今日の産経ニュース(4/25分)(追記・訂正あり)

■米高官、安倍首相にクギ? 「過去の談話*1と一致」促す
http://www.sankei.com/world/news/150425/wor1504250030-n1.html
 「?」はいらんでしょう。まあそれはともかく、この米高官(ローズ米大統領副補佐官)の発言からは以下のことが分かると思います。まあ以前から指摘されてることではありますが。
1)米国は産経らウヨが望むようなウヨ的性格の安倍談話を望んでない
2)米国は「ケリー国務長官ヘーゲル国防長官の千鳥ヶ淵訪問*2」という「婉曲話法によるメッセージ」を無視して「首相1年目に靖国参拝を強行した」安倍には婉曲話法は通じない*3、はっきり言わないと何かするか分からないと危険視し警戒してる(まあ、それでも安倍を糞味噌に言って完全に面子を潰すことはさすがにしないわけですが*4


■【外信コラム】ソウルからヨボセヨ 腹いせ?の日本非難
http://www.sankei.com/column/news/150425/clm1504250005-n1.html

 バンドン会議は、インドのネール首相、インドネシアスカルノ大統領、エジプトのナセル大統領、中国の周恩来首相らの提唱で誕生。欧米の植民地支配から独立したアジア・アフリカ諸国など29カ国が反帝国主義・反植民地主義民族自決を標榜(ひょうぼう)し、世界平和と協力のために集まった。
 ところがこの時、日本は招かれたのに韓国は招かれなかった。

 「韓国が招待されなかった」のは、単に「周恩来がこの会議の顔役の一人」なので「北朝鮮を正統国家とする中国に配慮して呼ばなかっただけ」でそれ以上の話ではないのですが(一方で北朝鮮を正統国家としない国々も参加国にあったので北朝鮮も呼ばれなかった)。
 なお、ソ連・韓国国交樹立が1990年、南北朝鮮の国連同時加盟が1991年、中国・韓国国交樹立が1992年です。

韓国にとっては実に悔しいところだが、日本は当時から(注:大東亜戦争など)アジアの独立などに対する貢献が高く評価されていたのだ。

 冗談も大概にしてほしいですね。周恩来が会議の顔役なのにそんなことがあるわけもないでしょう。
 つうか「日本なんか呼ぶな」という反発も中国国内におそらくあったろうにその辺り見事に抑え込んだ周恩来の「政治家としての手腕」を評価すべき話でしょうよ。まあ、その辺り「アジアアフリカ会議でアジアの大国・日本を『台湾を正統国家としてる国なんか呼べるか(中国)』といって呼ばないのはまずいだろ」「呼んでも来ないなら仕方ないけど」て政治的判断が周恩来にあったんでしょうね。何つうか、周恩来は政治的見識と言い、手腕と言い恐ろしい人です。並みの人間じゃないつうか何つうか。
 なお、
1)この会議への政府代表出席については、当時、ウヨから「中華人民共和国が顔役の会議など参加するな」と反発が出たこと*5(当時の日本は中華民国(台湾)を正統政府としていた。中華人民共和国と国交を樹立し台湾と断交するのは後の田中*6内閣時代)
2)会議に日本政府代表として出席した高碕達之助*7(当時、鳩山内閣経済企画庁長官)は「LT貿易の立役者」として知られる親中国派
といったことを無視する辺りはさすが産経です。つうかさ、「AIIBを敵視する」産経は当時は「中国が顔役の会議に出ていいのだろうか?」とか言ってたのと違うの?


【2014年4/30追記】
■【正論】高まるアジアの「国際秩序」競争 京都大学教授・中西寛

http://www.sankei.com/column/news/150430/clm1504300001-n1.html
 日本の鳩山一郎政権はこの招請への対応にとまどった。
(中略)
 アメリカが非同盟中立主義を批判し、前年に結成したばかりの反共的な東南アジア条約機構(SEATO*8)の発展を阻害するとみていたからである。
 しかし、バンドン会議を止める手段がないことを認識して、その性格を反西側的でないものとするよう助言するイギリス*9などの意向を受け、アメリカは日本の参加を支持する方向に転換した。
 結局、日本の対応は混乱し、首相でも外相でもなく高碕達之助経済審議庁長官が出席し、会議では(注:日米安保というデリケートな問題に触れることになる安保問題は脇に置いて)経済協力を中心に訴えることとなった。高碕は立派な人物だったが、日本の姿勢の曖昧さは否めず、中国の周恩来首相がネール*10スカルノ*11をしのぐ活躍で会議の主役となった。

 まあ、予想通りですがやはり「鳩山首相でも重光外相でもなく高碕経済審議庁長官出席」とはそういうことだったわけです。
 しかし
1)最初「バンドン会議なんか潰す、日本は参加するな」
2)最終的結論「潰せそうにないからむしろ日本は参加しろ、周恩来のペースにするな」
アメリカの態度も随分いい加減ですよねえ。と同時に「将来のAIIBに対する米国の態度もこうなるんじゃね?」「『潰せそうにないから日本は中に入って習近平のペースにするな』て言い出すんじゃね?」て気がします。

*1:村山首相談話、河野官房長官談話、菅首相談話のこと。

*2:靖国訪問はしませんでした

*3:通じないのが「安倍が婉曲話法を理解できないバカだからか」はたまた「婉曲話法の意味を知りながら、はっきり言われてないのをいいことに故意に無視した」のかはひとまずおきます。安倍だと「バカだから理解できなかった」という前者の可能性を否定できないところが恐ろしいところです。

*4:とはいえ、相手が安倍でなければ、そして安倍が「靖国参拝を強行しなければ」、ここまではっきりと安倍に警告はしないでしょう

*5:他国が政府代表として首相、大統領、外相クラスを送り込んでるのに、政府代表が「閣僚とは言え」鳩山首相でも重光外相でもなく、高碕経済審議庁経済企画庁の前身)長官になったのはそういうウヨの反発への配慮でしょう。まあ、鳩山はともかく「元A級戦犯の重光」を代表に送られても中国が対応に困ってありがた迷惑に思うかも知れませんが。

*6:岸内閣郵政相、自民党政務調査会長(池田総裁時代)、池田内閣蔵相、自民党幹事長(佐藤総裁時代)、佐藤内閣通産相などを経て首相

*7:戦前、満州重工業総裁。戦後、電源開発総裁、鳩山内閣経済企画庁長官、岸内閣通産相などを歴任

*8:機構の意思決定は加盟国の満場一致によっていたため、国内の対米追従批判を恐れたフランスと、国内の共産ゲリラの掃討に追われて、ベトナムへの本格的な派兵には及び腰だったフィリピンの反対のために、ベトナム戦争に直接干渉できなかった。このため1973年にパキスタンがSEATOが軍事同盟として機能していないことを理由に脱退し、翌1974年にフランスが脱退している。機構自体も1977年6月30日に解散した(ウィキペ「SEATO」参照)。

*9:今回のAIIBも英国が大きく流れを決めたことを考えると単なる偶然でしょうが「バンドン会議もAIIBも英国が大きく影響した」ということに面白さを感じます。

*10:インド首相

*11:インドネシア大統領