今日の産経ニュース(2/1分)(追記・訂正あり)

■【イスラム国後藤さん殺害映像】官房長官「政府対応、有識者会議で検証」
http://www.sankei.com/politics/news/150201/plt1502010029-n1.html

 菅義偉官房長官は1日午前の記者会見で、イスラムスンニ派過激組織「イスラム国」が後藤健二さんを殺害したとされる映像を公開したことを受けた政府対応について「政府内で検証を行う必要がある」と述べた。有識者らに検証してもらうことを含めて検討する考えも示した。

 集団的自衛権について論じる政府有識者会議で「集団的自衛権行使賛成派で委員を固めてお手盛り答申を出させて恥じない」安倍政権では「お手盛り会議による政府の交渉正当化」と言う「最初から結論が決まってる」とんでもない出来レース会議になる可能性大ですが、さすがに「検証しません」とは言えなかったわけです。


■【聞きたい。】山田順さん*1国や組織を直視し、反省が必要 『日本が2度勝っていた「大東亜・太平洋戦争」』
http://www.sankei.com/politics/news/150201/plt1502010021-n1.html
 呆れて物も言えませんね。「あの戦争での個々の軍事作戦(例:ミッドウェー海戦)の目的や方針決定過程、成果」などを具体的に検討することそれ自体は悪いことではないでしょう。
 とはいえ、あの戦争で「個別の局地戦(例:真珠湾攻撃ミッドウェー海戦)」ならともかくトータルで日本が米国に勝つ道があったとはとても思えません。国力が全然違いますので。「ミッドウェー海戦でああすれば日本海軍は米国海軍に勝てた、そうすれば日本は米国に勝てた」「ミッドウェー海戦ではなく別の軍事作戦をしてれば米国に勝てた」とかそういう話ではない。
 考えるべき事は「戦争回避の道」でしょうに。トラウトマン和平工作ハルノート受諾などいくらでも「戦争回避の道」はあったわけです。こういう山田氏のような「正気でない変人ウヨ」を手軽に知ることができるという意味で産経は大変便利な新聞です。なお、あまりのとんでもなさに、この山田本、ヒカルランドというトンデモ本ばかり出してる版元(http://www.hikaruland.co.jp/)から出版されてます。
 何せヒカルランドの出してる本は山田本以外では『日本人のご先祖様は聖書のアブラハム*2』、『666:イルミナティ*3の革命のためのテキスト』、『ロスチャイルド*4による衝撃の地球大改造プラン』、『3/11人工地震でなぜ日本は狙われたか』、『環境破壊兵器HAARP福島原発を粉砕した*5』、江本勝『完全ベスト版:水からの伝言』、黄文雄『「食人文化*6」で読み解く中国人の正体』などとタイトルを見てるだけでも頭痛がしてくる代物です。
 山田氏も「光文社の元編集者」「過去に文春新書や小学館新書から本を出してる」*7のならもっとまともな本屋から出せばいいと思いますが、さすがに古巣の光文社や「過去に本を出してくれた文春や小学館*8」もこれは断ったんでしょうか。「扶桑社やPHPといったウヨ出版社」なら喜んで出してくれそうですが、そうでもないんでしょうか。

 昭和16年夏、ドイツ軍がソ連に侵攻すると、ドイツは三国同盟を結んでいた日本に対し、対ソ戦への参戦を再三要請した。これに応じていれば、米国に大戦に加わる口実を与えずにソ連を挟撃することで「日本は勝てていた可能性が高い。少なくとも大戦後に共産主義国家が生き残ることはなかったはずだ」とみる。

・仮に「挟撃で勝てたとしても」それただの後智恵、後出しじゃんけんでしょうよ。当時の日本政府にとって勝てる保障はどこにもないでしょう。何せノモンハン事件では関東軍は大ダメージを受けています(大体ドイツは「敵をだますにはまず味方から」ということで日本が日ソ中立条約を結ぶことを知りながら、日本に相談なくソ連相手に開戦した上で、それから協力要請してくるんだから無茶苦茶です)。また日中戦争をやっていた日本にとって、他に軍事力をとられることは避けたかったわけです。ちなみにこの山田氏と全く同じ事「日ソ中立条約破棄と対ソ連開戦*9」を言い「そんな事はできない」として近衛文麿*10首相に事実上、更迭された*11人物が松岡洋右*12外相という人です。山田氏にとっては「対ソ連開戦を主張した松岡はヒーロー」で「それを潰した側(例:近衛首相)」は馬鹿野郎なのかも知れません。
・しかも仮に勝ったとしても「日中戦争や日本の東南アジア進出」などで極度に悪化していた日米関係と何の関係があるのか。「ソ連を潰してれば日独の軍事力にびびった米国は蒋介石中国を見捨て日本と融和に動いた」とでも言うのか。あるいは「対米戦争してもソ連を潰してる以上、後、米国の味方になり得るのは英国だけだ、英国もドイツが簡単に屈服させるさ、米国なんぞ怖くない」とでも言うのか。

米国は日本と戦争をしたくてたまらずに挑発してきたのだが、日本はそれを読めなかった。

 何が挑発なんですかね。ハルノートのことなのか。米国からすれば「北部仏印進駐(1940年)」「南部仏印進駐(1941年)」といった日本の東南アジア進出の方を「挑発行為」と見なしていたでしょう。
 実際、「日米関係が悪くなるからやめた方がいい」と言う意見もあったのに進駐は実行されたわけです。ハルノート(要求の一つは仏印からの日本軍撤退)は米国にとってはそうした日本の「挑発」に対する反撃に過ぎないわけです。

【追記】
ちなみに山田氏の個人サイトを見つけたので紹介しておきましょう。

http://www.junpay.sakura.ne.jp/index.php?option=com_content&view=article&id=1735:news2&catid=27:2008-12-26-11-25-27&Itemid=29
 あの戦争が間違いだったとか、「自衛戦争」だったのか、あるいは「侵略戦争」だったかなどは、じつはどうでもいいことである。
 あの戦争は、大日本帝国が「国家の命運」を賭けて戦った国家総力戦だったのだから、やる以上、勝つほかなかった。それを勝てなかった。この一点だけが、私にとっての大問題なのだ。
(中略)
 歴史は戦争に勝ったほうがつくる。これだけが、間違いのない真実で、あとはいくら言っても認識の違いで終わるからだ。
 そう思うと、私たち日本人がいまも問題にしなければいけないのは、(注:日中戦争、太平洋戦争についての)歴史認識ではない。戦争に負けたことである。

 そういう「勝てば官軍」て認識はどうかと思いますが。
 先ず第一に本当に「勝てば官軍」なのか。「米国の原爆投下への非難」などを考えれば話はそれほど単純じゃないでしょう。第二にその認識を仮に認めたとしても「日本軍=負けた賊軍」である以上「ああすれば勝てたのに」と言っても「勝てば侵略していいのかよ!」「勝つ気なのかよ!」と当時の敵国(米国、英国、ロシア、中国など)の反感を買って、空しいだけです。大体勝つ見込みは皆無でしょうし。
 むしろ「勝つ見込みのない戦争を何故勝てる*13と思って開戦してしまったのか」「戦争をどうすれば回避できたのか」が考えるべき事でしょう。
 とはいえ屁理屈で「あの戦争は正義の戦争だ」という産経よりは「あるべき正義?。そんなもん勝者の主張が正義なんだよ!。勝てばいいんだよ、勝てば!」という山田氏の方が「正直者」とは言えるかも知れません。

 どうすれば日本はあの戦争に勝っていたのか?
 それは、1941年と1942年の2回あったチャンスを活かせばよかったのです。
(1)1941年夏、太平洋戦争突入前に、ドイツの要請に応じて対ソ戦に参入していれば、ソ連は滅亡し、そもそも太平洋戦争をする必要はなかった!
(2)太平洋戦争突入後も、たとえばミッドウェーなどの愚かな海戦をせずに、連合艦隊をインド洋に向かわせて連合軍の補給路を断てば、戦局は日本に大きく傾いていた!

 やれやれですね。俺も歴史や軍事に詳しいわけではありませんが、突っ込んでみましょう。
 まず(1)。何でソ連が滅亡すると太平洋戦争が起こらなくなるのか、理論展開がさっぱり分かりません。むしろ「ソ連を屈服させたし、英国もいずれドイツが潰すだろう、米国なんか怖くねえ」と「対米開戦」の方向にブーストがかかるんじゃないか。まさかとは思いますが「日米開戦はソ連の陰謀」とでも思ってるのか?*14。それとも「ソ連を潰した以上、米国はびびって日本にへいこらするはずだ、蒋介石も見捨てるだろう、だから米国との戦争が回避できる*15」という立場に山田氏は立ってるのか?
 次に(2)。そんなに簡単に「インド洋の補給路を断てば勝てた」てほど連合国も甘くないでしょう。つうか本当に「考えるまでもなくミッドウェーよりその方がベター(山田氏曰く日本が太平洋戦争に勝てた)」だったら当時の海軍だってそうするでしょうよ。どうすれば「俺は当時の海軍幹部連中(例:山本五十六*16連合艦隊司令長官)なんぞより戦局が分かってるんだ、俺が戦争指導してれば米国に勝てた」と思い上がれるのか。
 これが居酒屋で酔っぱらった阪神ファンのオヤジが「阪神の監督采配は全くなってない。俺が監督ならもっとまともな采配してる、日本シリーズ連覇*17も夢じゃない」というのなら「勝手に言ってれば」て話ですがいい大人が素面で「あの戦争で日本は勝てた、俺が戦争指導してれば勝てた」といって本まで書くというのは正気じゃありません。

なぜ日本は真珠湾攻撃という、やる必要のない愚かな作戦を行ったのか?

 「ええ?」てびっくりです。真珠湾攻撃で大ダメージを与えたからすぐには米軍は反撃できなかった、そう言う意味では真珠湾攻撃はやる必要がないどころか「重要な作戦」で、かつ「大成功を収めた作戦」でしょう。まあ、米軍はそのダメージを強大な国力によって急速に回復してしまいますが。
 それとも「真珠湾攻撃をしなければ日米開戦にならなかった、日米開戦は絶対に避けるべきだった」という話なのか?。「日米開戦は絶対に避けるべき」と言う意味なら「真珠湾攻撃は愚か」という意見に俺も賛同します。ただ前後の文章を見る限り、そのようには理解できそうにないですが。

なぜ、取るに足らないガダルカナルという島を取りに行ったのか?

 正直「何故ガダルカナルで日米は戦争したのか、何故戦場がガダルカナルになったのか」と聞かれて即答できるほどの知識は無知な俺にはありません。
 「これこれこういう目的で日米両軍はガダルカナルを戦場にしました」と答えられるような知識を得たいもんだとは思います。
 まあ、それはともかく。何か山田氏は「ガダルカナルの戦争は軍事的に無意味」と言いたげですが、どんなもんなんでしょうね。もちろん仮に「戦術的に大失敗」だとしても「大国米国相手に戦争やること自体が無謀」なので、「ガダルカナルの戦い」を日本が避けても「日本軍人の無意味な死者が減るだけ」で日本の勝利なんてないでしょうが。


■【主張】与那国の住民投票 国の守りは委ねられない
http://www.sankei.com/column/news/150201/clm1502010002-n1.html
 住民投票結果なんか無視して自衛隊を配備しろと言う産経らしい暴論です。まあ、それはともかく。正直な話、地元民で「中国からの防衛」なんて、賛成派ですら考えてないでしょう。結局の所「産業がないから自衛隊でも誘致するか、そうすれば国の補助金もつくだろうし、自衛隊自衛隊員相手の商売(自衛隊の施設建築、自衛隊員相手の飲食店など)は期待できる」という極めて問題のある話の訳です。

 投票資格は永住外国人を含む中学生以上の住民に与えるという。
(中略)
 有権者約1300人のうち中学生は約40人、外国人は約10人という。平成25年の町長選が47票の僅差の勝負となったことを考えれば小さい数ではない。

 やれやれですね。「10人や40人」で左右される程度の票差しかないのであれば「仮に自衛隊誘致をすすめるにせよ強権発動はできない」とか「そもそも住民間に深刻な対立を産んでまで自衛隊誘致すべきでない」とか考えるべきでしょうに、そうはならないのが我らの産経です。


■【イスラム国後藤さん殺害映像】警察当局「本人の可能性が高い」
http://www.sankei.com/affairs/news/150201/afr1502010025-n1.html
 残念ながら後藤さんが殺害されるという最悪の結果になったようです。個人的には「交渉中だし、ここしばらくは殺害という最悪の事態だけはないんじゃないか」と「願望込み」で思っていたので正直ショックです。後はこの件では「パイロット氏解放*18」をどう目指すかという話でしょう。
 「後藤氏の件がけりがついたら*19その時点で安倍政権の交渉が適切だったかどうかの批判を行うべし(小生も行う*20つもりだ)」としていた小生ですが、「パイロット氏」の事を考えるとちょっと微妙です。 

*1:個人サイトのプロフィール曰く「1952年生まれ。1976年光文社入社。『女性自身』編集部、『カッパブックス』編集部を経て、2002年、『光文社ペーパーバックス』を創刊し、編集長を務めた。2010年、光文社を退職し、フリーライターに。主な著書に、『出版大崩壊:電子書籍の罠』(2011年、文春新書)、『資産フライト:「増税日本」から脱出する方法』(2011年、文春新書)、『本当は怖いソーシャルメディア』(2012年、小学館新書)、『脱ニッポン富国論:「人材フライト」が日本を救う』(2013年、文春新書)、『税務署が隠したい増税の正体』(2014年、文春新書)、『なぜ日本人は世界での存在感を失っているのか』(2014年、ソフトバンク新書)など」。

*2:いわゆる日ユ同祖論(日本人とユダヤ人の先祖は同じ)という主張でしょう。勿論デマですが。

*3:陰謀論話に良く出てくる秘密結社の一種。実在自体が怪しい

*4:ロスチャイルド自体は実在の企業グループであり、実際それなりの政治力も持っているだろうが、この種の陰謀論本では根拠レスで「何でもできる世界の支配者的存在」「秘密組織の一種」として描かれる。

*5:『3/11人工地震でなぜ日本は狙われたか』の続編。「HAARPとやらによる人工地震東日本大震災」のわけです。被災者をバカにしている、冗談でも許せないレベルの陰謀論と言うべきでしょう。

*6:もちろんそんな文化は中国にはないわけですが。飢餓で人肉を食った程度の事が食人文化なら日本も食人文化です。

*7:個人サイトのプロフィール(http://www.junpay.sakura.ne.jp/)による

*8:ただ南京事件否定論本である北村稔『「南京事件」の探求』(文春新書)、阿羅健一『「南京事件」日本人48人の証言』(小学館文庫)なんかを出してるのなら、文春や小学館は山田本も出してやればいいジャン、大してレベル的に変わらないだろ、文春なんか過去に4冊も山田本出してるジャン、て気が個人的にはしますが。

*9:俺の理解では松岡は「ドイツびいきの反共主義者」で「日ソ中立条約はマキャベリズム(本来ならそんなことはしたくない)」にすぎません。その松岡にとっては「ドイツが対ソ開戦」すれば「日ソ中立条約破棄と対ソ開戦」は悩む必要もない、ごくごく当然のことでしかありません。自分の主張に反対がでること自体が松岡には冗談抜きで理解できなかったんじゃないか。

*10:貴族院議長、枢密院議長などを経て首相

*11:松岡が辞任の意思を見せないことから、閣内不一致を表面化させたくなかった近衛は第二次近衛内閣を総辞職し、第三次近衛内閣を組閣します。もちろん最大の目的は松岡外しであり外相には豊田貞次郎(第二次近衛内閣商工相)が就任しました。

*12:中華民国総領事、南満州鉄道(満鉄)理事、副総裁、総裁などを経て第二次近衛内閣外相

*13:といってもさすがに日本も「日本軍の米国本土上陸」なんて考えておらず「バルチック艦隊を撃破し引き分けに持ち込んだ日露戦争ケース」を展望していたわけですが(なお日露戦争も日本は最初からロシアへの進軍なんて事は考えていません)

*14:もちろんそんなソ連の陰謀はありません

*15:あまりにも日本に都合のいい見方でしょう。そう都合良く米国が動く保障はどこにもありません。

*16:海軍航空本部長、海軍次官などを経て連合艦隊司令長官

*17:ちなみに阪神は1985年に日本シリーズを制したのみで、シリーズ連覇を未だなしえていない。

*18:もちろん後藤氏共々既に殺害された可能性もありますが。まずは情報収集でしょう

*19:けりがつく前にそれをやると交渉に支障が出るんじゃないかという俺なりの考えです。もちろん「後藤氏殺害」という最悪の事態も当然覚悟はしていましたが、「後藤氏救出」という最善の結果を望んでいたことは言うまでもありません。

*20:と言っても素人の小生の場合「安倍政権はまず交渉過程について説明せよ」「湯川氏らの殺害を防ぐことはできなかったか検証する必要がある」程度の批判しかできませんしやりませんが。「湯川氏らが死んだから結果責任がある」とは思いますが、その結果責任から「このような事件が起きないよう渡航制限する」など今後の対策を要求するならともかく、「安倍政権が全て悪い、退陣しろ」と「交渉過程の検証抜きで」言う気は俺にはありません。まあ、「安倍政権が検証に非協力的なら」、「そんな秘密主義の政権は退陣しろ」「責任があると思ってるから隠すんじゃないのか」とは言うかも知れませんが、それは「殺害の責任を取って辞任しろ」という話とは違います。