今日の産経ニュース(1/11分)

■【ロンドンの甃】青くて丸い銘板が語る歴史と誇り
http://www.sankei.com/column/news/170111/clm1701110006-n1.html

 偶然、「ミステリーの女王」アガサ・クリスティが最晩年に居を構えたアパートを見つけた。著名人が住んだ家や歴史的出来事があった建物の外壁に設置される、ブルー・プラークといわれる青くて丸い銘板があったからだ。
 勤務先の近くには名探偵シャーロック・ホームズの生みの親、コナン・ドイルが執筆に使った仕事場もあった。ほかにも天才画家ゴッホや、「資本論」のマルクスなどの偉人の銘板が900近く設置され、街歩きの楽しみの一つだ。
(中略)
 日本では戦前に建てられた広瀬武夫中佐の銅像を戦後取り壊したことがあるが、英国では銘板を取り外したりはしない*1らしい。英国では歴史が断続せず継続している。だから民族の歴史や伝統に自信を持ち、大多数が王室を敬愛し、国旗に誇りを持ち続ける。
 日本もブルー・プラークを設け、自国の歴史と文化に胸を張りたい。

 日本だって文化財によるまちおこしはあると思いますが。それにしても「軍国主義の象徴だった」軍神・広瀬と「アガサ・クリスティコナン・ドイルなど」を一緒にされても英国人も、目が点でしょう。


■ドゥテルテ比大統領の対中融和外交に変化は? 安倍晋三首相が12日から豪・東南ア歴訪
http://www.sankei.com/politics/news/170111/plt1701110034-n1.html
 「反中国&安倍万歳」らしい産経らしい与太ですがそんな「変化」はあるわけもないでしょう。
 中国と例の領土紛争で「一定の政治的合意に達し、経済支援というお土産を得た」のに何で変更する理由があるのか。まあ、そう言う安倍に対しフィリピン側が「中国との関係を悪くしない範囲で」適当なリップサービスする可能性はありますが。

首相主導で「法の支配」に基づく結束を確認したい考え

と言うのも酷い話で先ず第一に領土争いというのは一方的に中国を悪扱いできる話ではないでしょう。
 第二にフィリピンも興味があるのは「自国の国益」であって抽象的な「法の支配」なんてもんではない。まあ、これはフィリピン以外の豪州やベトナムインドネシアなど他の訪問予定国も同じでしょうが。
 第三に安倍の言う「法の支配」なるもんを目指して何の国益になるのか。中国をいたずらに敵視して何かいいことがあるのか。
 第四に「安倍にとって『法の支配』とは何なのか」という話です。クリミアを併合し欧米から「国際法違反だ」と非難されてるロシア・プーチンを歓待し、また「国際法違反の戦争犯罪慰安婦」を矮小化しようとしている安倍にそんなもんを語る資格があるのか。大体、安倍がやってることはただの反中国を「法の支配」と言い換えてるだけじゃないですか。


■【産経抄慰安婦問題における「失敗の本質」 1月11日
http://www.sankei.com/column/news/170111/clm1701110003-n1.html

 小池百合子*2東京都知事が座右の書に挙げる『失敗の本質』(中公文庫)は、大東亜戦争*3における日本軍の失敗を分析したものだ。インパールで日本軍と戦った英国軍司令官のこんな言葉が引用されている。
▼「日本軍の欠陥は、作戦計画がかりに誤っていた場合に、これをただちに立て直す心構えがまったくなかったことである」。

 まあ現実無視、願望重視の上、失敗しても「保身からか」失敗を認められないからそうなるわけです。慰安婦問題で産経が負け続ける理由も話は同じですが、そうは産経が理解しないでこの文の後で「河野洋平氏などを牟田口扱いする」辺りがまさに驚異的です。
 さすが「現代の牟田口*4」産経です。負け戦を重ねても反省しないのだから最悪です。しかも牟田口(当時、第15軍司令官)がインパール敗戦について「部下が悪い」と居直ったように、「朝日が悪い」「河野洋平*5が悪い」「マイク・ホンダが悪い」「クマラスワミが悪い」「河野談話を支持する奴、皆が悪い」で産経は居直るのだから、最悪です。
 なお「作戦計画がかりに誤っていた場合に、これをただちに立て直す心構えがまったくなかった」つうのは例えばアベノミクスに該当することじゃないですかね。どう見ても景気は良くなっていないわけです。

参考

■『失敗の本質:日本軍の組織論的研究』(ウィキペ参照)
 旧日本軍の戦史研究。6名の研究者(戸部良一*6、寺本義也*7、鎌田伸一、杉之尾孝生、村井友秀、野中郁次郎*8)による共著。
 初版は1984年にダイヤモンド社より刊行、1991年に中公文庫で再刊。
 ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦レイテ沖海戦沖縄戦第二次世界大戦前後の日本の主要な失敗策を通じ日本軍の失敗の原因を追究しようとした。大前提として「大東亜戦争は客観的に見て、最初から勝てない戦争」であったとする。それでも各作戦においてはもっと良い戦い方があるのではないか、というのが著者の考え方である。各作戦は失敗の連続であったが、それは日本軍の組織特性によるのではないかと考えた。「戦い方」の失敗を研究することを通して、「組織としての日本軍の遺産を批判的に継承もしくは拒絶」することが出版の主目的であった。
 結論で、日本軍は、官僚的組織原理と属人ネットワークで行動し、学習棄却(かつて学んだ知識を捨てた上での学び直し)を通しての自己革新と軍事的合理性の追求が出来なかったとした。
 一方で、その内容の一部については批判もある。例えば森本忠夫*9は物質的・技術的格差を重視する立場を取っており、本書でのレイテ海戦への評価について、組織論に重きを置きすぎ、日本側に勝機があったかのような記述や、戸部の栗田健男・第二艦隊司令長官に対する評価(「戦略不適応」で「作戦全体の戦略的目的と自分に課せられた任務とを十分に理解していたとはいえなかった」)に対して「まったく的を得ていないと筆者は思う。栗田提督は作戦の目的や任務を理解していなかったのではなくて、作戦と任務そのものに反対していたのだ」と「主観主義的な観点から栗田の『退却』を無批判に非難する所論」の一つとして、批判を行っている。

*1:日本だって「外す理由」がなければ外しませんが。

*2:小泉内閣環境相、第一次安倍内閣防衛相、自民党総務会長(谷垣総裁時代)を歴任

*3:太平洋戦争と表現しない辺りがさすが産経です。

*4:まあ牟田口の名誉のために断っておけば、陸軍上層部が彼の作戦を許可してるので、「現地軍最高司令官」とはいえ彼一人の責任ではありませんが。

*5:中曽根内閣科学技術庁長官、宮沢内閣官房長官、村山、小渕、森内閣外相、衆院議長を歴任

*6:著書『日本陸軍と中国』(1999年、講談社選書メチエ→2016年、ちくま学芸文庫)、『外務省革新派』(2010年、中公新書)など

*7:著書『技術経営の挑戦』(共著、2004年、ちくま新書)など

*8:著書『アメリ海兵隊:非営利型組織の自己革新』(1995年、中公新書)、『知識経営のすすめ:ナレッジマネジメントとその時代』(共著、1999年、ちくま新書)、『日本企業にいま大切なこと』(共著、2011年、PHP新書)、『戦略論の名著:孫子マキアヴェリから現代まで』(2013年、中公新書)など

*9:著書『マクロ経営学から見た太平洋戦争』(2005年、PHP新書)、『特攻:外道の統率と人間の条件』(2005年、光人社NF文庫)、『ガダルカナル勝者と敗者の研究:日米の比較文明論的戦訓』(2008年、光人社NF文庫)など