★特集「伝記・評伝・個人史の作法を再考する」
・なお、詳しくは歴史科学協議会のホームページ(http://www.maroon.dti.ne.jp/rekikakyo/)をご覧ください。興味のあるモノ、「俺なりに内容をそれなりに理解し、要約できたモノ」のみ紹介する。
■座談会「個人史研究の現在、そしてエゴ・ドキュメントへ」(長谷川貴彦*1、成田龍一*2、桜井厚*3)
■「『評伝』の世界と『自伝』の領分:個人史研究をめぐる断片」(成田龍一)
■「エゴ・ドキュメント論:欧米の歴史学における新潮流」(長谷川貴彦)
■「個人史の語りと歴史との接点:オーラル資料の構成と解釈」(桜井厚)
■「伝記と歴史の間:幸田露伴のスタイル*4」(谷川恵一*5)
(内容要約)
・まあ、率直にいって「作法=方法論」という抽象的な話なのでさっぱりわけがわかりません。率直にいって小生にはつまらない特集でした。
たとえば「エゴ・ドキュメント」というのは直訳すれば「個人(エゴ)についての歴史文書(ドキュメント)」と言う話です。具体的に言えば日記、手紙、回想録、著書、カルテ(病歴記録)などといったもんでしょう(この特集で注目されてるのは日記、手紙などの「主観性が強く出る文書」でカルテのような事務的な文書はあまり注目されてないのようですが)。でそれを「エゴ・ドキュメント」と名付けて、どんな意味があるのか。さっぱりわからないわけです。
・えーと、やっぱ他にもいろいろ書いておくかな(苦笑)。
・「評伝」てのは「人物評価の入った伝記」てことですが、まあ、「評価の入ってない伝記」てあまりないと思うんですよね(苦笑)。
「誰それは何年何月何をした」てただ事実だけがだーっと箇条書きだと伝記つうより年譜とか資料集ですよね。まあ、伝記に限らず「評価の全くない歴史叙述」てないと思いますけど。
・「個人史」てのはまあ、「無名人の伝記」によく使われる言葉です。「無名人の伝記に意味がああるのか」。まあ、無名人であっても「被爆体験」「シベリア抑留」とか「衝撃的事件の体験」ならそれは意味があるでしょう。あるいは「無名人(一般人)が何考えてるか、どう生きていたか」てのは有名人の日記読んでも分からないわけです。無名人の日記や手紙をたくさん調べることによって「なるほど、無名人とはそういうことを考えていたのか」とわかることがありうるわけです。
■日中韓歴史国際シンポジウム「女性史・ジェンダー史から見る東アジアの歴史像」の報告(金子幸子*6)
(内容要約)
総合女性史学会(http://www.geocities.jp/sogojyoseishi/)主催のシンポジウム報告。内容が多岐にわたってる上、専門的で難解で、にもかかわらず報告が「たった10ページ」なので報告タイトルだけ以下の通り掲げておく。
■セッション1(5〜9世紀)『女帝・女王・女性権力者の存在形態と国家』
・姜英卿「善徳女王*7(632−647)の即位背景と統治性格」
・李貞徳*8「女主の世界: 6世紀・比丘尼の生涯から」
・義江明子*9「日本古代の女帝と社会:転換期としての8世紀を中心に」
■セッション2(10〜18世紀)『家と婚姻、相続』
・五味知子「中国「近世」の女性と家」
・豊島悠果「高麗・朝鮮時代の婚姻と相続:朝鮮後期の変化を中心に」
・久留島典子*10「日本中世後期の婚姻と家」
■セッション3(19〜20世紀)『移動と労働』
・池川玲子*11「『満洲』農業移民におけるジェンダー:政策・実態・メディア」
・奇桂亨「ジェンダーからみた中央アジアへのコリアン移住:行為者としての女性の経験と歴史的記憶」
・金一虹「南洋の移民:中華民国期東南アジアへの中国女性移住労働者」
なお、奇氏の報告テーマである「中央アジアへのコリアンの移住」についてはウィキペ「高麗人」を紹介しておきます。
「高麗人」(ウィキペ参照)
ソ連崩壊後の独立国家共同体(CIS)*12諸国の国籍を持つ朝鮮民族のこと。高麗とは朝鮮半島に10世紀から14世紀まで存在した朝鮮半島の国家で、日本では江戸時代まで多くの場合「朝鮮人」ではなく「高麗人」と呼んでいた。「高麗人参」はその名残である。また、世界的にも「朝鮮半島=高麗」という認識があり、非漢字圏では朝鮮民族のことを英語ではコリアン 、ロシア語ではカリェーエツというように、朝鮮民族の呼称として「高麗人」にあたる語が広く用いられている。旧ソ連地域の高麗人は、その他称としての「高麗人」が自称に転化したものである。
現在の主な居住地は、ロシアをはじめとしてウズベキスタン、カザフスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、キルギス、ウクライナなどである。約50万名の高麗人が中央アジア(カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン)を中心に居住しており、ロシア南部のヴォルゴグラード近郊やカフカース、ウクライナ南部にも高麗人コミュニティが形成されている。これらのコミュニティは、19世紀後半まで朝鮮と境を接した沿海州(現在の沿海地方)に居住していたが、1930年代後半〜第二次世界大戦中にかけてスターリンによって中央アジアに追放された高麗人によって形成されたものである。
樺太(サハリン)にも、ロシア本土とは別にコリアンが居住している。19世紀後半〜20世紀初頭にかけてロシア本土へ移住した者達とは異なり、樺太における朝鮮人は、主に1930年代〜40年代にかけて主に慶尚道と全羅道から移住した者達と戦後に北朝鮮から労働者として渡っていった者達である。前者は、第二次世界大戦期の労動力不足を補う為に、南樺太(南サハリン)へ出稼ぎや徴用によって移住していた。
■強制移住
日本によるシベリア出兵(1918〜1922年)以来、日ソ両国は互いを仮想敵国とみなしていたが、満州事変(1931年)以降、ソ連共産党書記長スターリンは、沿海州に居住する高麗人が日本のためにスパイ活動を行なっていると考えるようになった。スターリンの下で大粛清が開始されると、当時の秘密警察「NKVD(内務人民委員部)*13」長官ニコライ・エジョフ*14の報告によると1937年10月25日までに沿海州に居住していた36,442家族、171,781人の高麗人が、対日協力の疑いで中央アジアに集団追放されたという。
第二次世界大戦終了後も、軍事的な要地である沿海州に高麗人が戻って来ることによって、不安定要素が生ずることを望まないソ連当局の意向によって、高麗人は沿海州や朝鮮半島に帰還する権利を認められず、その後も多くの高麗人がそのまま中央アジアに住み続けた。1953年のスターリンの死後、法的には移動の自由が認められたが、一般のソ連人と同様、実際に移動の許可を得るにまでに多大な労力を要し、また、高麗人の現地への定着が進んでいたため、沿海州や朝鮮半島に帰還する者はほとんどなかった*15。また、グラスノスチ(ゴルバチョフ*16時代の情報公開、言論自由化政策)が始まるまでは、強制移住に対して発言することは許されなかった。
■言語
なお、彼等の話す朝鮮語(韓国語)は、ロシア語の影響を極めて強く受けた高麗語と呼ばれるものであり、本国の朝鮮語との乖離は特に日常の話し言葉において甚大である。韓国・北朝鮮・「中国延辺朝鮮族自治州で話される中国朝鮮語」はどれもほとんど問題なく互いの意思疎通が出来るが、高麗語の場合は、意思疎通は無理ではないにしろ、かなりの困難を伴うという。
■「歴史評論第776号(2012年12月号)に掲載した斎藤正美氏の論文について」
(内容要約)
・『新刊紹介:「歴史評論」12月号(追記あり)』
http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20141120/5210278609
でも批判しましたが「特殊部落」の一語を理由に斎藤氏に「書き直しと謝罪文の提出」を求めるのならともかく論文削除とは正気の沙汰とは思えません。
それとも「正気の沙汰とは思えない」と書く小生こそが「深刻な部落差別者」なんでしょうか。小生は全くそうは思いませんが。
*1:著書『産業革命』(2012年、山川出版社世界史リブレット)、『イギリス福祉国家の歴史的源流:近世・近代転換期の中間団体』(2014年、東京大学出版会)
*2:著書『司馬遼太郎の幕末・明治:「竜馬がゆく」と「坂の上の雲」を読む』(2003年、朝日選書)、『近現代日本史と歴史学:書き替えられてきた過去』(2012年、中公新書)など
*3:著書『インタビューの社会学:ライフストーリーの聞き方』(2002年、せりか書房)、『ライフストーリー論』(2012年、弘文堂)など
*4:幸田露伴『頼朝』について論じてるが内容がさっぱりわからなかった。
*5:著書『言葉のゆくえ:明治二〇年代の文学』(2013年、平凡社ライブラリー)
*6:著書『近代日本女性論の系譜』(1999年、不二出版)
*7:新羅の女王(朝鮮半島初の女王)。韓国で2009年にテレビドラマ化され、2009〜2011年にかけてBSフジでも放送された、フジサンケイ系列のポニーキャニオンからドラマのDVDも発売されている。
*8:著書『中国儒教社会に挑んだ女性たち』(邦訳:2009年、大修館あじあブックス)
*9:著書『つくられた卑弥呼:“女”の創出と国家』(2005年、ちくま新書)、『天武天皇と持統天皇』(2014年、山川出版社・日本史リブレット人)など
*10:著書『一揆と戦国大名』(2009年、講談社学術文庫)、『一揆の世界と法』(2011年、山川出版社日本史リブレットなど
*11:著書『「帝国」の映画監督・坂根田鶴子:「開拓の花嫁」・一九四三年・満映』(2011年、吉川弘文館)、『ヌードと愛国』(2014年、講談社現代新書)など
*12:現在、ロシア、カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、キルギス、ベラルーシ、アルメニア、アゼルバイジャン、モルドバ、トルクメニスタンがCISの加盟国。ウクライナ、グルジアは加盟国だったがロシアとの紛争を契機に脱退している。
*14:スターリンに粛清されたゲンリフ・ヤゴーダNKVD長官の後任。エジョフ自身も後にスターリンによって粛清される(後任長官はベリヤ。ベリヤはスターリン死後、一時、第一副首相に就任するが、フルシチョフ首相(党第一書記兼務)らとの政争に敗れ銃殺刑)。
*15:「現地定着が進んでいた」云々の部分は事情が色々違うとは言え在日朝鮮・韓国人にも該当する話だろう。
*16:ソ連共産党書記長、ソ連大統領。1991年にノーベル平和賞受賞。1991年の保守派クーデターで政治的に失脚。エリツィン・ロシア大統領にとってかわられることになる。