今日の産経ニュース(11/22分)

■【千葉大生集団乱暴】千葉大が謝罪のコメント 女性をトイレで乱暴 医学部生逮捕で
http://www.sankei.com/affairs/news/161122/afr1611220091-n1.html
 正直「大学構内の事件でもないんだからわびる必要ないだろ」と思いますね。何らかのコメントは出すべきかも知れませんがわびるというのは違うような気がします。


■【正論】タイ国王の「友好の絆」忘れるな ジャーナリスト・井上和彦*1
http://www.sankei.com/premium/news/161122/prm1611220007-n1.html

 《日本国及「タイ」国ハ相互ノ独立及主権ノ尊重ノ基礎ニ於テ両国間ニ同盟ヲ設定ス》。
 昭和16年12月に締結された「日泰攻守同盟条約」(日タイ軍事同盟)の第1条である。その成立過程では、日本軍のタイ進駐が先行したため両軍の間で小規模な戦闘もあったが、条約締結後は同盟国として大東亜戦争を戦った。タイ政府は、翌年1月に米英に対して宣戦布告し連合軍と戦闘状態に入っている。しかし、こうした事実は今ではほとんど忘れられているようだ。

 そりゃあタイにとっても日本にとっても名誉な話ではない黒歴史ですから、両国民が忘れたがるのはある意味、当然です(井上が言うのとは違う意味でつまり「日本とタイの黒歴史」としてなら日本とタイの両国民がこうした事実を記憶して、その過ちを深く反省する必要があるかも知れませんが)。まず日本。当時の日本は「タイは自分から日本の仲間になってくれました」と強弁したわけですがそんなわけがない。だから「小規模とは言え」戦闘も起こるわけです。タイは中立を宣言して、もめ事から逃げようとしましたが、日本はそれを許さずタイを脅したり、なだめたりして日本陣営に引きずり込むわけです。小国タイを大国日本が武力で脅して言う事きかせたなんて話は日本にとって名誉な話じゃない。
 一方のタイ。本当は戦争に巻き込まれたくないのに日本の圧力に抵抗しきれず、日本側について連合国を敵に回す。
 あげく日本が負けてしまう。タイは「国家滅亡」「王室滅亡」の危機に陥るわけです。
 ウィキペ「日泰攻守同盟条約」によれば、タイは「日本との同盟は、日本に無理矢理引きずり込まれた」と平身低頭でわび、日本と手をつないでいたときに「フランス領インドシナ(今のインドシナ三国)」から奪った土地*2をフランスに返すことで「日本との同盟の罪」を連合国に許してもらったわけです。タイにとっても「脅されたとは言え」日本との同盟という失敗を犯し「国家滅亡の危機になったこと」は全然名誉じゃない。
 こんなことで「日タイ友好万歳」なんてバカ言うのは産経のような歴史修正主義右翼だけです。

タイは同盟締結前から日本を支持してきた。満州国をいち早く承認し、満州国をめぐる問題についてリットン調査団が提出した報告書の同意確認でも、42カ国が賛成したなかで棄権票を投じている。

 それ単に「そうした方がタイの国益になる」つうマキャベリズムに過ぎないんですが。
 ただそのマキャベリズムがタイにとって判断ミスだったことは言うまでもないと思います。
 またそのタイですら「太平洋戦争」では当初中立を宣言し日本から距離をおこうとしたわけです。

 後に首相となるククリット・プラモード氏は、自らが主幹を務めたサイヤム・ラット紙に戦後、次のように書き記している。
 《日本のおかげで、アジアの諸国はすべて独立した。日本というお母さんは、難産して母体をそこなったが、生まれた子供はすくすくと育っている。今日東南アジアの諸国民が、米英と対等に話ができるのは、一体誰のおかげであるのか。それは身を殺して仁をなした日本というお母さんがあったためである》

 産経は嘘ばかり言う*3のでうかつに信用できません。大体このプラモード文章についてこの産経の書き方では「プラモードは、いつのサイヤム・ラット紙に何故そんな事を書いたのか」という5W1Hがさっぱりわかりません。
 実はこんなプラモードの文章は存在しない(つまり完全な捏造)のかも知れないし、そこまで酷くなくても『皇軍に感謝した毛沢東?』(http://www.geocities.jp/yu77799/nicchuusensou/moutakutou.html)のような「特殊事情のある話」なのかもしれない。
 が、仮にそれが事実だとしても「ペマ・ギャルポ李登輝が日本ウヨに媚びてる」のと同じ話でしょう。東南アジアの独立が日本のおかげなんて事実はない。
 つまり「この話が事実だとしても」プラモード氏が「日本からODAが欲しい」などの党利党略で「ペマや李登輝のように」日本ウヨに媚びてるだけです。
 つうかタイの元首相がそう言ったから何なんだって話です。たとえば「元台湾総統李登輝氏は安倍首相の靖国参拝を支持しています」といったところで「ふーん、でそれがどうかしたの?。ほとんどの外国首脳は安倍の靖国参拝なんか支持してないけど。たとえば馬英九前総統はむしろ批判してたけど」で終わるのと同様、「でプラモード以外の外国首脳にそんなことを言う奴がどんだけいるの?」つう話です。たとえば話をタイに限定したって今のタイの首脳がプラモードみたいなことを言って日本の東南アジア侵略を美化するのか。多分言わないでしょう。タイ以外につまり中国や韓国、ベトナムインドネシア、フィリピンなどに話を広げれば、そんな事を言う人間が政府首脳でいる可能性は皆無でしょう。

 昭和38年5月、プミポン国王が来日し、天皇陛下と会見した。プミポン国王靖国神社参拝を希望したというが、日本の外務省が難色を示したため、代わって(ボーガス注:戦時中タイ駐屯軍司令官だった)中村・元中将が参拝した。社報『靖國』(38年7月号)に掲載された中村元中将の手記によれば、NHKホールで開かれた歓迎音楽会の休憩時間にプミポン国王中村元中将を別席に招き、靖国神社と千鳥ケ淵墓苑に参拝してもらいたいとの意向を伝えたのだという。
 同年6月4日にはプミポン国王からの生花が神前に供えられ、鎮魂の誠がささげられた。この日のことは『靖國神社百年史』にも記されている。

 それ事実だとしてもプミポンが「ペマや李登輝のように」日本ウヨに媚びてるだけでしょう。
 つうかこういったら何ですが「東南アジアの小国に過ぎないタイ」くらいしかウヨ連中も自己正当化に持って来れないわけです。
 こういったら失礼ですが「カネのために日本ウヨに転ぶ国」なんてタイみたいな小国だけですから。

*1:著書『こんなに強い自衛隊』(2010年、双葉新書)、『日本が戦ってくれて感謝しています:アジアが賞賛する日本とあの戦争』(2013年、産経新聞出版)、『パラオはなぜ「世界一の親日国」なのか』(2015年、PHP研究所)、『大東亜戦争秘録:日本軍はこんなに強かった!』(2016年、双葉社

*2:まあそう言う意味ではタイも「日本と手をつなぐことによるお土産」が全くなかったわけではないわけです。

*3:たとえば、ネール(後にインド初代首相)が日露戦争の日本勝利を「アジア民族のヨーロッパに対する勝利」と喜んだのは日露戦争直後であり、次第に「欧米と変わらない帝国主義国家」「インドなどアジア民族の独立運動を支持などしない」日本に対する「失望を深めていったこと」は有名な話です。だからこそネールは太平洋戦争では、チャンドラ・ボースとは違い、連合国側についたわけですが、産経は「ネールは日露戦争後、ずっと日本に期待していたかのように」デマを吐いています。そうした産経の前科を考えればこのプラモード文章も事実か眉唾です。