今日の産経ニュース(11/9分)(追記・訂正あり)

■【福島第1原発事故】「『被曝で白血病』はデマ」「よくなった部分も伝えて*1」 ルポ漫画「いちえふ」作者の竜田一人さん、原発報道に疑義
http://www.sankei.com/premium/news/151109/prm1511090004-n1.html
 ブクマもつけましたがここでも突っ込んでみます。
 まあ産経に呆れるのはいつものことですが竜田某にも呆れますね。話題の潜入漫画だそうですが鎌田慧自動車絶望工場」(講談社文庫)などと違い東電への批判意識はまるでないようです。
 なるほど「産経がこういうインタビューするのも彼がこういう回答するのもある意味当然」でしょう。そしてまあ、他のメディアも多分「話題の人らしい彼」にインタビューはしたのでしょうがこんな酷い発言はさすがに載せなかったんでしょう。つうかこんなインタビュー見たら、よほどの「原発推進派」か、「どんな人間が描いたマンガでもルポ漫画はそれなりに面白いんじゃないか」と思う人間かどっちかでない限り竜田マンガは読む気なくしますよねえ。その辺りの常識は竜田にはないようですが。
 原発労働者の白血病が労災認定されたことについて「被爆が原因か分からないのに被爆が原因であるように報道するのはデマだ」つうのは呆れて言葉もないですね。
 「がんの発生メカニズムは複雑だから、個々のがん患者と被爆の因果関係を『100%証明することは無理』」てだけの話じゃないですか。
 全く因果関係がなければ労災認定なんかしませんよ。たとえば「一般のサラリーマンが白血病になった」として労災認定なんか普通されない。
 「がんと被爆に因果関係があってもおかしくないケース」において「労働者保護のために政策的に労災認定してる(わざわざ個々の労働者に因果関係の証明を求めない)」のであって「デマ」というのは明らかに不適切でしょう。
 この物言いでは「原発労働者がごね得してる」と誤解を生みかねません。つうか、マンガのネタにするための一時的労働だったとは言え、「元・原発労働者だった」竜田がすべき事は「原発労働者の労災を少しでも減らすことや原発労働者の労災支援を充実させること*2についての主張」であって「東電の回し者のように」『この労災認定は被爆が原因か分からない』と放言する事じゃないと思いますけどね。


■【名古屋「正論」懇話会】改憲一度もなしは「異様、異常だ」駒沢大名誉教授・西修氏が指摘
http://www.sankei.com/west/news/151109/wst1511090089-n1.html
 変える必要がなければ変えないだけの話です。むしろ個人的には「小切手法第68条」なんか異常だと思いますね。

第六十八条
 朝鮮、台湾、樺太、関東州、南洋群島又ハ勅令ヲ以テ指定スル亜細亜洲ノ地域ニ於テ振出シ日本内地ニ於テ支払フベキ小切手ノ呈示期間ハ勅令ヲ以テ之ヲ伸長スルコトヲ得

ですからね。
 まあ昔は「朝鮮、台湾、樺太、関東州、南洋群島*3」は日本の領土(ないし領土みたいなもの)だったのでこういう条文があるわけですが今、そうじゃないわけです。
 「勅令ヲ以テ指定スル亜細亜洲ノ地域」つうのはたぶん「太平洋戦争で日本が侵略していた東南アジアのこと」でしょう。
 完全に死文化してる条文ですし、こんなんすぐに廃止できるはずなのに、皮肉にも「死文化してるからか」廃止されずに放置プレーのわけです。


■日大名誉教授が山口組元幹部から投資用に2千万円借金*4、大学側が謝罪会見「極めて遺憾…」
http://www.sankei.com/affairs/news/151109/afr1511090018-n1.html
 一介の大学教授に何故暴力団関係者が「2000万もの大金を貸した」のか、何故、名誉教授氏は「暴力団関係者」というやばい人物から2000万も借財したあげくそれを返済しないなどと言う物騒な事(暴力団の報復や警察の捜査対象になりかねないことが怖くないのか?)ができるのか、そもそもどういう関係で暴力団関係者とつながりができたのか、暴力団との関係は彼の私的な関係に過ぎないのか、はたまた「日本大学の汚れ仕事でもやっていた(つまり大学ぐるみ)」のか、謎だらけですが、それはさておき。
 何で匿名だかよく分かりませんね。「名誉教授」というのは公人でしょうから名前を出すべきでしょう。名前を出さないと「別の名誉教授氏」が疑われるという被害も出かねません。
 しかも「77歳」「教授時代は国際法を担当。平成20年6月に教授を退職後は非常勤講師として英米法など担当」などと中途半端に情報を出すのはどういうことなのか。
 名著『犯罪報道の犯罪』(講談社文庫)で浅野健一氏は「日本の新聞記者は私の匿名原則主義を批判するが、日本の新聞だっていつも実名のわけではないじゃないか」「しかも匿名と実名の区分けが曖昧だ」と批判してたと記憶しますが、こういう記事を読むと全くその通りだと思いますね。このケースは実名を出すべきケースでしょう。
 なおググったところ、「本当かどうかは分かりませんが」山岡永知氏なる人物が問題の名誉教授としてネット上に名前が出ています。
 山岡氏が「問題の人物であるにせよないにせよ」、名前がネット上にでてしまった以上は「匿名にし続けることはかえって問題ではないか」と思います。


■【中台首脳会談】「抗日歴史書」中台共同執筆前向き 馬英九総統「談話全文」を公開
http://www.sankei.com/world/news/151109/wor1511090022-n1.html
 国民党にとっても「抗日戦争勝利は栄光の歴史」なのでまあ、不思議なことでもないでしょう(まあ、「国民党と共産党とどちらがより勝利に貢献したか」などでもめる可能性はありますがその辺りうまく解決して欲しいもんです)。
 いずれにせよ産経が「国民党は、馬総統は、親中反日だ」と反感を強めることは間違いないでしょう。


■拉致家族、OHCHRソウル事務所長と面会 被害者帰国への協力を要請
http://www.sankei.com/world/news/151109/wor1511090021-n1.html
 まあ頼まれれば「拉致解決のためにできることがあればやります(国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のソウル事務所長)」とは言うでしょうが「ブッシュの家族会への言葉(米国にできることがあればやります)」と同じで「現実問題としてできる事など何もない」でしょう(そもそもOHCHRはそう言う目的の組織でもないわけですし)。基本的には「日朝外交の進展に期待する」のが一番現実的でしょう。


■【ミャンマー総選挙】スー・チー氏野党が全般で優勢 4選挙区で当確 9日以降に大勢判明
http://www.sankei.com/world/news/151109/wor1511090002-n1.html
 ただし軍側は「可能な限りの手段*5」で対抗してくるでしょうから今後もアウンサンスーチーは油断などできないでしょう。

スー・チー氏は5日の記者会見で、総選挙で勝利し、政権を奪還した場合、自身が「(ボーガス注:選挙の審判を受けていない)大統領より上の存在になる」と語っていた。

 何でこういう発言が出るかという現行憲法では憲法改正しない限り「英国国籍の子どもがいるスーチーは大統領になれないから」です。もちろんこの憲法規定の主旨は「露骨なスーチー潰しの一つ」です。


■朴政権、日韓会談“失敗”で支持率悪化 安倍首相に昼食出さず…“狭量”に批判も
http://www.sankei.com/world/news/151108/wor1511080057-n1.html
 まあ産経らしいデマ記事ですね。先ず第一に「支持率の低下の原因」は日韓会談以外にもあることは世論調査で明白なんですが。
 その理由の一つは例えば「野党の反発を無視して実行しようとしてる歴史教科書国定化復活」です。
 ただ産経は「国定教科書」を批判する立場にない*6し「支持率低下の大きな原因は安倍総理への冷たい態度」とした方が都合がいいのでデマるわけです。
 第二に「日韓会談で批判されてること」は「慰安婦問題などで明白な成果がなかったこと」です。
 安倍に昼食を出さないなんて事が問題になってるんじゃない。つうかむしろ昼食会なんかしたら「慰安婦問題などで成果がないのに、朴大統領は何を考えてるんだ!」ともっと支持率は下がったでしょう。もちろんその場合に産経が「韓国人は反日だ」というくだらない結論しか出さないことも見え透いています。


■【安倍政権考】中韓の“蜜月”にくさびを打ち込めたのか? 日韓首脳会談で安倍首相がとった戦術とは
http://www.sankei.com/premium/news/151108/prm1511080025-n1.html
 産経が言うほど蜜月とも思いませんがそれはさておき。産経の言う「蜜月」を産んでるのは「安倍の歴史修正主義南京事件否定論河野談話否定論などに好意的な態度)」なんですからそれを辞めれば蜜月はなくなるでしょう。
 そもそも安倍の歴史修正主義は歴代自民党政権の公式見解にも反する暴挙です。但し「歴史修正主義者」産経が「歴史修正主義を安倍は辞めろ」なんていうことはありません。結局産経は「無意味な逆ギレ」を中韓に募らせるだけに終わるわけです。


■【野口裕之の軍事情勢】中国が「池乃めだか」ギャグと訣別する怖さ 米軍を追い払い「よっしゃ、今日はこのくらいにしといたるワ」と凄む日は来るか!?
http://www.sankei.com/world/news/151109/wor1511090003-n1.html
 まあ来ないでしょうね。中国の軍事力が米国を圧倒する日は当分来ないと思いますがそれはさておき。
 「物理的にできる」ということと「政治的にできる」ということは違うわけです。たとえばアパルトヘイト時代に南アにネルソン・マンデラ*7暗殺はできたか。1990年代のミャンマー政府にアウンサンスーチー*8暗殺はできたか。
 たぶん実行しようとすれば「物理的には」可能ではあったでしょう。ただし「予想される政治的なデメリットが大きすぎたから」やらなかったわけです。「暗殺目的で」金大中*9拉致を実行した朴チョンヒ政権が結局暗殺はできなかったのも、光州事件で金に死刑判決を下した全斗煥政権が実際には死刑執行できなかったのも同じ話です。
 中国が米国と戦争するかといったら「仮に物理的に勝利が可能だとしても」同様の「政治的理由」でやらないでしょう。まあ、米国の方だってやる気はないでしょう。

オバマ氏は2013年、シリアのアサド政権が化学兵器を使えば「レッドライン」を越えたと見なし、断固たる懲罰軍事行動を加えると言い切った。ところが、オバマ氏は議会に対シリア攻撃権限の承認を求めた。米軍最高司令官たる大統領の政治決断の責任を議会にも負わせるぶざまな姿勢だ。

 おいおいですね。当時の議会において「シリア攻撃反対」の声が強かったことを産経は何だと思ってるんでしょうか。議会無視で攻撃実施では「民意無視の暴挙」ですし、そもそもそんなことをしたらオバマ政権が野党・共和党の攻撃で窮地に立たされます。そしてこの理屈なら「民主進歩党の批判など関係ない、馬総統の中台トップ会談を評価したい」とでもなるでしょうが馬総統を「民意*10無視」と言って非難するのが産経ですから呆れます。

*1:未だに原発事故の片がついたわけでもないのに寝言言うなって思いますね。

*2:竜田には「脱原発主張」は最初から期待しません。

*3:現在の北マリアナ諸島パラオマーシャル諸島ミクロネシア連邦に相当する地域

*4:借金時点では現役の組幹部であり、そのことを認識していたと名誉教授氏も認めてるそうですからこれは「法的な問題はともかく」道徳的には完全にアウトでしょう。大学に懲戒解雇や損害賠償請求されても文句は言えないでしょう。

*5:さすがに今さら「クーデター」などのちゃぶ台返しはできないでしょうが。

*6:むしろ自分に都合のいい教科書なら産経は国定万々歳でしょう。ただし今の日本ではいくら安倍政権とは言え、国定復活はないでしょうが。

*7:アフリカ民族会議(ANC)副議長、議長を歴任。後に南ア大統領。1993年にノーベル平和賞受賞

*8:国民民主連盟議長。1991年にノーベル平和賞受賞。

*9:後に韓国大統領。2000年にノーベル平和賞受賞

*10:但し世論調査では馬総統の会談支持、不支持は拮抗しており「世論が全面支持している」とはいえないものの産経が言うほど「民意無視」ではないでしょう。「世論調査での反対多数を無視した」安倍の安保法制可決の方がよほど民意無視です。