今日の産経ニュース(6/30分)(追記・訂正あり)

■【阿比留瑠比の極言御免】「ウィー・アー・ノット・アベ」 個人への憎悪で結集する野党の愚
http://www.sankei.com/premium/news/160630/prm1606300006-n1.html
 野党が与党批判するのは当たり前の話ですがそれを「個人への憎悪」と表現する阿比留にはいつもながら呆れます。むしろ、「阿比留の菅元首相や植村元記者などへの態度」や「裁判で敗訴が確定した辻元氏に対する阿比留の誹謗記事」の方こそ「逆恨み」とでも言うべき下劣な行為でしょう。
 なお、この記事において阿比留は
■産経『中国軍機、空自機に攻撃動作 「ドッグファイト回避、戦域から離脱」 空自OBがネットニュースで指摘』
http://www.sankei.com/politics/news/160629/plt1606290009-n1.html
を持ち出して「安保法の必要性が明らかになった」と強弁していますが、この件については
共同通信『「中国機が攻撃動作」を否定、副長官、緊急発進は認める』
http://this.kiji.is/120745456550461447
を紹介しておきます。

 萩生田光一官房副長官は29日の記者会見で、東シナ海上空で中国軍の戦闘機が航空自衛隊機に対し「攻撃動作を仕掛け、空自機が離脱した」との記事を元空自幹部がインターネット上で発表したことに関し「事実関係はない」と否定した。
(中略)
 元空自幹部の言動について「個人的には記事内容は遺憾だ。自衛隊に身を置いた人だとすれば、事実か事実でないかが、国際社会に与える影響は極めて大きい」と批判した。

という萩生田の「元空自幹部の主張は事実ではない」という指摘について阿比留や元空自幹部らはどう言い訳するのか。民主党政権相手なら「デマだ」と叫ぶ彼らウヨも安倍自民相手にはおそらくただ黙りでしょう。ただしだからといって自分らの主張を撤回はしない。
 なお、「緊急発進(スクランブル)は認める(萩生田)」といっても緊急発進自体は「たとえば冷戦時代にソ連機相手にやった」「過去にも尖閣付近で中国機相手にやった」こともあり「戦争の危機でも何でもない」のでこんなことは「安保法の正当化根拠」にはなりません。
 まあ、元空自幹部の主張(ドッグファイトの危機)が事実でも「これは個別的自衛権の問題」なので安保法(集団的自衛権行使)の正当化根拠にはなりません。当然「安保法がなければ対応できない」わけではない*1のですが、「事実ではない(萩生田)」のではそれ以前の話です。

【追記その1】
■【主張】中国軍機の威嚇 愚かな好戦的飛行やめよ
http://www.sankei.com/column/news/160701/clm1607010002-n1.html
 萩生田発言「元空自幹部の発言は事実ではない」「過去にもあったスクランブル発進に過ぎない」について根拠も上げずに否定する産経です。
そのあげく

 見過ごせないのは、軍事的圧力を増すなかで、中国機による明らかに意図的な挑発が行われたのに、政府が抗議すらしていないことである。
 萩生田光一官房副長官は6月29日の会見で、日中の戦闘機で「近距離のやり取りがあった」ことは認めたが、詳細については「公表するかしないかも含め、現在調査中」と説明を避けた。
(中略)
 事態の深刻さを十分認識しているのかと懸念をもつ。
 インターネット上で今回の事態を公表した元空自幹部*2に対し、個人的見解として批判している点も理解しがたい。

と萩生田に悪口雑言です。
 ただしそれでも
1)こんなことで産経に同調する野党(?)は当選可能性の低い極右政党「日ころや幸福実現党」くらい
2)主要野党(民進、共産、社民、生活)はこんなことで安倍批判しない
3)安倍を引きずり下ろして谷垣*3幹事長や石破*4地方創生相、麻生*5財務相、石原*6経済財政担当相らが後継総理となっても安倍ほどの極右政策は望めない
ということから「打倒安倍政権」とは言わない産経です。

【追記その2】
■【産経抄】官邸の大失態
http://www.sankei.com/column/news/160706/clm1607060003-n1.html

 官房副長官は、(ボーガス注:戦争一歩手前にあったと)公表した元空自幹部を(ボーガス注:元幹部の主張は事実に反する、通常のスクランブルに過ぎないと)批判した。本来はこの時点で、中国に抗議すべきだった。中国側は、官邸の弱腰を見透かしている。このままでは、(ボーガス注:中国に非はない、非があるとしたらむしろ日本ではないのかという)中国側の主張が独り歩き*7してしまう。6年前の苦い記憶がよみがえってきた。尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件をめぐる、ビデオ流出事件である。映像を見れば、明らかに中国漁船が意図的に海上保安庁の巡視船に体当たりしていた。すぐに公開していれば、中国船の悪質さが国民と国際社会に伝わった*8はずだ。ところがなぜか、当時の民主党政権は拒み続けた*9
 もちろん、国家と国民の安全を保障するために、機密にすべき情報は存在する。とはいえ、中国漁船衝突事件と同様に、今回の東シナ海上空での出来事が、それに該当するとはとても思えない*10。中国軍機の暴挙を世界に訴える機会が、失われてしまった。参院選挙の最中*11とはいえ、官邸の大失態である。

 萩生田官房副長官が「中国側に問題があるが」「日本に非はないが」と断っても「過去にもあった通常のスクランブルに過ぎず戦争一歩手前などではない」「元空自幹部の主張はデタラメ」「デタラメなことを言われるのは迷惑」と元空自幹部と「彼の主張を丸呑みして中国を叩く産経」を「事実上全否定したこと」が産経にはよほど許せないようです。
 珍しく「官邸の大失態」とまで非難しています。
 とは言え「政府が事実無根と言ってる以上、『事実はある』と言える証拠がないと批判しづらい」「中国と関係を悪化させてまでこんな事を騒ぐのは極右だけ」「日本のマスコミは安倍を敵に回すことを極度に恐れてる」などの「複合的理由」によってこの件、騒いでるのは産経ぐらいのもんでしょう。
 産経がどんなに騒いでもこれ以上何がどうなるもんでもない。それにしてもさすがの安倍も景気が停滞傾向にあることもあって中国ともめる気にはとてもなれないようです。

*1:ただし仮にドッグファイトの危機が事実でも個別的自衛権の行使として交戦などせず「軍事行動を避けた」のなら賢明な自衛隊の対応です。それの何が問題なんでしょうか。「舐められてたまるか」と交戦なんかしても極右以外誰も評価しません。

*2:性格はいろいろと違いますが例の一色元海上保安官を連想させる行為です。

*3:小泉内閣国家公安委員長財務相自民党政調会長(福田総裁時代)、福田内閣国交相、第二次安倍内閣法相を歴任

*4:小泉内閣防衛庁長官福田内閣防衛相、麻生内閣農水相自民党政調会長(谷垣総裁時代)、幹事長(第二次安倍総裁時代)を歴任

*5:橋本内閣経済企画庁長官、森内閣経済財政担当相、小泉内閣総務相、第一次安倍内閣外相、自民党幹事長(福田総裁時代)を歴任

*6:小泉内閣国交相自民党政調会長(第一次安倍総裁時代)、幹事長(谷垣総裁時代)、第二次安倍内閣環境相を歴任

*7:いやいや日本側は「こちらに非はない」といってるし、世間の見方は「真偽不明(そして日中両国はどちらも真偽を曖昧にした形で片付けたいのだろう)」でしょう。なお「元空自幹部や産経の言うほどの暴挙を中国はしてない、元空自幹部や産経は嘘つきだ」と萩生田官房副長官は言っても、萩生田は「日本に非がある」「中国に非はない」と認めたわけではありません。

*8:そもそも公開せずとも日本政府は中国を批判していましたし公開内容に「日本政府の主張以上の新事実」などどこにもなかったと思いますが。またビデオ流出以前にも「野党である自公や共産も含めた国会議員」には彼らの要望に応えて公開されていますが。正直、あの事件で起こったことは「一色某というバカが海上保安庁を辞めて右翼活動家に転進したこと」だけでしょう。

*9:「何故か」も何も中国を挑発しても得られるものは何もないからです。公開しないのは当然でしょう。

*10:むしろ公開して中国を挑発することの方にこそ「何のメリットもない」でしょう。そもそも産経が言うような「公開可能な映像なり音声なりの情報があるのか」どうか知りませんが。かりに何らかの映像や音声があるとして「中国に問題はあるが、さすがに産経の主張はデマ」「官邸が日中対立を恐れて情報公開しないことを見越して産経がデマってる」「仮に何らかの形でデマがばれても『中国に非があることに変わりはないから産経記事に問題はない。細かいことでぐちゃぐちゃ言うな』と居直るのが産経」と言うのが一番ありそうな話です。

*11:産経は「この件を騒ぐと参院選に悪影響が出る、我々与党は黙ってるべきだ、黙ってても国益に別に悪影響はない」と安倍が判断してると見てるようです。実際その通りなのでしょうが。