新刊紹介:「経済」1月号

「経済」1月号の詳細については以下のサイトをご覧ください。興味のある記事だけ紹介してみます。
 日付は12/15ですが12/8〜13に書いています。
http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
■巻頭言「暴走政治に審判を」
(内容要約)
 確かに「弱者切り捨て(福祉カットや労働法改悪)」「消費税増税」「憲法改悪」「隣国との関係悪化」など問題だらけの安倍政治にはせめて「議席減」という審判を下したいところですが、「議席増の可能性もある」というのだからがっくりきます(もちろんこの「経済」誌のコラム「巻頭言」は300議席予測以前に書かれています)。
 「小選挙区制の歪み*1」「野党の力不足」「政権批判をあまりしないマスコミ」「比例はともかく小選挙区だと自民に投票してるという意識が地方の選挙民にはあまりない、『おらが村の先生だ』『先生の所属党派なんか関係ない』意識が強い*2」などいろいろ問題点はあるでしょうが、やはりそれらを前提にしても「国民が愚かだ」としか言いようがないように思いますね。
 まあ、残りわずかな日程ですが、野党の奮起奮闘と「国民が少しでも目覚めること」に期待したいと思います。過去の選挙結果を考えると期待薄のような気もしますが(選挙結果判明後追記するかも知れません)。
 不幸にして「自民300議席」なんてなったら小生もちろん深く絶望しますが、「国外脱出するだけの才覚もない以上」、日本でやっていくしかないわけです。とにかく最善の結果が出ることを望むとともにそうならなかった場合でもあきらめず、「アンチ安倍政権の同志の皆さん」、お互い頑張ろうとは書いておきます。
 まあ、個人的には
1)「自民、安倍内閣ともに支持率自体は低下傾向にあり上がり目は当面見込めない」
2)「次世代は惨敗し、維新も議席減の可能性(小生はこの両党を安倍以上に酷い極右勢力と見て評価していませんので。できれば維新の議席が共産以下になればベストですがそれは難しいかも知れません→次世代は2議席と惨敗しました。維新は「42→41」なので残念ながら微減ですが、率直にいって橋下に今後上がり目はないでしょう。)」
3)「共産の議席増の可能性(ぜひ選挙中間予測通り倍増して欲しいものです、もちろんそれ以上に行けば言う事ないですし、小選挙区でも議席獲得できればさらに言う事はないですね、あまり高望みはしません→追記:21議席で議案提出権獲得という「もっと多数議席を望めばきりがないが」、現時点の党勢では最善と言ってもいい良い結果が出たと思います)」
4)「沖縄での翁長新知事支持派の議席獲得の可能性(これまた4つ全部取りたいところですが、最悪でも五分五分に持っていきたいところです→追記:4つ全部取りました)」
が「わずかな希望」ですかね。なんか「ポリアンナ物語」の「よかった事探し」化してますが、まあ、希望がないとねえ。

【追記】
 安倍が安定多数議席を獲得したことは残念ですが「微減だがさすがに議席増ではなかったこと」はよかったことといえるでしょう。また「共産が21議席で議案提出権獲得」「沖縄4選挙区で非自民候補が全勝」ということも良かったと思います。


■随想「『戦後70年』と教育の民主主義」(久冨善之*3
(内容要約)
 「教育の民主主義」を破壊し「上からの押しつけ教育(例:道徳の教科化)」を目指す安倍政権に立ち向かおうという話です。

参考
赤旗
■『道徳「教科化」の狙い、「戦争する国」へ思想統制、国民が求める教育に逆行』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-25/2014092502_02_1.html
■『道徳の「教科化」、「いじめ」解決と相いれない』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-10-10/2014101002_02_1.html


■世界と日本
【ブラジル大統領選挙(田中靖宏)】
(内容要約)
 ブラジル大統領選は「経済の低迷や汚職問題」から第一回投票では決着がつかず決選投票にもつれ込んだが現職のルセフ氏が再選され「革新政権」は4期目に突入した。対立候補では新自由主義に逆戻りし、弱者が切り捨てられるという与党側の宣伝が功を奏したと見られる。しかし与党側としては野党が批判した経済の低迷と汚職問題にどう対応していくかが問われる。

参考
赤旗『ブラジル大統領 再選、ルセフ氏 革新政権4期目』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-10-28/2014102808_01_1.html


スウェーデン新政権(宮前忠夫*4)】
(内容要約)
 スウェーデン総選挙では左派連合が保守連合の票を上回り政権を奪還したがその差は僅差であり、またこの選挙では移民排斥を唱える極右政党も躍進した。
 左派連合は難しい政権運営を余儀なくされると見られる。

参考
赤旗スウェーデン総選挙 保守与党連合が敗北、新自由主義政策に批判、8年ぶり 左派が政権復帰へ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-09-17/2014091707_01_1.html


アメリ中間選挙(洞口昇幸)】
(内容要約)
 アメリ中間選挙では上院、下院ともに共和党民主党を上回りオバマ政権が厳しい政権運営を迫られると見られる。しかしそれは「オバマへの失望」であっても「共和党への熱烈な支持」を意味しないことに注意が必要である。たとえばハフィントンポストの世論調査に寄れば世論の55%がオバマが提案する最低賃金引き上げを支持している(一方共和党最低賃金引き上げには否定的)

参考
赤旗『米中間選挙 与党民主党が大幅減、共和党が両院で過半数に、オバマ政権 運営いっそう厳しく』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-06/2014110607_01_1.html


【韓国・コメ輸入自由化へ(洪相鉉)】
(内容要約)
 韓国が2014年7月に実施を表明したコメ輸入自由化への批判。


特集「21世紀の資本主義:限界論と変革の課題」
■『資本主義の発展段階を考える』(石川康*5
(内容要約)
 現時点の資本主義の発展段階をどう考えるかについて問題提起がなされているが「金融経済の宇えぃとが大きくなっていること」など、様々な点が指摘されているものの、明確な回答が示されていない点が残念である。


■『「資本主義の限界論」をどう見るか』(鰺坂真*6
(内容要約)
 ピケティ『21世紀の資本』(2014年、みすず書房)など「資本主義についてある種の限界や行き詰まりを指摘する著作」が近年注目されていることを指摘し、従来の「資本主義万歳論」が変化しつつあることを興味深い動きとしている。


■『金融化、投機化と現代資本主義』(岩橋昭廣)
(内容要約)
 経済の金融化、投機化がもたらす問題を指摘し、金融市場の適正な規制の必要性を主張している。


■『大企業の内部留保と資産構成の変化』(田村八十一)
(内容要約)
 大企業の内部留保が蓄積されていること、またその内部留保が投資に回されれず国債購入などの金融資産に回されていることを指摘、人件費や設備投資などの生産的投資に回されるような経済政策がもとめられるとしている。


■『公害・環境問題と資本主義の限界』(畑明郎*7
(内容要約)
 過去の公害問題について簡単に概観した上で、公害問題は市場で解決できる問題ではなく、公的な規制が必要な問題であると指摘している。


■『トマ・ピケティ「21世紀の資本論」*8を読む』(高田太久吉*9
(内容要約)
 ピケティの主張を評価しながらも「累進課税制度の強化と再分配」のみ論じられており、「最低賃金引き上げ」「労働者保護法制の強化」と言った面に言及がないのを不満であるとしている。


■「日本の電力改革を考える:ドイツの事例を参考に」(桜井徹)
(内容要約)
 日本における電力改革を考えるにおいては先行国であるドイツの事例が参考になるという話。力不足のためうまく要約できないのは申し訳ないところ。


■「イスラエルのガザ攻撃から見えてくるもの:パレスチナ問題の到達点と国際社会の変化」(尾崎芙紀)
(内容要約)
 イスラエルのガザ攻撃からはイスラエルが単に「パレスチナとの交渉で自らを有利にするために攻撃している」というよりは、パレスチナ自治政府を抹殺することを目的としていることが疑われる。
 しかし「スウェーデンパレスチナ政府国家承認の動き」に見られるように事態はイスラエルの思惑通りには動いていない。イスラエルには今のタカ派政策を放棄し、パレスチナとの和平交渉に乗り出すことが、そしてイスラエルに甘い態度をとり続けた欧米(特に米国)のはイスラエルに今のタカ派政策を放棄するよう働きかけることが求められている。
 なお,日本(安倍政権)は武器輸出三原則の緩和に動いているがその目的の一つは「イスラエルへの武器輸出にある」と思われる。パレスチナイスラエル和平を阻害する愚挙であると批判せざるを得ない。

参考
赤旗
■『安倍政権の武器輸出新原則、イスラエルへの輸出可能に、これが「積極的平和主義」か』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-07-28/2014072801_04_1.html
■『スウェーデン パレスチナ国家承認、EU主要国では初めて』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-01/2014110107_01_1.html


■「日本社会政策学の形成と展開:明治・大正時代の社会政策主義の展開(1)」(相澤與一*10
(内容要約)
・日本社会政策学のスタートは「1911年(明治44年)の工場法制定」であるとされる。工場法による労働者保護については財界は長い間反対していたが、海外からのソーシャルダンピング批判もあり、「5年の経過措置」付きで受け入れたものである。 
 なおこの工場法制定と同時期に大逆事件による労働運動、左翼運動弾圧がされていることに注意が必要である。「工場法制定=労働運動の勝利」という単純な話ではないと言う事である。


■コラム「暴走リニア新幹線
(内容要約)
 リニア新幹線計画について環境破壊や税金投入の危険性があること、にもかかわらず十分な議論がなされていないことを批判。


■新刊広告
【栗田禎子『中東革命の行方』(大月書店)】
 以前『新刊紹介:「歴史評論」11月号(追記あり)』(http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20131020/5210278609)で批判し、プロである高林敏之氏からも「確かに最近の栗田先生の見方はおかしいと思います」とのコメントを頂いた栗田氏の著書です。
 小生が簡単に批判してから1年経った今、栗田氏の中東認識(つうかエジプト認識)はどうなったのか。もはや「シシに好意的な見方」をキープすることはできないと思いますが、仮に「未だにその見方」なら読む必要はないと思います。


【吉岡吉典『日韓基本条約が置き去りにしたもの:植民地責任と真の友好』(大月書店)】
 吉岡氏と言えば日本共産党参院議員として活躍した人物です(2009年に死去)。
 当然死去しているので過去の論文を現在の眼でセレクトしまとめたという話でしょう。タイトルからは「日韓基本条約慰安婦など戦争責任問題を置き去りにしたことが現在の問題を生んでいる」「そうした問題を日韓双方は後に河野談話などで是正しようとしたが是正しきれず今、安倍による河野談話見直し論などの暴挙を産んでいる」ということでしょう。
 ただ小生、国内限定の問題(例:消費税、年金、生活保護など)ならともかく外交問題ではあまりにも無茶苦茶な事はできないと思うし、日韓国交樹立後、経済交流なども深まっているのでこの点、割と楽観的です。まあ、「楽観的でないとやってられない」というのもありますが。

*1:繰り返しますが、ただ比例も自民優位なようですからね、絶句します

*2:「民主から自民入り」したり、あるいは逆に「民主から自民入り」したりしても問題視されずに当選することがあるのはこれが理由です。「先生の所属党派なんかどうでもええ」という価値観が田舎では強いと思いますね。ただし、繰り返しますが、ただ比例も自民優位なようですからね、絶句します

*3:著書『新採教師はなぜ追いつめられたのか』(共著、2010年、高文研)、『新採教師の死が遺したもの:法廷で問われた教育現場の過酷』』(共著、2012年、高文研)など

*4:著書『人間らしく働くルール:ヨーロッパの挑戦』(2001年、学習の友社)

*5:個人サイト(http://walumono.typepad.jp/)。著書『マルクスのかじり方』(2011年、新日本出版社)、『「おこぼれ経済」という神話』(2014年、新日本出版社)など

*6:著書『マルクス主義哲学の源流:ドイツ古典哲学の本質とその展開』(1999年、学習の友社)、『科学的社会主義の世界観』(2002年、新日本出版社)など

*7:著書『土壌・地下水汚染:広がる重金属汚染』(2001年、有斐閣選書)、『拡大する土壌・地下水汚染:土壌汚染対策法と汚染の現実』(2004年、世界思想社)など

*8:邦訳、2014年、みすず書房

*9:著書『金融グローバル化を読み解く:10のポイント』(2000年、新日本出版社)、『金融恐慌を読み解く:過剰な貨幣資本はどこから生まれるのか』(2009年、新日本出版社)など

*10:著書『日本社会保険の成立』(2003年、山川出版社日本史リブレット)、『医療費窓口負担と後期高齢者医療制度の全廃を:医療保障のルネッサンス』(2010年、創風社)など