今日の産経ニュースほか(3/29分)(追記・訂正あり)

■【歴史戦】「韓国軍が慰安所設置」 ベトナム戦争時 米公文書に記述
http://www.sankei.com/politics/news/150329/plt1503290011-n1.html
 仮にこの記事が事実だとしても「だから何?」て話でしかありません。韓国人の元「旧日本軍慰安婦」にとっては「そんなん知らんがな、何で韓国政府がベトナム戦争慰安所設置したらワシらへの日本軍の違法行為がチャラになるんや、理屈がおかしいやろ」「韓国政府がベトナム戦争の元慰安婦に謝って償い金払うべき、て話と違うのか?」て話でしかない。大体「一番数が多いのは韓国人慰安婦」ですが「東南アジア人(例:フィリピン、インドネシア)の慰安婦」もいて、アジア女性基金も償い金を渡してるのに産経は何抜かしてるんでしょうか?


■【書評】ケント・ギルバートが読む 『「正義」の嘘 戦後日本の真実はなぜ歪められたか』
http://www.sankei.com/life/news/150329/lif1503290018-n1.html
 ケント・ギルバートもウヨ商売に乗り出すとは落ちるところまで落ちたなという気がしますね。自称「カリフォルニア州弁護士」ですがまあ、まともな弁護士稼業で食えない結果がこの醜態なんでしょう。


■総連トップ次男、正恩政権「密使」 本国送金・秘密資金運用も担う
http://www.sankei.com/affairs/news/150329/afr1503290014-n1.html
 「匿名の関係者情報」、つまり公安リークによる思わせぶりなネガキャン記事でしかありません。「公安リーク」なので裏の取りようがなく「ふーん、そうなの(棒)」「でそれで結局何がどうなるの?」で終わってしまう記事です。


■【リー・クアンユー氏死去】難しさ増すシンガポールのバランス外交、中国にらみ日本に期待も
http://www.sankei.com/world/news/150329/wor1503290028-n1.html

 リー氏死去の際、中国から何通も届いた弔電のうち1通は習近平*1国家主席のものだった。シンガポールの主要英字紙、ストレーツ・タイムズによるとリー氏は1990年代初め、地方幹部に過ぎなかった習氏の将来性に目を付け、シンガポールにきた際に食事に誘い、関係を構築してきた。

 まあ、習氏一人だけに目をつけたと言うよりは「複数の若手・中堅幹部に目をつけててそのうち大当たりしたのが習氏」てことでしょうし、そういうのは「中国限定でなくて他の国でもたくさんある」んでしょう。とはいえ「さすがリー・クアンユー」と言うべきでしょうか。「1990年代初め」といったらまだ「江沢民*2国家主席時代」で「習氏がどこまで出世するか」なんて全然分からないでしょうしね。


日本テレビ福田元首相「参加反対する理由なくなった」』
http://www.news24.jp/articles/2015/03/29/10271934.html

 中国を訪問している福田康夫*3元首相は29日、習近平国家主席と会談し、アジアインフラ投資銀行について、「参加を反対する理由がなくなった」などと評価した。

 福田氏の動きは「安倍の要請を受けてのもの」なのか、今後の安倍政権の動向が注目されます。しかし谷垣*4幹事長や二階*5総務会長が訪中しても習氏はあってくれない*6のに福田氏なら会うという態度はどう見ても「安倍政権執行部の人間なんかと政治的に危なくて会えるか、中国が安倍に屈服したなんて宣伝されてはかなわん」「福田氏みたいな非主流派の大物と会うのが当面は政治的に無難だ」と言う意思表示でしょうね。


■【ボアオフォーラム】アジア向け投資で存在感誇示した中国

http://www.sankei.com/world/news/150329/wor1503290029-n1.html
【ボアオ(中国海南省)=山本秀也
 首脳級を含むアジアなどの官民要人が参加して、当地で開かれていた「ボアオアジアフォーラム」年次総会は29日、閉幕した。会期中、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加表明が相次ぐなど、経済を前面に立ててアジアの新たな秩序構築をめざす中国にとり、総会は存在感を誇示する場となった。
(中略)
 総会に出席したオーストラリアのコールマン金融相は、「こうしたメカニズム(AIIB)がインフラ資金の需要を満たすと確信し、重視している」と発言。タイのタナサック副首相兼外相は中国の経済圏構想とAIIBが、「貧困の解消や機会の創造に役立ち、地域の平和と安定につながる」と論評した。

 つうことで「アンチ中国」産経の願望に反し、AIIBへの評価は今のところ、おおむね肯定的なようです。


■【お金は知っている】親中派メディアの無知露わ「AIIB報道」 融資どころではない中国事情
http://www.sankei.com/premium/news/150329/prm1503290015-n1.html
 AIIBを評価するメディア(例:日経)を「親中派」「無知」だの罵倒するんだから産経の反中国ウヨぶりは半端ありません。批判する場合でも少しは冷静な言葉遣いをしたらどうなんですかね。こういうビッグマウスはかえって記事の信頼性を落とすでしょう。
 つうか日経のどこが「親中派」なんでしょうか(まあ、その立場上、中国ビジネスを否定できるわけがないという意味では日経は「親中派*7」ですが、別に親中派だからAIIBを評価してるわけじゃないでしょう)。そして「英仏独伊、韓国、台湾などと言った経済先進国・地域が参加表明してるんだから日本も参加した方がよくね?。アジアインフラ投資銀行で『アジアの大国・日本』が蚊帳の外はまずいんじゃね?」のどこが「親中派」「無知」なんでしょうか。
 つうかこの産経の物言い「参加表明した国は馬鹿の集まり、AIIBなんて中国一人が美味しい思いするだけで他の国はやらずぼったくり。ろくな成果でないに決まってる、参加しない*8日本はお利口ちゃん」と言ってるも同然のビッグマウスですが、どれほど産経は自信過剰なんでしょうか。まあ、産経は「中国批判出来ればそれで御の字」であって「予想通り失敗*9すればホラ見たことかと大喜び」、成功したらしたで「卑怯にも黙り」、別の中国非難ネタを追いかけてるからそれでいいんでしょうけど。


■【日曜経済講座】インフラ銀…その正体は「共産党支配機関」 参加論を斬る 編集委員・田村秀男*10
http://www.sankei.com/economy/news/150329/ecn1503290012-n1.html

 中国主導で設立準備が進められている「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」はどうか。中国は当初から資本金の50%出資を表明し、今後出資国が増えても40%以上のシェアを維持する構えだ。総裁は元政府高官、本部も北京、主要言語は中国語。AIIBは中国財政省というよりも、同省を支配する党中央の意思に左右されるだろう。今後、何が起きるか。
 例えば、党中央が必要と判断したら、北朝鮮のAIIB加盟がただちに決まり、同国向け低利融資が行われ、日本の経済制裁は事実上無力化するだろう。

 だから参加するなと言う産経です。が「経済素人の俺ですが」産経の主張はとんちんかんきわまりないと思いますね。 
 先ず第一に日本が参加しようとすまいと、もはや「AIIB設立」はほぼ確実なわけです。「英仏独伊、韓国、台湾」などといった経済先進国・地域が参加表明した以上、もう「設立自体は動かない」わけです。
 であるなら「むしろ参加して中から日本の意見を通すべき」じゃないのか。「外からああだこうだ」言っても意味がないんじゃないのか。あとでも触れますがたぶん「アジア開銀との競争に負けてAIIBは消滅」とでも思ってるから「不参加でOK」なんでしょうけど。
 第二に「日本の対北朝鮮経済制裁」なんてAIIBの設立に関係なく既に無力化しています。ロシア、中国が北朝鮮を公然と経済支援してるからです。「AIIBを設立するとより北朝鮮支援が本格化するかも知れない」としてもせいぜい「今まで10だった中国の支援が15に増えた、20に増えた」程度の話であって「全くのゼロが突然10に増えた、15に増えた」なんて話じゃないでしょう。

反論もあるだろう。「AIIBは英独仏など欧州主要国も参加するではないか、党に支配されるはずはない」という具合に。

 そもそもAIIBの詳しい事は今後話し合いで決まりますからね。まあ、「AIIB発案者で最大の出資者である中国の意向は非常に重視されるが、産経が『中国共産党直結の出先機関も同然』『中国共産党支配』云々と言うほどストレートには反映されない」と言うのが一番あり得る話じゃないですかね。
 中国も「発案者で最大の出資者」なんだから自分の意見が重要視される事は希望するでしょうが、参加国の反発を買ってまで「党直結の下部機関扱いするほど」無神経、無謀じゃないでしょう。

仮に日本がマイナーな出資比率で参加したところで、党中央政治局に伺いを立てるAIIB総裁に影響力を持てるはずはない。

 じゃあ不参加で影響力を及ぼせるかといったら及ぼせるわけもないでしょう。結局産経は「日本は、日本の影響力が強い既存の国際金融機関・アジア開発銀行*11に全力投球すればいいんだ」「AIIBなんていずれアジア開銀との競争に敗北して消えてなくなるさ」とでも思ってるようですが問題は「どこにもAIIBがそうなる保障はない」てことでしょう。「AIIBが今後一定の政治力を持った場合」、どうするのかて事です。産経だと「何年かけてもAIIBは潰す」とか言いそうですが。
 まあ、「あとからAIIBに入れてもらう」て手もないわけじゃないでしょうけど。ただそれじゃ入れてもらえるにしても「中国や既存のAIIB参加国に足下見られて日本の待遇が悪くなる」可能性があるわけです。だから日経なんかは「参加してもええんと違うか」と言い出すわけです。

【追記】
1)AIIB構想について思うことは「マハティール(マレーシア首相)のEAEC構想(1990年代)」との違いですね。このEAEC構想は「米国外しではないか」と疑う米国の反発で事実上挫折しますが、今回は米国が反発しても実現の見込みの訳です。そこは「1990年代のマレーシア」と「2010年代の中国」の経済力の違いというのも大きいのでしょう。
2)ちなみに産経が「親中派」「無知」と罵倒する日経社説は以下の通りです。

http://www.nikkei.com/article/DGXKZO84622300Q5A320C1EA1000/
■日経社説『中国が主導するインフラ銀に積極関与を』
 中国主導で創設するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に、欧州の主要国*12が相次いで参加意思を表明した。日本はどう向き合うべきか。欧州の先進国が加わり、広がりのある国際金融機関がアジアに誕生する以上、目をそむけ続けるわけにはいかない。
 AIIBの現時点の構想は、意思決定の仕組みや審査基準などに不透明な点が多い。資本金の過半を拠出する中国が強大な発言力を持ち、巨大なインフラ需要に応える資金の流れに支配的な影響を与える可能性もある。
 さらに安全保障上の警戒感もあり、日米両国は参加に否定的だ。だが対中貿易・投資の実利を追う英国、ドイツ、フランス、イタリアの加入で主要7カ国*13(G7)のうち4カ国が構想支持に回り、先進国の日米欧と中国が対峙するという構図は完全に崩れた。
 流れが変わった以上、現実的な目線で中国の構想と向き合うべきではないか。AIIBの否定や対立ではなく、むしろ積極的に関与し、関係国の立場から建設的に注文を出していく道があるはずだ。
 AIIBを「中国の銀行」ではなく中立性の高い「多国籍機関」に導いていく努力を、怠るべきではない。創設メンバー国となる欧州各国やニュージーランドは、内部から透明性の確保を働きかけていく構えだ。中国側も新銀行が国際的な信認を得るために、耳を貸さないわけにはいかない。
 欧州各国が中国陣営に取り込まれ、G7に亀裂が入ったとの見方はある。だが、AIIB設立協定の締結に向けた協議や設立後の運営への発言権を確保し、内外からAIIBへの関与が可能になったと考えることもできるはずだ。
 好むと好まざるとに関わらず、AIIBは年内に発足する。中国の独走を防ぐためには、まず公平で透明な統治の機構を設計することこそが肝要である。そのための条件が満たされるならば、日本が資金を拠出して構想に参加する選択肢も排除すべきではない。
 AIIBが中国の意のままに動く銀行となり、環境に配慮しないインフラ開発*14や持続不能な事業への融資が横行するのではないかとの疑念も広がる。非参加国の企業が入札に加われないなど、不利な条件を恐れる日本企業も多い。AIIBを健全に育てるためにも、日米中心のアジア開発銀行(ADB)は資金力を増やし、競争と協調の両面で関与を深めるべきだ。

*1:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て国家主席、党総書記、国家中央軍事委員会主席、党中央軍事委員会主席

*2:電子工業大臣、上海市長・党委員会書記を経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*3:森、小泉内閣官房長官を経て首相

*4:小泉内閣国家公安委員長財務相自民党政務調査会長(福田総裁時代)、福田内閣国交相、第二次安倍内閣法相などを経て自民党幹事長。

*5:小渕内閣運輸相、小泉、福田、麻生内閣経産相などを経て自民党総務会長

*6:序列4位の兪正声全国政治協商会議(政協)主席があった

*7:ただそう言う意味では一部極右メディアを除いて日本中、親中派メディアですが。「中国ビジネス全否定」なんて非常識ですからね。

*8:少なくとも現時点では参加方針ではありません

*9:まあ、何をもって成功、失敗と評価するかて問題がありますけど。少なくとも不良融資で銀行が倒産するような大失敗はないと思います。

*10:著書『人民元、ドル、円』(2004年、岩波新書)、『経済で読む「日・米・中」関係:国際政治経済学入門』(2008年、扶桑社新書)、『日経新聞の真実』(2013年、光文社新書)、『アベノミクスを殺す消費増税』(2013年、飛鳥新社)、『消費増税の黒いシナリオ:—デフレ脱却はなぜ挫折するのか』(2014年、幻冬舎ルネッサンス新書)など

*11:日本の発案であり、歴代総裁も日本人。出資比率も日本が一番多い。

*12:英国、フランス、ドイツ、イタリアのこと

*13:米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、日本

*14:ただし世銀やアジア開銀が環境に配慮してるかといえばはなはだ疑問です。