えるでしょう。バカウヨみたいに「打倒中国」など全然現実性がないわけです。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41656
 アベノミクスの目玉は大胆な金融緩和によって為替を円安に導くことであったが、そこまでは成功したとしてよい。円は1ドル80円付近から100円台にまで下落した。
 その結果、トヨタ自動車など海外での生産が多く、海外で得られた利益を日本に送金している企業は(注:円安によって)大幅に利益を伸ばすことができた*2。だがその一方で、石油など輸入品の価格は高くなった*3。海外で生産している企業が潤い、輸入品を消費する人々が損をした。
 もちろん、アベノミクスはこのようなことを目的にしたものではない*4。円安によって輸出が増えることを期待したのだ。輸出が増えれば国内メーカーが儲かり、そこで働く人の給与も上がる。彼らが消費を増やせば、その効果は飲食業などにも及ぶ。アベノミクスによって輸出が増え景気が良くなると考えたのだ。
 しかし、輸出は思うように伸びていない。
(中略)
 なぜ、輸出は増えないのか。
(中略)
 下の図を見ていただきたい。これは世界の総輸出額に日本と中国の輸出額が占める割合を示したものである。日本の輸出が占める割合は1960年代から80年代後半にかけて一貫して増加し、80年後半には8%を超えていた。世界で取引される貿易財の8%が日本から輸出されていたのだ。
(中略)
 図から明らかなように、(中略)中国からの輸出額割合は急増している。それは日本の60年代を上回る勢いで、2004年には日本を追い抜いてしまった。その後、日本と中国の差は広がるばかりだ。
 中国は世界の工場になった。現在、中国の輸出額割合は“Japan as No.1”と呼ばれた80年代後半の日本をも上回る。
 日本の輸出が増えない理由は明らかだ。日本の輸出産業は中国に競り負けている。アベノミクスによって円を20%も安くしても、中国の輸出産業に打ち勝つことができない。
 賃金が安いために、中国の製品は日本製よりもずっと安い。
(中略)
 少し前なら、中国の製品は安いが性能が悪く、よく壊れた。しかし、中国の技術だって日進月歩する。日本を目標に品質向上に努めている。
(中略)
 中国製をいまだに評価しない日本人は多いが、世界の人々、特に開発途上国の人々は中国製に満足するようになった。
(中略)
 日本人は中国の台頭という冷厳な事実を認めなければならない。もちろん、筆者もこれまでに(注:著書『データで読み解く中国経済:やがて中国の失速がはじまる』(2012年、東洋経済新報社)などで)何度か書いてきたように中国経済は現在バブルの様相を呈している。そして、不動産バブルは崩壊寸前にあり、より正確に言えば崩壊し始めたと言ってよい。
 しかし、バブルが崩壊したからと言って、中国からの輸出が減少することはないだろう。日本が(注:1990年代初頭の)バブル崩壊後、輸出主導で景気の拡大を図ったことを記憶している人も多いと思う。中国も同様の手段に出る可能性が高い。つまり、バブルが崩壊しても中国からの輸出は止まらない。

*1:1980年代以降の円高対応で国内生産ではなく、既に現地生産に大幅に移行してる(いわゆる産業空洞化)から増えないなどと言う別の説もありますので。

*2:海外で稼いだ金が「4万ドル」だとしましょう。1ドル80円の円高だと日本に送金した場合320万円。一方、100円の円安だと同じ4万ドルが400万円になり80万円得するわけです。同じ理屈で円安になると海外から日本への旅行客が増えるわけです

*3:輸入品の現地価格が「4万ドル」だとしましょう。1ドル80円の円高だと日本では320万円。一方、100円の円安だと同じ4万ドルが400万円になり消費者は80万円損するわけです。

*4:と言えるかどうかは疑問でしょう。安倍だと「事情がどうあれ企業が儲かるのならそれでいいじゃないか」と思ってた疑いすらあります。