日経ビジネスオンライン『日銀の異次元緩和は(注:景気回復に)全く効果を上げていない:「アベノミクスの終焉」の著者、服部茂幸氏に聞く』

http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20141016/272628/?rt=nocnt
 なお、今は日経ビジネスオンライン登録者でないと一部しか読めません。
 小生は経済学素人なので服部氏(福井県立大学*1教授、経済学者)の批判*2「金融緩和は景気回復には無意味だった」「アベノミクスで景気回復に意味があったのは公共事業の大盤振る舞いという従来型景気対策」「その公共事業の効果も消費税増税で力を失っている」「公共事業の大盤振る舞いは福祉予算のカットや国債の大量発行で成り立っており非常に問題」が正しいかどうか何とも言えません*3がこういう記事が「日経ビジネス」にのると言う事は安倍政権にとって決して軽視できないことでしょう。日経と言えば日本を代表する経済新聞であり、しかも別に「反体制派」でもないのですから。

参考

http://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2014090702000181.html
東京新聞『【書評】アベノミクスの終焉*4(服部茂幸*5著)』(根井雅弘*6・京都大教授)
 アベノミクスは、ここにきて当初の期待感とは違って、それに対する批判的な論調が目立つようになった。著者は以前からアベノミクスに批判的な言論活動をしてきたが、本書は、タイトルに表れているように、それに引導を渡そうとする野心作だ。
 著者は、アベノミクスの三本の矢をひとつずつ総括していく。第一の異次元緩和(量的・質的金融緩和)については、一時政府や日銀によって、その効果(株価上昇と円安)が大々的に宣伝されてきた。だが、著者によれば、低迷する経済を実際に支えていたのは、政府支出*7、民間住宅投資、耐久財消費であり、しかも政府支出以外は消費税増税前の駆け込み需要によるところが大きい。つまり、日銀の異次元緩和とは関係がないという。
 第二の矢、つまり政府支出が確かに効果を発揮したことは著者も認める。しかし、財政主導型の経済回復が建設業に偏っていては、これから本当に重要な医療、福祉、教育の分野での政府支出が犠牲にされている。しかも、一部の論者が言うように、異次元緩和が財政ファイナンスを目的にしていると疑われるならば、中長期的には問題になるだろう。
 第三の矢は成長戦略なのだが、よくいわれる「トリクルダウン」(企業の利益増大が賃金上昇に結びつく)効果は生じていない。規制緩和や競争原理の重要性が指摘され始めて久しいが、例えば成果主義や目標管理制度の導入によって何が起こったかといえば、数値化できにくい創造性の必要な仕事を阻害し、かつての優良企業の低迷につながった。賃金引き下げのみに成功したのだ、と著者は手厳しい。

*1:彼のような安倍批判者がいる一方で島田洋一のような安倍信者がいるとは福井県立大も変わった大学です。

*2:彼の批判はかなりの部分が共産党の批判とかぶります。というか共産党が彼のアベノミクス批判も参考にしていると言う事でしょうが。

*3:個人的には安倍の言い分より服部氏の言い分の方に説得力を感じますが。

*4:2014年、岩波新書

*5:著書『日本の失敗を後追いするアメリカ:「デフレ不況」の危機』(2011年、NTT出版)、『危機・不安定性・資本主義:ハイマン・ミンスキーの経済学』(2012年、ミネルヴァ書房)、『新自由主義の帰結:なぜ世界経済は停滞するのか』(2013年、岩波新書)など

*6:著書『ケインズ革命の群像:現代経済学の課題』(1991年、中公新書)、『近代経済学の誕生:マーシャルからケインズへ』(1994年、ちくま学芸文庫)、『現代の経済学:ケインズ主義の再検討』(1994年、講談社学術文庫)、『ガルブレイス:制度的真実への挑戦』(1995年、丸善ライブラリー)、『ケインズを学ぶ:経済学とは何か』(1996年、講談社学術新書)、『21世紀の経済学』(1999年、講談社現代新書)、『経済学のことば』(2004年、講談社現代新書)、『経済学の歴史』(2005年、講談社学術文庫)、『物語・現代経済学:多様な経済思想の世界へ』(2006年、中公新書)、『経済学はこう考える』(2009年、ちくまプリマー新書)、 『市場主義のたそがれ:新自由主義の光と影』(2010年、中公新書)、『入門・経済学の歴史』(2010年、ちくま新書)、『シュンペーター』(2013年、講談社学術文庫) など

*7:公共事業のこと