今日の産経ニュース(5/17分)(追記・訂正あり)

■【あめりかノート】「過去の過ち清算」せよと叱責する「日本研究者」の正体
http://www.sankei.com/column/news/150517/clm1505170006-n1.html
 「187人もの日本研究者(オーストラリア人や英国人、『米国大学で教鞭を執る』日本人もいるが米国人が中心)」を「反日呼ばわりする」古森です。1人や2人ならともかく「187人もの日本研究者」を反日呼ばわりしたら「米国の日本研究者はほとんど反日」と言うとんでもない結論しか出ないんですけどね。
 まあ、古森が「187人声明を超える人数の日本研究者が署名した『187人声明批判声明』『安倍擁護声明』」でもコーディーネートできるのなら「この187人は反日だ」にも説得力が少しは出るでしょうが、そんなことないでしょうからね。
 つうかあまりバカな事言ってると古森や産経が「187人声明のメンバー」、特に古森が何故か名出しで反日だと罵倒してる

コネティカット大学教授のアレクシス・ダデン氏
マサチューセッツ工科大学名誉教授のジョン・ダワー氏*1
コロンビア大学教授のキャロル・グラック氏*2

から名誉毀損で訴えられかねませんよね。


■【お金は知っている】中国「利下げ」は経済自滅のシグナル 止まらない資金流出
http://www.sankei.com/premium/news/150517/prm1505170022-n1.html
 中国大嫌い・田村秀男の中国DIS記事です。まあタイトルだけでも想像がつきますが
1)中国は景気が悪いから利下げしてるんだ(まあアベノミクスも利下げしてますし、景気てこ入れで利下げというのは「是非はともかく」別に珍しくない考えです)
2)でも景気回復効果がないんだ
3)つまり中国の経済は自滅するだろう、だから日本はAIIBに入らなくていいんだ
という三段論法です。
 2)が事実かどうかは経済音痴なので知りません。ただいくら田村がアンチ中国だからって隣国の景気後退の可能性を「AIIBに入るメリットがないことが証明された」と喜んでていいんでしょうか。日本は中国と多額の貿易してるわけですから、中国景気が沈んだら日本も直撃受けて恐ろしいことになるでしょうよ。
 「日本は米国とかEUとか、中国のほかに貿易してる国もある」とか「内需もある」とかで「中国の景気後退の日本経済へのダメージ」が何とかできるかといったらたぶん何とかできないでしょうね。
 いくらアンチ中国でも「日本の国益」位は冷静に判断して欲しいもんです。


■【甘口辛口】「独りぼっちじゃない…」介護生活ラジオで明かした「大山のぶ代」夫妻…決断の裏に親友・毒蝮のナイスアシスト
http://www.sankei.com/column/news/150517/clm1505170010-n1.html
 大山のぶ代認知症ネタ続報です。大山の話についてはいつも拙エントリをご紹介頂いているBill_McCreary氏のサイト「ライプツィヒの夏」のエントリ『大山のぶ代認知症になったという報道を聞いて感じたこと』(http://blog.goo.ne.jp/mccreary/e/b5ba310bbeea0a47c89f4380d31ff03f)も紹介していますが。
 さて

 「ドラえもん」などで知られる声優の大山のぶ代(78)が認知症を患っていることを、夫の俳優・砂川啓介(78)が13日、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」の中で公表した。

わけですが産経記事に寄れば「ゆうゆうワイド」への出演をコーディネートしてくれたのが「ゆうゆうワイドの出演者で大山夫妻と交友のある毒蝮だった」と言う話です。
 「大山の認知症を公開すべきか迷う夫・砂川氏」に「大山ファンのためにも認知症の事実それ自体は公開した方がいいんじゃないか」と毒蝮がアドバイスしたんだそうです。


■【北朝鮮情勢】「特大型の挑発」北が朴大統領非難 粛清めぐる「恐怖政治」発言に
http://www.sankei.com/world/news/150517/wor1505170022-n1.html
 弱るのは北朝鮮が「挑発は許さない」と言うだけで、何が挑発なんだかきちんと説明しないことです。
 「そもそも処刑などしてない。処刑したと我々が公式発表したわけでもないのに勝手に処刑したと決めつけたあげく恐怖政治呼ばわりとはふざけるな」と言う意味なのか、はたまた「処刑はしたが、それは合法かつ正当で恐怖政治ではない。韓国とてどこの国とて犯罪者に厳罰を科すのは当然ではないのか」という意味なのか。
 現時点では「朝鮮中央テレビが放送する記録映画に未だに国防相氏が登場」「公式には処刑発表はしてない」「処刑説は韓国当局の発表に過ぎない」ということで「粛清否定説*3」も有力です。
 

■【主張】世界文化遺産 中韓の反対に理はあるか
http://www.sankei.com/column/news/150517/clm1505170001-n1.html

 韓国は、登録が見込まれる23施設*4中、長崎県などの7施設に日本の朝鮮半島統治時代、多くの朝鮮人が徴用されたなどとし、世界遺産委員会の各委員国に登録反対を訴える書簡を送った。
 中国も、申請施設には第二次大戦中、中国や朝鮮半島から強制徴用された労働者が苦役を強いられたとし、「日本の軍国主義による重大な犯罪だ」と強調した。世界遺産委員会にも「責任ある方式での処理」を求めている。
 だが、イコモスが「西洋から非西洋に初めて産業化の伝播(でんぱ)が成功したことを示す」として評価の対象としたのは1853年から1910年の期間

 俺は「反対に理はある」と思いますね。俺の感想では産経や日本政府の詭弁は甚だしいですね。中韓が問題にしてる「軍艦島」などは「1910年以降は稼働しなかった」のか。そんなことないわけです。日本が世界遺産にしたい施設はたとえば軍艦島を例にすれば『軍艦島の施設全て』ではなく『1910年以降は稼働をやめた施設』なのか。そんなこともないわけです。そうきれいに「1910年以降稼働をやめた施設のみ世界遺産として保存します、ほかは保存しないか、保存する場合でも世界遺産じゃないただの重要文化財です」なんてことができるわけもない。
 そして「1910年以降も稼働した施設」について、「申請を1910年で区切った理由」は何なのか。不自然でしょう。「中韓の抗議を予想して言い訳するための詭弁」じゃないのか。いや「明治時代にのみ着目しました」というなら「明治以降も稼働した施設(軍艦島)」なんかそもそも入れるべきなのか。
 「1974年に炭鉱を閉鎖するまで戦後も稼働した」軍艦島を申請したいなら「明治の産業遺産」ではなくて別枠で申請すべきじゃないのか。
 いずれにせよ中韓が要求するように
1)ユネスコ世界遺産申請から除くか
2)遺産にした上で「朝鮮人強制連行などの負の歴史」についてきちんと広報していく
かどっちかの手を取るべきだと思います。そうすれば向こうは納得する。それが筋というもんでしょう。こんなことで隣国ともめて何か意味があるのか。で「向こうの要望に応えること」に何か問題があるのか。
 中韓は「韮山反射炉」など「強制連行に関係ない施設」は何ら問題にしてないから除外したところで、世界遺産登録自体は可能です(除外施設が登録されないだけ)。
 どうしても「全て登録したい」のなら「負の歴史をきちんと広報していく」「ユネスコへの申請にも負の歴史について記述する」でいいじゃないですか。それができない理由は何なのか。結局戦争や植民地支配に無反省なだけじゃないですか。あるいは「中韓を格下扱いして言う事を聞きたくない」だけじゃないですか。まあ、こういう事になる理由の一つは「首相が安倍だから」なんですが。
 イフの話をしてもしょうがないんですがたとえば、これが福田康夫政権時代なら
1)そもそも軍艦島なんか申請しない
2)仮に申請しても中韓も「まあ不満はあるけど福田だから裏はないだろう、安倍や麻生なら話は別だけど」と言う態度であまり批判しない
3)中韓から批判が出た場合福田政権は安倍みたいに「いいがかりはやめろ」と突っぱねない。「ご意見は承りました、検討します」として実際「申請から除外する」「負の歴史について申請に記入」などの態度でうまく落としどころを作る
ように思いますね。「靖国参拝しなくても」、このように次から次へともめ事の種作るんだから、しかも作っても「俺は悪くない、向こうの言いがかりだ」なんですから本当に安倍にはうんざりします。

 一方で、朴槿恵大統領は日本経済界の訪韓団と会談し、韓国への積極的な進出を期待したという。ムシがよすぎはしないか。

 やれやれですね。経済問題と関係ないでしょうに。
 むしろ韓国財界の要望を無視して「世界遺産問題が決着しない限り、日本と経済交流なんかしない」なんて朴大統領がいったら正気を疑われます(もちろん日本としても困る)。
 大体、それだったら、経済交流してたら一切、相手国を批判したらいけないのか。批判したら「相手国に失礼」で「ムシがいい」のか。その理屈だと中国を「日本と直接関係ない」国内問題で批判するのは不適切なのでまず産経から「チベットウイグルの問題で中国批判するのは私は今後はやめます、日本の皆さんもそういうことはやめましょう。ムシのいい恥知らずな行為です」と断言して欲しいもんです(勿論皮肉)。


■【主張】活断層の可能性 「否定できず」は禁じ手だ
http://www.sankei.com/column/news/150517/clm1505170002-n1.html
 自分に都合の悪いことには「禁じ手」て言いがかりつけるいつもの産経です。「南京事件」で「デマゴーグ東中野修道なんか持ち出して「虚構説にも一理ある」とか言い出す産経の方がよほど禁じ手なんですけどね。
 もちろん「活断層の有無がはっきり判断できるのであれば」はっきり判断すべきです。「活断層の可能性」がほとんどないのに「可能性アリ」と言うのも問題でしょう(まあ、その場合はアリとする場合でも「極めて可能性は低いと思うが」などと断るでしょうが)。
 ただし一般論でいえば「否定できず」は何ら禁じ手ではありません。科学は万能じゃない。何でも分かるわけではない。分からない場合は「分からない」というしかない。
 産経が「禁じ手」というなら「これこれこういう理由で活断層ではないと判断できるはず」などという反論が必要でしょうがこの社説にはもちろんそんなものはない。
 「活断層とされたら原発が稼働できない」とわめくだけです。おいおいですね。「活断層の可能性がある場所で原発を稼働してもし仮に大規模地震原発事故が起きたら」どうするのか。
 産経はどうやら「分からないのならいわゆる『疑わしきは罰せず』の精神で稼働させろ」と思ってるようですが、そう考える神経が理解不能です。
 『疑わしきは罰せず』は「無罪の人が獄に入るくらいなら真犯人が逃げても仕方がない」と言う判断です。当然の判断だと思います。
 一方、「原発が稼働できないくらいなら、活断層の可能性があるとされた場所が本当に活断層で事故が起こっても仕方がない。原発の経済メリットは大きい」なんてのがまともな判断なのか。

 1号機の建設に当たっては、当時の原子力安全委員会などの専門家による現場の岩盤の厳格な確認が実施されている。
 この破砕帯に活断層の疑いがあったなら、そこを避け、原子炉建屋の位置を変更しているはずだ。また北陸電力によると、最近行った同破砕帯の延長部分の調査からも活断層ではないことが確認されたとしている。

 やれやれですね。そんな事を言ったらそもそも専門家調査団の意義の全否定でしょうが。
 この文章から産経は専門家調査団が「活断層がある」と判断したらしたで

1号機の建設に当たっては、当時の原子力安全委員会などの専門家による現場の岩盤の厳格な確認が実施されている。
 この破砕帯に活断層の疑いがあったなら、そこを避け、原子炉建屋の位置を変更しているはず*5だ。また北陸電力によると、最近行った同破砕帯の延長部分の調査からも活断層ではないことが確認されたとしている。

といったであろうこと、そもそも専門家調査団の意義それ自体を「必要ない」として産経が否定していることが想像できます。要するに「稼働させろ」と言う結論ありきの訳です。

大小などに関係なく、活断層か否かの一点のみで廃炉につながる規制は、原発の安全利用という視点を忘れている。耐震強化で安全性を高めて「可能性」の溝を埋める道もあるではないか。

 この社説の最後のオチですが本当に酷いですね。
 さんざん「今の原発の立地に活断層はない」と言ってきた「はず」なのに最後の最後で
1)活断層だって大小の違いがあるんだから小さかったら活断層の上でも稼働してもいいんじゃね?。小さかったら原発が壊れるような大地震なんか起きねえよ
2)いやでかい活断層だって「耐震補修」すれば事故の可能性ゼロと言う事で「稼働してもいい」んじゃね?。今まで使ってきた原発廃炉にするのもったいねえじゃん
だそうです。どこまで命知らずなんだろうと呆れます。

*1:著書『吉田茂とその時代(上・下)』(1991年、中公文庫)、『容赦なき戦争:太平洋戦争における人種差別』(2001年、平凡社ライブラリー)、『敗北を抱きしめて:第二次大戦後の日本人(上・下)』(2001年、岩波書店)など

*2:著書『歴史で考える』(2007年、岩波書店

*3:ただしその場合でも左遷はされたのではないかとする

*4:個人的にこの中に「松下村塾」「萩城下町」「グラバー邸」が入ってるのはおかしいんじゃねえの、と思います。韮山反射炉のような産業遺産じゃないでしょうよ。

*5:志賀原発の稼働は今から約20年前の1993年です。「一般論として言えば」当然20年前と今では科学技術の進歩がありますから「当時活断層と判断されなかったところが実は活断層」ということは充分あり得ます。