今日の産経ニュース(12/15分)(追記・訂正あり)

■【日本の議論】「中国産」嫌う消費者の目を“欺く”「Made in PRC」
http://www.sankei.com/premium/news/141215/prm1412150003-n1.html

「Made in PRC」という表示を見て、どこの国で作られたものかわかるだろうか。「PRC」は、中華人民共和国の英文表記「People‘s Republic of China」の頭文字を取ったもので、この表示は中国産を意味している。日本では、「Made in China」と表示するのが一般的だが、あえて浸透していない「PRC」を用いる真意はどこにあるのか。中国産を敬遠する消費者の目をごまかし、売り上げを伸ばそうとする確信犯的行為との専門家の指摘もある。

 アンチ中国を売りにする産経らしい記事です。
 まあもしかしたら産経の言うように「ごまかし」つうか「中国産てことをあまり目立たせたくない」てのはあるのかもしれない。実際どうだか知りませんけど。ただ「中国産を国産と偽る」のと違って嘘が書いてるわけじゃないですからね。「PRC」でどこの国か分からなきゃ「どこですか」て聞けばいい*1んだし、これ「汚い」とか言う話じゃないと思うんですけどね。

 国民生活センターには、今年6月、中国製の衣類だとは分からずに買ってしまったという50代男性から「PRCと表記することに問題はないのか」という問い合わせがあったという。また、昨年9月には家電製品を買った50代男性から、「国名の表示を変えて売っている」との情報が寄せられた。いずれも購入後に初めて「中国産」と知った消費者からの声だった。

 安い家電とか衣料とか今中国製が多いのは常識だと思うんですけどね。そんなに中国製が嫌なら国内メーカーだけ買ってればいいんじゃないか。いや、でもこういう人は「パナソニックの冷蔵庫」とかでも生産場所が中国だと問題視するのか。正直「何が問題なの?。右翼的理由?」て首をひねりますねえ。食品なら一時期の報道(毒入り餃子とか)で「不安視してるのか」て思いますけどね(ただ中国産食品全体が一般的に他の国より危険という事実はないようだし、現実問題、中国産完全排除なんて食品限定でも現実的じゃないでしょうけど)。
 「衣料が中国品」「家電が中国品」て何か問題なのか。今時「すぐ壊れる」て事もないんじゃないかと思いますけど。

 PRCは正式な略称で、米国産を「Made in USA」と表記することと同じともいえる。消費者庁表示対策課は「認知の度合いは低いとはいえ、事実であることは間違いない。不当表示に当たるかどうかは、パッケージ全体から受ける印象で判断するので原産国の表示だけで判断するのは難しい。不当表示に当たるとも当たらないとも言えない」と話す。

 まあ、「中国産じゃない」というイメージを全体的に作り出してるケースでない限り「PRC」だけじゃあ不当表示じゃないてことでしょう。


■【激流・衆院選(上)】「枝野の地元を日の丸で埋め尽くせ!」 首相、本気の民主潰し 菅直人*2元首相らを次々狙い撃ち
http://www.sankei.com/politics/news/141215/plt1412150139-n1.html

 「ありったけ日の丸の小旗を用意しろ。過激派の支援を受ける枝野幸男*3民主党幹事長)の地元に日の丸をはためかせるんだ…」
 8日深夜、首相(自民党総裁)、安倍晋三のこんな指示が、東京・永田町の自民党本部4階の幹事長室に降りた。

 これが事実なら安倍は正気じゃないですね。
 そもそも枝野氏は過激派じゃないし、仮に過激派だとしてもそこから出てくる指示が「日の丸をありったけ集めろ、そして選挙活動家に日の丸を振らせろ」て安倍は何考えてるんですかね。そんなことをして自民のイメージアップになるのか。枝野氏との選挙戦で自民が有利になるのか。
 安倍の自己満足に過ぎないわけですが自己満足にしてもあまりにも異常ですよね。これを「安倍への褒め言葉」になると思ってる産経も相当異常ですが。こんなんよほどの極右でない限り安倍の異常さにドンビキですし、正直「安倍翼賛メディア産経」の記事でなければ「安倍誹謗のための捏造」を疑うレベルですよね。

 (注:自民は今回選挙で勝利*4はしたが、自民に近い)みんなの党は選挙前に解党してしまい、(注:これまた自民に近い)維新や次世代などはいずれも苦戦が伝えられた*5。逆に(注:海江田代表は落選し、また最大野党としてはあまりにも数が少ないレベルの議席増加だが)民主党議席を増やし、共産党議席倍増の勢い。安倍は周囲にこう漏らした。
 「なぜ維新と次世代は分裂してしまったんだ。」

 まあ、産経でないとのらないレベルの記事ですね。
 与党の党首が「維新と次世代が分裂してともに議席を減らしたのが痛い。特に次世代が19議席から2議席になったのが痛い」てそれもはや野党と与党の関係じゃないですよね。まあ、確かに維新や次世代て「野党内自民党支部」みたいなもんだから安倍的には「次世代や維新が増えてもいい」んでしょうけど。一応お断りしておけば「何故分裂した」て「野党内自民党支部」だからですよ。自民支持者はそんなもん支持しないし、一方アンチ自民もそんなモン支持しません。そうなりゃ支持率低迷でごたごたが起こり分裂するのもごく自然です。

 官房長官菅義偉*6と手分けして、海江田*7や枝野、馬淵*8ら党執行部だけでなく、元首相の菅直人(東京18区)、元衆院議長の横路孝弘(北海道1区)、元厚生労働相長妻昭*9(東京7区)、元外相の前原誠司*10(京都2区)−らの地元で民主党批判を続けた。
(中略)
 ところが、不思議なことに民主党でも元首相の野田佳彦*11ら保守色の強い議員*12の地元には踏み込んでいない。もしかすると安倍は、すでに総選挙後の野党再編の動きをにらんでいるのかもしれない。

 要するに安倍にとって野田氏とは「親密な仲にあるダチみたいな存在」なんでしょう。政界再編云々とは要するに「野田グループを丸ごと自民に入れる用意がある」と。向こうが入りたがるか知りませんけど。
 そんな人間・野田氏の後任首相が安倍では「安倍の極右性が目立たなくなっている」というのはあるかもしれません。

 「静かな選挙戦だった。追い風も向かい風も感じなかった」
 (注:副総裁の)高村*13は選挙戦をこう振り返った。地方創生担当相の石破茂*14も「2年前のような高揚感はなかった」。多くの自民党候補も同じ思いだろう。投票率の低さがこれを如実に裏付けている。
 にもかかわらず各種情勢調査が「自民圧勝」を伝えたのはなぜか。ある党幹部はこう分析する。
 「自民党に吹いたのは、民主党や第三極に失望し、行き場を失った有権者の消極的な支持だった…」
(中略)
 衆院選は自公で3分の2超の議席を得たが、(注:次世代の惨敗と共産の躍進で)憲法改正は(注:解散前より)遠のいた。
(中略)
 勝利とは裏腹に(注:極右改憲派の)安倍の表情は終始険しかった。

 産経や自民幹部ですらまともな人間は自民支持が「堅い支持でも熱い支持でもないこと」を自覚してるわけです。
 なお、「民主、第三極に失望した極右派」は自民に行き、一方「民主や第三極に失望した左派や穏健保守派」は共産にいったんでしょう。


【追記】
 さて小生がネタにしたこの産経記事を五十嵐仁・法政大学名誉教授もネタにしてるので紹介しておきましょう。

■五十嵐仁の転成仁語『総選挙後に安倍首相の表情が「終始険しかった」のはどうしてなのか』

http://igajin.blog.so-net.ne.jp/2014-12-20
 総選挙が投開票された翌日、12月15日付の『産経新聞』に「衆院選 首相が本気の民主潰し、『大物』狙い撃ちを徹底」という記事が出ています。そこに何気なく書かれていた、次のような文章に目が留まりました。
衆院選自民党が勝利を収めたが、安倍には忸怩(じくじ)たる思いが残る」「衆院選は自公で3分の2超の議席を得たが、憲法改正は遠のいた。任期4年で改憲勢力をどう立て直すのか。勝利とは裏腹に安倍の表情は終始険しかった」というのです。なぜ安倍首相が「忸怩たる思い」を持ち、その「表情は終始険しかった」のでしょうか。
 第1に、憲法をめぐる国会内の勢力分野が大きく変わってしまったからです。総選挙では、次世代の党の壊滅、維新の党の不振、みんなの党の消滅という形で「第三極」は存在感を大きく低下させました。
 その結果、「いざという時の第三極頼み」という戦術が取れなくなってしまったわけです。とりわけ、改憲発議については衆参両院で3分の2を確保しなければなりませんが、参院での3分の2は再来年の参院選で躍進しても(注:おそらく)自民党だけでは無理で、公明党が頼りにならない場合、「第三極」を当てにしていたようです。
 特に、次世代の党が大きな援軍でしたが、それがほとんど姿を消してしまいました。安倍さんとしては、これほど大きな計算違いはなかったでしょう。
 それに、与党の中でも与党内「野党」ともいうべき公明党議席を増やし、与党内での比重を高めました。公明党は、集団的自衛権の行使容認問題でもそうだったように、支持団体の創価学会内に平和志向の強い女性部を抱えています。
 今後の関連法の改定や日米ガイドラインの改定などでもできるだけ「限定」する方向で抵抗するとみられます。総選挙が終わってすぐに、安保法制の改定について、集団的自衛権行使容認の範囲を「日本周辺の地域」に限る方針だとの報道がありました(『毎日新聞』12月18日付)が、これは公明党の意向を踏まえた方針転換だと思われます。
 また、憲法についても公明党は9条を変える「改憲」ではなく、プライバシー権などの新たな条項を追加する「加憲」の立場です。安倍首相の改憲戦略にとっては、「躓きの石」になるかもしれません。
 さらに、それ以上に頭が痛いのは野党の中の野党ともいうべき共産党が躍進したことです。民主党議席を増やしましたから野党内の勢力地図は大きく塗り替えられ、安倍首相にとっては味方が減っただけでなく、敵対する勢力が大きく増えたことになります。
 その結果、これまで十分でなかった国会の各種委員会での委員を確保し、いままでよりずっと多くの共産党議員が幅広い領域で論戦に参加できるようになります。様々な情報へのアクセスも容易になって調査能力が格段に増し、省庁への影響力も強まり、独自の議案提案権によって法案を提出することができ、党首討論に志位委員長が出て直接安倍首相と渡り合うことになります。
 これほど、安倍首相にとって困った事態はないでしょう。険しい表情になるのは当然で、今からでも国会運営の難しさにたじろぐ思いなのではないでしょうか。
(中略)
 今回の総選挙の結果、来年に予定されている自民党の総裁選は何とかしのげそうですが、その前の統一地方選や再来年の参院選の壁は越えられるのでしょうか。「自民圧勝」の大宣伝にもかかわらず安倍首相の表情が「終始険しかった」のは、それが必ずしも容易な課題ではないということに気が付いたからかもしれません。

*1:つうか原産国表示を気にするような人は普通聞くでしょう。

*2:橋本内閣厚生相、鳩山内閣財務相を経て首相

*3:鳩山内閣行政刷新担当相、菅内閣官房長官、野田内閣経産相を経て現在、民主党幹事長

*4:まあ議席減はしましたが、「下野しなかった」「自公で衆院2/3」「自公単独で絶対安定多数」てのは「勝利」と評価することも可能ではあるでしょう。

*5:維新は「42→41」なので当初予測よりは減りませんでしたが次世代は「19→2」と予測通り惨敗しました。

*6:第1次安倍内閣総務相を務めた安倍の側近

*7:菅内閣経産相を経て、党代表

*8:鳩山内閣国交副大臣菅内閣国交相を経て民主党選挙対策委員長(海江田代表時代)。

*9:鳩山、菅内閣厚労相

*10:鳩山内閣国交相菅内閣外相、野田内閣国家戦略担当相を歴任

*11:鳩山内閣財務副大臣菅内閣財務相を経て首相

*12:前原氏、馬渕氏は少なくとも左派とは言えない保守系議員なんですけどね。要するに「安倍好みのウヨ」でなければ産経も安倍も保守とは認めないわけです。

*13:村山内閣経済企画庁長官、小渕、福田内閣外相、森内閣法相、第一安倍内閣防衛相を歴任。自民党高村派ボス。

*14:小泉内閣防衛庁長官福田内閣防衛相、麻生内閣農水相自民党政務調査会長(谷垣総裁時代)、幹事長(第二次安倍総裁時代)を歴任