新刊紹介:「前衛」2月号(追記あり)

 「前衛」2月号の全体の内容については以下のサイトを参照ください。興味のある内容だけ簡単に触れます。
 http://www.jcp.or.jp/web_book/cat458/cat/
■グラビア「重重:消せない痕跡:アジア日本軍性奴隷被害女性たち」(安世鴻*1
(内容紹介)
 もちろん「性奴隷被害女性」とは元慰安婦のことです。慰安婦ではなく「性奴隷」という表現こそが実態を表現している。そして安氏グラビアのタイトルが「韓国」ではなく「アジア」と言うところもポイントでしょう。「慰安婦の数が一番多いのが韓国」とはいえ、台湾やフィリピンやインドネシアなどにも慰安婦はいるわけです。

参考

http://www.asahi.com/articles/ASJDB4T0ZJDBUHBI01R.html
■朝日『慰安婦博物館が開館 台湾で初、女性人権団体が設立』
 台湾で初の慰安婦博物館が10日、台北で開館した。女性人権団体「婦女救援基金会」が設立したもので、慰安婦制度などの説明や元慰安婦らについての展示がある。開館式に出席した鄭麗君文化部長(文化相)は「同じ間違いを繰り返さないために痛みに向き合う必要がある」などと述べた。
 博物館の正式名称は「おばあちゃんの家―平和と女性人権館」で、慰安婦を中心とした女性の人権をテーマに据えている。カフェを併設しているほか、ワークショップなどを開く空間もあり、人権教育の拠点を目指していくという。

http://www.asahi.com/articles/ASJ507SBGJ50UCVL02S.html
■朝日『世界記憶遺産に慰安婦を申請 日中韓などの民間団体』
 ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界記憶遺産に、日本や韓国、中国などの民間団体でつくる「国際連帯委員会」などが、旧日本軍の慰安婦に関する資料の登録を申請した。韓国の団体が1日、ソウルで会見して明らかにした。昨年、中国が申請した「南京大虐殺の記録」が登録されたことを機に、日本政府は国民感情を刺激する歴史文書の登録に反対しており、政治問題化する可能性がある。
 会見などによると、国際連帯委は昨年、記憶遺産登録のため設立。日中韓3カ国のほか、フィリピン、インドネシア東ティモール、オランダ、台湾といった元慰安婦の出身国・地域の支援団体が参加している。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-10-28/2011102814_02_1.html
赤旗『「土人女を集め慰安所開設」、中曽根元首相関与示す資料、高知の団体発表』
 中曽根康弘*2元首相が、戦時中に慰安所設置に積極的に関わっていた資料が防衛省の公開している文書の中から見つかったと、高知市平和団体が27日、高知市内で発表しました。
 明らかにしたのは、高知県内の戦争遺跡の調査や保存に取り組んでいる民間団体「平和資料館・草の家」の岡村正弘館長や馴田正満研究員(63)ら。
 今回見つけたのは「海軍航空基地第2設営班資料」。当時の第2施設隊(矢部部隊)工営長の宮地米三氏(海軍技師)の自筆を含めた資料をもとに1962年に防衛省(当時庁)がまとめたものです(26ページ)。第2設営班の主計長が中曽根氏です。
 資料には班の編成や装備、活動内容とともにバリクパパン(インドネシアボルネオ島)で飛行場整備が終わり、「氣荒くなり日本人同志けんか等起る」「主計長の取計で土人女を集め慰安所を開設氣持の緩和に非常に効果ありたり」(原文のママ)と書いています。バリクパパン上陸前の地図と上陸後、民家を接収し垣やトイレをつくり慰安所にした地図もあります。
 中曽根氏は著書『終りなき海軍』で「私は苦心して、慰安所をつくってやった」と書くなど慰安所建設は認めていました。しかし、外国特派員協会の記者会見でも「慰安所は軍人らが碁を打つなど休息所の目的で設置した」と、いわゆる「慰安婦」を置く慰安所設置は否定していました。
 研究員は資料で(1)中曽根氏が慰安所建設に積極的にかかわった(2)インドネシア人女性を集めて慰安所をつくった(3)42年3月11日に海軍基地内に慰安所が開設されたなど具体的な記述がある(4)慰安所内の配置図が明らかになった―と説明。「防衛省の所蔵文書で確証は高い。中曽根氏が慰安所設置に能動的に動いたことが分かる。中曽根氏自ら真実を明らかにするとともに、政府はさらなる調査をすべきだ」とのべました。


■民意無視する安倍強権政治の危険と脆さ(田村智子)
(内容紹介)
 今国会での重要テーマだったTPP、年金カット法案、カジノ法案が批判的に取り上げられている。

参考
【TPP】
赤旗
■亡国のTPP 自公維が強行、「暮らし守る」たたかい今後も、発効の見通しないまま
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-12-10/2016121001_01_1.html
【年金カット法案】
赤旗
■低年金者切り捨て批判、年金カット法案で小池氏、BS番組
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-12-07/2016120704_01_1.html
■年金カット法で0.6%減、賃金下落で厚労省試算
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-12-29/2016122902_02_1.html
■TPP・年金カット法・カジノ法、自民 弁明大わらわ 「政策ビラ」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2017-01-03/2017010302_01_1.html
カジノ法案】
赤旗
■主張「カジノ解禁法成立、賭博場許さぬたたかいさらに」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-12-16/2016121601_05_1.html
■主張「ギャンブル依存症:「対策」いうならカジノやめよ」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-12-28/2016122801_05_1.html


■「原発ゼロ」こそ日本が進むべき道:欧州の原発自然エネルギー視察も踏まえて(藤野保史
福島第一原発の汚染水問題 解決に何が求められているか(柴崎直明)
(内容紹介)
 赤旗記事の紹介で代替。

【再生エネルギー】
赤旗
■主張「再生可能エネ、原発続ける力を振り向ければ」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2014-11-09/2014110901_05_1.html
■台湾「原発ゼロ」閣議決定、2025年までに 再生可能エネ発展へ法案
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-10-24/2016102401_02_1.html

【汚染水処理】
■汚染水対策 凍土壁海側を先行、規制委検討会で東電 効果見通せず
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-02-16/2016021615_03_1.html


■財界・自民党の新たな農業・農協つぶしとたたかう(有坂哲夫)
(内容紹介)
 赤旗記事の紹介で代替。

赤旗
■主張『規制改革農協提言:協同事業の事実上解体やめよ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-11-27/2016112701_05_1.html
■農協事業の弱体化狙う:政府「プラン」決定 企業参入進める
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-11-30/2016113001_03_1.html


■ヘリコプターマネー政策と安保法制(建部正義*3
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

(新版)お魚と山と琵琶湖オオナマズの日々
■日銀が直接国債を買い取る/ヘリコプターマネー(上) 経済これって何?・・・「赤旗」日曜版記事
http://blog.goo.ne.jp/uo4/e/1400159d10c5fa7173c74fb2661bd282
■物価高騰招き庶民にしわ寄せ/ヘリコプターマネー(下) 経済これって何?・・・「赤旗」日曜版記事
http://blog.goo.ne.jp/uo4/e/13872637b32f758bdaa89a7676628060


■リポート「リニア中央新幹線強行の矛盾」
(内容紹介)
 環境破壊の恐れと「JRの経営破綻の恐れ→税金投入の危険性」が指摘されている。

参考
赤旗
■主張「リニア新幹線訴訟、安全にも環境にも疑念深まる」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-05-24/2016052401_05_1.html
リニア新幹線に財投1兆5000億円、JR自己調達ほご 国民にツケ、第2次補正予算
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-08-26/2016082608_01_1.html


特集「軍拡に走る安倍政権と学術(2)」
■日本の核開発の歴史から科学者の社会的責任を考える(山崎正*4
■軍事研究を加速させる二つの技術戦略と「軍・産官学」体制へと進む動き(河村豊)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

赤旗
■軍事研究へ誘導やめよ、軍学共同推進 宮本徹氏が批判
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-11-05/2016110504_01_1.html
軍学共同予算激増に抗議、研究者ら、制度廃止求め声明
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-12-29/2016122901_03_1.html


シリーズ「「格差と貧困」にどう向き合うか」
■保育現場にみる子どもの貧困と保育所の役割(平松知子*5
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

赤旗
■「思いきった処遇改善を」、全国の保育士 国会内で緊急集会

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2016-03-30/2016033014_01_1.html
 園長をしている平松知子さんは、政府が28日発表した待機児童緊急対策を批判。保育士の賃上げを見送る一方で、施設定員の緩和で子どもを詰め込むものであり、政府案では「現場はもう立ち行かない。現場の保育士からは『これでは保育士死ねというのか』という声があがっている」と話しました。


■国家公務員レッド・パージ、その一例:農林省の場合(香田徹也*6
(内容紹介)
 農林省でのレッドパージが批判的に説明されている。

参考

■井上晴丸(1908年10月7日〜1973年10月5日:ウィキペ参照)
 1934年東京帝国大学農学部農業経済学科卒、農林省に入る。戦後の1946年農政局経営課長となり農地改革を進めるが49年レッドパージ農林省を追われ、東畑精一が会長を務める農業発達史調査会メンバーとして「日本農業発達史」の編集、執筆に従事。1959年より立命館大学教授。

http://www.geocities.jp/m_okamura1923/page015.html
■『林野庁時代 労働運動で開眼』岡村明達(元愛知学院大学教授)
 8月18日自宅に定員法により解雇するという農林省からの通告が届けられた。理由は農林行政を阻害したと書かれてあった。林野分会に行くと林野本庁の指名解雇者7名で何れも分会活動の積極分子であり、公然・非公然の別はあったが、いずれも共産党員であった。
(中略)
 7名のそれぞれ農林当局の斡旋で新しい職業についたが、現在私と連絡があるのは次の3名である。
 佐藤義彌(弁護士 前自由法曹団団長)、眞間田*7邦義(日本共産党杉並区会議員、42年在籍)、鈴木久忠(郷里秋田県で高校教師 現在定年生活)。


特集「大気汚染問題は今どうなっているか」
■国による大気汚染被害者救済制度創設の機は熟した(西村隆雄*8
■「「大気汚染が低下傾向でも喘息患者が増えている現象」をどう解釈すべきか*9」(嵯峨井勝*10
(内容紹介)
赤旗の記事紹介で代替。

赤旗
■調査と医療費助成を:大気汚染とぜんそく発症 市田氏要求
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-04-08/2016040804_05_1.html


■論点「文化庁京都移転問題 移転ありきでなく再検討を」(今井直子)
(内容紹介)
 「京都と東京のやりとりで時間がかかる」、「文化行政イコール京都ではない」「文化庁の移転経費で文化庁予算が圧迫される恐れがある」「地元自治体(京都府京都市)の移転費用負担額が不明(地元自治体に過大な負担がされる恐れが否定できない)」「これらの理由から地元住民、地元自治体や文化団体からも批判意見がある」などの理由で移転に批判的です。

参考
赤旗
■主張『文化庁京都移転:計画の抜本的再検討が必要だ』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-11-01/2016110101_05_1.html


■暮らしの焦点「急増する違法「民泊」 背景と求められる規制強化」(折原知子)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

赤旗
■京都脅かす違法「民泊」急増、安全守るなら法規制、旅館ホテルの組合と初懇談
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-09-03/2016090304_01_1.html
■主張『「民泊」議論、緩和でなく安全ルール確立を』
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-10-17/2016101701_05_1.html


■文化の話題
【演劇:民芸、新作への意欲:『SOETSU:韓くにの白き太陽』を見る】(鈴木太郎)
(内容紹介)
 劇団民芸『SOETSU:韓くにの白き太陽』の紹介(http://www.gekidanmingei.co.jp/performance/2016soetsu/)。

参考
日刊ゲンダイ劇団民藝が描く 日韓で引き裂かれた柳宗悦の矛盾と希望』
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/195684

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-12-05/2016120501_06_0.html
赤旗『きょうの潮流』
 ことし韓国のネット上で、日本のさりげない美しさが話題になりました。繊細さや質素で静かなわび・さび。日本は古くて、小さくて、美しいものを愛する民族のようだと▼深く関わり合いながらも国民感情は良くない隣国の中に、日本の精神文化まで分け入り、評価する声があるとは喜ばしい。美にたいする意識は国や個人によっても違いますが、互いの感じ方を認め合う姿勢が何よりも▼日本が朝鮮を植民地支配し、皇民化教育を強いていた時代。朝鮮陶磁の美しさに魅せられ、その文化と人々を敬愛し、軍国日本の政策を公然と批判した人物がいました。日常の暮らしの中に美を見いだす民芸運動創始者柳宗悦です▼人道主義を掲げた雑誌『白樺』の活動に若い頃から参加していた柳は、日本のアジア侵略の中で、世界の平和は世界が一色になることではないと確信。「複合の美」を重視し、多民族・多文化が共生する世界の実現をめざそうとしました。(中見真理著『柳宗悦*11)▼美学者としての己を貫いた柳。朝鮮に思いを寄せた姿をいま劇団民藝の公演「SOETSU」で篠田三郎さんが演じています。「人々の言葉を抹殺し、文化を奪う。宗悦の美意識にまるで反する」。本紙日曜版で篠田さんは語っています▼柳は台湾や沖縄、アイヌにも目を向け独自の文化に光を当てました。強者の論理や排外主義がはびこっているように見える今、互いを活(い)かすことで世界はより豊かになるという柳の平和の思想は脈々と受け継がれています。

http://www.sankei.com/entertainments/news/161225/ent1612250008-n1.html
■産経【ステージ 芸】回顧2016 希望感じる30代の劇作家ら
 「地を渡る舟」で民俗学者宮本常一の足跡を劇化した長田育恵*12は今年、「SOETSU」を劇団民芸に書き下ろした。朝鮮白磁に魅せられ、後に民芸運動を提唱した柳宗悦を描くが、周囲に同調しない主人公の強さに胸打たれた。

http://mainichi.jp/articles/20161112/ddm/014/040/016000c
毎日新聞『気鋭に迫る:フィールドワーク、根幹に 劇作家・長田育恵(39)』
 抽象的な空間に江戸時代の女性絵師、葛飾応為(おうい)の生がほとばしる。東京都杉並区の劇場「座・高円寺」で13日まで上演中の舞台「燦々(さんさん)」。評伝劇で注目される劇作家の長田育恵(おさだいくえ)は、自らが主宰する「てがみ座」公演だけでなく、外部公演の脚本も多く手がける。12月3〜18日には劇団民芸への書き下ろしで、民芸運動創始者である柳宗悦(むねよし)(1889〜1961年)が生き方を模索する姿を描く「SOETSU 韓(から)くにの白き太陽」(丹野郁弓演出)が東京・日本橋三越劇場(電話0120・03・9354)で上演される。

http://style.nikkei.com/article/DGXMZO11068900W6A221C1000000?channel=DF280120166618
■日経スタイル『時代撃つ再演舞台に力 急がれる世代交代 演劇2016』
 鶴屋南北賞を受賞したばかりの新進、長田育恵も旺盛な創作をみせた。ことに民芸運動の提唱者、柳宗悦を題材にした劇団民芸公演「SOETSU―韓(から)くにの白き太陽―」(丹野郁弓演出)が力作であり、ロシアの亡命詩人ブロツキー*13をモデルとした「対岸の永遠」(上村聡史演出)も力が入っていた。井上ひさし*14に学んだ評伝劇の書き手だ。

http://www.toyo-keizai.co.jp/news/culture/2016/post_6797.php
東洋経済日報『<韓国文化>美学者・柳宗悦の半生を描く』
 民芸運動創始者として知られる柳宗悦を描いた『SOETSU 韓くにの白き太陽』が12月、劇団民藝によって都内で上演される。浅川伯教・巧兄弟と触れあい朝鮮の陶磁器や古美術に惹かれていく柳を軸に、植民地下の韓国人の苦しみ、韓日の相互理解とは何かを描く。
 柳宗悦(やなぎ・むねよし、1889年〜1961年)は、民芸運動を起こした思想家、美学者、宗教哲学者。名前は〝そうえつ〟と読まれることが多く、欧文でもSOETSUと表記されている。白樺派に参画し、日本民藝館を創設するなど、その活動はいまも受け継がれている。
 劇団民藝は1950年、民衆に根ざした演劇芸術を作り出そうと旗揚げされた日本の著名な劇団である。
 今回、劇作家の長田育恵さんの書き下ろし、演出・丹野郁弓、柳宗悦役を篠田三郎(客演)、朝鮮女性・姜明珠役を日色ともゑほかで上演する。
 物語は、宗悦の転機ともいえる日本統治下の韓国を舞台に展開する。
 柳宗悦篠田三郎)は雑器として扱われていた朝鮮白磁の美しさに魅了され、予感に突き動かされるように1916年初めて朝鮮に渡った。
 浅川伯教・巧兄弟や宿屋の女将・姜明珠(日色ともゑ)と知り合い、宗悦は朝鮮の美にのめりこんでいく。そして、失われゆく民族文化のための朝鮮民族美術館設立へ。しかし、宗悦の活動は統治政策の一環だと韓国人に誤解され、さらに独立運動関東大震災時の痛ましい事件*15が、人々の間に亀裂を深める…。
 篠田さんは、「柳はピュアで、エネルギッシュな人だったと思うので、その姿を見せたい。韓国の文化をこれほど愛した日本人が、過去に存在したことを日本の若者に知ってもらうことが、両国の未来を考えるのにつながるはず」と話す。


【映画:異文化に触れ、世界の鼓動を聞く:国際映画祭の楽しみ】(児玉由紀恵)
(内容紹介)
 映画「ブルーム・オブ・イエスタディ」、「ダイ・ビューティフル」、「サーミ・ブラッド」、「7分間」(東京国際映画祭 http://2016.tiff-jp.net/ja/)、「バーニング・バード」(東京フィルメックス http://filmex.net/2016/)の紹介。
 確かに「スウェーデンサーミ差別(サーミ・ブラッド)」や「スリランカ内戦(バーニング・バード)」といった「シリアス過ぎて興業ベースに乗りにくい映画」が見られるのは国際映画祭の一つの魅力でしょう。そもそも米国映画が公開される洋画のほとんどですしね。

参考
ブルーム・オブ・イエスタディ
■今日も徒然中洲日記「ブルーム・オブ・イエスタデイ」

http://d.hatena.ne.jp/zatsukun/20161109/1478645632
 今年の東京国際映画祭のグランプリを受賞した作品。
(中略)
 ホロコーストを研究しているグループが、その権威の教授のもとで講演会を企画している。主人公は、そのメンバーで、祖父がホロコーストの加害者側の人間だ。自分の祖父が多くの罪の無い人々を死に追いやったことに深く傷ついている。
 だからこそ、研究しているのだが、家族には理解されない。
 そこにフランスから研修でやってくる女子学生。彼女のお守りを任された主人公は、彼女が祖母をホロコーストで亡くしていると知る。
 ユダヤ人である彼女の家族はドイツに対して、ドイツ人に対して、複雑な思いを抱えている。しかし、彼女はホロコーストの研究をするかたわら、ドイツ人の男と付き合い、ドイツ車を乗り回す。
 だから、彼女の家族は、彼女を持て余している。それが、彼女の情緒不安定を生み出してしまう。
 そんな2人が出会い、反発し合いながら引かれあっていく。ただ、男には妻子があり、女には不倫交際をしている男がいる。
 とにかく、男女関係が複雑。
 ヨーロッパでは、それぞれの近しい家族にホロコーストの被害者と加害者がいる相反する立場の男女が、自分の出自に関係なく交際することは難しいのだろう。
 そのことが最初の取っ掛かりだったはずだが、話が進むにつれ、その大事なテーマはどこかに行ってしまう。
 単に、妻と上手くいかなくなって悩む男と不倫相手の優柔不断さに悩む女との恋物語になってる。
(中略)
 あと、ラスト。
 つい先日観た「アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲」のラストとそっくり。こんな、よくあるパターンのラストなら、もう一工夫あっても良いのになぁと思ってしまった。


【ダイ・ビューティフル】

http://ameblo.jp/elenastella/entry-12213838802.html
■エレナとステラ「ダイ・ビューティフル」
 LGBTの世界に注目して作品を作られたということですが、フィリピンはアジアの中でもあらゆる性に寛容な国のような印象があります。
 私自身もそうだと思っていました。
 ところが、実際には、寛容な人が多そうに見える反面、カトリック教徒が多く、保守的な人もまだまだ多いのも事実で、寛容派と保守派の綱引き状態なのだそうです。
 「ダイ・ビューティフル」の主人公のトリシャは、子供の頃から「女性」としての自覚が強く、トランスジェンダーとして生きることを決めました。
(中略)
 そんなトリシャを演じたのは、パオロ・バレステロスさん。本当のトランスジェンダーの方なのかとばかり思っていましたが、ご本人はストレートで、お子さんもいらっしゃるのだとか。
 映像の中のパオロさんも、大変なイケメンなのですが、上映後のトークショーに登場されたご本人もとっても素敵な方でした。


サーミ・ブラッド】

http://eiga.com/news/20161030/19/
■北欧少数民族への差別描いた「サーミ・ブラッド」主演女優、伝統的な暮らしに「誇りを持っている」
 第29回東京国際映画祭コンペティション部門出品作「サーミ・ブラッド」が10月30日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、アマンダ・ケンネル監督と主演のレーネ=セシリア・スパルロクが会見した。
 ノルウェースウェーデンフィンランド、ロシアの北部に存在する少数民族であるサーミ族。1930年代、スウェーデン北部の山間部で暮らし、劣等民族とみなされ差別的な扱いと従属を拒んだ少女は、運命を変えようと決意する。スウェーデンデンマークノルウェー合作映画。
 今作が長編デビュー作となるケンネル監督は「私も親族もサーミの血を引いていて、その多くがサーミであることを嫌っています。この作品に出てくるようなサーミ語を使うことを禁じた寄宿学校で、スウェーデン語で教育を受けた親族がたくさんいるので、アイデンティティを消し去ること、言葉や伝統文化を忘れて違う人間になるのはどういうことかを考えて作った作品」と構想のきっかけを明かす。
 ケンネル監督と同じくサーミ族の血を引く女優のスパルロクは、「私も伝統やアイデンティティを捨てる人を近くで見ていましたし、差別のこともよくわかります。(劇中の)妹は実の妹だったので安心して演技ができました」と撮影を振り返る。女優の仕事をしていないときは、家族と共にトナカイの世話をしているそうで、「トナカイを飼っていた(映画の主人公)エル=マリアはすべてを捨て去りましたが、私はこの仕事が大好きで誇りを持っています。大事なアイデンティティであり、伝統文化だと思っています。前の世代は恥じていたことですが、ようやく私たちの世代で誇りに思えるようになってきたと思います」と笑顔で話した。
 以前はサーミ族はスウェーデン語の寄宿学校に入るのが強制されていたが、今は任意となっているそう。ケンネル監督は、現在は、放牧用の土地を追いやられたことによる自殺問題などがあると語る。劇中で村の少年たちがサーミ族の少女たちに投げかける侮蔑的な言葉については「サーミの子供たちを対象に開いたワークショップで、自分たちが嫌だと思ったことを聞いたことをそのまま使いました」といい、「彼女(主人公)の人生を1本の映画で描くことはできないので、次回作でその後の人生を描こうと思います」と続編への意欲を見せていた。

http://www.zaikei.co.jp/article/20161110/336530.html
■映画『サーミ・ブラッド』、日本公開が決定
 第29回東京国際映画祭コンペティション部門で上映された映画『サーミ・ブラッド』が、同映画祭にて審査員特別賞と最優秀女優賞を受賞。日本での公開が決定した。
 ノルウェースウェーデンフィンランド、ロシアの北部に存在する少数民族で、差別的な扱いを受けてきたサーミ人の少女のアイデンティティを描いた本作。伝統的にサーミ人が暮らしているラップランドの美しい自然を舞台に、差別に抗い生き抜く少女の成長を通して“平等”という普遍的なテーマを訴えるヒューマンドラマだ。
 主役の少女を演じたレーネ=セシリア・スパルロク自身は、普段はトナカイの世話をしながら暮らしているという純粋な南サーミ人。実の妹と共に作品に出演し、第29回東京国際映画祭で見事優秀女優賞を受賞した。
 そして本作でメガホンをとったアマンダ・ケンネル監督自身も、サーミ人の父とスウェーデン人の母の間に生まれたダブル。祖母のルーツをテーマに自身初の長編映画となる本作を撮ったケンネル監督は「支配階級と劣等民族の構図はまだ存在します。映画はスウェーデン史の暗部を描いていますが、でも基本的には、同様なことが現在でも難民キャンプで暮らす誰かに起こりうるのです」と語っている。
【あらすじ】
 1930年代、スウェーデン北部の山間部で暮らすサーミ人は、劣等民族とみなされ差別的な扱いを受けていた。中学生のエレ・マリャは成績も良く街の高校に進学したかったが、先生にサーミ人には進学する資格がないと言われる。民族衣装を着ることを押し付けられ、見世物のようにテントで暮らすことを強いられる生活からなんとか脱したいと思っていたエレは、村の夏祭りのダンス大会で出会ったスウェーデン人の少年ニコラスと束の間の恋に落ちる。そのニコラスを頼ってエレは家出をするのだった。

 まあこういうのを「どう思いますか?」とダライラマ盲従分子(例:阿部治平、I濱女史など)の皆さんに聞きたいですね。
 もちろん「スウェーデンだって問題があるんだから、中国のチベット統治に問題があっても大した問題はない」とは言いません。またこうした映画が作られる程度にはスウェーデンも良い方向に変化したわけです。
 ただ人間ってのは結局「マジョリティ」だと、マイノリティーに対し「あいつら劣ってる」などと思いがちな所はあるとは言えるでしょう。別に中国のチベット統治の問題は「中国だから」ではないでしょうし、ましてや「共産主義だから」ではない。
【2017年7月31日追記】
 この『サーミ・ブラッド』*16については、
id:Bill_McCrearyさんの記事『なかなかすごい映画が公開される(「サーミの血」)』
http://blog.goo.ne.jp/mccreary/e/692d3a763c0d7afeb3610bea9446fb46
と『サーミの血』公式サイト(http://www.uplink.co.jp/sami/
を紹介しておきます。北欧少数民族への差別を描いた映画だそうなので

http://blog.goo.ne.jp/mccreary/e/692d3a763c0d7afeb3610bea9446fb46
 面白いかどうかは分かりません

ということになるわけですが。


【7分間】

http://cinema.ne.jp/recommend/tiff2016102507/
 ミケーレ・プラチド監督の最新作『7分間』。この映画は、イタリアではまだ公開されていないのですが、10月25日と26日に「東京国際映画祭」で観られます。ミケーレ・プラチドは『野良犬たちの掟』や『裏切りのスナイパー』など、マフィアをはじめとする犯罪組織を描く監督として日本で知られていますが、『7分間』はリストラ計画が進行する繊維工場で働く女性労働者を中心とする社会を描く作品です。
 本作品はイタリアのラツィオ州が舞台で、2012年にフランスのイッサンジョーフに実際に起きた事件に基づいています。リストラされた工場に新しい所有者が現れますが、そこで働く女性たちが仕事を失わないために、昼休憩を7分間減らすという工場側の奇妙な提案を受け入れなければなりません。その提案に対して労働者のリーダー格の女性が異を唱え、場は荒れていきますが、様々なバックグラウンドをもちながら不安定な状況におかれている女性労働者たちがどこまで自分の権利を主張できるか……?
 「7分間」と聞けばとても短く感じるでしょう。しかし、その「7分間」は働く必要性と個人の尊厳との葛藤を象徴しているのです。夫がいない女性、子どもを育たなければならない女性、工場の仕事がなければ生きていけない女性。仕事を失うことが許されていない人はどこまで自分の権利を放棄するのでしょうか? どこまで不正にさらされなければならないのでしょうか? 
 このような問いに直面している女性を描くことによって、ミケーレ・プラチド監督が現在の欧州の労働者たち、女性たち、そして母親たちのリアルな状況を語ります。


【バーニング・バード】

http://cinema.pia.co.jp/feature/filmex2016b/
■『バーニング・バード』
フランス、スリランカ/2016/84分
監督:サンジーワ・プシュパクマーラ
 内戦中のスリランカで、8人の子を育てる平凡な主婦が、夫を民兵に拉致され殺害される。実際に内戦の時代を経験したサンジーワ・プシュパクマーラの暴力や女性蔑視への怒りがストレートに表現された力作。プサン映画祭「ニュー・カレンツ」部門でワールド・プレミア上映。
■ライターレビュー(水上賢治)
 監督のサンジーワ・プシュパクマーラはデビュー作の『フライング・フィッシュ』が2011年の東京フィルメックスのコンペに選出。その名に聞き覚えのある人はけっこういるのではないだろうか? 今回届いた『バーニング・バード』は、実にそのデビュー作以来、約5年ぶりに届いた監督第2作。前作に続き、内戦時代のスリランカを描いた内容になっている。
 時代は世界ではベルリンの壁が崩壊した1989年。内戦が続くスリランカの村で暮らす平凡な主婦のクスムは、一家の大黒柱である夫を民兵に拉致される。あらぬ嫌疑がかけられた夫は民兵によって殺害され、クスムはある日突然未亡人に。8人の子供たちと年老いた姑をひとりで養う状況に立たされる。
 どの国でもそうであるように、これまで主婦で何の商売の経験もない彼女には好条件の仕事など見つからない。やっと見つけるのは、もう若いとはいえない年齢の彼女には過酷でこたえる採石場での肉体労働。ただ、それもずっと雇われるか保証はなにひとつない。ここから察しがつくように、女手ひとつで家族を支える彼女の前途は多難。その紆余曲折の運命を描いたドラマは、まず何よりひとりの女性の人生を描いた人間ドラマとして見ごたえがある。
 ただ、この作品の全体から最も押し寄せてくるのは、”怒り”のメッセージにほかならない。資料によるとプシュパクマーラ監督は実際に内戦を体験しているそう。この物語には、内戦時に、自身が抱いたあらゆる感情が組み込まれていることが想像できる。その中で、彼が最も見過ごせないこととして”怒り”の声をあげていると思えるのが、権力を持つ者が無抵抗な者へ下す暴力と、相手への敬意のかけらもない輩たちの女性蔑視だ。
 それは描写に如実に表れている。とにかく主人公のクスムが受けるハラスメントや暴力といったひどい仕打ちを徹底的にリアルに描く。その描写はこちらの身に迫るほど生々しい。これらの映像の数々は、あまりに容赦ないので、思わず目を背けたくなるかもしれない。でも、だからこそ、暴力が暴力としてこちらの身にきちんと伝わってくる。「生半可では伝わるものも伝わらない」。そういう監督の確固たる意志とひとつの覚悟が感じられる暴力描写は、心して見届けるほかない。

スリランカ内戦(ウィキペ参照)
 1983年から2009年にかけて展開されたスリランカ政府とタミル・イーラム解放のトラ (LTTE) による内戦。スリランカ政府軍がLTTE支配地域を制圧して26年にわたる内戦は終結した。
■背景
 スリランカでは、総人口のうち7割を多数派民族であるシンハラ人が、2割弱をタミル人が占めており、タミル人は主に島の北部・東部を中心に居住する。両者は古代より混住してきたが、イギリス植民地時代にタミル人を重用する分割統治政策がとられたこと、および独立後にその反動として、1956年のシンハラ語公用語化を始めとするシンハラ人優遇政策がとられたことにより、民族間の対立が高まっていた。
■第2次イーラム戦争
 1990年6月7日の停戦崩壊から始まる戦い。和平交渉の失敗により戦闘が再燃した。LTTEはこの間、1991年5月21日には平和維持軍派遣を決めたインドの元首相ラジーヴ・ガンディーを、1993年5月1日にはスリランカ大統領のラナシンハ・プレマダーサを暗殺している。
■第4次イーラム戦争
 2006年7月26日のスリランカ空軍によるLTTEキャンプ空爆から始まる戦い。政権側は当初LTTEとの和平を模索したものの、2006年4月の停戦協議離脱宣言と陸軍司令官サラス・フォンセカへの自爆テロ並びに7月に東部バッティカロア県北部で農業用水が遮断されたのを機に、LTTE殲滅へと乗り出した。
 ヒンドゥー教徒の多いタミル人に同情的なインドに対して、これと対立する中国やパキスタンから資金面・軍事面で大規模な援助を受けたスリランカ政府は、これまでの戦いではほとんど投入されてこなかった海軍・空軍も用いて総力戦を展開。2007年7月に政府軍により、経済的な中心地である東部州が制圧されると次第に弱体化。11月には本拠地キリノッチへの空爆で、LTTEのナンバー2で政治部門トップであり、和平交渉の窓口でもあったスッパヤ・パラム・タミルセルバンも死亡した。翌2008年1月、スリランカ政府は停戦協定を正式に破棄した。
 政府軍はさらに攻勢を強め、2009年1月2日にはキリノッチを、25日には最後の都市拠点ムッライッティーヴーを攻略した。最終的には5月半ばには沿岸部の制圧が完了、17日にはLTTEのセルバラサ広報委員長も戦闘放棄を発表した。翌18日にはLTTEの最高指導者であったヴェルピライ・プラバカラン議長の遺体も発見されている。ラージャパクサ大統領は19日、国会で26年に亘った内戦の終結を宣言した。
■人権問題
 2010年6月、国際連合潘基文事務総長は専門家パネルを任命し、スリランカ内戦に関する報告書の作成を命じた。2011年4月25日、マルズキ・ダルスマン(インドネシア)を議長とする専門家委員会は、報告書を提出した。
 報告書は、第4次イーラム戦争の最後の5ヶ月間だけで民間人死者は4万人に達し、スリランカ政府軍、LTTE双方に国際法違反があったとするものであった。これと前後して、イギリスのテレビ局チャンネル4はスリランカのゴタバヤ・ラージャパクサ国防次官がLTTE幹部の捕虜を認めず、殺害するように命じたと報じるドキュメントを放映した。
 こうした批判に対し、スリランカ政府は、国連専門家レポートの勧告を全て拒否した。ラージャパクサ大統領は、自国による民間人犠牲者はなく、ジャガス・ジャヤスリヤ中将は国際法違反や戦争犯罪の指摘は事実無根と主張した。8月1日、スリランカ国防省は国連レポートに対する反論を発表した。LTTEは世界一非道なテロ組織であり、いかに人々を苦しめたか、一方政府がいかに人道的に行動し、民主主義の回復に貢献したかを主張した。また、チャンネル4の報道に対しては、同局の映像は捏造と反論した。
 この他、スリランカ政府によると、海外にはLTTE残党が未だ存在するとしている。2011年には、インドのタミル・ナードゥ州にあるLTTE残党のキャンプで訓練を受けた、150名のテロリストが国の不安定化のため潜入したとしている(スリランカのインド大使館はキャンプは存在しないと反論した)。
 なお、2013年2月26日、ヒューマン・ライツ・ウォッチが発表した報告書によると、スリランカ政府・軍・警察などによるタミル系住民迫害は依然として続いている。同報告書によると、レイプ、性的虐待、拷問などの75件の告発が報告されている。多くの例に共通して、無令状で拉致・誘拐し、LTTEメンバーや支持者であることを自白させるために強姦・拷問などを行った。これは被害者の男女を問わない。ヒューマン・ライツ・ウォッチはこうした報告例を戦争犯罪と指摘しているが、スリランカ政府は、全て「捏造」「LTTE支持派のプロパガンダ」と主張している。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik14/2015-03-15/2015031506_01_1.html
赤旗『インド・スリランカ「新時代」、モディ印首相 28年ぶり訪問』
 インドのモディ首相が13日、スリランカを訪問し、同国のシリセナ新大統領と会談しました。国際会議を除いて、インド首相がスリランカを訪れるのは28年ぶり。両国外交の「新時代」(地元メディア)に期待の声が上がっています。
 コロンボでの首脳会談後、モディ氏は「シリセナ大統領は先月訪印した。そのすぐ後に私がここへ来れたことをうれしく思う。隣国関係はこうあるべきだ」との声明を発表。シリセナ氏も一連の訪問が「2国間協力の新しいページを開く」と強調しました。
 印首相による前回の訪問は1987年、ラジブ・ガンジー首相の時代。当時、スリランカでは少数派タミル人の分離国家樹立を目指すタミル・イーラム解放のトラ(LTTE)と政府軍との内戦が激化しつつありました。
 タミル人はインド南部のタミルナド州などにも多く住んでおり、互いに強い同胞感情を持っています。当時、タミル政党の突き上げを受けたガンジー氏はスリランカ内戦への介入を決め、同国を訪問。LTTEの武装解除を目指してインド平和維持軍(IPKF)を派遣しました。しかし戦闘は泥沼化し、インド軍は90年までに撤退します。
 翌年、インド総選挙の遊説中にガンジー氏(当時は野党)は暗殺され、警察はLTTEの犯行と発表。IPKF派遣への報復だったとみられています。これが外交的な「傷」となり、以来、首相訪問は途絶えました。
 一方、今回の訪問実現の背景には、スリランカ側の政治環境の変化もあります。
 同国のラジャパクサ前大統領は、内戦を武力終結させる段階で多数のタミル人民間人を死亡させたとして欧米が強く批判。これに反発する中で前政権は中国との連携を強めていったとされます。
 これに対し「少数派との和解」を掲げて選挙に勝利したシリセナ大統領は、欧米やインドとの関係正常化を表明していました。
 モディ氏は今回、印首相として初めてタミル人が多く住む北部のジャフナも訪問。両国間には漁業権をめぐるトラブルなどの懸案事項もありますが、両首脳は「長期的解決策を探る」との意志を示しています。

*1:著書『重重:中国に残された朝鮮人日本軍「慰安婦」の物語』(2013年、大月書店)

*2:岸内閣科学技術庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行政管理庁長官を経て首相

*3:著書『貨幣・金融論の現代的課題』(1997年、大月書店)、『金融危機下の日銀の金融政策』(2010年、中央大学出版部)、『21世紀型世界経済危機と金融政策』(2013年、新日本出版社)、『なぜ異次元金融緩和は失策なのか』(2016年、新日本出版社)など

*4:著書『原爆はこうして開発された』(編著、1997年、青木書店)、『日本の核開発:1939〜1955:原爆から原子力へ』(2011年、績文堂出版)など

*5:著書『保育は人・保育は文化:ある保育園民営化を受託した保育園の話』(2010年、ひとなる書房)、『子どもが心のかっとうを超えるとき:発達する保育園・子ども編』、『大人だってわかってもらえて安心したい:発達する保育園・大人編』(2012年、ひとなる書房)

*6:著書『どうする国有林』(共著、2008年、リベルタ出版)、『日本近代林政年表(1869〜2009):増補版』(2011年、日本林業調査会)

*7:原文のまま。本当は「真々田」が正しいらしい。

*8:著書『クレジット・カウンセリング:多重債務者の生活再建と消費者教育』(1997年、東洋経済新報社)、『日本の消費者教育』(1999年、有斐閣)、『社会人なら知っておきたい金融リテラシー』(2016年、祥伝社新書)など

*9:これについては諸説あるようだが筆者は「ぜんそく発症のタイムラグ(大気汚染がすぐにぜんそく発症には繋がらない)が原因」と主な原因と見ている。

*10:著書『これでわかるディーゼル排ガス汚染』(2002年、合同出版)、『安全な空気を取り戻すために:目に見えない排ガス汚染の恐ろしさ』(共著、2006年、岩波ブックレット)、『PM2.5、危惧される健康への影響』(2014年、本の泉社)、『ディーゼル車に未来はあるか:排ガス偽装とPM2.5の脅威』(共著、2016年、岩波ブックレット)など

*11:2013年、岩波新書

*12:演劇ユニットてがみ座(http://www.tegamiza.net/)主宰。2008年、戯曲「カシオペア」にて日本劇作家協会研修課・井上ひさし個人研修生に採用される。以降、井上ひさしに師事。2016年 戯曲『蜜柑とユウウツ:茨木のり子異聞』で鶴屋南北戯曲賞受賞。同年、平成28年度「東アジア文化交流使」に選ばれる(ウィキペ「長田育恵」参照)。

*13:1987年にノーベル文学賞を受賞

*14:山元護久と共にNHKひょっこりひょうたん島』を手がけ、1964年4月から5年間放映される国民的人気番組となる。1969年に、『ひょっこりひょうたん島』に声優として出演していた熊倉一雄が主宰する劇団テアトル・エコーに『日本人のへそ』を書き下ろしたのを契機に本格的に戯曲の執筆を始める。1972年、『道元の冒険』により岸田國士戯曲賞芸術選奨新人賞を、『手鎖心中』により直木賞を、1981年、『吉里吉里人』により日本SF大賞読売文学賞(小説部門)を受賞。1983年1月、劇団こまつ座を立ち上げ。こまつ座の座付き作家としても活躍(ウィキペ『井上ひさし』参照)

*15:もちろん朝鮮人虐殺のこと。

*16:東京国際映画祭の時のタイトルは『サーミ・ブラッド』ですが一般公開では『サーミの血』となっています。