今日の産経ニュース(7/1分)(追記・訂正あり)

■【九州から原発が消えてよいのか】第10部(3)中国から輸入? 悪い冗談に現実味/“非科学的”な規制委の態度、いなくなる技術者
http://www.sankei.com/life/news/150701/lif1507010003-n1.html

 原子力の平和利用を目的に経済界などでつくる「日本原子力産業協会」は毎年、就職活動中の学生を対象に、原子力産業セミナーを開いている。参加者は、福島の事故前まで右肩上がりを続け、22年度は1903人に達した。しかし、事故後の24年度は388人と5分の1にまで落ち込んだ。26年度も393人とまったく回復していない。

 それはある意味当然でしょう。原子力産業には未来があるようには見えませんから。よほど原子力に思い入れがなければ「衰退産業」に行く学生はいません。

原発新増設に最も力を入れているのが中国だ。

 普段は中国を非難しまくってる産経がこれです。


霞が関、朝型勤務スタート 8月末まで
http://www.sankei.com/politics/news/150701/plt1507010005-n1.html
 既に多くの人が指摘していますが問題は「帰りが遅いこと」なんですから「勤務時間を早めても意味があるのか」て話です。
 また「勤務地から自宅が遠く離れていれば」通勤がかえって大変になる危険性や「幼い子どもがいる場合、朝早くから預かってくれる保育園が見つかるかどうか」て問題もあります。

国会の会期が9月27日まで延長されたことで議員質問の答弁準備などの業務が増え、首相官邸や省庁には深夜勤務は避けられないとの見方も広がっている。

 こういう物言いはやめて欲しいですね。もちろん「国会質問は残業の一原因かも知れない」。とはいえ「国会休会中は官僚に余裕があるか」「残業などせず定時に帰れるか」と言ったらそんなこともないでしょう。
 そして民間だって残業は蔓延してるわけです。


■【正論】南シナ海めぐる米中角逐の背景 東京国際大学教授・村井友秀
http://www.sankei.com/column/news/150701/clm1507010001-n1.html

最近の南シナ海における米中の対立を(1)中国はなぜ南シナ海へ進出するのか(2)米国はなぜ中国の南シナ海進出に反発するのか−という視点から考察する。

さて村井氏はどう考察しているのか。

 近年になって、中国が積極的に国外で軍事力を行使*1する目的は、深刻化する国内矛盾によって高まっている共産党に対する国民の不満を国外に転嫁するためである。

と村井氏が決めつける根拠は実はこれ以降何一つ出てきません。
 単に「国民の不満解消の為だけにあんなことをやるなんて」と中国を誹謗したいだけではないのかと疑いたくなります。
 なお、村井氏の主張が事実だとして*2、そこには「プラス面」と「マイナス面」があります。
 まず「マイナス面」。国民の不満解消のために外に打って出るということは村井氏が非難するように褒められた代物ではありません。
 「プラス面」。村井氏の主張が事実ならば「南シナ海での問題」は「中国にとって譲れない利益」ではないわけですから、充分交渉可能でしょう。

 国内矛盾を国外に転嫁する責任転嫁理論は、高度な教育を受け豊富な情報を持っている国民が多数を占める国ではうまく機能しない。しかし、中国人は国外からの情報を遮断され、多くの国民は高等教育を受ける機会に恵まれていない。

 やれやれですね。
 日本に「安倍批判情報はあふれてるのか」。とてもそうは思えませんが。テレビは「アベノミクス万歳」ばっかですよね。
 そして別に「責任転嫁」は「高度な教育を受けていればやらない」「低学歴者だけがやることだ」と言うものではないでしょう。
 教育を受ければ「責任転嫁しないで済む」のなら「大学進学率がかなりの程度に達してる日本」で「中韓が悪い、日本は悪くない」と責任転嫁して恥じないフジサンケイグループはこの世に存在していないでしょう。もちろん「産経支持者は学歴が低い、教育を受ければまともになる」なんてことも残念ながらないでしょうね。話はそんなに単純じゃない。つうか産経文化人の中に「島田洋一福井県立大学教授」など「大学教授がいます」し(苦笑)。村井氏もその一人です。
 つうかこの村井氏の物言いって思い切り「中国人蔑視」「学歴差別」ですよね。

もともと中国共産党日中戦争の中で「抗日民族統一戦線」という民族主義的スローガンを前面に出し、「日本軍国主義に屈服した民族の裏切者である国民党」を打倒して政権を取った政党である。

 中国共産党って国民党に対してそんな事言ってましたかねえ?。
 まあ、「いわゆる安内攘外路線*3」に対してはその種のことを言ってたかもしれませんが。

1952年に中国で発行された中学生用の歴史教科書によれば、カザフスタンキルギスタジキスタン、ネパール、シッキム、ブータンビルマベトナムラオスカンボジア、台湾、琉球、朝鮮、ロシアのハバロフスク州、沿海州樺太などが、帝国主義者に奪われた中国の領土である。

 本当にそんな教科書が存在したという事実があるのか知りませんが、それはさておき。
 今は勿論「1952年当時」だって「台湾」はともかく、まさか「カザフスタンキルギスタジキスタン、ネパール、シッキム*4ブータンビルマベトナムラオスカンボジア琉球、朝鮮、ロシアのハバロフスク州、沿海州樺太」などをまさか「中国領にしたい」なんて思ってないでしょう。村井氏は全く何考えてるんですかね。
 「話はずれますが」そう言えば産経なんかは「南樺太ポーツマス条約で取得した日本の領土だ」「失われた南樺太を取り戻したい」「日本はサンフランシスコ平和条約南樺太の主権を放棄したがソ連(ロシア)の領有権を認めた訳じゃない」とかとんちきなことを言ってましたね。

・米国に次ぐ軍事大国であり軍事力行使を躊躇(ためら)わないロシア
・軍事大国であり軍事力行使を躊躇(ちゅうちょ)しないインド

 村井氏が言う程「躊躇しない」とは思いませんけどね。
 インドの対外軍事力行使なんて過去に「印パ国境紛争」「印中国境紛争」くらいでしょう。
 ロシア*5の対外軍事力行使行使にしたって「やっていいとはいいませんが」2008年のグルジア侵攻*6と、2014年のクリミア併合くらいでしょう。

中央アジア諸国*7は軍事小国であるが、ロシアと関係が深く、中央アジア方面への軍事的進出はロシア軍の介入という大きなリスクを覚悟しなければならない。
(中略)
他方、海での勢力拡大は、陸上での勢力拡大よりも目立たずコストが低いと中国は考えている。

 そう言う話じゃないと思うんですけどね。まず第一にロシアだって「他国のドンパチに積極的に介入したくはない」でしょう。
 第二に「南シナ海の領有権紛争」のようなもめるネタが中国と中央アジア諸国との間にはないでしょう。
 第三に「南シナ海紛争は国民の不満を解消するため」なら「昔の中越戦争」みたいに「陸からベトナム攻撃したっていい」わけです。でもそんな事を中国はしない。
 結局「陸路でもめるより海路でもめる方がもめ方が小さくて済む」てだけじゃないですかね(もちろん「島には中国の正当な領有権がある(中国)」てのは村井氏の言うような言いがかりではなく少なくとも中国の主観的には「事実」でしょうけど)。

東シナ海に進出した場合の相手は日本

 いやいや中国も日本とは事を構えたくはないでしょう。日本は「軍事大国*8」であり「経済大国」でもありますから。

 南シナ海が中国の海になれば、米軍が自由に行動できない海はないという米国の軍事戦略の基本が崩れることになる。南シナ海は米国にとってあまり影響のない周辺的な国益ではなく、重要な戦略的国益なのである。

 米国にとってはそういうことなんですかね。
 とはいえ「中国」「東南アジア」「米国」の三者にとって「東南アジアや米国と全面対決する程の利益(中国)」「中国と全面対決する程の利益(東南アジアや米国)」にはないでしょう。願望込みですが「落ち着くところへ落ち着く」んじゃないですかね。

*1:中国のやってることがいいことだとは言いませんが「アメリカや旧ソ連のさまざまな対外武力行使(例:ベトナム戦争、アフガン戦争)」「EUのユーゴ空爆」などに比べたら全然かわいいもんでしょう。

*2:俺は事実ではないと思いますが

*3:日本との戦いより中国共産党の打倒を優先する路線。日本が蒋介石政権全面打倒を目指すようになり妥協の余地がなくなったこともあり、西安事件をきっかけに国共合作が成立しこの路線は廃棄された

*4:今の「インド」の一部

*5:話の文脈から旧ソ連時代は含めません。

*6:グルジアからの独立を宣言した南オセチア共和国アブハジア共和国(ロシア系住民が多い)をロシアが支援した。ロシア以外に南オセチアアブハジアの独立を認めている国はほとんどなく国連加盟も当然していないが事実上の独立を現在も保っている

*7:カザフスタンウズベキスタンキルギストルクメニスタンタジキスタン

*8:憲法九条があるのに世界有数の軍事大国という現状はハト派の俺にとって極めて不愉快ですが