今日の産経ニュース(11/4分)(追記・訂正あり)

■「戦争廃絶に沿うのか」 河野洋平氏、安倍政権を疑問視 沖縄、原発
http://www.sankei.com/life/news/151103/lif1511030042-n1.html

 河野洋平*1衆院議長は3日、長崎市でスピーチし、安倍政権が進めた安全保障関連法の成立や武器輸出三原則の撤廃などを挙げて「戦争の廃絶という、人類が進むべき方向に沿っているのだろうか」と疑問視した。核兵器廃絶を訴える国際組織「パグウォッシュ会議」の世界大会で催された夕食会で述べた。
 河野氏は、米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設問題についても「沖縄の美しい自然を壊し、新基地建設を強行しようとしている」と指摘した。
 東京電力福島第1原発事故を踏まえて世界大会でもテーマの一つになった原子力利用のあり方に関連し、「ドイツが脱原発を決めたことに注目した。事故で放射能を大気中に拡散させるリスクがゼロになる、魅力ある選択肢」と話した。(ボーガス注:NPT非加盟で核兵器開発をすすめる)インドとの原子力協定締結問題については「核拡散防止条約(NPT)体制に打撃を与える」とし、政府に慎重姿勢を求めた。

 まあ、正直な話、河野氏も「政界引退した」のでこういう事は言いたくはないでしょう。しかし「俺が言わないと自民党関係者でいう奴がいない」「息子の太郎(現在、安倍内閣国家公安委員長)が俺を逆恨みした安倍に酷い目にあわされても仕方がない」というある種の使命感、悲壮感があるんでしょうかね。まあ、安倍や「安倍の同類連中(例:日本会議や産経)」が耳を傾けないこと、それどころか河野氏を敵視するであろう事は、河野氏も分かってるでしょう。
 しかし「安倍によって劣化する自民党を見てはいられない」のでしょう。


■【世界記憶遺産】「中国の政治宣伝だ」 「南京」登録の抗議集会 
http://www.sankei.com/politics/news/151103/plt1511030025-n1.html

評論家の阿羅健一氏*2は、「南京事件は架空の出来事で、(中国の)政治宣伝だ」と強調。

 非常識の極みですね。
 もちろん「架空」のわけはないんであって安倍政権ですら「死亡者数に争いがある」だの「(ユネスコ世界記憶遺産)登録資料の歴史的価値に疑問がある」だの因縁はつけても「南京で違法殺害があったこと」それ自体はさすがに認めています。東京裁判での「南京事件を理由とした」松井石根死刑についても「冤罪だ」なんてことは安倍政権は言わないわけです。
 なお、阿羅とはウィキペディア「阿羅健一」に寄れば

著書『【再検証】南京で本当は何が起こったのか』(2007年、徳間書店)では、1932年4月29日(天皇誕生日)に上海虹口公園で発生した上海天長節爆弾事件*3実行犯である尹奉吉を事件前にかくまった*4人物が、(ボーガス注:南京事件で被害者救済に関わった外国人の一人)ジョージ・アシュモア・フィッチであった*5と主張した。

というのだから相当のトンデモ野郎です。
 ウィキペ「阿羅健一」にも

秦郁彦*6は、本書*7に関して「クロを証言する人は避け、シロと主張する人だけをまわって、全体としてシロと結論付ける戦術が丸見え」と評している。
笠原十九司*8は自著『南京事件論争史』*9において、阿羅について、雑誌連載から書籍化、単行本から文庫化がされる際に、都合の悪い証言を削除している、と指摘している

という指摘があります。
 残念ながら、阿羅のフィッチ珍説の「根拠」が何か、阿羅の珍説に対してどういう批判があるのかは一寸今の時点では分かりませんがご教示があると幸いです。


■【南シナ海緊迫】ASEAN議長国マレーシア、米中板挟みで苦慮 米軍行動「歓迎」はフィリピンだけ
http://www.sankei.com/world/news/151103/wor1511030060-n1.html
 産経としては「中国非難、米国歓迎」を期待していたのでしょうが、そんな国はフィリピンだけしかなかったという話です。フィリピンが何故そういう態度か、さっぱりわかりませんが、産経が期待するような「反中国包囲網」なんてもんがあり得ないことだけは確かでしょう。
 結果として「マレーシア」など、「フィリピン以外」を中国に対して軟弱だと非難し出す産経です。


■【産経抄】誰もがずるをする 11月4日
http://www.sankei.com/column/news/151104/clm1511040004-n1.html

 米国の行動経済学者、ダン・アリエリーさん*10は、ある大学でこんな実験を行った。学生たちに数学のテストを受けてもらい、得点に応じて報酬を払う。ただし採点は自分で行い、テスト用紙はシュレッダーで破棄する。つまり、不正を行っても証拠が残らない。
▼予想通り、多くの学生がズルをした。ただ大多数は、得点をほんの少し水増ししただけだった。アリエリーさんによると、人は正直でありたいと思いながら、一方でズルをする。このズレを解消しようと、常につじつま合わせを行っている(『ずる』*11早川書房)。

 本を読めば分かるのでしょうが「何でずる*12が分かったの?」というのが不思議ですね。どういうトリックを使ったのか。
 なお、「得点をほんの少し水増し」というのは何となくわかる気がします。「大幅な不正をすることには躊躇*13があっても」、正直にやってカネが少ないのも嫌だなあということでこうなるんでしょう。


■【国際情勢分析】中国企業グループ、F1運営組織にも触手 買収に向け1800億円を準備
http://www.sankei.com/premium/news/151104/prm1511040003-n1.html

 中国の投資基金や複数の企業グループが、世界最高峰の自動車レース、フォーミュラ・ワン(F1)を運営する「フォーミュラワン・グループ」の買収計画への参画を検討していることがこのほど、明らかになった。
 買収計画への参画を検討しているのは、中国の大手投資ファンド華人文化産業投資基金(CMC)と、傘下の復興集団、万達集団など複数の企業グループ。CMCは、買収計画を主導している米NFLのチーム「マイアミ・ドルフィンズ」のオーナーであるステファン・ロス氏(75)の誘いに応じ、15億ドル(約1800億円)を準備していると伝えられた。ロス氏は、総額85億ドルでの買収を提案しているとされる。

 中国企業単独ではない上に買収計画の中心は中国企業ではないわけですが、それにしても中国の経済力を示す話でしょう。

 中国の自動車業界では10年に吉利汽車スウェーデンボルボを買収した。14年には東風汽車が仏プジョーシトロエン・グループ(PSA)に資本参加した。さらに15年3月には、中国の国有化学大手、中国化工集団が、F1にタイヤを供給しているイタリアのタイヤ大手、ピレリとの間で、71億ユーロ(約9600億円)での買収に合意するなど、活発な動きを見せている。

 これまた中国の経済力を示す話です。


■【中台首脳会談】「中国による台湾の選挙介入は逆効果」松田康博*14・東京大教授(中台関係論)
http://www.sankei.com/world/news/151104/wor1511040038-n1.html
 産経が使う論者っていつもこんなんばっかですよねえ(苦笑)。
 「逆効果」か、どうかはともかく、馬政権にも、中国政府にも「総統選への影響」という考えは当然あるでしょう。
 とはいえ「それオンリー」であるかのように、「選挙に逆効果」としか言わないのは明らかにずれてるでしょう。
 「中国・台湾間の経済交流が進む事は選挙に関係なくいいことだ」という判断だっておそらくあるわけです。 


■中台トップ会談へ 馬総統と習主席 7日、分断後初
http://www.sankei.com/world/news/151104/wor1511040006-n1.html
 アンチ中国の産経にとっては悔しいことでしょうが、中台関係が宥和の方向で大きく動いているようです。「共同声明は予定されてない」そうですがビッグニュースでしょう。
 「野党・民主進歩党*15の動向」など、今後に注目でしょう。


■【正論】石炭火力は「親の仇」なのか? 流行の口車に乗った温暖化対策論に振り回されてはならない
http://www.sankei.com/column/news/151104/clm1511040001-n1.html
 タイトルは石炭火力ですが、産経が一番問題にしてるのは原発です。
 世界の温暖化対策議論において「原発はCO2を出さないから原発を推進しよう」という主張はもはや時代錯誤の物となっているといっていいでしょう。
 なぜなら原発はCO2を出さない代わり*16に「放射能事故の恐怖(例:スリーマイル、チェルノブイリ、福島)」「原発労働者の被爆」「核廃棄物の処理」といった難問があるからです。
 そして何も「CO2を出さない発電」は原発に限られない。他にも水力、風力、潮力、地熱、太陽光などがあるわけです。
 しかしそこは「原発推進命」の産経なので「原発をオミットする温暖化対策=筋違い」になるわけです(ちなみに筆者は経団連シンクタンク研究員)。
 正直、福島事故後でも原発を推進したがる人間(産経や電力会社、経団連)の気が知れません。一体何のメリットがあるのか。まさか「核兵器保有のため」ではないでしょうが。


■【主張】大阪ダブル選 「ノーサイド精神」で臨め
http://www.sankei.com/column/news/151104/clm1511040003-n1.html
 選挙が始まる前から「勝った方は負けた方に不当な報復をするな、ノーサイド精神で臨め」と言い出すのがスゴイですね。そんなん産経の他の選挙記事で見たことがない。
 まあ、自民側が勝てば「言われなくてもノーサイド」でしょう。もちろん「橋下時代の政策」は一定の是正をされるでしょうし、それを橋下側が「ノーサイドじゃない」と因縁つけるかも知れません。しかし、大阪自民には「げすな報復をするゲスさはない」と思います。問題があるとしたら「最近の内部紛争騒動」でもゲスさを露呈してる「維新が勝った場合」でしょう(まあ、その場合でも議会で維新が圧倒的議席を占めてるわけでもないので報復的行為には限界があるでしょうが)。
 まあ、それはともかく何でこんな事を産経が言うかといったら「橋下敗北→橋下一派の国政進出崩壊→安倍が困る」のを相当恐れてるのでしょう。
 安倍は一応「大阪自民候補」を推薦はしましたが、「橋下に未練たっぷり」なことは見え透いてるわけです。

 共産党は独自候補を立てず、自民推薦候補を自主的に支援するという。国政では、安全保障関連法を廃止する「国民連合政府」を掲げ、他の野党に共闘を呼びかけている。有権者は戸惑うしかあるまい。そうした支援を受けることの是非もよく考えてはどうか。

 小生は大阪住民ではないのでもちろん「大阪の空気」はわかりませんが、普通に考えて「戸惑わない」と思いますけどね。
 既に「堺市長選」「大阪都構想住民投票」で「ストップ維新」を唱え、自民と共産は共闘してるわけです。
 今回の大阪ダブル選挙は「あくまで維新市政・府政を今後も続けるかどうかがテーマ」であって、「国民連合政府」なんてテーマになってない。自民候補が勝ったとして共産党も「大阪の維新政治にストップがかかった、そうした快挙に我が党も貢献できて誇らしい」などとは言っても「国政には絡めない」でしょう。国政に絡めるとしてもせいぜい「維新隠れ*17応援団だった安倍政権の態度が大阪の有権者に批判された」「橋下維新を利用して国会運営を有利に進めたいという安倍政権の企みが挫折した」程度でしょう。「国民連合政府」云々など言うわけがない。
 むしろ今回共産が独自候補を立てたらその方が「ええ、堺市長選や都構想住民投票で共闘したのに?」とよほど有権者は戸惑うでしょう。というか「ストップ維新のため今回は独自候補は見送るべきや」という党内外の声に押されての決定でしょう。
 むしろ「大阪自民と橋下が対立してるはず」なのに「自民中央が橋下に調子会わせてる」ことの方が「有権者」というか「大阪の自民党支持者」は戸惑うでしょう。「ワシらどうしたらええんや」と。
 産経が批判するならむしろそうした「自民のねじれ現象」を批判し「自民中央はきちんと地元を支援しろ、自民党推薦候補だろうが」「あくまで維新を支持したいなら党の公認を取り消せ*18」というべきでしょうが、まあ、産経がしたいことは
1)「安倍へのアシスト」としての大阪ダブル選挙での橋下へのアシスト
2)共産党の存在感が大きくなることの阻止
でしかないからこうなるわけです。まったく露骨な安倍応援団も大概にしろと言いたいですね。

*1:中曽根内閣科学技術庁長官、宮沢内閣官房長官、村山、小渕、森内閣外相、衆院議長を歴任

*2:著書『日中戦争はドイツが仕組んだ:上海戦とドイツ軍事顧問団のナゾ』(2008年、小学館

*3:この事件では上海派遣軍司令官の白川義則・陸軍大将が死亡し、実行犯の尹は死刑となった。韓国政府は1962年に尹に建国勲章大韓民国章(1等級)を贈り、独立運動の義士として顕彰し、独立記念館に祀っている。尹については金学俊『評伝・尹奉吉(ユンボンギル):その思想と足跡』(2010年、彩流社)という著書が刊行されている。(ウィキペディア上海天長節爆弾事件」「尹奉吉」参照)

*4:おそらく尹とフィッチに事件前の接点などないでしょう。しかし、仮にあったとして「事件後(現場で逮捕されてるので事件後はあり得ませんが)」ならともかく「事件前に匿った」とは奇妙な主張です。もちろん「尹と接触があればフィッチの南京事件目撃証言をデマ認定してもいい」と言うのも無茶苦茶な主張です。

*5:この種の「南京事件を目撃した外国人を誹謗するデマ」は他にもあります。その例として以下のエントリを紹介しておきます。『ラーベは武器商人か?』(http://www.geocities.jp/yu77799/rabe3.html)、『平気で嘘をつく人?:「発信する会」ラーベ批判を検証する』(http://www.geocities.jp/yu77799/nankin/rabe5.html)、『東中野氏の徹底検証2:ベイツ=中華民国顧問説』(http://www.geocities.jp/yu77799/bates1.html

*6:著書『南京事件:「虐殺」の構造(増補版)』(2007年、中公新書

*7:阿羅の著書『「南京事件」日本人48人の証言』(2002年、小学館文庫)のこと。

*8:著書『南京事件』(1997年、岩波新書)、『南京難民区の百日:虐殺を見た外国人』(2005年、岩波現代文庫)など

*9:2007年、平凡社文庫

*10:著書『予想どおりに不合理:行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』(2008年、早川書房)、『不合理だからすべてがうまくいく:行動経済学で「人を動かす」』(2010年、早川書房)、『お金と感情と意思決定の白熱教室:楽しい行動経済学』(2014年、早川書房

*11:2012年刊行

*12:カンニング」など、回答のズルではなく「不正採点」という採点時のズルでしょうが。

*13:なにせ「何かの実験だ」ということは学生側にも分かっています。躊躇はするでしょう。

*14:著書『台湾における一党独裁体制の成立』(2006年、慶應義塾大学出版会)

*15:産経が言うようにこれは「国民党」「中国共産党」による民主進歩党への揺さぶりと言う要素は当然あるでしょう。

*16:実際には原発それ自体は火力発電と違いCO2は出さない物の、ウラン採掘などさまざまな形でCO2はでておりそう言った点を考えればCO2排出という点でそれほど評価出来ないという指摘があるようですが

*17:まあ正直な話、自民公認の候補がいるために公然と応援できないだけで、あまり隠れていませんが。

*18:過去には地方の擁立候補を中央が公認しなかったこともあるわけですから。