今日の産経ニュースほか(4/28分)(追記・訂正あり)

■五十嵐仁*1の天声仁語『筆坂秀世・兵本達吉両氏の無残な姿に心を痛める』
http://igajin.blog.so-net.ne.jp/2016-04-27

 何という無残な、という気持ちに襲われました。このような姿を目にしたくなかったとも。
 新聞の下の方にあった雑誌の宣伝を目にしたときの気持ちです。暗澹たる思いで、胸がいっぱいになりました。
 その雑誌というのは『月刊Hanada』6月創刊号で、「花田紀凱責任編集」とあります。飛び出したのか追い出されたのか知りませんが、これまで『Will』という雑誌の編集者であった花田さんが編集部を離れたことは知っていました。
 その花田さんが新しく始めた雑誌がこれです。記事として、小川榮太郎「TBSの『重大犯罪』」、百田尚樹「『カエルの楽園*2』は『悪魔の書』ではない!」、櫻井よしこ小野寺五典*3・板橋功「緊急座談会 テロとの闘い本番はこれからだ!」などが掲載されています。
 極右編集者として知られている花田さんらしいラインナップになっています。そして、この創刊号の「目玉」として「本当は恐ろしい日本共産党」という「総力大特集」が用意され、ここに藤岡信勝「微笑戦術に騙されるな」という論攷とともに、筆坂秀世田村重信日本共産党は解党せよ」、兵本達吉「日本共産党の『黒い履歴書』」という2本の記事が掲載されています。
 こう書いただけで、私がどうして無残なという気持ちに襲われ、暗澹たる思いを抱いたかがお分かりいただけるでしょう。「とうとう、こんなところにまで行ってしまったのか」と、情けなく思ったからです。
 花田紀凱小川榮太郎*4百田尚樹*5櫻井よしこ*6藤岡信勝*7という名前が並ぶことには、何の違和感もありません。皆さん安倍首相のお仲間で極右論壇のスターたちですから、極右雑誌の創刊をにぎにぎしく飾るにふさわしい方ばかりです。
 しかし、ここに筆坂さんや兵本さんが加わっていることには心が痛みます。この2人が共産党にかつて属していた経歴を持っており、安倍首相の仲間になるなどとは思っていなかったからです。
 筆坂・兵本の両氏がこれらの記事で何を書き、どのような主張を行っているのか、まだ雑誌を読んでいませんので分かりません。その内容については批判されている当事者である共産党からの反論があるかもしれませんが、私が問題にしたいのは別の点にあります。
 何が悲しくて、花田紀凱小川榮太郎百田尚樹櫻井よしこ藤岡信勝西尾幹二*8などと一緒に名前を並べることになってしまったのか、ということです。これらの人々がどのような政治的スタンスを取り、どのような主張を行っているか、まさか知らなかったわけではないでしょう。
 これらの人々が安倍首相の応援団であり、アベ政治のブレーンたちであることは世間周知のことではありませんか。どれほど共産党に反感を持ち、批判的な主張を行おうとも、アベ政治とは一線を画すという程度の判断や矜持くらいは持ち合わせて欲しかったと思います。
 しかも、筆坂さんは常任幹部会委員・参議院議員として、兵本さんは橋本敦参院議員の公設秘書として活動した経歴があり、共産党の幹部だったり中枢にいたりした人です。今回のような形で共産党を全面否定するような記事を、このような雑誌に、これらの筆者とともに書くことは、自らの過去を全面的に否定することになると思わなかったのでしょうか。
 本人からすればそれも覚悟のうえということかもしれませんが、そこまで(ボーガス注:しないと飯が食えないほど経済的に)追い込まれてしまったことに心が痛みます。自由や民主主義のために闘った自らの青春時代や半生を、それとは正反対の極右の立場から全面的に否定することになるのですから。
 しかも今、「アベ政治を許さない」という安保法反対などの運動が澎湃と盛り上がり、参院選に向けてアベ政治打倒の野党共闘が実現し、その推進力として共産党が大きな力を発揮しているその時に、「本当は恐ろしい日本共産党」という「総力大特集」に「日本共産党は解党せよ」「日本共産党の『黒い履歴書』」という記事を書いているわけです。そうすることがどのような政治的効果を持つのか、誰を利するのか、この2人のことですから分からないはずはありません。
 その経歴からして、共産党攻撃に大きな利用価値があると見込まれての起用でしょう。さすがは花田さんです。編集者としてのカンは衰えていない*9ようです。
 その花田さんに足元を見られ、アベ政治擁護のために利用されていることが分からないほどに、この2人の政治的感覚は鈍ってしまったようです。それとも、貧すれば鈍すということなのかもしれません。
 極右論壇の片隅で原稿料を糧にしながら生きながらえることを選択したということなのでしょうか。それほど政治的な感覚や判断力が鈍ってしまった、あるいは経済的に窮してしまった、ということなのでしょうか。
 共産党に対する批判は、それが事実と道理に基づくものであれば有意義であり、共産党にとってもプラスになるものです。しかし、全面否定するだけでは、戦前・戦後の政治史に対する無知と自らの変節を告白するだけになってしまいます。
 このような哀れを催すほどの無残な姿を目にしたくはありませんでした。とりわけ、政策委員長であった筆坂さんについては、その能力を期待していたこともあっただけに残念でなりません。

 以前からこうしたウヨメディアに登場していた筆坂*10と兵本*11ですがついに「月刊ハナダ」ですか(呆)。諸事情で党から除名された人間や離党した人間全てがこんな恥ずかしい生き方をしているわけではない*12ですから、やはり「筆坂と兵本の問題(要するに人格劣化が酷い)」でしょうね。

参考
【筆坂批判】
赤旗
■『週刊新潮』での筆坂秀世氏の一文について
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-09-22/2005092204_01_1.html
筆坂秀世氏の本を読んで(不破哲三*13
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-04-19/2006041925_01_0.html
筆坂秀世氏の本の虚構と思惑(浜野忠夫)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-04-20/2006042025_01_0.html
■筆坂氏の本について、誤りの合理化が転落の原因、志位委員長が会見で
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-04-21/2006042102_03_0.html
■「週刊朝日」編集子の不見識
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-04-26/2006042604_04_0.html

【兵本批判】
赤旗
■「拉致調査妨害」など事実無根:日本共産党国会議員団はこの問題にどう取り組んだか(前参議院議員・橋本敦)
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik/2002-11-17/08_0401.html
■“ガセネタ”と一体になった公明党:党略的攻撃はもう破たんした
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik/2002-11-24/10_0401.html
■視聴者を欺く「ノンフィクションドラマ」の虚構
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik2/2003-09-14/04_01.html

【4/29追記】
■【月刊正論】「民共」協力に秘められた共産党の打算と野望 政治評論家・筆坂秀世
http://www.sankei.com/premium/news/160429/prm1604290017-n1.html
 右翼活動家に転落した筆坂の駄文です。別に秘めてもいない。「打算と野望」と悪意に表現*14するのは論外ですが共産党の目標も「とにかく自民政権を打倒する」ということだとおおよそ想像がつく。
 どこまで共産党が本気だったか、またどこまで現実性があったかともかく、「1970年代に野党による民主連合政府構想」を共産党が提唱したことで分かるように以前から共産党は「野党共闘」を提唱してきました。共産党による野党共闘を否定すれば「筆坂の半生(共産党時代)を否定することになる」わけですがまあそんなことはもうどうでもいいのでしょう。

 実際、共産党の「国民連合政府」と選挙協力の提案がなければ、このような5党合意にまで行き着かなかったであろう。

 というのなら「共産党に因縁をつける」筆坂は「5党合意(ただしこのときの維新は民主に吸収され今は4党)が成立しなければ」どうなっていたと思うんでしょうか。
 「共産を除いた4党合意なら成立したはずだ、それでもいいじゃないか」というならともかく「野党合意なんか成立しなくていい」というなら筆坂は「野党合意が成立しないで自民政権が倒せるのか」「今の自民政権でいいと思ってるのか」を語るべきでしょう。まあ、産経に出る男ですから「今の自民政権で問題ない」といいかねませんがその辺り、とにかく適当にごまかしたいようです。

 共産党という政党は、実は共産党攻撃が無くなった時が一番の危機なのである。それは共産党が相手にされていないということだからだ。

と共産攻撃に励む筆坂が言うのはコントでしかありません。

 志位委員長は、「北朝鮮、中国にリアルの危険があるのではなく、実際の危険は中東・アフリカにまで自衛隊が出て行き一緒に戦争をやることだ」(昨年11月7日、テレビ東京)と発言した。

 中国や北朝鮮が「戦争法の発動対象かどうか」と言う意味では志位氏の言う通りでしょう。

(ボーガス注:共産の選挙協力が成功すれば)民主党は代々木*15に足を向けて寝られなくなる。すなわち共産党は「野党勢力の中での公明党」的な足場を築くことになるだろう。その場合、間違いなく共産党の発言力は増していくことになる。

 まあ、「民主党右派の右翼的言動」と「それを容認してる民主党左派のていたらく」にうんざりしてる小生からすれば「共産の存在感アップ(そううまくいくかどうかはひとまずおきます)」は悪い事ではありません。産経文化人になった筆坂にとっては「悪い事」のようですが。


【以下、産経】
■【きょうの人】女性初の国立国会図書館長に就任 羽入佐和子*16(はにゅう・さわこ)さん(68)
http://www.sankei.com/politics/news/160428/plt1604280049-n1.html
 安倍の例の「女性が輝く何とか」の一環であり、だからこその「安倍応援団」産経のこの記事でしょう。
 羽入氏は「元・お茶の水女子大学長」だそうですから有能な人でしょう。まあ、「櫻井よしこ中教審委員」「高市や稲田の自民党政調会長」とは違い「多分適材適所」でしょうが、「安倍と産経の思惑」を考えると少しもやもやします。

*1:著書『戦後政治の実像』(2003年、小学館)、『労働政策』(2008年、日本経済評論社)、『労働再規制』(2008年、ちくま新書)、『対決・安倍政権:暴走阻止のために』(2015年、学習の友社)など

*2:この百田本についてはリテラ『百田尚樹改憲扇動小説『カエルの楽園』の安易さがスゴい!』(http://lite-ra.com/2016/04/post-2123.html)参照

*3:第二次安倍内閣防衛相。安倍のお仲間とは言え、閣僚経験者ともあろうものがよくこんな極右雑誌に出られるもんだと思う。

*4:著書『約束の日:安倍晋三試論』(2012年、幻冬舎)、『国家の命運:安倍政権奇跡のドキュメント』(2013年、幻冬舎)、『「永遠の0」と日本人』(2013年、幻冬舎新書)、『最後の勝機:救国政権の下で、日本国民は何を考え、どう戦うべきか』(2014年、PHP研究所)など

*5:安倍によってNHK経営委員に任命されたが暴言癖の酷さから任期切れで再任されず。

*6:安倍によって中教審委員に任命される。著書『GHQ作成の情報操作書「眞相箱」の呪縛を解く:戦後日本人の歴史観はこうして歪められた』(2002年、小学館)、『気高く、強く、美しくあれ:日本の復活は憲法改正からはじまる』(2006年、小学館)、『異形の大国・中国:彼らに心を許してはならない』(2008年、新潮社)など

*7:著書『「自虐史観」の病理』(2000年、文春文庫)、『教科書採択の真相:かくして歴史は歪められる』(2005年、PHP新書)など

*8:著書『中国人に対する「労働鎖国」のすすめ』(2013年、飛鳥新社)、『アメリカと中国はどう日本を「侵略」するのか』(2014年、ベストセラーズ)など

*9:エーそうか?。今時筆坂や兵本の非難など無意味だからこそ「産経や、週刊文春週刊新潮」ではなくよりにもよって「ハナダ」なのだと思うが(もちろんこれは共産に批判点がないという意味ではありません)。

*10:著書『日本共産党中韓:左から右へ大転換してわかったこと』(2015年、ワニブックス)など

*11:著書『日本共産党の戦後秘史』(2005年、産経新聞出版

*12:たとえば有名な例では同時代社の創業者・川上徹氏がいます。一方で筆坂らに近い人物としては袴田里見・元副委員長がいます。

*13:共産党書記局長、委員長、議長を歴任

*14:むしろ筆坂の醜い生き様の方が「悪意と野望」といえます。大した野望でもないですが。

*15:代々木という呼び方をウヨ以外はあまりしないと思うんですけどね。筆坂はそう言う意味でも「あっちの世界」に行ってしまったのでしょう。

*16:著書『ヤスパース存在論』(1996年、北樹出版)など