今日の産経ニュース(5/23分)

朝鮮学校補助を1割減額 名古屋市「いっぺんに減らすには問題」
http://www.sankei.com/life/news/160523/lif1605230029-n1.html
 減らすこと自体が不当ですが、それでも「補助金を停止してる大阪や東京に比べたらマシ」なのだから何とも困ったもんです。


■庶民ならぬ犯人の味方? 比例出馬予定の共産新人候補、建造物侵入・窃盗容疑者を“擁護”「責める気になれない」
http://www.sankei.com/politics/news/160523/plt1605230025-n1.html
 生活苦から泥棒をやらかしたという人間について「生活苦が事実なら彼を支えられなかった社会の問題もあり、一方的に責める気になれない」といっただけの話です。犯罪を擁護してるわけでも何でもない。こんなことをわざわざ記事にするなんて「共産党を批判するネタが産経にはないのか」つう話であり、また「このレベルのアホ記事を愛読するのが産経読者」つうことでもあるでしょう。


■台湾・新政権、馬英九*1前政権の「沖ノ鳥島は岩」の主張を撤回 7月にも「海洋協力対話」
http://www.sankei.com/world/news/160523/wor1605230030-n1.html
 ただし「島だと認めたわけではなく」要するに棚上げ論です。馬政権が「あんなものは島ではない」として権益を獲得しようとしたのに対し、「島か岩か曖昧にした形で」権益を確保しようとしてるだけの話です。あるいは蔡新政権は漁業の利益を重視してないのかも知れないし、「馬は反日だ」云々という日本ウヨに調子を合わせてるのかも知れません。


■【歴史戦】カリフォルニア州の高校カリキュラムで「慰安婦=性奴隷」表記の公算 7月策定へ
http://www.sankei.com/premium/news/160523/prm1605230007-n1.html
 「戦前日本に非がある」とわかってはいても日本人としてあまり愉快なことではないですが「事実の指摘にすぎない」のだからどうしようもない。ましてや産経のように「慰安婦は性奴隷ではない、公娼だ」など強弁するのは論外です。


■【国会議員に読ませたい敗戦秘話】広島、長崎の原爆を目の当たりにした紫電改操縦士はこう語った「これは戦争じゃない。ただの虐殺だ…」
http://www.sankei.com/premium/news/160523/prm1605230002-n1.html
 産経と違い「あの戦争は避けられた」「日本の真珠湾攻撃は大きな間違いだった」と考える人間でも、ほとんどの日本人は「原爆投下は許されない行為」と思ってるでしょう。したがって「戦前日本を批判するサヨは原爆投下をどう思ってるのか」とでも言いたいらしいこの記事は完全に「わら人形叩き」であり外しています。
 「原爆投下は我々左派も許し難い行為だと思いますが?」「原爆投下の是非と日本の戦争が正しいかどうかと関係ないでしょう?」で終わる話です。
 それとも産経は米国に向かって「原爆投下した野郎が日本批判なんかするな」といいたいのか。
 米国人の場合、「原爆投下を正当化する人が多い」のでしょうが、これまた「原爆投下の是非と日本の戦争が正しいかどうかと関係ないでしょう?」で終わる話です。

 トルーマン*2は、知日派国務長官代理、ジョセフ・グルー*3の進言を通じて「国体護持」(天皇の地位保全)さえ保証すれば、日本が降伏すると踏んでいた。にもかかわらず、陸軍長官、ヘンリー・スティムソン*4が作成したポツダム宣言の草案から「天皇の地位保全」条項を削ってしまった。日本があっさりと降伏すれば、原爆投下のチャンスが失われると考えたからだとみるのが自然だろう。

 やれやれです。単に
1)「天皇制は廃止すべきだ(廃止論)」「天皇制の問題は今決めず、終戦後、連合国(英仏ソ中)の意見や日本国内世論の動向を見て決めるべきだ(決定先送り論)」などという意見もあり「国体護持」について米国内で意思統一ができず、決定が先送りになった
2)別に国体護持がなくても日本はもはや降伏せざるを得ないと見ていた
3)しかし、日本は降伏せず、その中で原爆投下論が台頭
とでも見る方がおそらくは正しいでしょう。そもそもポツダム宣言は「チャーチル英国首相、蒋介石中華民国主席」との連名で、「チャーチル蒋介石の意志が反映されており」トルーマン個人の意思だけで決められる物でもない。「地位保全なんて他の国が飲むかどうか」という判断もあったのでしょう。
 つうか「時勢がよめず降伏の時期を遅らせた日本」を何ら非難しない辺りさすが産経です。


■【野口裕之の軍事情勢】中国・習近平氏の傲慢無礼の数々に英エリザベス女王もおかんむり…でも増長させたのは英政府ではないのか?
http://www.sankei.com/premium/news/160523/prm1605230004-n1.html

 21世紀に「帝国主義の怪物」を蘇らせた責任の一端は、英国にも担ってもらわねばならない。

というので「ああ、はいはい、AIIBに参加なんかするなとかそういうこと*5ね」と思ったら

英米を中心とする欧米列強が、大日本帝國が国民の血の代償として正当に得た権益を強奪し、中国を反日の先兵に仕立て上げた
・九カ国条約締結で、わが国は第一次世界大戦(1914〜18年)の戦勝国として獲得した中国内のドイツ租借地利権を、中国に肩入れした英米など欧米列強に、ほぼ全面的に放棄させられた
植民地主義は当時、国際法上違法ではなかった
・欧米列強は尚広大な植民地を保有し続ける。ところが、後発の帝国・日本の海外進出には待ったをかけた。「白人倶楽部」より放逐し、孤立させ、「侵略国家」の汚名を着せていくことで、戦争へと追い込んでいった*6
・国民の多大なる犠牲の下に獲得した当然の権利*7を(ボーガス注:英米は)蹂躙した

というんだから唖然です。「日本が中国侵略して何が悪い」「蒋介石の抗日運動を英米が唆したからそれ以来中国が頭に乗りだした」て、産経の主張は「いつも常識の斜め上」を行きます。これ、戦前日本の全面肯定じゃないですか。是非以前にそんなもんが国際社会で通用するわけがない。

 中国が刻んだ屈辱の英国史は例えば、液化天然ガス(LNG)の対中輸出など2兆4000億円超を成約した李首相訪英(2014年6月)を報じた英ガーディアン紙の衝撃表現にも認める。
 《李首相は新たな属国に気前よく金品を与える植民地総督》

 単にガーディアンが中国に否定的見方なだけの話です。しかし「属国」だの「植民地総督」だの、むしろ常識が疑われるのはガーディアンの方でしょう。

 中国主導で目的・将来図の判然とせぬアジア・インフラ投資銀行(AIIB)に欧州でいの一番に参加表明し、原発建設協力や諜報機関という裏の顔が観測される情報通信機器メーカーとの連携…。英中両国間の経済関係強化は勝手にやればよい。

産経らしい捨て台詞です。「勝手にやれ」つうなら黙ってればいい。

 英国は今後、耐えていけるのか? FTが指摘した《中国側の傲慢な態度》にではない。《英国の卑屈な態度》に自ら耐えていけるのか、自問すべきだ。

 産経の言うように「中国が傲慢で英国が卑屈だったかはともかく」、産経が心配するまでもなく「中国に対し譲歩しすぎ」と思えば、それなりの態度を取るでしょう。英国国民でもないのに、そして「日本の国益が害されてるわけでもない」のに心配する必要はない。

 李首相に先立ち2014年3月、習氏はオランダやフランス、ベルギー、ドイツを訪れた。李首相が《総督》なら、主席就任後初めて欧州を歴訪した習氏は「皇帝」だった。
 オランダとベルギーの国王がおのおの開いた晩餐会に、習氏はドレスコードなど眼中にないかのごとく人民服*8で臨んだ。フランスとドイツでは中国との経済関係がいかに有益かを上から目線で説諭。「属国に気前よく金品を与える皇帝」を演じた。

 英国だけではなく他の欧州諸国まで「中国の属国扱い」するさすがの産経です。


■【世界を読む】「中国マネー」に目がない豪州…今度は韓国国土なみ「巨大牧場」買収計画拒否の“良識”
http://www.sankei.com/west/news/160523/wst1605230004-n1.html
 豪州のこの判断の是非はともかく「今度は」ではなく単にケースバイケースなだけでしょう。産経が非難するダーウィン港レンタルの話などにしても事前にそれなりの検討はされてるに決まっています。

潜水艦建造では横やりに屈する形で日本を袖にするなど中国の影響力が隅々に浸透している。

産経の別の記事では
・フランスが豪州の希望する「豪州国内雇用に配慮した国内製造」を了承したのに、日本は「機密保持」を理由に最後まで国内製造にOKを出さなかったこと
がフランスの受注決定と日本の敗北に大きく影響したと書いてるのにこれです。もちろん「中国の要請」も影響したのでしょうがそれオンリーでないことは産経ですら過去に認めたはずなのに全くふざけています。結局「国内生産に同意しなかったことが敗戦の大きな理由」であることを認めたくないのでしょう。
 それは「国内生産なんてできるわけがない、敗戦もやむを得ない、そんな事を判断材料にする豪州が間違ってる」、あるいは「国内生産に応じなかった日本政府は失態を犯した、国内生産を認めるべきだった」と産経がいいたくないからでしょう。その結果全てを中国のせいにすると。

昨年は、南オーストラリアにある牧場が豪州軍のウーメラ兵器実験場内にあったことが原因で、売却は認められなかったが、今回の計画では、キッドマンは問題視された牧場を切り離して売却する方針を明らかにしていた。

 まあ買い手の中国企業、売り手のキッドマンとしては当然の対応でしょう。もちろん「切り離せば政府が認める保証はない」ですが「認められる保証が高まる」のであれば切り離すでしょう。

ターンブル氏の息子は中国の政府系シンクタンクに所属した元共産党幹部の娘と結婚しており、豪州の歴代政権の中で最も親中的といわれている。

 やれやれです。「息子(ターンブル本人ではない)」が「元共産党幹部(現役ではない)」の娘と結婚しただけでここまで言われる筋合いはないでしょう。

ボイス・オブ・アメリカのウェブサイトによると、中国は豪州への投資額では米国に次いで2位で、中でも人口が最も多いニューサウスウェールズ州では中国からの投資が7割を超えるという。

 つまりは豪州にとっては経済的利益を考えれば中国と「必要以上に対立することはできない」という話です。

ただ、自由党と連立を組む国民党のメンバーからは牧場売却計画に反対の声が出ており、国民党党首であるジョイス副首相は土地などの不動産に関する外国からの投資には慎重な対応が必要だとの認識を示していた。ジョイス氏は今回のモリソン氏の決定を歓迎しており、外国からの豪州に対する投資については「イエスとも言えるし、ノーとも言える」と語り、ケース・バイ・ケースで判断すべきだとの見解を示している。

 つまりは「連立内閣崩壊」を避けるため不許可にしたという要素が大きいのでしょう。なお、今回反対論を唱えたジョイス氏ですら「ケースバイケース」としている点は重要でしょう。彼は少なくとも建前では「産経とは違い、中国の経済進出そのものを敵視していない」わけです。

今年2月には25の酪農場と3万頭の乳牛を擁するオーストラリア最大の酪農企業「Van Diemen’s Land Co.」(VDL)が中国企業によって買収されることが決まった。

つまりはケースバイケースのわけです。

*1:連戦内閣法相、台北市長を経て総統

*2:ルーズベルト政権副大統領を経て大統領

*3:日米開戦時の駐日大使

*4:フーバー政権国務長官ルーズベルト政権陸軍長官を歴任

*5:もちろん、「そういうこと」も産経の英国非難にはありますが

*6:まるで「9カ国条約」が日米戦争に直結したかのような記述ですがそんな事は勿論ありません。

*7:第一次大戦で日本が獲得したドイツ利権のこと。

*8:「背広にしろ」と言いたげな産経ですが、一応、人民服は今も中国の公式礼服であると思いますが?。