新刊紹介:「前衛」10月号

「前衛」10月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。
http://www.jcp.or.jp/web_book/cat458/cat/
 以下は私が読んで面白いと思った部分のみ紹介します。(詳しくは10月号を読んでください)

■「スターリン*1秘史:ユーゴスラヴィア解放戦争(下)」(不破哲三*2
(内容要約)
・連載の第21回目。『9月号』紹介で

http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/searchdiary?word=%2A%5B%C1%B0%B1%D2%5D
 (上)ではソ連を含む連合国がチェトニックを支持し、チトーが対応に苦しむところで終わっているが、次号の(下)ではチトーがチェトニックに政治的に勝利する当たりが説明されるのだろう。

と書いたがその通りの文章。
 ついに1942年11月、チトー*3は「チェトニックとの戦闘」「亡命政府がチェトニックを支持する限り、自らのグループがユーゴの事実上の政府として活動すること」を公式に宣言する。そしてチトーはスターリンの冷淡さにあきれ果て、ソ連と交渉すると同時に米英に対しても独自外交を展開する路線を開始する。
 その結果、皮肉にもチトーを評価した米英によって「ソ連の支援がないのに」チトー支援が行われるという皮肉な事態になる。
 1945年2月、米英ソ三国からチトーに対し「新ユーゴスラビアの政権は亡命政府(旧王制)とチトーらとの連立政権をするよう」という要請が行われた。チトーは反発するが三国と対決する事は政治的力関係から得策ではないと考え、チトーの首相就任を認めさせた上で連立内閣を発足させた。ソ連が「連立内閣構想」に反対しなかったことはチトーのソ連不信を強めた。


■座談会『沖縄は決して新基地を許さない:「建白書」にもとづく団結で憲法が生きる政治をつくる』(平良啓子、赤嶺政賢、渡久地修、比嘉瑞己)
(内容要約)
 辺野古基地建設を強行しようとする安倍政権への批判。

参考
赤旗
官房長官「新基地淡々と」発言、「民主主義じゅうりん」、山下書記局長』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-09/2014090902_01_1.html
『“辺野古新基地建設は過去の問題だ” 官房長官の暴言に怒り、名護住民らが抗議行動』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-12/2014091201_04_1.html
辺野古新基地ノー 知事選勝利へ、来月4日 沖縄連帯交流集会、日本平和大会実行委が開催、東京・渋谷』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-13/2014091305_01_0.html
『「辺野古新基地 造らせない」、沖縄知事選 翁長那覇市長が出馬会見』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-14/2014091401_01_1.html


■『集団的自衛権行使容認「閣議決定」批判:矛盾と破綻にみちた「解釈改憲」』(中祖寅一)
(内容要約)
 集団的自衛権行使容認「閣議決定」について「従来の政府見解を正当な理由もなく廃棄した」ものであり、また「制約になるとしているいわゆる新三要件」も無限定で何らの制約にならないと批判。

参考
赤旗
『成り立つの? こんな「言い訳」、集団的自衛権―政府のQ&Aをみる:Q「“若者が戦地へ”は誤解」?:A血を流すのは若者 徴兵制も』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-12/2014071201_08_0.html
『成り立つの? こんな「言い訳」、集団的自衛権―政府のQ&Aをみる:Q「政府見解の論理の枠内」?:A立憲主義否定の解釈改憲
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-13/2014071302_05_0.html
『成り立つの? こんな「言い訳」、集団的自衛権―政府のQ&Aをみる:Q「メディアで議論、議員も質問」?:A実態、与党が密室で協議』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-14/2014071402_02_0.html
官房長官 「閣議決定」、苦しい弁明、自民09年「提言」 国民主権の原則から解釈改憲許されない』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-14/2014071402_01_1.html
『「新3要件」歯止めなき武力行使、審議で浮き彫り:「日米同盟に深刻な影響」のケースでも』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-15/2014071502_01_1.html
集団的自衛権 官邸言い訳集、ウソとゴマカシ膨れる、内閣官房HPで設問・回答22→35に』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-22/2014072202_01_1.html
集団的自衛権行使容認「閣議決定」、自民が2度目の「Q&A」、偽り並べ世論対策』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-31/2014073102_01_1.html
集団的自衛権「Q&A」自民が新ビラ作成、“武力行使ない”というが… 根拠ない言い訳、メディアも批判』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-01/2014090102_03_1.html


■『時代を逆行させる労働時間制度改革:無制限長時間労働と低い固定賃金制度へ』(森岡孝二*4
■『「新たな労働時間制度」は何をもたらすか:「成果に応じた報酬」の欺瞞、「長時間・過重労働」への道』(佐々木亮
(内容要約)
 ホワイトカラーエグザンプション導入など、安倍内閣がもくろむ「働き方改革(雇用制度改革)」について「不安定な低賃金労働」「長時間労働」を増やすとして強く批判。

参考
赤旗
主張『雇用対策の充実、正社員が当たり前の社会こそ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-12/2014071201_05_1.html
『解雇しやすく低賃金、「多様な正社員」拡大へ、厚労省 有識者懇が報告書案』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-14/2014071404_01_1.html


■『歴史の偽造を許さず、日本軍「慰安婦」問題の解決いまこそ』(笠井亮
(内容要約)
 言うまでもなく「安倍首相が歴史偽造を画策し」、日本のウヨメディア「ゴミ売り」「産経、フジテレビ」「週刊ポスト小学館)」「週刊文春」「週刊新潮」などが「慰安婦問題は朝日ガー、吉田証言ガーとデマ飛ばして」、安倍の愚行を応援するという危機的な状況に今あるわけです。もちろんこんな偽造を許してはならないことは言うまでもありません。
 ただ共産党が指摘するように以下のような事実が一方ではあるわけです。
1)国際社会は慰安婦違法性否定論を支持しない
 まあ、これについてはある程度調べれば分かる話です。同盟国の米国だってこんな事で安倍なんか支持しない。それどころかオバマは韓国訪問時に朴大統領に対し「河野談話への支持」を表明し、安倍も「オバマ大統領に同意見です」と言わざるを得ませんでした。訪日時にそういわなかったのは「安倍への武士の情け」でしょう。いやアンチ安倍にとってはそんな情けいらないんですけどね。情けかけると増長するのが安倍ですから安倍本人の前でがつんと言って欲しかった。
 それはともかく、安倍が談話撤回に踏み切れない最大の理由がここにあります。
2)歴史学者も否定論を支持しない(秦郁彦など一部珍獣を除く)
 本来「歴史学者が支持しない」時点でまともな国ではこんな無茶苦茶な話浮上しません。学問に対するリスペクトが低い、「河野談話否定論以外にも江戸しぐさ、EM菌などがごろごろある」エセ科学の天国日本だからこそ起こる怪事件です。「キリスト教原理主義」による「進化論否定」なみに無茶苦茶です。
3)戦後補償裁判でも慰安婦の「違法性それ自体」は認定されている。
 さてこうした事態を笠井氏ら共産党は「ただ悲観している」わけではありません。日本には「災い転じて福となせ」と言うすばらしい言葉があります。安倍らの無法で慰安婦問題が「日韓間の懸案問題」に浮上したのは不幸(災い)です。
 しかし、この不幸を「福となせれば」いいわけです。難しいけれどそれしかない。ここまでもめては「河野談話堅持」のみでは韓国も納得できないでしょう。当たり前の話です。プラスαをしないといけない。もはやこれは「道義的問題」というより「ここまでもめて今まで通りの対応に戻すだけで向こうが納得するか!。お前が向こうの立場だったら納得するのかよ!」て話です。
 この点、共産党は「韓国に失望した」と暴言を吐く大沼保昭とは違います。そもそも共産党は大沼と違って「アジア女性基金河野談話で責任取ったんだから認めろよ!」「認めないから日本側が反発してこうなった」なんて無茶苦茶な理解してませんし。
 共産党は以前から「アジア女性基金河野談話」の価値を一応は認めながらも
1)河野談話は韓国メインで東南アジアなどほかの部分への言及が弱いし談話発表後も研究の進展がある。安倍の言うのは別の意味で問題があり、そう言う意味で新談話を出すべき
2)アジア女性基金も「国家賠償」ではないので国としての責任が曖昧だし、金額も決して多くない、本来国家賠償してしかるべき
3)そうした代物を韓国側が批判するのは当然であり、そうした批判に対し「交渉の余地なし」という頭ごなしの対応をするのはおかしい
という立場だったわけです。
 では今後どうすべきか。
a)河野談話発表後の新談話(もちろん吉見義明氏らの研究を踏まえた形でのものであり、安倍、稲田流の見直しなど論外)
b)アジア女性基金ではなく国家賠償
まあこれは以上の説明で分かったかと思います。
c)慰安婦について歴史教科書できちんと教えるなど慰安婦違法性否定論の根を断つ。
 そもそもこれは「河野談話で日本政府が約束していたこと」です。最近も国連から「日本政府は否定論を何とかしろよ」「橋下とか何できちんと批判しない!」と駄目出し食らってます。
 「河野談話歴史教育での慰安婦否定論根絶」を述べていることについては誰かの妄想・はてな版『「河野談話」を読んでみよう』
http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20130804/1375624228
を読んでください。一応「誤解されたくない」ので断っておきますが『今後こういう態度の質問には答えないことにしよう』(http://d.hatena.ne.jp/scopedog/20140821/1408636745)とまで憤激されて「小心者なのでびびってる」事は事実ですが、だからといって慌てて媚びてるわけではありません。
 以前からscopedog氏の「慰安婦問題についての言及」は勉強になるので参考にしています(とか書くとむしろ「媚びてんジャン」とむしろ誤解を招くのか?)。id:Mukkeさん、id:noharraなど「人間のくず」とはscopedog氏への扱いは違います(と今日も悪口雑言)。

われわれは、歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さないという固い決意を改めて表明する。

 河野談話の一文です。id:scopedog氏は、「この一文に反することをしてきたのが日本人だ!」と怒りを表明し「談話を守ること」を主張していますが笠井氏も全く同じ事を言っておられます。小生も勿論同感です。

d)安倍が過去にやらかした「河野談話骨抜き作業」の撤回
 たとえば
Apes! Not Monkeys! はてな別館『マスメディアがほとんどとりあげない安倍内閣の窮状』
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20131104/p1
赤旗『政府資料の強制性否定、「慰安婦」問題 安倍内閣が強弁、赤嶺議員に答弁書
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-10-26/2013102602_03_1.html
が指摘していますが「第一次安倍内閣」での閣議決定河野談話当時、日本政府資料に軍による狭義の強制連行を示す証拠はなかった」は「当時の政府資料に狭義の強制連行以外の何物でもないスマラン事件のBC級戦犯裁判記録がある」ので明らかにデマの訳です*5
 安倍は赤嶺議員の追及に「閣議決定は間違ってない」と強弁していますがただの屁理屈です。このふざけた「第一次安倍内閣閣議決定」を正式に撤回するだけでも「日韓関係は改善するし安倍の河野談話踏襲発言」にも説得力がでてくる。撤回をやらなければ安倍の真意が「ほら見ろ、あいつの談話踏襲なんてデマカセだ、あんな閣議決定出しておいてふざけんな、あのバカ」と理解されるだけです。明らかなデマを撤回するのは当たり前の話だし、この撤回は金や時間が係る大変な話でもありません。
 つうか朝日の吉田証言報道なんかよりこの「安倍のデマ」の方が慰安婦問題での日本批判を激化させるよほど悪質なデマです。「過失犯」朝日と違って故意のデマだし。
e)韓国側が求めている交渉に誠実に応じる(もう終わったことだという態度は論外。基本的に相手の要求を認める方向で動くことと、「河野談話の精神」で動くことが必要です)
 最後に何故こうした事態が起こるのかについて「日本最大の極右組織・日本会議*6」の存在が指摘されます。日本会議自民党を事実上、支配し続ける限り、こうした問題は何度も起こりうるのであり、「日本会議の犯罪性」を白日の下に晒し、その政治力を失わせることが大事だとされます。

参考
日本共産党
『歴史の偽造は許されない:「河野談話」と日本軍「慰安婦」問題の真実』
http://www.jcp.or.jp/web_policy/2014/03/post-556.html
赤旗
『「河野談話守り、その先へ」、外国特派員協会 吉見・林氏が講演』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-04-11/2014041115_02_1.html
『問題解決に力つくす、河野談話の検討報告 志位委員長が表明』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-06-21/2014062102_05_1.html
河野談話の真実性揺るがぬ、小池氏、「朝日」検証報道で主張、フジテレビ番組 「慰安婦」問題で討論』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-08-12/2014081202_01_1.html
『笠井議員、韓国女性家族相と懇談、「慰安婦」問題解決へ全力』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-18/2014091801_04_1.html


特集「進行するアスベスト被害 国の責任を問う」
■「公的規制、救済はどこまで進んでいるか」(森裕之)
■「広がるアスベスト被害と訴訟の動向:泉南アスベスト国賠訴訟を中心に」(村松昭夫)
■「命の代替はない:夫の苦しみ、無念を思う、なぜ命を最優先にしないのか」(南嶋秀子)
(内容要約)
アスベスト被害について森論文が総論的内容。村松論文が泉南訴訟を中心にアスベスト訴訟に関する説明。南嶋論文が九州建設アスベスト訴訟原告による国や企業への憤りの吐露である。

参考
赤旗
『全員救済で解決を、首都圏アスベスト訴訟 原告ら口頭弁論、東京高裁』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-07-05/2013070517_01_1.html
『「規制せず」と国を断罪、泉南アスベスト第2陣訴訟 高裁でも勝訴』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-12-26/2013122601_02_1.html
『教員石綿被害 公務認定者は過少、田村氏 「実態調査して」、参院文科委』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-04-12/2014041204_04_1.html
『大阪・泉南アスベスト国賠訴訟最高裁弁論 人生変えた苦しみ、原告ら「公正判断を」』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-05/2014090501_04_1.html


■「なぜ急ぐ、スポーツ庁創設:問題点と検討の方向」(広畑成志)
(内容要約)
 スポーツ庁設定そのものに絶対反対というわけではないと前置きした上で、政府の設置論はあまりにも突然提起されたものであり、十分な議論の上に決定がなされるべきだとしている。

参考
赤旗スポーツ庁設置のあり方 日本共産党スポーツ委員会責任者・宮本岳志衆院議員に聞く:五輪のためでなく長期・総合的検討を、選手・団体の声聞き、よいものに』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-21/2014072112_01_1.html


シリーズいま「大学改革」を考える(5)
■「高等教育政策批判と今後の展望―教員養成を例として」(宗像浩)
(内容要約)
 安倍政権が行った学校教育法、国立大学法人法(学長権限の強化と教授会権限の縮小)への批判。

参考
赤旗
『大学自治壊す学校教育法改悪案、若手研究者の将来奪う、廃案へ関係者らがアピール』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-05-31/2014053114_01_1.html
『「学長独断」の施行通知案了承、全大学で規則見直し求める』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-08-14/2014081402_02_1.html


■論点
【中国食品問題―食品検疫検査の抜本的充実を】(小倉正行*7
(内容要約)
 中国の食品会社が期限切れの鶏肉を輸出していた事件がテーマ。もちろん「中国側の責任(中国企業及び中国政府)」、「食品会社の親会社・米国OSI社の責任」、「この食品会社から鶏肉の供給を受けていたマクドナルド社などの問題」は別途追及すべきだとした上で、筆者が問題にしてるのは「食品検疫」の問題である。食品検疫で全てが防げるわけでは無論ないがそれにしても日本の食品検疫は十分な検疫とは言えないのではないかと疑問を呈し、検疫体制の強化を求めている。

参考
赤旗
『食脅かす政府の規制緩和、水際検疫 7.5%のみ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2008-02-16/2008021602_04_0.html


さいたま市公民館の俳句掲載拒否に広がる抗議】(金子孝重)
(内容要約)
さいたま市公民館の俳句掲載拒否」を言論の自由の侵害として厳しく批判。

参考
赤旗
さいたま市 「集団的自衛権載せず」、公民館月報 作品めぐり方針、共産党市議が批判』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-13/2014071315_01_1.html
きょうの潮流
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-08-19/2014081901_06_0.html



■暮らしの焦点
【ダンス営業規制の抜本的見直しを】(西川研一)
(内容要約)
 運動の成果により「裁判無罪」を勝ち取り、また「営業規制見直し」の動きが出ているが、警察側の巻き返しを許さず戦いを続けていく必要があるという話。


参考
赤旗
『「ダンス規制」は時代遅れ、衆院予算委 穀田氏、見直し要求』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-17/2013041704_01_1.html
『「クラブ」元経営者に無罪、ダンスは秩序乱さない 大阪地裁』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-04-26/2014042614_01_1.html
朝日新聞『ダンス規制、教室は除外へ クラブは店内の明るさで判断』
http://www.asahi.com/articles/ASG987R5LG98UTIL04N.html
 西川氏が論文を執筆した時点では「警察方針」が明らかにされていなかったので残念ながら触れられていない。今後警察方針への議論を注目したい。


■文化の話題
【美術:三人の戦争表現と鑑賞】(朽木一)
(内容要約)
石内都氏『Fromひろしま(写真集)』、太田三郎氏『戦争遺児』、福田新之助氏『OKINAWAシリーズ、2014』の紹介

参考
産経新聞被爆者の遺品、独自手法で撮影 石内都さんが写真集「Fromひろしま」発刊』
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140730/waf14073020500032-n1.htm


【音楽:ウィーン・フィルの歴史検証報告書を読む】(小村公次)
(内容要約)
 ウィーン・フィルによる「フィルとナチスとの戦時中の関係」「戦後の非ナチ化の問題」についての検証報告書の紹介。

参考
■『ウィーン・フィル、NY公演と同時に自己史検証のシンポジウムを開催』(大貫康雄)
http://no-border.co.jp/archives/19277/


【演劇:『吾輩はウツである』(劇団朋友)】(水村武)
(内容要約)
 漱石が『吾輩は猫である』で文壇デビューするまでを描いた演劇『吾輩はウツである』の紹介。


参考
■『吾輩はウツである』(劇団朋友)公式サイト
http://www.gekidanforyou.com/koen/wagahai/main.htm

夏目漱石(ウィキペ参照)
 英国留学から帰国後の1903年明治36年)4月、漱石は第一高等学校と東京帝国大学から講師として招かれる(年俸800円)。東京帝大では小泉八雲の後任として教鞭を執ったが、学生による八雲留任運動が起こり、漱石の講義も不評であった。また、当時の一高での受け持ちの生徒に藤村操がおり、やる気のなさを漱石に叱責された数日後、華厳滝に入水自殺した。こうした中、漱石は神経衰弱になり、妻とも約2か月別居する。1904年(明治37年)の暮れ、友人・高浜虚子の勧めで精神衰弱を和らげるため処女作になる「吾輩は猫である」を執筆。正岡子規門下の会「山会」で発表され、好評を博す。1905年(明治38年)1月、虚子主催の雑誌『ホトトギス』に1回の読み切りとして掲載されたが、好評のため続編を執筆する。この時から、職業作家として生きていくことを熱望し始め、その後「倫敦塔」「坊つちやん」と立て続けに作品を発表し、人気作家としての地位を固めていく。
 1907年(明治40年)2月、一切の教職を辞し、東京朝日新聞主筆の池辺三山に請われて朝日新聞社に入社(月給200円)。 本格的に職業作家としての道を歩み始める。同年6月、職業作家としての初めての作品「虞美人草」の朝日新聞連載を開始。


■メディア時評
【新聞:「8・15」と新聞社説】(金光奎*8
(内容要約)
 産経社説は「靖国参拝」を正当化し、また読売社説は「集団的自衛権行使容認論」を平和主義の口実で正当化するいずれも異常な極右社説であった。朝日ははっきりと集団的自衛権反対論を唱えた。
 毎日、日経は『二度とあの戦争を起こさないために戦争体験の継承が必要である』とした。
 毎日、日経の主張は間違いではないし、「産経、読売の極右社説」と比べ遙かにまともな内容ではあるが、どうとでも理解できる曖昧な内容であり、はっきりと安倍政権批判の論調を取ったのが全国紙では朝日だけであると分かる。
 なお、地方紙においては、北海道、京都、神戸、宮崎日日が朝日同様、集団的自衛権容認論に対する反対論を表明している。


【テレビ:Eテレ放映の秀作ドキュメント】(沢木啓三)
(内容要約)
 Eテレ(NHK教育テレビ)で放送された秀作ドキュメントの紹介。
1)『三池を抱きしめる女たち:戦後最大の炭鉱事故から50年』
 なお、この番組を製作した熊谷博子氏には三池争議を題材とした作品『三池・終わらない炭鉱(やま)の物語』がある。
2)『ルポ 原発作業員 2:事故から3年・それぞれの選択』
3)『戦闘配置されず:肢体不自由児たちの学童疎開
 なお、この番組を製作した林雅行氏(クリエイティブ21代表)には戦争関係の作品では
映画「友の碑:白梅学徒の沖縄戦
・『はだしのゲン誕生物語』(1995年、NHKBS1
・『おばあちゃん、一緒に歩くね 〜ナガサキ原爆物語〜』(1998年、テレビ朝日
・『みすてられてなるものか〜ハイカラおばあちゃんの熱い日々〜』(1999年、テレビ東京
 この番組については杉山千佐子『おみすてになるのですか:傷痕の半生』(1999年、クリエイティブ21)として書籍化されている。
・『戦争は罪悪である〜ある仏教者*9の名誉回復〜』(2008年、NHK教育
・『障害者たちの戦争』(2009年、NHK教育
・『届かぬ訴え〜空襲被害者たちの戦後〜』(2013年、NHK教育
などがある(クリエイティブ21公式サイトhttp://cr21.web.fc2.com/index.html参照)。

参考
■みなと横浜みなみ区3丁目『「”戦闘配置”されず〜肢体不自由児たちの学童疎開〜」【NHK ETV特集】全編文字起し』
http://ojirowashi.no-blog.jp/ykminami/2014/08/nhk_etv_75de.html

ナレーション:
 戦時中、疎開をめぐって学校が揺れた状況を校長が手記で述べていました。
松本保平校長(光明学校):
 疎開先は自分で見つけるしかない。肢体不自由児学校は厄介者か、お荷物か。
ナレーション:
 卒業生たちの間にも、戦時中の記憶はつらい記憶として残っています。
秋山さん:
 体の不自由な人間は鉄砲を持てないから、生きている必要ないっていわれた。
花田春兆さん*10(光明学校卒業生・90歳):
 兵隊になれないのは人間じゃないみたいに思われた。人間扱いを受けなくなった。
校長の手記:
 忘れもしない、壕ができて数日後、先生方が20数名見学に来た。
 校内を一巡しながら児童の生活等を説明し、終わって玄関で帰りを見送った時、代表らしい1人が、質問がありますと切り口上で問いかけた。
見学者:
 お見かけしたところ、先生は五体満足にそろって、立派な体をしておられる。
 それなのに先生は、この子供らの相手をして、毎日腹いっぱい食べて日光浴を楽しんでいる。
 いま、日本は非常時です。
 われわれの同朋は極寒の満州で寒さをこらえ、飢えに耐えて戦っているのです。
 先生はこの勇士に対して申し訳ないと思いませんか。良心に対して恥ずかしくありませんか。
ナレーション:
 この時の様子を、後に松本校長から聞いていた卒業生がいます。
秋山さん:
 教育関係者が見学に来て、こんな子どもたちを教育するのは無駄だって。
 非国民っていわれたらしいですね、その時に。それがすごく悔しかったって言ってましたね。

竹中彰元(ウィキペ参照)
 竹中は事変勃発後、1937年9月15日に岐阜県岩手村(現在の岐阜県垂井町)の在郷軍人に対して戦争を批判する旨を述べてその反戦姿勢を村民から「痛罵難詰」され、更にこの言動で村民から非難された後も、翌10月10日に近隣の仏教寺院で僧侶6人に対して「戦争は最大の罪悪だ」と述べた。この10月10日の反戦言動を聞いた僧侶が翌10月11日に岩手村役場に通報し、この通報がきっかけとなって10月26日に竹中は逮捕され、10月31日に9月15日の発言と10月10日の発言が陸軍刑法第99条(造言飛語罪)に抵触するとして岐阜地方裁判所に送致された。
 翌1938年(昭和13年)3月12日に岐阜地方裁判所は竹中に対し、禁固4ヵ月の実刑判決を下し、この判決に竹中が控訴したため、4月27日に名古屋控訴院は禁固4ヵ月、執行猶予3年に刑を軽減する判決を下した。なお、この判決には1940年(昭和15年)2月11日に皇紀2600年を記念して恩赦が認められ、禁固2ヵ月20日、執行猶予3年に刑を減免されている。
 竹中が属していた真宗大谷派は1938年(昭和13年)4月27日の名古屋控訴院による判決後、「軽停班3年」の処分を下して僧侶の位を最低に落とし、また、竹中の布教使資格を剥奪した。なお、大谷派は1940年(昭和15年)5月18日に軽停班処分を満期とする処分の減免を実施し、1941年(昭和16年)4月17日に竹中の布教使資格を復活している。
■戦後の評価
 戦後長く竹中の存在は忘れ去られ、1977年に真宗大谷派が教学研究所編集の『近代大谷派年表』で竹中の名を出した際も、彼は「大谷派」ではなく、「諸宗教」に分類されていた程であった。
 愛知県一宮市の円光寺住職・大東仁が記した論文「仏教者の戦時下抵抗」により竹中の名誉回復運動が始まった。1990年(平成2年)4月に真宗大谷派名古屋別院で開催された『平和展』で竹中の反戦発言が展示され、以後2002年(平成14年)から真宗大谷派岐阜別院の『平和展』でも竹中の事績が展示され、名古屋別院、岐阜別院の影響を受けて2004年(平成16年)より京都の東本願寺本山でも『非戦・平和展』でも竹中の事績が展示されるようになった。
 2007年(平成19年)10月19日に、真宗大谷派主催の「復権顕彰大会」が明泉寺にて開催され、熊谷宗恵宗務総長が謝罪、宗派の処分を取り消す「宗派声明」が出され、処分から70年目に名誉回復を果たした。
■参考文献
大東仁*11『戦争は罪悪である:反戦僧侶・竹中彰元の叛骨』(2009年、風媒社)

*1:ソ連共産党書記長

*2:スターリン関係の著書に『スターリン大国主義』(1982年、新日本新書)

*3:パルチザン最高司令官、首相、大統領を歴任

*4:著書『就活とブラック企業:現代の若者の働きかた事情』(2013年、岩波ブックレット)、『過労死は何を告発しているか:現代日本の企業と労働』(2013年、岩波現代文庫)など

*5:もちろん「談話当時の政府資料になかったからなんだ?」て話もあります。「談話当時の政府資料」と変な限定をしている時点で「第一次安倍内閣発足当時、その存在が確認されている慰安婦関係資料全て」とすると「狭義の強制連行を示す資料の存在が否定できないこと」を安倍が自覚してることがモロバレです

*6:笠井氏は日本会議を「靖国派」とも呼んでいる。「日本会議の重要な構成部分が靖国神社、あるいは靖国のお仲間である神社本庁」であることは事実だが、靖国ないし関連団体(神社本庁)以外も構成部分なのでやや微妙なネーミングだと思う。まあ、「日本会議靖国に親和的な団体」であることは事実だが。

*7:著書『多角分析 食料輸入大国ニッポンの落とし穴』(2003年、新日本出版社

*8:著書『マスコミはなぜ権力に弱いか』(1994年、新日本出版社

*9:竹中彰元のこと

*10:著書『日本文学のなかの障害者像:近・現代編』(2002年、明石書店)、『1981年の黒船:JDと障害者運動の四半世紀』(2008年、現代書館)など

*11:その他の著書に大逆事件で死刑となった真宗僧・高木顕明を取り上げた『大逆の僧・高木顕明の真実:真宗僧侶と大逆事件』(2011年、風媒社)など